読書記録

とりあえず、読了本をあげていくつもりです。
…もしかしたら、映画とか、ゲームとかまで…たどりつくのかww

カズオ・イシグロ【日の名残り】

2006年11月24日 | 文学ww 翻訳
オンライン書店ビーケーワン:日の名残り
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◆「日の名残り」

 イギリスの名家に勤める執事、スティーブンが元同僚と会うために旅にでる。その間、思いをめぐらせる。

 伝統的なイギリスと本の裏にあるが、その通り。
 でもって、この主人公が執事としては優秀なのかもしれないが、人間としては面白みがさっぱりない。さっぱりないんだけど、だんだんシンパシーを感じてくる。
 カズオ・イシグロ、上手い!
 「品性」という言葉がポイントのように出てくる。品性が失われた時代に、あえてこれを問うという、手法は古めかしいが切り口は斬新なのである。
 つまり、古い皮袋にいれた新しいぶどう酒か…。

 村上春樹が、「わたしを離さないで」を絶賛していたのが、納得。
 さっさと、文庫になってくれるといいんだがな。


カルロス・ルイス・サフォン【風の影】

2006年11月12日 | 文学ww 翻訳
風の影〈上〉
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風の影〈下〉
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◆「風の影」

 少し前に、新聞のした半分を使った広告がでていた。
 ここまで大きく宣伝するのって、どうなんだろうと興味で買った。

 大当たりでした。

 実に面白い。スペインの複雑な時代背景をしっかりふまえながら、青春文学にしっかりなっているし、作中物語みたいになってくる幻の本の作家の話も、スパイスが効いている。
 元々、ジュブナイルを書いていた作家というせいか、文章そのものが読みやすいのがもっといいかも。

 これは読まないと、損だよ。

ケリー・ジョーンズ

2006年09月24日 | 文学ww 翻訳
七番目のユニコーン
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◆「七番目のユニコーン」

 中世のタペストリー「貴婦人とユニコーン」のシリーズに幻の7枚目があった。
 という仮想をもとに、それを追う美術館学芸員と画家になろうとパリに出てきた青年の恋が交錯する。
 学芸員の彼女と青年はかつて美大で一緒に学んだ仲。恋人同士だったのだけど、お金持ちの同級生が割り込んできて彼女はその人と結婚する。でも、その後未亡人になり子供を抱えて働いている。青年は、アメリカで美術を教えていたのだけど、それに行き詰まり、婚約者がいるけどその関係にも行き詰ってパリに来ている。
 一応、大人の恋、って感じですか。
 どうやらこれが、ケリー・ジョーンズの処女作だそうで、ところどころ一人よがりだな、不親切だな、と思う部分もあるけど、タペストリーに対する情熱はすごく伝わってくる。
 でも、次作は……題材によるかなww

グレイス・ベリー

2005年11月27日 | 文学ww 翻訳
最後の瞬間のすごく大きな変化
◆「最後の瞬間のすごく大きな変化」

 3冊の短編集しか出してないけど、とっても大御所らしいアメリカの女流作家。
 春樹は、好きらしいんだけどね。
 彼女自身をモデルにしているような短編や、伝聞から話を膨らませていったような都会の話と、大雑把に二つの流れに分けられる。
 うーーん。
 確かに、表現とか手法とか上手いと思うんだけど、カーヴァーのように胸にしみてくるような感覚はない。もしかしたら、そういうところがクールでいいのかもしれないけど、どうもそこまで読み込むことが出来なかったように思う。
 アホで、すみません(苦笑)

イアン・マーキュアン

2005年11月13日 | 文学ww 翻訳
愛の続き
◆「愛の続き」

 「アムステルダム」のイアン・マーキュアン。
 「アムステルダム」はいまいちだと思ってたくせに、これを買ったということは、実際にはよかったのかもしれない<をい
 これから順次文庫化されると思うんだが、楽しみ。

 で、気球からの落下事故を目撃したカップルと、男。その男が、カップルの男性(主人公)に一方的な恋愛感情を持つ。それによって、カップルもぎくしゃくしだして…。
 って書くと、軽そうだが、マーキュアンなので深くまで掘り下げていく。いや、掘り下げていくという言葉だとニュアンスが違うな。なんていうか、沈んでいくというか、薄布をめくっていくというか、そんな感じ。
 ストーカーもの(これでの症状はド・クレランボー症候群)って、どう説明しても相手に全然わかってもらえないもどかしさや、不毛感、嫌悪感が、嫌なんだが、これは切なさが先にきたな。
 「アムステルダム」より、よかったです。

ダイアン・チェンバレン

2005年09月06日 | 文学ww 翻訳
癒しの木

◆「癒しの木」
 出産の事故で植物状態になった親友の夫の子供を妊娠してしまった主人公。彼女の苦悩と、彼女が生まれた時命を救った「癒し手」の持ち主の話。
 親友も好き。そしてその夫も愛している、そのジレンマが切なかった。好意や善意とか、プラスの気持ちしかなくても、つか、そういう気持ちだけだからどうにもならない八方塞になることだってある。
 切ない。
 「癒し手」の彼女も、双子の姉妹の幼少の頃からのことが語られるのだけど、これもまた切ない。
 オチはなんとなく想像がつくんだが、それが目の前に出てきたら、想像を超えて切なかった。
 チェンバレン、前作の「勇気の木」もよかった。が、○○の木って続くのはどうなんだろうねぇ。シリーズものならいいけど、全く関係がない話同士なのに。
 ちょっとそのへんを心配している<をい

イアン・マキューアン

2005年08月17日 | 文学ww 翻訳
アムステルダム
◆「アムステルダム」
 ロンドン社交界の花形だった女性が亡くなった。彼女の残した写真によって、元恋人だった男たちが巻き込まれていく。

 えーーっと、帯は大げさだと思いますww
 この作者のほかの作品は、「現代のモラルをめった打ち」にしてるらしいですが、これはそれほどでもない。つか、恋人だった女が死んで、他のいろんなことが上手くいかなくて…非常にセンチメンタルな話と私は読んでしまった。
 主人公の一人が作曲家なんだけど、音楽の表現はすばらしかったです。きっと、文章は端麗で音楽的なのに、内容がエグい、そういうギャップがいい作家なのかもしれない。
 最後は、微妙に切なかったです。

エリック・フォスネン・ハンセン

2005年05月28日 | 文学ww 翻訳
旅の終わりの音楽 (上)  旅の終わりの音楽 (下)
◆「旅の終わりの音楽」
 タイタニック号沈没の時、最後まで演奏し続けた楽団員の話。
 とはいっても、メンバーは作者の創造されたもので、タイタニックという状況を借りているだけだ。史実と虚実が、見事に一体化していてこの上もなく美しい模様を描いている。
 七人の楽団員のうちの5人のタイタニックにいたるまでの話がメインになっているのだが、私は最初のリーダーの話が胸に響いた。
 ともあれ、この小説にこれ以外のタイトルはないし、これ以上のタイトルもない。このタイトルが全てを集約しているし、これ以上語ることも必要ではない。
 そして、そういうタイトルを得ることのできた小説というのは、それだけで幸福なのだとも思う。

グレアム・グリーン

2005年01月04日 | 文学ww 翻訳
負けた者がみな貰う(ハヤカワepi文庫)
グレアム・グリーン

◆「負けた者がみな貰う」
 さえない中年会計士が再婚するのに、その会社の社長が気紛れで高級リゾートに誘ったゆえに、ギャンブルにのめりこんでいく話。
 雇われてるがゆえに、とんでもない気紛れに振り回される切なさや、どんどんギャンブルにのめり込んでいき、新婚の妻との関係もぎくしゃくしていく、その様の描き方が…やっぱ上手いよね、グリーンは。
 グリーンは、作品をノベルとエンターテイメントって分けていたらしい。でもって、これは後者。
 短編の類になると思うし、昨今の刺激ばかりが目立つようなものたちに比べると、おっとりとした古きよき時代のジェットコースター、いや観覧車、のようだけど、結末への着地が素晴らしい。もう完璧ですね。