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◆「四季 秋」
真賀田四季の話。「すべてがFになる」の直後あたりから。
春、夏と、四季の主観できたのが、ここで萌絵の主観になる。
うーーーー。
ま、起承転結でいうと、転だから、主観が変わるというのは「手」ではあると思うんだが、やっぱり四季のシリーズだから、四季の主観を通して欲しかった。
でもって、S&Mシリーズだけでなく、Vシリーズとも繋がっていることが、はっきりするんだが…。
斉藤美奈子が「文壇アイドル論」で村上春樹を「RPG」と言っていたが、この一連のシリーズも似たようなものかもしれない。
つまり、伏線をあーだこーだと考えて、つなげていく(攻略していく)、それが楽しみなのかもしれない。
…私は、いいやww
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◆「ドールズ 闇から覗く顔」
7歳の少女にとりついてしまった江戸時代の絵師。
彼が解き明かす、謎の数々。
折り紙や、影絵など、江戸時代の絵師という設定なので、美術工芸関係の話が主になってます。
これが面白い。
江戸時代の文化は、とてもレベルが高く豊かだったのだなぁと感じます。
事件そのものは、事件が起きて、まきこまれて、最後に少女の中の絵師が現れて(多重人格っぽい感じになっている)さくっと解いてしまうので、ねちっこい推理が好きな人には物足りないかも。
でも、現代に、その上少女の体に、生まれ変わってしまった絵師の心情や、少女の家族の戸惑いなど、色々読ませる部分が多彩なのだ。
1作目「ドールズ」で、これは序章なんだと思ったが、その通りだった。
「ドールズ」を買う時は、2作目、3作目も一緒に買いましょう。
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◆「四季 夏」
真賀田四季、13歳。「すべてがFになる」の根源となる事件がおこる。
相変わらずの四季の天才っぷりに、振り回される読者なのである。
うーーーん、いくら天才でも、こう非人間的に成長するもんなんだろうか。読んでて、とにかく悲しいのは、彼女が人間的な情愛に触れられないこと。天才っぷりで周りを拒絶してる部分があるとはいえ、「子供を守るのが大人の仕事」(from「鋼の錬金術師」)とひっぱたくような人はいなかったのか。
ま、いたら、こういう話に展開しないんだけどさ。
なんつーか、このシリーズ、裏テーマは「人間にとって必要なことは」ってことじゃないかと、ちょっと思えてきた。
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◆「初恋よ、さよならのキスをしよう」
柚木草平シリーズ2作目。
スキー場で偶然、高校の同級生と再会した柚木。その後、彼女は殺され、彼女の姪から事件の捜査を以来される。
飄々としてとぼけてる感じの柚木だが、結構ハードボイルドな生い立ちなのだ。それを語りながら、美しかった同級生への憧憬を語るあたりは、職人技ですな。
そして人の心の闇というか、深淵というか、ウィスキーのような後味の苦さがある。が、それは不愉快ではない。
苦さがあるから、甘いものが愛おしいのだし、闇を拒絶するだけでは光を得ることはできない。
ハードボイルドなのだ。
でも、とぼけてる。
このバンランスの妙。
4作目もあるそうなので、さくっと出してください。創元推理文庫様m(__)m
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◆「彼女はたぶん魔法を使う」
柚木草平シリーズの1作目
ひき逃げ事件を探っているうちに、また事件に巻き込まれる。
ちなみに2作目は「初恋よ、さよならのキスをしよう」です。でもって、このシリーズ最初別の出版社から出てて、そこで絶版になった模様。
絶対、タイトルで損してると思います。
だから3作目の「探偵は今夜も憂鬱」から買ったんじゃん。
なんだかな、のタイトルはおいといて…。
やっぱりハードボイルドなんだけど、とぼけてます。
女に弱い、ところが所以なのか。娘にまで弱いからな。そういうところが微笑ましい。
でもって、この出てくる女皆なんだか怪しい(ww)んだが、そういうところの描き方がまた上手い。
雰囲気は、昔の映画なんだろうなぁ。
映像化すると、案外受ける気がするんだけど…地味すぎるかな。
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◆「GOTH 僕の章」
人の残虐性を好む嗜好を自覚している「僕」
そしてその性格を見抜いた、森野夜。
二人のアンソロジー。
学校の中で浮いている森野夜と、表面上は穏やかに暮らしている僕なのだが、お互いには友情を感じているとか、そういうのじゃないところが、斬新。というか、怖い。
「僕」はこうして、どんな大人になっていくのだろう。
上手く立ち回って、そこそこの人生を送るのだろう。因果応報なんていうものは、存在しない。
「僕」の抱えている闇は、もしかしたらそういうことなのかもしれない。つまり、物事はただそこにあるだけで、それが何かに影響したり、転じて災いを呼ぶということにはならないということ。因果を応報する存在、たとえば神、はいないということではないだろうか。
読後、考えさせられる作品である。
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◆「GITH 夜の章」
森野夜(もりのよる)が拾った1冊の手帳が導く、連続殺人。
人の残虐性を見たがり、見るために行動までする、夜と「僕」のアンロソジー。
第3回本格ミステリー大賞受賞作。
乙一は、天才である。
こういう視点はちょっと思いつかない。
そして、かなりエグいシーンがあるのだが、不思議とどの場面も静かだ。現実感がない、というわけではない。これは、主人公達が自分たちの周りをシールドしているという感触なのだろう。
それを、行間で読ませるのだから、やっぱり乙一は天才である。
「犬」にはやられました。
別のアンソロジーで読んでたんだけど(つか、それでよかったので乙一を読んでみる気になった)やっぱりすごかった。
完敗ですww
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◆「ささらさや」
事故で夫をなくし、赤ん坊をかかえて一人になったさや。彼女を助けるために夫は幽霊(?)になって彼女を助ける。
とかくと、心霊ものっぽいですが、しっかりミステリーです。
加納朋子お得意の身近な謎、ってやつですね。
でもって、脇役がいい味をだしてます。「レインレイン・ボウ」でもそうだったけど、加納朋子はお年寄りをきっちり(ちょっとステレオかなと思う部分もあるけど)描いてるところがいいですね。
ともあれ、夫のゴーストが現れるのは、都合よすぎだし、そうやって助けるのは実際彼女のためになるの?と思わないでもないですが、ま、これは大人の童話だから。
と、いいつつ、最後の別れのところで、号泣してしまったのでした。
ははは。
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◆「レインレイン・ボウ」
高校のソフトボール部の仲間が、通夜の席で再会した。その7人の女性のそれぞれの視点で、生活とその中の謎を描く。
短編の中に小さな謎を含みながら、全体として大きな謎を描きながら展開していく。ゆえに、全てがわかる最後の「青い空と小鳥」は圧巻である。
短編集は、どこから読んでも普通いいけど、これだけは絶対順番に読みましょうww
7人いると、おいおいって人もあるし、気の合いそうな人物もいる。と、こういうことを感じるほど入り込むことができて、面白かった。
特にオバちゃんたちと戦う「雨上がりの藍の色」が痛快でよかった。
ようするに何かを変えるには、愚痴を言っても無意味で、行動をおこすことしかない、とストレートに訴えてきてるところがよかった。
中学生ぐらいに読ませると、いいんでないだろうか。
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◆「呪い人形」
女性雑誌記者を主人公にした3作目。
このシリーズ、ともすればだれが主人公?ってなりやすいのだが、今回のはそれがさらにパワーアップ。気が付くとずーーっと主人公でてなかったり…。
かつて医療事故の責任を負わされて病院を追われた医師に、のろいで人を殺すという老婆に、野心的女性ライター、となかなか役者そろいで始めたものの、ちょっと消化不良の感じがいなめない。
で、結末も……。
うーん、これで納得しろというのはキツイな。まあ、へたに転がしても、それはそれでいきなりリアルティがなくなった、とかって言われそうなんだけどね。
望月諒子、面白いです。
でも、これよりは、前2作のほうが面白いよ。