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プラダを着た悪魔2

2007-01-28 23:10:10 | TV/映画/舞台
この映画、ヒットしたのは華やかなファッションがたっぷり見られるってこともあるんでしょうが、ワーキング・ガールのお話としてよくできているからじゃないでしょうか「仕事」そのものがメインテーマになっているコメディって意外に少ないような気がします。たいがいは恋愛がメインになって、仕事はさしみのつまだったりしますから。

しかもいくらでも志望者はいるという華やかな職場で、上司は有名な暴君というのは非日常的ですが、細かい設定はけっこうリアルです。

まず、アンディにとって、この職場は希望通りのものではありません。文芸誌、それもできればニューヨーカーのような一流紙にいきたかったアンディですが、現実は厳しく、人事部の選考にかかって面接にいけることになったのは、自動車関係の雑誌か、ファッション誌のRUNWAYだけ。どちらも彼女にはまるで興味のない分野。RUNWAYで一年辛抱すればどこでも通用するからと、がんばって売り込み、ミランダの気まぐれのおかげで採用。志望どおりの仕事につけないってのは、たぶん、たいがいの人がそうですよね。一応稼げるからとりあえずこれでいいか、とか、この仕事をやっておいたら将来のキャリアにつながるから辛抱しようとか...

アンディは前向きないい子なので、決して仕事をないがしろにしようとはしてなかったのですが、心の緩みがあったのは事実。こんなエピソードがありました。ほんの少しの違いに敏感に反応して、よりよい選択ができるのがプロというもの。一見同じようなベルト二本を「まったくちがう」といいはり、どちらを選ぶべきかと悩むスタッフの前で、アンディは笑ってしまうんですね。そしてミランダにちくり、とやられることになる...

その後も、一応がんばってはいても、能力をフルに生かしたといえない状況で、ミランダの攻撃にさらされてぐちるアンディ。「君はちゃんと仕事をしていない」と厳しい忠告してくれたのがァッション・ディレクターのナイジェル(スキンヘッドのスタンリー・ウィッチ。「ターミナル」の警備主任です)でした。それで奮起するわけです。RUNWAYに山のようにある服から自分にあうものをナイジェルに選んでもらい、ヘアスタイルも変えて、ファッショナブルに変身するアンディ。ここから彼女の快進撃が始まります。ミランダの要求にこたえるばかりか、先回りまでする始末。先輩のエミリーがかすむほどの活躍で、ミランダの信頼をがっちりつかみます。

そう、服装はアンディの心を表す鏡なのです。仕事内容は、RUNWAYに必要な品物の調達、電話の応答という比較的まともなものから、ミランダの不可思議な雑用、一見実現不能と思われる要求にこたえることまであるとはいえ、結局は使い走り。だからハイヒールなんてばかげているし、前と同じ素朴な格好でいいよね、ってのはアンディの勘違いだったのでしょう。だいたい、さすがにファッション誌編集長のアシスタントが、流行とかけはなれた格好でうろうろするっていうのはイメージを損ねることになりますもん。それから自分が着たり持ったりすれば興味も広がるし、仕事の知識もどんどんつき、みんなにほめてもらえ...と、いいこと尽くめだったんですね。

ところが、仕事で絶好調になると、私生活のほうに暗雲がたちこめてきます。アンディが一緒に暮らしているボーイフレンドのネイト(エイドリアン・グレニアー)は、けっして物分りの悪くはなさそうなのに、アンディに何度も約束をすっぽかされてお冠。仲のよいカップルだったはずなのに、別れ話まででるありさま。ミランダが自宅で夫と口論し、パリ出張前に離婚が決まりますし、ナイジェルも「仕事がうまくいけば私生活がだめになる。みんなそうさ」なんて言うし... 

そうなるのも当然といえば当然。だって、RUNWAYでの仕事は、24時間応戦体勢をとるようなもの。会社を離れても、始終、携帯電話がなるんです。私だったらあんなに電話がなるだけで耐えられませんそれだけのエネルギーや時間を仕事に使ってしまうと、私生活にかける量は当たり前ながら減っていきます。エネルギーは増やせる可能性はありますが、時間を増やすことは絶対に無理です。会社のパーティーとボーイフレンドの誕生パーティの両方に同じ時間に出席するなんて、分身の術を使うか、ハリー・ポッター3巻でハーマイオニーが使った魔法の時計でも使わない限り実現できっこありません。仕事か、恋人か、という選択を迫られるアンディ。

それでもはじめは仕事をとっていたのですね。がんばった甲斐があってどんどん仕事が面白くなってきていたのですから。第一アシスタントのエミリーを差し置いてパリ出張同行者に選ばれ、パリで夢のような時間をすごします。ところが、ミランダをクビにして、新しい編集長をすえようという動きがあるのが発覚。あわてるアンディを尻目に、ミランダはちゃんと手を打っていました。本当はナイジェルにいくはずであったサラリーも地位も手に入るポストに新編集長候補をあてがい、自分の地位を守り抜きます。ナイジェルを犠牲にしたことに唖然とするアンディを傍らに、ミランダは自分とアンディが似ていると語ります。両方とも能力が高く、人を踏みつけにしてでも前進しようとし...それを聞いてアンディの中では何かがはじけるわけ。人を踏みつけにして自分がよければそれでいいのか、いや、よくないと、ミランダから逃げ出し、ミランダからの呼び出しを告げる携帯電話も投げ捨ててしまいます。その後、ネイトとも仲直りし、エミリーには不要になった服をプレゼントすることでお詫びをし、希望にあった新しい仕事もみつけ...とアンディらしい生き方を再びはじめることになります。おまけに離れていったとはいえ、ミランダとも決して悪くない関係が築けたこともわかります。再就職先には強力な推薦をあげてくれたり、最後にちらっとアンディを見かけたミランダが、珍しく微笑をみせます 

上司、ワーク・アンド・ライフバランス、仕事上での人間関係など、仕事上の悩みの種をあれこれカバーしながらも、主人公がうまく切り抜けている様をえがいてくれて、元気をあたえてくれる後味のよい映画だったのでした

プラダを着た悪魔

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