宮尾登美子の小説を映画化した
《序の舞》は1984年の作品らしいが
私にとっては長い間、
“禁断”の映画だった。
もちろん原作も読んでいない。
理由は、一つ。
私は、上村松園の絵の大ファンだからだ。
子供の頃、
多分、小学校の高学年だったと思うが
東京の叔父が帰省した際に
「お土産だよ」と言って渡してくれたのが
分厚い日本画の画集だった。
横山大観、菱田春草、伊藤深水などの作品にも、もちろん惹かれたが、
何より惹かれたのが上村松園の
《新蛍》という絵だった。
たおやかな女性の仕草と視線の先にある仄かに光る蛍の…
儚い美しさに目が釘付けになったのを覚えている。
当時は解説を読むこともなく、
上村松園が女流画家ということも知らずに観ていたが、
その存在を思い出したのは、
しばらく美術鑑賞からも遠のいた学生生活を送っていて、
再び展覧会に行く余裕のできた…京都のラジオ局に通っていた頃からだ。
《序の舞》が公開された当時に思い出すのは、
元上司の言葉だ。
宮尾登美子さんを知るTV局の上司から、
「宮尾登美子ってさぁ、気さくでハキハキした人だよ」
とアレコレ聞かされていたせいもある。
(⌒-⌒; )
《鬼龍院花子の生涯》は原作も読んだが、
実は、
映画でスゴんだ夏目雅子さんの顔しか思い出せない。
映画《序の舞》予告編にも
あまり良い印象を持てなかった…
フィクションと謳ってはいるが、
あれほどの美しい作品を生み出した画家の私生活が赤裸々に描かれているらしい…
それを観てしまうと、
作品の見方が変わってしまうかもしれない…。
早い話しが、
観る勇気がなかった…。
上村松園という女性の生き方に興味がないわけではないが、
映画にはきっと面白くするための脚色も多いだろう…。
事実とは違うと頭でわかっていても、
事実に近い描写があれば、ついそれが真実だと思い込んでしまう。
もちろん映画では名前も変えているが、
師弟関係のスキャンダルなどは
周知の事実だったようにも思える。
観終わった後で、
よく遺族が映画化を許可したものだなぁ…
とも思った。
ただ、
観てよかったと思う部分もある…
あの《焔》と《母子》を
今後観る機会があったら、
これまでよりも、たぶん違う見方ができるような気がする…
それにしても、
絵の《序の舞》は、
やはり、
とんでもなく美しい作品だ。