声の仕事とスローライフ

ただ今、仕事と趣味との半スローライフ実践中。遠方の知人友人への近況報告と、忘れっぽい自分のためのWeb忘備録です。

三段壁で

2013-02-01 18:21:38 | テレビレポーター、キャスターの仕事
振り向くと私の立っていた場所から、
わずか5メートルも離れていない場所で、

何人かの観光客が断崖絶壁から
すぐ下の海を覗き込んでいるではあり
ませんか。

その声と同時に、
私を映していたカメラマンは、すぐさま断崖絶壁から、すれすれの所で

足を一歩踏み出すと、そのまま海に落ちるのではないか、

というような格好で海面を捕らえ始め
たのでした。


思いがけない事件にショックで青ざめながらも、

結局この日は遺体の引き上げ作業を収録している取材スタッフの仕事を
ただ見ているしかなかったのですが、

私としては、この現場を映していいものかという…
仕事とは言え、なんだか割り切れないものを感じていました。



私がここ南紀白浜を訪れたのは、釣り人の間で噂になっていた幽霊話を
検証するためだったのですが・・・

結局、カメラは自殺者の引き上げ作業を、まるで特ダネとでも言わんばかりに
遠慮なく映してしまっていて、

私も放送当日、その映像を見ながら
当時の様子をレポートしろというディレクターの指示に従うことになりました。

自殺者は寝屋川市の40歳代の男性でした。

借金苦による自殺だそうで、
三段壁についての知識もあったのでしょう、

現場で目撃していた観光客の証言によると、助走して飛び込んだのだそうです。

引上げ作業の時、私はその苦痛にゆがんだ顔をはっきりと見てしまったのですが、

さすがにVTRでは顔は映さず、
海面にうつ伏せの状態で遺体が浮かん
でいるのを

船に乗った人たちが慣れた手つきで引き上げている様子を映し出していました。


近くの公衆電話には「いのちの電話」の張り紙などもあって、

地元警察などでも、なんとか思いとどまらせようと努力はしているものの、

それでも自殺志願者が後を絶たないと言われている場所なのだそうです。

当時は景観を損なうと言う理由から
柵などもなかったのですが、
その後、柵が設置されたと聞いています。

そんな理由で、あの美しい景観が変わってしまうのは、とても残念な事です。






清水由美 






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釣り人の怪

2013-02-01 17:51:42 | テレビレポーター、キャスターの仕事
心霊スポットを検証するレポーターで一番最初に訪れた場所、

それは和歌山県は南紀白浜の三段壁でした。

実はその前に一度、「三重県賢島でグルメの旅」をテーマに取材する企画で
レポーターとしてデビューはしていたのですが、

おそらく、どんなジャンルのリポートが向いているのかの“お試し期間”だったのでしょう…。
関係者からは、とりあえず合格という評価を貰ったものの、

当時、所属していたプロダクションのマネージャーからは、放映後

「あんたなぁ、控えめなんは美徳やないよ!」

と、言われたものです。(^^;;

その私に、ちょうどピッタリのテーマがある、と直後に舞い込んできたのが
「心霊スポットでのリポート」でした。


三段壁は、海に面した50mはあろうかと思われる崖が2kmも続く風光明媚な場所です。

ここは、残念な事に崖から海に飛び込む自殺者が絶えないとの事で、

その近くで夜釣りを楽しむ釣り人達から「幽霊を見た」という話しが、まことしやかに
噂されているとのことで、

その真相を確かめるために、私はディレクター、カメラマン達と一緒に現地に赴きました。

取材当日は雲一つない快晴でした。

真っ青な空と深い海の狭間に延々と続く黒褐色の崖…、

その崖の下に広がる青緑色の水面から上がる白い波飛沫、

明瞭なコントラストに思わずため息が
出るほどの美しさです。

私は景色の素晴らしさに高揚しながら
カメラの前に立ち

「こんなに美しい場所で自殺する人がいるなんて信じられないですね。」

と上機嫌でレポートを始めたのです。

と、その時

「飛び込んだぞーっ!!」

という大声が背後から聞こえ、辺りの空気が一変しました。




清水由美 

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