天使の図書館ブログ

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動物たちの王国【第二部】-4-

2014-02-26 | 創作ノート
リン・デイヴィーズ(オールポスターズの商品ページよりm(_ _)m)


「お、あんた、もしかして俺の作った料理にケチつけようってのか?いい根性してんな。てめえのことをぶちのめして、骨でダシを取ったらダチのワン公どもに食わしてやっから、喧嘩するってんなら覚悟しとけ」……とでも言ってそうな感じの犬のコックさん(笑)

 それはさておき、第二部4回目にして、すでに書くことが何もn……という状態になってしまったので、今回は本文もあまり長くないし、全然関係のないことについてでも、と思います(^^;)

 なんとも遅ればせながらなネタ☆ではあるんですけど、オリンピックのフィギュアが終わりました

 というか、冬季五輪自体がっていう話ではあるんですけど、ここで書きたいのはとりあえずフィギュアのことだけなのでww

 それにしても、今回もドラマがありましたね

 羽生選手の金メダル(←?)はもちろんのこと、自分的に浅田真央ちゃんの演技が一番心に残りました。当然のことながら、高橋選手、町田選手、鈴木選手、村上選手、それぞれみんな素晴らしかったんですけど、前文であまり長くなるのもなんなので(汗)、ここでは真央ちゃんのことにだけ焦点を当てて書きたいと思いますm(_ _)m

 いえ、まさかのショート第16位から、フリーで第6位まで順位を押し上げて入賞って本当に凄いと思いました。というか、真央ちゃんの演技が終わったあと、これから日本の選手以外が全員転べば……とか、腹黒いことを思ってしまったほど(笑)

 もちろんそんなことはなく、他のどの選手に対してもジャンプに入りそうな姿勢になると、やはり祈るような気持ちで成功してほしいと思うのですが、今回はオリンピック見てて生まれて初めて「メダルなんかどうでもいい」と思ったという、初めての大会だったかもしれません。

 浅田選手のフリーの演技は、「これこそ金メダルだよ!!」というような、本当に綺麗ごとでもなんでもない、心の金メダルを見ている方の多くが彼女の首にかけたという、そんな演技だったと思います

 前日のショートでミスがあったため、翌日のフリーはどうだろう、立て直せるだろうか……と誰もが心配になる中、日本の元某首相が「あの子は大事な時に転ぶ」とか、無神経で頭おかしいことを言うし、架空の世界でM元首相をリンチにしたのはわたしだけでないと思うのですが、色々なプレッシャーもかかる中でのあの完璧な演技……メダルを取れるとか取れないとか、そんなことはもうどうでもいい、見ている方の多くが心の最高得点を彼女に差し出したという、本当にそんな演技だったと思います。

 正直、真央ちゃんの演技が終わったあとでは、誰がメダルを取ったとしてもどうでもいいし、順位なんかもどうでもいいという気持ちになったほどでした。

 もちろん、上位争いについては、ほとんど殺し合いのような熾烈さがあったとは思うんですけど、真央ちゃんはそこから離れてひとり、まったく別の境地に立って、ウユニ塩原のような綺麗な湖面の湖でひとりスケートを滑っている……何かそんな印象でした。

 いえ、何かのスポーツ競技を見ててどんなに感動したとしても、三日もするといつもの日常生活に戻ってるものなんですけど、真央ちゃんのことはエキシビジョンが終わってからもずっと、何か尾を引くように心の中に残ったままだったんですよね。

 女子シングルのトップ争いがあれだけ熾烈なものになったのは、間違いなく浅田真央選手の影響が大きいと、わたしはそう思っています。キム・ヨナ選手や浅田選手と対等に競っていくためには、彼女たちを超えるプログラムを組まなければならないし、そうした対策といったものを監督たちは相当練りに練ったはずだと思うので……そしてレベルアップの底上げのされた結果が今回のオリンピック上位争いの熾烈さに繋がったんじゃないかなあ……と、見ていてそう思いました。

 金メダルを取った羽生選手にしても、「あれ」に勝つためにはもっと凄いプログラムを組んで実践してやる!!とばかり、「四回転、飛べるのが当たり前☆」というくらいの超人がこれからまた現れてきそうであり、羽生選手自身も金を取ったばかりなのに「またすぐ練習したい」とか、なんというストイックさww

 いえ、鈴木選手や高橋選手の演技が終わったあとの清々しいような笑顔を見ていてもつくづく思いました。彼らの根性や勇気、やる気、重いプレッシャーがかかる中で結果を出すということ、ただ単純に「好き」という超えて上を目指すことの大切さ……そうしたことに比べたら、自分は普段なんてくだらないゴミ屑程度のことで悩んだりしているのだろうと思ったほどでした。

 村上選手や町田選手についても書きたいことあるのですが、長くなってしまうのでとりあえずこのへんで(というか、ふたりはまだ次のオリンピックがあると思うし、これからも素晴らしい演技を見せてもらえるとわかってるので^^;)

 本当に、ただの「スケート競技」ということを超えて、人生や哲学、また芸術といったことを深く考えさせられる2分50秒+約4分×∞な時間をありがとう!!という気持ちでいっぱいです。

 それではまた~!!



       動物たちの王国【第二部】-4-

 唯がR医大病院の救急部を辞めることになったのは、今から三か月ほど前の六月のことだった。退職することを決めた間接的な原因は、研修医としての期間を終えた藤井聖也が――病院の駐車場で何者かに襲われ、バタフライナイフで右手の人差し指を切り落とされたことかもしれない。

 不幸中の幸いというべきか、偶然そこに松本浩一が通りかかり、すぐ救急部へ携帯で電話をした。そして救急部の研修医がストレッチャーを走らせてやって来ると、松本は藤井の切り落とされた指をハンカチにくるみ、そのまま救急部付属の手術室へ急行したのである。

 整形外科医の葛城健輔が指の神経を丹念に縫い合わせ、どうにか見た目の形だけは元の形状に戻したものの、以前のようには右手の人差し指を動かせないという後遺症が藤井には残ってしまった。その春、朝比奈教授の外科教室に入ることが正式に決まっていた藤井だったが、彼は精神的なショックが大きかったせいもあり、外科医としての道を諦めざるをえなかったのである。

 救急部以外の科での研修を終え、なおかつ救急に戻ってきた野田克己は、「綾瀬の奴の呪いだろう」といったように方々に吹聴していた。そのことを聞いた人々は医師も看護師もみな、「あれから大分時が経っているのにまさか」と失笑したが、「あいつの呪いはいつもそうなんだよ」と、野田は譲らなかったという。

「あいつに嫌なことをした人間は、大体忘れた頃にひどい目に遭うんだ。言ってみれば毒蛇の致命的な毒があとになってまわってくる感じさ。だから暫くはみんな、自分の身辺に気をつけたほうがいい。綾瀬の奴はとにかく執念深い男で、自分を嫌な目に合わせた奴のことは過去に遡って絶対に見逃さないんだ」

 もちろん唯は、野田のこの話を聞いて、自分にも心当たりがあったから救急部を退職しようと思ったわけではない。だがその前段階として、アパートのポストにまず不幸の手紙が届き、次にネズミの死骸、うさぎの死骸、猫の死骸が部屋のドアの前に置かれていたということがあった。

 唯はこのことを誰にも相談できず悩んでいたが、藤井聖也の事件をきっかけに、思いきって鈴村に話してみるということにしたのだった。日勤の勤務が終わり、看護師たちが休憩室から出、地下のロッカーへ向かった後のことであった。

「そんなことがあったの。わたしもね、気になってはいたのよ。なんかこのごろあんた、元気なさそうっぽく見えたから……羽生さんもうちに来て三年になるでしょ。わたしもそうだったけど、そのくらいになるとね、なんていうか自分の限界みたいなものが見えてきたりするもんなのよ。しかもそういう時に限って仲のいい看護師が異動になったり結婚退職したり……でも、羽生さんのはそういうスランプが原因で元気がなかったわけじゃないのね」

「はい。あの、仕事に対してはわたし、まだまだ全然頑張りたい気持ちがあるんです。もちろん、美穂ちゃんが突然結婚することになって辞めたり、奈々ちゃんも宗治さんのお店を手伝うために退職しちゃったり……そういうのはショックにはショックでした。でも看護師の仕事を続ける限りは、これからも同じようなことがあると思うし、こういうことも乗り越えて頑張らなきゃって思ってたんです。幸い、すぐ近くに満身創痍の鈴村主任っていういい見本もあることだし」

「救急部四年目にして、あんたも結構言うようになってきたわねえ」

 鈴村はけらけらと笑って言い、煙草の灰を灰皿に落とした。結城医師がよく「リンリンさん、下手したらパンツ見えっぞ」と言っていたポーズのままで。

 三枝美穂子は翼が退職したのち――それまではまるで異性と見てこなかった友人と恋人関係になり、結婚することになったのであった。彼女は翼がいればこそ、きつい勤務にも耐えてこられたのだったが、彼なきあとの救急部では別の支えが必要になったのである。また藤森奈々枝も恋人の風見宗治が店を出すのを手伝うという名目ではあったが、実のところ翼が救急部を辞めて以来、仕事がすっかりつまらなくなったという事情があった。

「でもなんていうか……わたし、自分ではあまり自意識過剰なほうじゃないと思うんですけど、最近ちょっと人から見られてるように感じることがあって。そこに不幸の手紙が届いただけじゃなく、ポストにネズミの死骸、その数日後にうさぎ、猫の死骸がドアの前にあるのを見たら、なんだか急に怖くなってきて……」

「そうよね。そりゃ誰だって怖いわよ。その上今回、藤井くんがああいう目に遭ったんだから……それともあなた、綾瀬の坊や以外に誰か心当たりでもある?」

「その、慎ちゃんとはもう一年も前に別れたはずなんですけど、不幸の手紙が届く少し前くらいに、アパートの前で待ってたっていうことがあって。よりを戻せないかみたいに言われたんですけど、断ったんです。だからわたし最初、もしかしてああいうことしてるのは全部、慎ちゃんなのかなと思って……」

 コーヒーの入ったマグを唯が不安そうに握りしめる姿を見て、鈴村はこの時、ある決断をした。

「羽生さん、そろそろうちから巣立っていったらどうかしら」

「えっ!?」

 尊敬する先輩看護師から、突然思ってもみないことを言われ、唯はドキッとするのと同時、次の瞬間には深い失望に近い気持ちを味わった。

「もちろんね、わたしとしてはあなたにずっとここにいてもらいたいわ。三枝さんみたいに、幸せな結婚をして辞めるっていうのでもない限りね。でも、最近の羽生さんを見てて思うんだけど、実は事は思ってる以上に深刻なんじゃないかしら。藤井くんの事件があったせいもあるけど、最近よくテレビなんかでもやってるじゃない。同じアパートの住人が騒音問題で隣の人間を刺したとか、ストーカーの被害を受けた女性が警察に訴えたのに守ってもらえなかったとか……わたし、嫌なのよ。自分がテレビのワイドショーに出ながら、「あんな天使みたいな子が、何故こんな目にっ!」とか言って、顔だけは厚塗りの化粧してる自分の顔なんて、絶対見たくないわ」

「鈴村主任っ!怖いこと言わないでくださいっ!!」

 唯はこれから帰る夜道のことを思うと、本気でぞっと鳥肌が立った。

「今のはもちろん冗談よ。でもここからは真面目な話。正直なところ、救急部なんて三年もいれば新人のナースには十分だってところもあると思うの。羽生さんは真面目だから、自分なんてまだまだですって謙遜して言うだろうけど……あなたは看護師のスキルとして高いものをここで身に着けたと思うし、それは他のどの現場でも十分通用するはずよ。あなたが唯一救急に拘るとすれば、ここが病院中で一番きつい部署で、そこを辞めるっていうことは一番つらいところから逃げだすことだっていう、そういう思いこみがあるせいじゃない?」

「それは……でも、それだけじゃありません。わたし、救急の仕事が好きだし、救急部のみんなが好きだと思ってます。仕事は、もちろんすごくきついし、指令室に電話のベルが鳴り響くたびに、逃げたくなることもありますけど……でもその分、余計なことを考えなくていいっていう部分があるっていうか。一球一球が豪速球なんて、そんなの疲れちゃうってみんな言いますけど、わたしはそういうの、好きなんです。ほら、大島さんが前に言ってたことがあるでしょう?「救急部はそりゃ確かにきついけど、かといって余裕のある病棟には何か別の問題があるもんだ」って。つまり、人間関係で看護師内でぐちゃぐちゃ揉めてたり、そんなんだったら仕事だけきつくて、あとはみんな仲良くやってるっていう救急のほうが自分の性にあってるみたいなこと……わたしもたぶん、そうなんじゃないかっていう気がするんです」

「そうねえ。でもわたし、羽生さんは救急だけじゃないもっと広い世界をいずれは見るようになる子だなって、ずっと思ってたの。特にあなたが例の慎ちゃんと別れたって聞いてからは特にね。けど、その彼がもしストーカーみたいになってるんだとしたら、まずは早目に引っ越すことよ。ネズミ、うさぎ、猫……羽生さん、あなたなんだかのほほんとしてさっき話してたけど、次は自分の番かもしれないとは思わない?それでうちの処置室に運ばれてきたりしたら、堺先生あたりがあなたの裸を見て鼻血だすことになると思うわ」

「主任っ!!」

 唯が真っ赤になって抗議すると、流石に鈴村も「ごめん、ごめん」とあやまった。

「ほんと、わたしって真面目な話のできない駄目上司よね。冗談はさておき、わたしこれ、本当に真剣に言ってるのよ。もし慎ちゃんの話がなかったらわたし、この件は藤井くんの件含め綾瀬の坊やが関係してると思ったかもしれない。だって、猫とかうさぎを殺すなんて、普通の人間にはまず無理よ。けど、医学部を卒業してる綾瀬真治なら、解剖の授業なんかで結構エグいことやってるだろうし、可能性としてなくはない。そして逆に慎ちゃんの仕業であった場合――ある意味こっちも重症よ。あの気弱そうに見えた人がそんな残忍なことするなんて、よっぽどだもの。興味本位で聞くんじゃないけど、あなた、彼とは体の関係はなかったんでしょ?」

「はい。その……主任には前もお話したと思うんですけど、結城先生に怒鳴られて、売り言葉に買い言葉じゃないんですけど、思わず「つきあってる人くらいわたしにもいますっ!」て言っちゃったのが、慎ちゃんとつきあうきっかけだったっていうか……」

 この話を聞かされた時、鈴村はつくづく(おそるべし、結城翼)と思ったものだった。結城医師には思ったことをすぐ口に出して言ってしまうという悪癖があるが、それが切羽詰った救急処置室ではさらに磨きがかかることになる。だがそういう種類の彼の指摘で、言っていることに間違いがあったことは、実はほとんどないのである。

「たぶんね、わたしが思うにはあれなのよ。あれってどれって話だけど、綾瀬の奴にしても<今目の前の自分の人生>っていう奴が、たぶんうまくいってないんだと思うの。そうなると人間ってね、まず過去に記憶が戻るのよ。で、あの時ああだったらこうだったらだの思いだして、親だの妻だのに当たるようになるんじゃない?綾瀬の場合はまあ、わたしが見ていて思うに、たぶん親御さんには当たれない感じに見えたわね。でもその鬱屈したエネルギーが周囲に向かうっていうふうに見えた。けど慎ちゃんの場合は――性的なエネルギーみたいなものが、ちょっとねじくれちゃったんじゃないかしら。ああいう一見大人しそうに見える人ほど、一度そういうこじれたものを持つと厄介なんじゃないかっていうか。今日はわたしがあなたのことを送ってくけど……でもね、まさか毎日ってわけにいかないから、とにかくまずは今のアパートから引っ越すことよ」

「…………………」

 この日唯は、鈴村の車に乗せてもらって自宅アパートまで帰ったものの――その数日後にやはり、今度は真っ白い十姉妹の死骸がポストに入っているのを見つけ、真剣に新しい住居探しをはじめた。そして鈴村ともまた仕事や人生のことなど、色々と話しているうちに、救急部を辞め、また一から別の診療科目の病院で働くことにしてみようと決意したのである。

 唯はこうしてR医大病院を退職したあと、一度自分の実家へ戻るということにした。ところが、実家へ戻って一番驚いたのが、最近店に対する嫌がらせが続いているということであった。

「看板に卑猥な落書きをされるわ、架空の注文には悩まされるわ、もう散々よ。あたしもお父さんもパソコンなんていうハイカラなもんは使い方がわからないんだけどね、お義姉さんの話じゃあ、うちの店のラーメンにゴキブリが入ってただのなんだの、ネット上でまことしやかに流れてるんだって」

 唯が実家に帰ったのはお昼時であり、いつもなら客が満席とまではいかなくても、それなりに人が入っている時間帯である。にも関わらず閑古鳥が鳴いているあたり……唯は自分に心当たりがあるだけに、心臓が締めつけられるように苦しくなった。

 何故といって、実家のラーメン店でそうしたことが起こりはじめたのは、唯が元のアパートを引き払って以降のことだったからである。湊慎之介は彼女がいなくなるのと同時、おそらくは実家へ戻ったと思ったに違いなかった。

 実家にいることにいたたまれないものを感じた唯は、両親に病院を辞めた経緯や短い期間ではあるが、つきあっていた男性がおり、こうした一連の嫌がらせは彼が行っているのかもしれないと泣く泣く打ち明けることになったのである。
 
「ふうん。で、おまえはこれからどうするんだ?」

 唯の父親は、昔かたぎの職人気質で、気の短い人間だった。ゆえに、こんな話をすれば即座に怒鳴られるとばかり思ったものの、意外にも彼は平静であった。

「理由もなく店のシャッターにエロいこと書かれりゃあ、そりゃ気味が悪いし、どこの悪ガキがこんなことしてんだとも思うがな、相手の素性や理由なんかがわかれば、警察にも相談できるし、まあなんとかなんだろう。そんなことより唯、そんなくだらないことに怯えて仕事も手につかないとかいうんじゃ、俺はそっちのほうが心配だぞ」

 母親のほうも父と大体同意見であり、唯はその後実家で一週間ほど過ごしたのち、従姉妹の江口悦子のいる、K市へ向かうことにした。実をいうと江口悦子は、唯の父方の姉の娘なのである。

 流石に相手の男も、K市までは追っていくまい――唯の父と母はそのように言って頷きあっていたが、娘が同じ都内ではなく、少し離れた場所へ行ってしまうことには、一抹の寂しさを覚えてもいたのだった。

「こんなことでもなかったら、うちから通える圏内の病院に勤めて欲しかったけどね」

 少し会わない間に髪の毛が薄くなり、皺も増えた母と駅で別れる時、唯は何よりもそのことに胸が痛んだ。気が短く、高圧的な態度の父と、唯の母は三十年近く夫婦をやっているのだったが、店の切り盛りなどで苦労が多く、何かがきっかけで病いに倒れた場合(たとえば認知症など)、自分はろくに親孝行も出来なかったと後悔するのではないかと、唯はそのことがいつも心にかかっていた。



 >>続く。





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