カル×シェラなSSなんですけど、今回のお話はシェラの寝顔を見ながらカルがちょっと回想するっていうよーな短い内容なので、エロ☆がまったくなくてつまんないかと思います(^^;)
うん、わたし的に母様のことをちょっと書いておきたかったっていうそれだけなので
何日か前にも、司書の部屋で同じこと書いたんですけど……カルの母様ってたぶん、あの時カルのことを殺して自分も死ぬつもりだったんだろうなあって思うんですよね
最初に読んだ時には、「ええっ!?こんな可愛い子を殺そうとするなんて、わたしだったら絶対できないっ!!」ていう、その一念だったんですけど、今回読み返していて、ああいう部族社会で族長の娘が私生児を生むって、すごく大変なことだったろうなあって思いました。
それに10巻のあの画面を見る限り、カルって少なくとも3人の子を殺していて……その子たちの親のことを思えば、自分だけが子供のいる幸福を享受することは出来ない、母様にとってあの選択はそういうことだったのかなあって、そんなふうにも思うんですよね(泣)
最初に読んだのは十代の頃だったので、あれからこれだけ月日が流れると(苦笑)、作品に対する見方や考え方にも変化が起きるものなんだなあ……なんて、ちょっとだけ思ったり(^^;)
なんにしても今回の「終わらない冬の終わり」は、そーいえば昔、「終わらない夏の終わり」っていうタイトルの漫画がなかったっけ??と思い、軽くググってみたんですけど……最初にヒット☆したのはハルヒのエピソードでした(笑)
でもわたし、ここからタイトルとったわけじゃなくて、なんかこれと似たタイトルの漫画があったはずなんですよね
まあ、そんなことどーでもいいか☆な感じで話を進めると、
――「愛している」という言葉は、私にとってはまるで、遠い異国の世界の言葉のようだった。
<愛>ということは何か、噂に聞いたことはあっても、実感したことはない。
仮にその意味はわかったとしても、母国語以外の言葉で「愛している」と言われた場合、多くの人がどこかに違和感を覚えることだろう。
それと同じように、私には<愛>ということがよくわからなかった。
いや、かつてそのことを知っていたことはある。
けれど、私はそれを自分のこの手で破壊してしまった……以来、私の心は飲めば飲むほど喉が渇く水を飲んだ、昔話に出てくる呪われた男のようになってしまった。
私の心はもう二度と、誰かを愛することもなければ、誰かから愛されたいと欲することもないだろう。
何故なら、この心の氷が解けることは決してないからだ。
そして私の心の冬が終わるということは――私がこの呪われた<生>というものを生き続ける限り、未来永劫ありはしないのだ。
……といったよーな文章をどこかに入れようと思ってたはずなんですけど、うまく入りませんでした
なんにしても、原作を忠実に考えた場合、カルの心の冬を終わらせたor終わらせることが出来るのはD・Sってことなんでしょうね(^^;)
そんなわけ(どんなわけ??)で、今回のSSにはちら☆っとだけD・Sも出てきます(笑)
コミックス8巻に、カルの超貴重!!!な私服姿が収められてるんですけど、その横に書かれてる原作者様のコメントに>>「いーけど、こーゆーカッコするとサイファみてー」というお言葉があります。。。
成田美名子先生のサイファ、なんか懐かしいなあ♪(^^)
確か「サイファ」の中でシヴァが「誰かを愛したい、そして愛されたい」――っていうようなシーンがあったような気がするんですよね。
あと、「サイファ」の中でわたしが特に印象に残ってる科白は、アニスの「誰も傷つけることがないくらいに、強くなりたい」っていう言葉だったでしょうか。
んー、まあわたしが「サイファ」を友達から借りて読んだのって、バスタ読む少し前くらいなので……言い回しとか間違ってたらごめんなさい
なんにしても、カルが最終的に求めてるのって(本人がそうと気づいてなくても☆)、そういうことなんじゃないかなっていう気がしたり(^^;)
んでもって、コミックス12巻の見開きってゆーのかな。そこでもカルの珍しい私服姿を拝見できるんですけど……カルの視線の先にいるのって、もしかして親子連れじゃないですか!?
しかも、カルの表情がなんか、その親子連れを羨ましそうに見てるようにも見えるというか。。。
(もちろん、海の波を眺めて「綺麗だ……」と思っていたり、潮風が気持ちいいと思ってるだけっていう可能性もありますけど^^;)
「いいなあ……」なんて思ってたりするのかなあ、もしかしてカルww
ではでは、以下の↓の短いお話は、↑といったよーなことを考えてるうちに、ただなんとなく書いてみたっていう程度のことなので、まるで何も期待せずお読みいただけると嬉しいです(^^;)
それではまた~!!
P.S.暫く更新しない(or出来ない☆)かもしれないんですけど、3/19(わたしの手に入るのは22・泣)にはアレ(笑)が来ますからね~。27巻を読んだ感想は絶対(×∞)死んでも(←どうやって☆)書きますよ!!!♪(^^)
終わらない冬の終わり
――ダメだわ。許して、私のカル=ス……。
――母さま……。
一体何を許せばいいのですか。私を愛せないことをですか?
それとも、私を殺そうとしたことを……?
夢の中でカル=スは、寒くて暗い地下の教会にいた。
寒い、といっても生まれ持った魔力によって、カルは寒さというものに対し、異常なまでに耐性があった。だから、他の<普通の>人間であれば、凍え死んでもおかしくないような場所へ放置されていても――石の上を寝床としていてさえ、彼はそこを「冷たい」と感じることはなかった。
……母様。
明日は、来てくださいますか?
おとなしくしていますから、僕のこと、忘れないで……。
ああ、駄目だ。それ以上は――微かに目覚めている意識の中で、カルは夢の映像をそこで止めようとした。だがやはり、今まで何度となく見てきたとおりの血の惨劇が繰り返される。
(――母様っッ………!!!!)
脳の中味や腸(はらわた)のすべてを撒き散らし、カルの美しい母親は無残な最期を遂げていた。水の中でギョロリと、自分に対し恨みのこもった眼差しを向け、絶命している母親の姿……カルは目の前の信じられぬ<現実>に対処する術もなく、その場から一目散に駆け、震えながら逃げだした。
母親が入ってきた地下牢に通じる扉の鍵は開いていた。それから一体どこをどうやって彷徨い歩いたのか、カルには今もその時の記憶が定かでない。
歩いて、歩いて、逃げて逃げて、地平の彼方を目指すようにどこまでも彷徨って――そして、ある廃墟と化した街の瓦礫の山の中で、カルはダーク・シュナイダーと出会ったのだ。
(ダーク・シュナイダー………)
カルはハッとし、そこで目を覚ました。
あたりにあるのは夜の静寂と、それから美しく満ちた月の、妖しく輝く光だけだった。
それから、すうすうという、まるで何か小動物のような、可愛らしい寝息が聴こえ――カルはその時になって初めて、ホッと胸を撫でおろしていた。
額をぬぐうと、寝間着の袖に冷たい汗が付着する……一体何をそんなにも怖れているのか、カルは自分でも自分が滑稽だった。
忌まわしい記憶を凍りつかせ、それを永久に<なかったこと>にしようとしても、その記憶は当時のありのまま、忘れようとすればするほど、強い罪悪感と罪の力によってカルのことを締め上げ、極みまで苦しめようと追い迫ってくる。
(母様……貴女ではなく、あの時私が死んでいたら良かったのに………)
一体何度繰り返しそう思ったことだろう。
自分の手を引く母親の、白くて繊細で柔らかい手の感触を、カルは今もよく覚えている。そして彼女の温かい胸に何度となく抱かれ、安らぎに満ちて眠ったことが、幾夜あったかということも……。
(けれどあの日、私は自分のこの手で、そのすべてを破壊したのだ……)
以来、カルはもう二度と同じものには手を伸ばすまいと心に決めた。
というより、母親のような母性、あるいはそれに似た柔らかさや繊細さ、華奢で壊れやすいものを持った女性といったものが、カルは苦手になった。
そばに近寄ってこられると、何か不吉な影でも差したように、忌避したくなる……もちろん今は幼い昔と違って、カルは自分の魔力をどう制御(コントロール)したらいいのか、その術について十分心得てはいる。
それでも、条件反射的に母親の姿が女性の内の誰かと重なることがあって――カルはそのたびに、彼女たちから逃げるということにしていた。
「カル、オメーはいい年して、女にまるで興味ねーのか!?オレの舎弟として情けねーったらねーな。まさかオマエ、フォモとかそーゆー……」
「違う!」と、カルは即座に否定した。それはある国を征服し、その国王の愛妾たちをひとり残らず、D・Sのハーレムへ捕え移した時のことだった。
そんなことが何度も繰り返されるたびに、D・Sは必ず、そうした権力者の妻、娘、あるいは愛人などを、カルの手に託すということが多かった。
もちろんカル自身にも、D・Sが何故わざとそんなことをしようというのか、彼の魂胆についてはよく理解していた……つまり、自分が何かの弾みによってでも、本来はD・Sのものであるはずの女たちに手をつけはしないかと、面白がって見ているのだ。
そしてそうした女たちの中には、D・Sの炎のような気性を怖れ、奴隷という身分でも構わないから、むしろカルにこそ誠心誠意仕えたいという娘が少なからずいた。
だがカルには、そうした女性たちの申し出は単に重荷でしかなかった。ゆえに、はっきりとそうD・Sに伝えたところ――先ほどの言葉が返ってきたというわけだ。
「ダーク・シュナイダー、私はオマエとは違う。オマエが何人の女を捕え、その女性たちを自由に扱おうと、私は一切関知しない。だが、私にそのことで奇妙な迷惑までかけるのだけはやめて欲しい」
「奇妙な迷惑、か」
D・Sはそこで、さも面白い言葉を聞いたとでもいうように、ゲラゲラと上半身を反り返らせて笑っている。
「ま、いいだろう。このことについちゃオレは、もう二度とカル、オマエにあれこれ言わねーぜ。かっわいそーに、あの娘は今晩、オレの腕の中でオマエのことでも考えながら抱かれるってことになるわけだ」
あくまでも面白がる態度を崩さないD・Sに対し、この時カルは珍しく、強い反発心のようなものを覚えた。
「ダーク・シュナイダー……私もオマエに対して、こうしたことについてあれこれ言おうとは思わない。ただ、こんなことを繰り返すことで――本当にオマエの心の<闇>は埋まるのか?私には、オマエの魂の飢えや渇きといったものが、こんなことで埋まるようには思えない。食欲と同じようなもので、その時は満たされたように感じても、あくまでそれは一時的なものだ。もしかしたらオマエは……」
と、そこまで言いかけて、ハッとしたようにカルは口を噤んだ。
D・Sには、先ほどまであった不謹慎に何かを面白がるような態度はまるで見られず、どこか怖いまでに真剣な表情がそこには浮かんでいたからだ。
「ま、お互い、この件にはもう、なるべく触れないようにしよーぜ」
鬱陶しくて面倒な説教を聞かされ、すっかり興醒めしたとでもいうように、D・Sは前髪をかき上げて、カルの前を去っていった。
数日前に落城させた城の狭間胸壁から、D・Sは夕陽の光を全身に浴びるような形で階段を下りていく……その姿を、赤と金の眩しい光の中へ見送りつつ、カルは(私もまた、随分出すぎたことを言ってしまったな)と、少しだけ反省した。
何故といって、D・Sは知っていたからだ。本当はカル自身に母親のことで強烈なトラウマがあり、それが女性を遠ざけようとする彼の心理に繋がっているということを……そして、そうしたトラウマといったものは、同じ女性によってしか埋まらないだろうことを、おそらくD・Sは直感として知っていたに違いない。
(ダーク・シュナイダー……そういえばオマエは時々、妙なところでお節介になることがあったな)
カルは遠い昔の記憶のことを思いだし、思わずくすりと笑った。
自分の身の内にたぎる、手に負えないほどの強い魔力を抑え、制御する術を教えてくれたのも、ダーク・シュナイダーという男だった。だが彼は、あからさまに恩着せがましいようなやり方によって、そのことをカルに教えたのではない。
カルは今も時々思うことがある……もしあの時、運命の悪戯、あるいは偶然のようなものによってD・Sが自分のことを拾ってくれなかったとしたら、自分は今ごろどうしていただろう、と。
(そしてあの時にオマエが、はっきりした言葉によってではなく私に伝えようとしたことも――やはりある意味で、正しかったのだろう)
カルは自分の隣に眠る、シェラの可愛い寝顔を見下ろしながら、自然と頬に微かな笑みが浮かぶのを感じた。彼女の黒く長い髪の毛を一房とり、まるで何かの香りを楽しむように、そこへ口接ける。
「ん……」と、微かにシェラが身じろぎしたのを見て、カルはもう一度柔らかいベッドの中へ身を沈みこませた。カル自身はすでに服を着ていたが、シェラのほうは裸のままだった。
カルは彼女が起きないよう気を配りながら、シェラの細い腰に手をまわし、そして肩のあたりに唇を押しあて――彼女の柔らかくて繊細な、肉の感触を確かめるように抱きよせた。
何度繰り返しこうしても、シェラは壊れることはない……そう思うとカルは嬉しかった。もちろん、そんなことをD・Sに言ったとすれば、「馬鹿じゃねーのか、オメーは!!」と笑われることも、カルにはよくわかっている。
それでも、ただ体を重ねあわせるという、単純な行為そのものが、カルにとっては普通の男以上に喜びだったといっていい。
幼い頃に感じた、母親の甘い体の匂いと柔らかい感触……もう二度と自分には戻ってこないと信じていたぬくもりが、別の強い快楽を伴う形で、違う幸福として帰ってきたのだから。
「カル様はきっと……自分をいじめるのがお好きなんですね」
いつだったか、シェラが深々と溜息を着いて、そう言っていたことがある。
カルが四つの王国の頂点に君臨する<王>にしては、あまりに慎ましく質素な生活を送っているので――もう少し「王らしく」贅沢をしてはどうかとシェラが提案した時のことだった。
そしてそのことに対し、カルは旧約聖書にある<伝道者の書>の一説をもって答えたのである。
「『空(くう)の空(くう)。伝道者は言う。
空(くう)の空(くう)。すべては空(くう)。
日の下で、どんなに労苦しても、
それが人にどんな益になろう。
一つの時代は去り、次の時代が来る。
しかし地はいつまでも変わらない。
日は昇り、日は沈み、
またもとの上る所に帰って行く……。
私は、天の下で行われる一切のことについて、
知恵を用いて一心に尋ね、探り出そうとした。
これは、人の子らが労苦するようにと神が与えたつらい仕事だ。
私は、日の下で行われたすべてのわざを見たが、
なんと、すべてが虚しいことよ。
風を追うようなものだ。
私は、一心に知恵と知識を、狂気と愚かさを知ろうとした。
だが、それもまた風を追うようなものであることを知った……』」
カルが、旧約聖書にある<伝道者の書>の一説を暗誦すると、シェラは窓敷居に立てかけておいた竪琴を手にし、彼の後を継ぐように音楽を奏ではじめる。
「『私は心の中で言った。
「さあ、快楽を味わってみるがよい。楽しんでみるがよい」
しかし、これもまた、なんと虚しいことか。
笑いか。馬鹿らしいことだ。
快楽か。一体それが何になろう。
私は見た……。
光が闇にまさっているように、知恵は愚かさにまさっていることを。
私は心の中で言った。
「私も愚かな者と同じ結末に行き着くのなら、
それでは私の知恵は私になんの益になろうか」
私は心の中で語った。
「これもまた、虚しい」と。
事実、知恵ある者も愚かな者も、いつまでも記憶されることはない。
日がたつと、一切は忘れられてしまう。
知恵ある者も愚かな者とともに死んでいなくなる。
私は生きていることを憎んだ。
日の下で行われるわざは、私にとっては災いだ。
すべては虚しく、風を追うようなものだから……』」
竪琴の音に合わせ、朗誦するのを終えると同時、シェラは自分の主君がどこか聞き惚れたような眼差しで、自分のほうをじっと見ていることに気づく。
こうした熱っぽい視線をカルから向けられるたび、シェラは顔が赤くなるのを感じた。彼女の主君が、滅多なことでは心を動かさない、また感情が大きく動いていたとしても、滅多に表情にそれを表すことがないのを知っているだけに――たったそれだけのことで、胸が締めつけられたように苦しくなってしまう。
「カル様は……この旧約聖書に出てくる<伝道者>のようにお考えになっておられるということですか?何をしていても結局、すべては虚しい、元の道に還るだけのことなのだと……でもわたしは、そんなカル様のことを見ていると、時々たまらなくなるんです。ほんの束の間でもいいから、もっと生きる喜びや強い快楽のようなものに身をお任せしても、罰は当たらないんじゃないかって、そんな気がして……」
「確かに、そうなのかもしれない。だが私はずっと、生き続けることに罪悪感を覚えていたから――結局、怖いのだろうな。そんなことをしていても、不意に足許をすくわれるのではないかという感じのすることが……」
カルはシェラに、自分の母親のことをすでに話してあった。
自分の母親のことを殺してまでも、生き延びようとした男のことを愛せるかと、そのことを先に話しておかなければフェアではないような気がして……最初、あまりにもシェラが泣きじゃくる様子を見て、カルは話したことを後悔したが、彼女の温かい涙が胸に落ちてくるたび――カルは何故か、自分の心の奥深くにその涙が到達し、何かが癒されていくのを不思議と感じていた。
「自分の欲望を節制し、都合の悪い感情については凍りつかせ……そうやって私は結局、逃げていただけなのかもしれない。本当は、<真理>とか<真実>といったものは、実に単純なものだ。私は誰にも触れないかわりに、誰からも触れられたくなかった。そして、誰も愛さないかわりに、誰からも愛されようとは望まなかった……でも時々、不意にこんな疑問が脳裏を掠める。そんなふうに生きていて、オマエの「生」とは一体なんなのか、何か意味があるのかと。そこで、理想郷などということをおそらくは考えついたのだろうな。シェラ、おまえも知っているとおり……理想郷といったものは、本人がそうと気づきさえすれば、すぐ手の届くところにあるものなのに……」
そう言ってカルは、広い窓敷居に腰かけているシェラに、自分の腕を伸ばした。
「シェラ、私は聖書にある伝道者のような人物ではないよ。私は今は、自分がここにこうして生きていることを、虚しいなどとは少しも思わない。何故なら、欲しいものならすでに、手に入ったのだから……」
――その時、不意に強い風が吹いて、窓が自然と左右に開いた。時は春のことで、窓ガラスを突き破らんばかりに枝を張り伸ばしていたサクラの花が、風と一緒に舞いこんでくる。
シェラはこの時、いつも以上に顔を赤くした。何故といって、この時自分の一番近くにあった<自然>が、今の自分の感情に強く呼応したことによって、サクラの花びらが風とともに舞いこんできたのだから……。
そして、そうしたすべてを見通すかのようにこちらを見るカルの視線が、シェラは痛かった。冷たい氷にずっと手のひらをつけていると、やがて感覚が麻痺して、<冷たい>というよりはある意味<熱い>と感じることがあるように、シェラは自分の体の芯が痺れたように熱くなるのを感じた。
「私はもしかしたらもう、理想郷なんてどうでもいいのかもしれない。シェラ、おまえさえ私のそばにいてくれたら――他にはもう、何もいらないんだ………」
カルは去年の春、寝所の窓敷居であったことを思いだし、今年もそろそろサクラの花咲く季節であることを思った。
<人間のどんな感情も結局、愛されていると感じられるかどうかに起因している>と、その昔何かの本で読んだ記憶がカルにはあったが――確かにそうなのかもしれないと、カルはふと思う。
いや、正確にはそれは少し違っただろうか。今のカルの気持ちとしては、こんな自分でも誰かを心から愛することが出来た、それだけでもう、他には何もいらないくらいに、幸せというものを強く感じることが出来る。
そして同じような想いを持って、シェラが自分のことを愛してくれるということは、カルにとって一種の<奇跡>といっていい出来事だった。自分には絶対一生手に入るはずがない、また手にしてはいけない、手にする資格がないと、ずっと思い続けていたもの……実際、シェラはカルが罪に汚れた手で触れても、穢れることは一切なかった。むしろ、彼女のほうが光とか愛といったことについて、深く理解していたから――どんな罪の穢れも、その純粋さを損なうことまでは出来ないのだということを、カルは知った。
(本当に、優しくて柔らかくて、綺麗な体だ……)
そう思いながらカルは、微かに寝息を立てているシェラの首筋の匂いをかいだ。
昔、これとまったく同じ甘い匂いをかいだ記憶が、カルにはある。だが、今はそのことを思いだしても、心の傷が疼きだして痛むということはない。
カルはシェラという<存在>そのものに口接けるように彼女の体にキスすると、軽く服を着替えてから、城の中庭にある温室へ向かった。そしてそこで<クリムゾン・グローリー>という名の、芳香のとてもよい薔薇の花をいくつか手折った。
カルが何故そんなことをしたのかと言えば、愛する娘のことをその快い芳香の中で目覚めさせるためだったのだが――温室を出、渡り廊下へ戻ろうとした時、カルは不意に群青に輝く空に明けの明星が光っていることに気づいた。それから、サクラの花に蕾が膨らんでいるのを見、明けない夜はないこと、そして終わらない冬はないということを……魂のどこか、とても深い部分で感じたのだった。
終わり
若いころよくカルシェラの妄想してましたが(爆)いつしか原作から心が離れてしまっていました・・
でも最近、新妻聖子さんという超×10美声の女性歌手の歌声を聴いて感動して以来、
「シェラが歌ったらこういう常識離れした歌声なんだろーか」
とか考えるようになって、ひっさし振りにバスタードコミックレンタルしちゃいました。いやー魔戦将軍アツイですね~
そうそう12巻の見開きも見てみました!
なるほどですね~!カルの目線の先には確かに親子連れがいますね!なんかそういうディテールにこめられたメッセージ(?)みたいなもんが垣間見えると読者としてはニヤリ☆って感じですよね♪
で、ディテールといえば、シェラ・イン・ガーデン(原作者の複製原画)をよく見てみたら窓ガラスに映った人影がどー見ても「彼」なんですよねorz
これは何を意味するのか・・やっぱそーなのか・・?
モヤモヤがとまりませんTT
なんにしても27巻発売までもうすぐですね!
感想楽しみにしております。
それでは、また。
カルシェラお好きな方に聴いていただきたい曲があるのですが・・ART-SCHOOLというバンドの「天使が見た夢」という曲。
カルそのもののような歌詞でした。カルシェラ好きな方の二人のイメージって、こうなのかな?って思ったり・・。
そうですね~、わたしも一度原作から心が離れて、一体何年時が流れてるのかと思います
新妻聖子さん、知らなかったので(すみません)ようつべ☆で調べてみました。
とても素敵な歌声ですね♪(^^)
わたし、シェラはたぶん声量的にはオペラ歌手ばりなんじゃないかな~なんて、勝手に想像してます(笑)
あ、実はわたしそれ、全然気づかなかったので、原作者様のサイトで確認してきました……た、確かにあの影は間違いなくそれっぽいww
あの複製原画、隣にカルがいるとかだったら、あの値段でも買ってるかもしれないんですけどね~、そーか、奴も(?)実はシェラのことを狙ってるのか(笑)
27巻、今度こそ夢じゃない!!っていう感じですよね(^^;)いえ、あちこちのサイト様へ行くたびに発売予定日が違ってるのでほんと、ネタ☆として逆に受けてしまったほどですww
北海道は三日遅れ入荷なので、感想遅れちゃうと思うんですけど、わたしも他の方の感想を読んだりするのを楽しみにしてます♪(^^)
それではまた~!!
ART-SCHOOLの天使の見た夢、ようつべ☆で検索してみたんですけど見つからなかったので(泣)、歌詞だけ検索してみました。
……なんだか切ないですね
ART-SCHOOLの曲、他のを聴いてみたら、かなりわたし好みでした♪(^^)
カルって普段滅多に笑わないみたいだから……シェラには時々、微笑みかけてればいいと思う。。。
わたしにとってのカルシェラ曲は、そのうち記事にしてみようかなって思います(笑)
なかちーさん、コメント本当にありがとうございました♪