今回で最終回です♪(^^)
え~と、今回の言い訳事項はまず、これですかね
カルの母さまって名前が出てこないので……とりあえず仮にシェリルさんとさせていただきましたm(_ _)m
う゛~ん。わたし、鋼鉄系についてはさっぱり詳しくないので、名前の由来は一応、シェリル・クロウにでもしておきますか?的なww(あと、自分的にシェリ=スっていうのも考えてて……まあ、どっちでもいっか^^;)
あと、お話の中に北欧神話がちょっと出てくるんですけど、「意味よくわかんね☆」みたいな感じだったら申し訳ないです
実をいうとこのお話は、書きはじめた時、もちょっと長くなる予定だったんですよね。
というか、シェラがカルの念積体というか、この場合はたぶん霊体なんでしょーか(^^;)、子カルと夜毎会って話を聞かせるその話の内容を北欧神話にしようと思っていて。。。
北欧神話はすごく面白いので、めっちゃオススメなんですけど、そーゆー形で一応意味とおるようにする予定だったのを、全部省くことになってしまったので……バルドルの話についてはそのうち、機会があったら記事にでもするかもしれません
あと、こーゆーまえがき☆的文章に先にこう書くのもなんなんですけど(汗)、今回のカルとシェラの心理は次のよーなもんなんだとでも思ってくださいというかww
カル=「シェラが臣下として以上に色々良くしてくれる」→「嬉しい」→「もしかしたらってことかも」→「キスしてみた」→「逃げられた(笑)」→「気のせいだったらしい」
シェラ=「キスされちゃった(//_//)」→「嬉しい」→「初めて恋に目覚める」→「でももしただの気まぐれだったら?」→「第一自分は男だと思われてるはず……」→「苦しい」
まあ、なんてゆーか、そんな感じ??(どんな感じだか^^;)
あと最近、シェラのキャラ背景として、ドルイド関係というのか、ケルト神話系のことを少しずつ調べはじめていたり。
というのも、昔からこのあたりのことってすごく好きで、中学生くらいの頃から妖精関係の本とかは色々調べてたので……なんていうか、その時の続き、みたいな感じで♪(^^)
それと同時期、北欧神話に興味を持ってたのはもしかしたら、せいんとせーや☆の影響があるかもしれませんww
アニメオリジナルのアスガルド篇に、ミーメ君(笑)という神闘士がいて、彼の必殺技が竪琴を使った「ストリンガー・レクイエム」っていうものなんですよね(^^;)
あと、同じ竪琴使いにオルフェがいた気がするんですけど……せいんとせーや☆は中・高生の頃に嵌まって以来、すっかりご無沙汰なので、ちょっとこのへん記憶が曖昧です(そして当時、わたしはこの漫画のために、同人誌・ア○メイトのグッズ含め、一体いくら金をぶっこんだのかと思います・笑)
え~と、何を言いたいかっていうと、シェラの戦闘シーンって、とりあえず魔爪(まそう)によるものしか今のところ披露されてないので、シェラが本気で戦ったらどうなるんだろうってちょっと思ったというか(^^;)
なんにしても、そのへん含め、25巻の続きに話が繋がるまで、原作者様にはとにかくバスタを描き続けていて欲しいと願ってやみません(祈☆)
ではでは、これが前にどっかで言ってた真面目なほうのSSなので、次は少し間置いてからエロいのでも書こうかな~と思ったりしてます♪(^^)
それではまた~!!
絶対零度についてお勉強(笑)でも、この基準でいくと、カルってカミュより強かったりしてwwまあ、呪文唱えてる時間がないっていうのがアレ☆ですけど(^^;)
Cool&Passion-4-
ホロン、ホロン……と竪琴を爪弾きながらシェラは、自分の主君の寝所から、満月の月を見上げていた。
(あの方はもしかしたら、こんな不気味なほどに月の美しい晩には、あの夜にあった悲劇を思い出したりされるのではないだろうか?)
そう思うと、シェラの胸の奥でズキリと何かが痛む。まるで本当に、心臓に欠陥か損傷でもあるかのように――にわかに鼓動が速くなり、血がそこから滲み出すような痛みだ。
ドルイドの秘術に、今は亡き人となった霊を呼びだすことの出来る技があるが、それを使ってみるべきか否かと、シェラはずっと逡巡していた。
もちろん、その技を使うつもりであるのなら、当然その前に主君カル=スの同意が必要ではあるだろう……けれど、もしただそっと、夢の中でカル=スが母親と出会い、「愛している、赦している」ということを伝えられたらと、シェラが願っているのはただそのことだけだった。
(彼女は……カル様の母君は、剣を振り下ろそうとしたあの瞬間、血の涙を流していた。そして、それを見ていたわたしにはわかった。彼女がおそらくは、我が子を殺して自分も死ぬつもりであったに違いないということが……)
シェラ自身には出産経験も、子育てをした経験もないから(部族の幼い子供たちを養育した経験はあっても)、<母親の気持ち>というのがいかに深いものかについては、理解できない部分があるとは思う。
けれど、カル=スの母親はおそらくは、本望だったに違いない。共に死ぬつもりであった子が、生き延びてくれたというそれだけでも……今はきっと天国のような場所で、彼女は我が子の幸福だけを願っているのではないだろうか?
(それとも、こんなことはただのわたしの感傷で、お節介にすぎないことだろうか?)
シェラは、カル=スの母親の霊を呼びだすための媒体――昼間、中庭から取ってきたヤドリギの枝を手にし、心の迷いを振り切ることにした。
この技を行使する術者の利点は、呼びだした霊がこちらの言うことを聞かなかった場合、ただヤドリギの枝を折りさえすれば、その霊は元いた世界へ強制的に送還されるという点だっただろうか。
つまり、万が一にもそんなことはないとシェラは確信しているものの、それでももし……カル=スの母親が息子に殺されたことを怨みに思い、悪霊のような存在として現れたとしたら、その時にはヤドリギを折りさえすればいいのだ。
それで危険は去る、ということを念頭に置き、シェラはその<降霊術>を行うための呪文を唱え、そして最後に術の完成を示す印をヤドリギの上で切った。
暫くの間、あたりは夜の静寂に包まれたまま、何事も起きなかった――が、突然寝所の窓のひとつが勢いよく開き、魔法陣中央のヤドリギに吸いこまれるようにして、やがて姿形を取りはじめる。
『わたしを呼びだしたのは、あなたですか?』
まるで、妖精のように美しい美貌を持つ、カル=スの母親が、シェラに澄んだ声でそう話しかけた。
「ええ、わたしです。もうすでにわかっておいででしょうけど、そこにあなたの息子がいます。ご存知かどうかはわかりませんが、その……カル様は貴女とのことで、心に――いえ、魂そのものに深い傷を負いました。ですから、貴女の本当の気持ちを、今この場所であの方にお伝えして欲しいのです」
若い頃の美貌を保ったままのカルの母親は、「わかりました」と短く答え、それからつと、シェラのほうを品定めでもするように真っ直ぐに見た。
『あなたはわたしの息子のことを……わたしのカルを、愛しているのですか?』
シェラは瞬時に、顔が赤くなった。呼びだした<霊>と対峙する時、必要のない無駄話をするのは、非常に危険なことである。<霊>というものは、元いた世界からこちらの物質界へ呼び戻されると――何か形あるものに「依り憑きたい」という思いを、本能的に強く持つものらしい。
そこで、自分を呼びだした術者をまずは惑わし、術者に憑依することによって、本能的な欲求をまずは満たそうとするものなのだ。
「……確かにわたしは、愛しています。貴女の御子息であるカル様のことを、ただの主君として以上に……」
『そうですか。それを聞いて、安心しました』
――この時シェラには、カル=スの母親であるシェリルが何故、どこか幸福そうに微笑んだのかがよくわかった。
もしシェリルを呼び出したのが、自分の息子の敵対者であり、カル=スの弱点を掴んで苦しめるためにこそ、彼女をカルの元へ遣わしたのだとしても……術者自身がもし抗えぬ強い魔力を持っていたとすれば、シェリルは泣く泣くその招命に答えぬわけにはいかなかったろうからだ。
だからシェリルは、そうではなく、善的な良い目的のためにこそ自分は呼びだされたのだと知り、幸福そうに微笑んだのだった。
シェラが術に集中する間(というのも、霊界と繋がる門(ゲート)が開いたままなので、他に余計な霊がやって来ぬよう、強い精神集中が必要だった)、シェリルは息子カル=スの眠る天幕の中へ、そっと入っていた。
そしてこう、呼びかける。
『わたしの可愛いカル……』
その霊体となった体には当然、涙というものはなかったが、彼女が泣いているということが、シェラにはよくわかった。
『母さま……』
すでに成人し、大人となったはずのカル=スの体から、少年の姿の霊体が現れ、母親としっかりと抱きあう。
『カル、愚かな母であるわたしを赦して……あの時わたしは、おまえを殺して、自分も死ぬつもりだった。でも、あれでよかったの。本当に、あれで……わたしはおまえに殺されて、よかった』
『……………!!』
子供のカルの体がびくりと震え(おそらく、思いだしたくない記憶が甦ったに違いない)、そして暫くの間、まるで電流が突き抜けでもしたように、慄きを止めることが出来なかった。
『いいのよ、カル。おまえのことを殺して生きながらえるよりも……おまえだけでも生き延びてくれた今のほうが、わたしはずっと幸せなの。今はそのことがわかるわね、カル?』
『か、あさま。かあさま……母さまーーっ!!』
小さな子とその母とは、暫くの間しっかと堅く抱きあっていた。まるで、ずっと離ればなれになっていた恋人同士でもあるかのように、とても強く、深く……。
けれど、「う、ん……」と、眠っているカル=スの本体のほうが、意識を取り戻しつつある気配に気づき――シェリルは愛しい我が子のことを、そっと優しく突き放した。
『これからはわたしがいなくても、ひとりでも平気ね?大丈夫ね?』
子供のカルは、泣きじゃくって目頭を押さえてはいたが、それでも「うん、うん」と何度も頷いていた。おそらく彼もまた、本能的にわかっているに違いなかった。このままずっと長くは、母親とともにいられないということが。
『わたしの愛しい、可愛いカル……』
最後にそう言い残して、シェリルはシェラが制御している魔法陣の中央へと、再び戻ってきた。その顔には、どこか少し寂しげな、そして優しい笑顔があった。
『わたしを、大きくなった息子と出会わせてくれて、ありが、と……う………』
シェリルの霊の輪郭が、青い陽炎のように揺らめき、彼女は霊界へ通じるゲートへ、静かにゆっくりと、吸い込まれるようにして消えていった。
そして最後に、物質界への門が閉じると同時、ヤドリギがパキリ、と乾いた音をさせて真っ二つに割れた。
「ふう……」
シェラは額の汗を拭うと同時に、すぐ魔法陣の痕跡を消しにかかった。
もちろんこんなことをしたところで――今この場で何が行われたのかを、彼女の主君カル=スは見抜いてしまうに違いない。
(お咎めは、覚悟の上だ……)
そしてシェラがサウルハープを片手に持ち、カル=スの寝所を出ていきかけた時のことだった。
「待て、シェラ」
天幕の内側から、硬質の声が響き、シェラは文字どおり、心臓が口から出てくるのではないかと思うほど、ドキリとした。
「は、はい……」
上擦った声で返事をし、シェラは悪戯を見つけられた幼児にも等しい気持ちで、後ろを振り返る。
だが、そこにはまだ主君の姿はなく、月光にカル=スの姿が天幕内で揺らめいているのが見えるだけだった。
「こっちへ来い」
シェラは、今すぐこの場から一目散に逃げだしたい衝動を堪えながら、主君が上体を起こした影の揺れる、天幕の前まで戻った。
「中に入れ」
「……………」
(勝手な真似を)と、叱咤されるものとばかりシェラは思っていたが、シルクの布を持ち上げた時、そこにはいつもどおり冷静な顔の、主君の姿があるばかりだった。
(少なくとも、怒ってはいない……?)と、シェラはそう感じ、内心で少しばかり安堵する。
「何故、あんなことをした?」
カル=スの口調は、決して詰問調ではなかった。というより、どこかいつも以上に優しさの感じられる語調ですらある。
「私の母殺しの過去を、憐れと思ってのことか?」
「いえ、決してそんなわけでは……」
シェラはどう答えてよいかわからず、ただひたすら何度もかぶりを振った。
「ただ、わたしは……わたしには、わかってしまったから。カル様にはわからない、貴女のお母様のお気持ちが……」
「そうか。おまえは私が忘れた頃に繰り返し見る夢を、知ってしまったのだったな」
「……………」
シェラはただ、沈黙することにより、肯定することしか出来なかった。
これまでにも幾たびとなく感じてきたことではあるけれど――主君カル=スの心は、今もなお氷のように堅く閉ざされていて、シェラがそこへ一歩でも入ることを許さないかのようだった。
「まったく、お節介な娘だ……もしおまえが私の母の霊を制することが出来なかったら、今ごろどうなっていたと思う?」
(えっ!?娘って……)
シェラは衝撃を受けるあまり、カル=スが「座れ」と、手で示したとおり、ただベッドの上に腰かけた。両目とも、まるで点のようになり、暫く呆然とする。
「あれは――間違いなく私の母の霊であったと、断定することは出来ない。そのことはシェラ、おまえもわかっているだろう?」
「はい……わかってはいる、つもりでした」
シェラは震え声で主君にそう答える。
カルにしても、これ以上彼女のことをいじめるつもりはなかった。けれど、シェラがまるでうさぎのように大人しいので、自然、話を続けるような格好になってしまう。
「霊界から呼ばれたがっている霊はそれこそ、幾十万、幾百万となくいる。その内の一体をおまえは呼びだし……そして私の霊と対話をさせた。あれらの霊といったものは、時に良いこともすれば、悪いこともする。ただ術者の想念を読み、その者が邪悪な動機で自分を呼びだしたとすれば、それに相応しい振るまいをし、術者が清らかな願いを持っていたとすれば、それに見合う報酬を与えるというだけのことだ。ああした<霊>といったものは、呼びだした者の心の弱点を瞬時にして見抜くからな。どんな魔術の上級者でも、向こうにつけ入る隙を与えればどんなことになるか――シェラ、おまえもよくわかっているだろう?」
びくっ!とシェラが体を震わせるのを見て、カルは途端にいたたまれない気持ちになった。
まさかとは思うのだが、自分が怒っていると……シェラはそう勘違いしているのだろうか?
「とにかく、二度と今回のような危険な真似はするな。たまたま偶然、うまくいったから良かったようなものの、もし失敗していたら――」
「ごめん、なさい。わたし……ただ、わたしは見過ごすのが嫌だったんです。カル様がまた同じ夢を見て苦しむのかと思うと……あんまり、つらくて……それで………」
ぐすっとシェラが泣きだすのを見て、カルとしても不器用ながら、彼女のことを慰めないわけにはいかなかった。何よりもシェラは、他でもない自分のためを思えばこそ、コントロールの難しい危険な術を行使したのだから……。
「もう、いい。それよりも今夜は、前におまえがしてくれた、北欧神話の続きでも語ってくれないか?」
「えっと、前っていつ、どこまでお話ししましたか?」
シェラは目頭をぬぐうと、主君カル=スのほうを振り返った。
すると、カルの澄んだ眼差しと目が合い、途端にドキリとする。娘、と言ったということは、とっくの昔に自分が女であることなど、この方にはわかっていたのだろう――そう思うと、これまで何気なくしてきた振るまいの数々が、シェラにとっては突如恥かしいもののように思えてならなかった。
「北欧神話の創世にはじまって、神々の黄昏……ラグナロクの手前あたりまでだ。ちょうど、司法神バルドルがロキの策略により、ヘズの放ったヤドリギの矢に貫かれたあたりだったと思う」
「そうですか。えっと、ではたぶん次は、ロキの口論と懲らしめのあたりでしょうか?」
「私に聞かれてもな……というよりシェラ、本当に覚えていないのか?」
何を、と言いかけて、シェラはふと黙りこんだ。そしてハッとする。
『母親が散々ほうぼうに頼みこんで、自分の息子に害を与えないでくれと言ったのに――ただヴァルハラの西のヤドリギに頼むのを忘れたせいで、命を落とすことになるとはな』
『でも、神話にはそういうパターンって多いと思います。「ニーベルングの指環」のジークフリートもそうだし……たぶんそうした弱点といったものは、針の穴ほどの小さなものであればあるほど、おそらく致命的なものになりうるんじゃないでしょうか』
――その時、窓敷居に座っていたカル=スが何故、不意に自分のほうに近づいてきてキスをしたのか、シェラにはわからなかった。ただ、驚きのあまり狼狽し、逃げだすように自分の部屋へ駆け戻ったというそれだけだった。
以来、その時のことは忘れるよう努め、なんとか記憶の隅のほうへ追いやることにしたのだ。次の日の朝、主君カル=スもまた、<何もなかった>ような顔をしていたし……。
「私はあれ以来、後悔していた。つまらぬことをしたせいで、大事な臣下を失うところだったとも思ったしな。だが、私もそろそろ、流石に限界らしい」
「あ、あのあとロキは、いささかも態度をあらためるでもなく、相変わらず神々に喧嘩を売るようなことをして怒りを買い、ラグナロクの時まで……」
「そうだな。ラグナロクと呼ばれる終末の時まで、洞窟に繋がれたまま、蛇の毒を受けて悶え苦しむのだろう?もっとも、ロキの妻がそれを容器に受けることで、ロキは助かったわけだが……容器が満ちると、当然それは捨てられねばならない。そしてその間ロキはやはり、激痛に苦しまなければならないわけだ」
「カル様……もしかして最初から、ご存知だったんですか?」
主君の手が腰のあたりにまわされ、首筋に唇が押しあてられる感触をシェラは感じる。
けれど今日は――驚きのあまり逃げるということは、シェラには許されなかった。
「ああ。北欧神話については、小さな頃、母が眠る前によく聞かせてくれたからな」
「じゃあ、わたしから同じ話を聞こうと思ったのは……」
綿の詰まった上衣を脱がせると、カルは驚くというよりは呆れたような顔をしていた。
「よくこんなものを毎日、夏にも着ていたものだな」
シェラの問いには答えず、カルはどこか面白がるように、今度は彼女のサラシをといていく。
そう――昔のことを思いだしても、胸の痛みがかつてより鋭利でなくなったのは、カルにはシェラのお陰だといってよかった。
ただ、言葉にだしてそう言い表すのは……カルにとってどこか、面映いような感じのすることだった。というより、その時にはシェラは自分の過去のことなど何も知らなかったのだから、そのことをどう説明したらいいのかもわからなかったというせいもある。
でも、今は……。
「わたしはただ、カル様のおそばにいたかったんです」
シェラは主君に抱かれたあとで、突然ポツリとそう言った。
「そのためだったら、毎日サラシを体に巻きつけたりだとか、そんなことはわたしにとってはどうでもよくて……わたしは、ただ………」
(自分のすることが少しでも、貴方の慰めになったら、それだけで……)
言外にシェラの言葉を聴き取って、カル=スは愛しい娘の額に口接けた。
「私にとって、シェラ、おまえは――この世界にふたりといない救いの女神だ。もし誰かに愛されることを求めなければ、心が傷つくこともなく安泰ではあるだろう。闇が深い場所でこそ光は輝くというのは、単純な真理かもしれない。だが、一度もそれを知ることなく死ぬよりは……再び元の闇と氷の世界へ戻るにしても、その一度灯った<永遠の光>というのは、誰にも消せないものだと思う。私の言っていることが、わかるか?シェラ……」
シェラはすでに、不器用ながらもカルなりに愛情を伝えようとしたその言葉を聞いていなかった。
何故なら彼女は、誰かに「愛し、与える」ことが出来たという事実に満足し、そのまま寝入ってしまっていたから……そしてそんなあどけないシェラの寝顔を見て、カルはくすりと笑っていた。
この世界に真に永遠なるものなどないと思っていた世界観が崩れ去り――自分がそもそも<永遠>というものを吐き違えていた事実に、初めて気づいたというそのせいだった。
終わり
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます