報道写真家から(2)

中司達也のブログ 『 報道写真家から 』 の続編です

『民主化』と『世界不況』

2013年02月11日 17時24分45秒 | 『民主化』の正体

イスラム世界に吹き荒れるすさまじい春の嵐。
豊かだった大地も、一陣の風のあとには草木一本見当たらない。

西側世界は不況の嵐におおわれている。
中産階級は荒れ狂う暴風雨に根こそぎ引き抜かれつつある。

憎悪、そして無関心

いま、世界の憎悪を最も集めている人物は、シリアのアサド大統領だろう。
彼さえいなくなれば、またひとつ地上に自由と民主主義がもたらされる……と。
世界はそう信じて疑わない。
はたして、本当にそうだろうか。

イラクやアフガニスタン、リビアのときも同じだ。
サダム・フセインさえいなくなれば、タリバーンさえいなくなれば、カダフィ大佐さえいなくなれば、かの地に自由と民主主義がもたらされ、すべてが劇的に改善される……と信じたはずだ。しかしその割には、たいていの人はその後の変化にはあまり興味を持っていないように見える。

まるであとは自動的に自由と民主主義がもたらされるとでもいうように、急速に関心を失う。現状がかつてとは比べものにならないほど悪化し、かえって自由も民主主義も制限される過酷な社会になったと知らされたとしても、何の感慨も起こらない。

どうやら、フセインやタリバーン、カダフィ大佐という憎悪の対象が抹殺されれば、それでよかったようだ。
映画の観客が画面の中のヒーローと同化し、ヒールの打倒を今や遅しと待ち望むのと同じ心理だ。

世界のメディアには、「フリーダム・ファイター」や「自由シリア軍」という、子供にも分かりやすいネーミングのヒーローが登場する。一方で、フセインやカダフィ大佐、アサド大統領は、お決まりのようにヒトラーにたとえられる。ニュースの中でヒーローとヒールの戦いが展開されれば、そのとき読者や視聴者が期待するものはひとつだ。ヒールの抹殺以外にない。そして、その目的が達成されたとき、熱い感情は完全燃焼して燃え尽きる。憎悪の対象がいなくなれば、憎悪はきれいに消滅する。そこで物語は完結する。したがって、その後の出来事には興味を持ちようがない。

本当はその後が重要なはずだ。

『民主化』された現在のイラクやアフガニスタン、リビアはかつてよりも悪くなったどころか、そこはもはや国家でさえない。民主主義の欠片もなく、人権と呼べるものも存在しない。医療や教育は痕跡しか残っていない。国内は細かく分断され、恒常的に争い合っている。大量の武器が氾濫し、治安は極度に悪化している。些細なもめごとの解決にも武器が用いられる。

これが欧米がもたらした『民主化』の本性だ。
『民主化』後におとずれたのは、終わりのない悪夢のような物語だ。

標的

『民主化』の標的となった国家には類似点がある。

フセイン時代のイラクは中東随一の高度な医療と教育制度を誇る近代的国家だった。シーア派とスンニ派がよき隣人として暮す穏和な社会でもあった。アフガニスタンは伝統的に異邦人に寛容な穏やかな社会だった。タリバーン治世下の目を見張る治安の良さはもともとの国民性にも由来している。リビアは豊富なオイルマネーを医療、教育、福祉政策にふんだんに注ぎ込む福祉大国だった。カダフィ政権下のリビアの正式な国名は、大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国だ。その名のとおり、国民福祉を重視する社会主義国だった。

これらの国々は、欧米が放っておいてさえくれれば、必然的に国民サービスをより充実させ、さらに安定した国家になっていたことは間違いない。

どうやらそうなっては都合が悪かったようだ。

イラクはアメリカの最恵国待遇を与えられた西側の友好国であったが、アメリカ政府の罠にはまり世界の敵にされ、湾岸戦争で叩きのめされ、そしてイラク戦争で破壊された。

カダフィ大佐が「中東の狂犬」と呼ばれ、西欧との対決姿勢を堅持していた頃は、リビアはほとんど爆撃されなかったが、欧米との協調路線に転換し、その友好姿勢が本気だと分かると、爆撃され破壊された。

アフガニスタンはソ連軍撤退後、軍閥による三つ巴、四つ巴の内戦状態に陥り、治安は最悪になった。タリバーンが登場し、破竹の勢いですべての軍閥を討伐すると、アフガニスタンは類まれな治安のよい地域に変貌した。しかし、米軍の爆撃でタリバーンが排除されると、軍閥はまたもや国土を好き勝手に分割支配し、大規模な麻薬栽培を再開し、治安は再び最悪になった。

アサド政権のシリアは、モデルになるような他民族・多宗教による平和共存社会を実現した。したがって、中東の専門家は最も何も起こりそうにない国と考えてきた。『アラブの春』がシリアに「飛び火」したとき、彼らは少なからず混乱した。

中東地域に安定した国家が誕生しそうになると、なぜか標的にされ、破壊される。

『民主化』と反米

標的にされた国家には、『民主化』後に共通した現象が起こる。
欧米の資金と武力で『民主化』されたにもかかわらず、国民の大半は反米になる。
まるで反米になって欲しいかのような残虐な事件が、駐留米軍自身の手で引き起こされるからだ。

イラクやアフガニスタンに駐留する米軍は、市民に対して理不尽極まりない暴虐を加え続けた。米軍部隊は真夜中に民家を襲撃し、住民を理由もなく連れ去ると、アブグレイブ収容所やグアンタナモ基地に監禁した。そうした人々のほとんどは普通の市民だ。収容された人々がいつ出られるかは分からず、死体となって帰ってくることもあれば、そのまま行方不明になることもあった。

米軍による常軌を逸した暴虐の数々を克明に記録すれば何十冊もの分厚い報告書になるだろう。イラクやアフガニスタンに駐留する米軍の任務は、市民に対して徹底した暴虐を加えることだったと言える。それは理不尽であればあるほどよい。そうすれば、駐留軍は憎悪され、報復を受ける。イラクでは頻繁に路肩爆弾が炸裂し、駐留軍の車両が吹き飛ばされた。駐留軍に犠牲者が出れば、ますます市民への虐待がエスカレートする。そして、反米感情もさらに高まる。

イラクやアフガニスタンで米軍が引き起こした無数の残虐行為は、広範な反米感情を作るために、意図的に引き起こされたものだ。つまり、政治政策だ。

イラクやアフガニスタンで任務についた米軍兵士の多くが帰還後にPTSDを発症している。戦闘はとっくの昔に終わっているので、戦闘の恐怖に起因するものではない。通常任務として、罪のない市民に理不尽極まりない残虐行為を繰り返し、呵責もなく多くの命を奪ううちに、自分自身の精神の重要な部分が深く抉り取られたのだ。占領地の住民を反米に導くという異常な任務が招いた当然の結果と言える。

アブグレイブ収容所での虐待を告発する画像は有名だが、あの一連の画像もイスラム世界を反米に導くために仕組まれたものだ。つまり、虐待の画像はやらせだ。そこには虐待という凄惨な現場の臨場感が欠如している。全体的に「再現写真」のような無機質な雰囲気が漂っている。それはセッティングされた撮影であることを示している。米軍がアブグレイブで行った実際の虐待はあんなものではない。軍法会議で裁かれた兵士たちは、セッティング撮影用に抜擢されたスケープゴートだ。画像流出の経緯も極めて不自然だ。義憤に駆られた一人の兵士が画像をCD-ROMに焼いて、セイモア・ハーシュという高名なカメラマンに手渡し、かくして世界の知るところとなる。まるで三流映画のプロットだ。

このやらせ画像のやらせ流出によって、世界のイスラム教徒を、米軍と米国政府への激しい憎悪に導いたことは明白だ。一方、この一連の画像によって欧米内部からも米軍の行為に批判が集中したが、臨場感のないやらせ画像の印象はいつしか人々の記憶から消えた。

アフガニスタンでは米軍がコーランをトイレに流したり、焼き捨てたりした。そのたびにイスラム圏では抗議デモや暴動が発生した。しかし、こうした出来事がメディアの自主検閲をすり抜けて世界に配信されたというのは不自然すぎる。それが都合の悪い事実であれば、メディアが勝手に報じることはないのだ。アブグレイブの虐待画像も同じだ。それが欧米のメディアで報じられたということは、すなわち非常に「都合のよい事実」であることを物語っている。

最も神聖なものを汚物のようにトイレに流されたというニュースによって、全イスラム教徒が修復不可能な反米感情を抱いたことは間違いない。

『アラブの春』の熱狂も過ぎ去った昨年の9月、預言者ムハマンドを侮辱する映画がアメリカで製作され、インターネット上で公開された。エジプトで抗議デモが発生すると、すぐにイスラム圏全体に反米デモが拡大した。アメリカ大使館が襲撃されるなど抗議行動はエスカレートした。リビアのベンガジでは、アメリカ領事館に暴徒がなだれ込み、アメリカ大使ら4人の米外交官が殺害された。この映画の製作者は逮捕されたが、その素性はポルノ映画の監督と報じられている。また、抗議行動の発端となったエジプトでは、報酬を払ってデモ隊が動員されていた。

映画の製作からその結果引き起こされる重大な事件に至るまで、すべてが事前に準備されていたことをうかがわせる。

似たような出来事や事件が適度な間隔をおいて繰り返されている。イスラム世界の怒りが収まり、忘れかけた頃に、また類似の事件が発生するのだ。なぜなら365日24時間途切れることなく反米感情を持続できる者はいないからだ。誰しも仕事や家族を抱えている。要するに、定期的にイスラム世界の怒りに着火しておかなければ、日常生活の比重が大きくなるのだ。

イスラム教を侮辱し、イスラム世界の怒りを誘発するような出来事や事件は、すべて事前に計画され、周到に準備されているのだ。

『民主化』という破壊は、反米感情と反米地域をできるだけ拡大することを目的とした政治政策だ。

双方向性

安定的国家建設を実現しそうなイスラム国家を武力で破壊し、憤懣に満ちた混沌へと放り込む。
その憤懣を、イスラムを侮辱することで、欧米に対する憎悪へと転換する。
そういう手順になっている。

これは一方通行ではない。

欧米圏では、不自然の塊のような911事件や存在しない「アルカイーダ」による数々のテロ事件が発生している。ロンドン、マドリッド、バリでは爆弾が炸裂した。バリ島の爆弾事件での犠牲者は大半がオーストラリア人観光客だ。こうした事件により、欧米文化圏ではイスラムに対する反感と憎悪が渦巻いている。

イスラムと西欧の双方が、互いを激しく憎悪するような事件や出来事が実に都合よく発生している。

それだけではなく、イスラムと西欧は奇妙にシンクロしている。安定的なイスラム国家が破壊されたように、経済的に安定していた先進諸国も破壊された。イスラム圏は外側から武力で破壊されたが、欧米圏は内側から金融財政的に破壊された。住宅バブルやサブプライム、リーマン・ショックでほぼ一撃だ。

金融経済の破綻によって、先進国では、リストラや倒産による失業が増大している。株価や住宅価格の下落により投資に失敗し、老後の貯蓄資金を失った者も多い。その結果、先進国の中産階級の多くが貧困層へと転落している。学資ローンで、働く前からすでに貧困化が決定している学生も大勢いる。同時に、財政削減で社会福祉や公共サービスはどんどん縮小している。しかしその一方で、金融機関には優遇措置が設けられるなど、富裕層はますます豊かになっている。格差が急拡大し、欧米社会には憤懣が充満している。人々は攻撃的で排外的になり、雇用を奪う移民は排斥対象になっている。特にイスラム・コミュニティは政治的ターゲットにされている。

ヨーロッパのいくつかの国では、公共の場でのブルカの着用を禁じる法律が成立している。フランスでは公立学校でのスカーフの着用が禁止された。あるいはモスクやその尖塔の建設を禁じる法案を検討している国がいくつかある。こうした法案に正当性があるとは到底思えない。しかし、理不尽であることにこそ意味があるのだ。ヨーロッパ内部での対立構造を生むことができる。

イスラム圏、欧米圏ともに混沌とした社会状況の中で生じる憤懣が、双方への憎悪・対立へと誘導されている。それを維持、拡大するような出来事や事件が実に都合よく発生しているのだ。

湾岸戦争以来、こうした出来事や事件が巧みに歴史の時間軸の中に配置されてきた。
もちろん、今後の時間軸にも、さまざまな事象が予約済みだ。

平和は富を生まない

湾岸戦争(1991年1月17日~2月28日)が、東欧の『民主化』とソビエト連邦の崩壊という歴史的大事件の狭間で起きているのも偶然ではない。

世界は『冷戦』の終結によって、「赤い脅威」と「核戦争の恐怖」から開放されようとしていた。世界が待ち望んだ平和が手の届くところまできていた。しかし、湾岸戦争でその願いはお預けとなり、『対テロ戦争』ではかなく消えた。平和ほど都合の悪いものはないのだ。

なぜなら、平和は富を生まないからだ。逆に、対立は富の源泉になる。対立が大きければ、それだけ富みも増大する。

『冷戦』という東西を二分する巨大な対立は、アメリカに絶大な覇権をもたらした。世界は「赤い脅威」から逃れるために、アメリカの核の傘下で身をすくめた。それは、アメリカの発言権の増大を意味する。また世界の富は安全なアメリカに向かった。脅威が大きければ大きいほど、アメリカの覇権と富は増す。アメリカは「赤い脅威」と「核戦争の恐怖」を過剰に演出するだけでよかった。

しかし、体力のないソビエト連邦は、軍拡競争の罠の中で足元がふらつき始めた。デタントで負担を軽くしてやったが、持ちこたえられずに崩壊してしまった。ソ連邦の消滅は、覇権と富の源泉を失うことを意味する。ソ連邦に匹敵する巨大な脅威を新たに生まなければ、アメリカは没落する。ソ連邦が崩壊する直前に、サダム・フセインを罠にはめ、湾岸戦争を仕組んで急場をしのいだ。このときサダム・フセインが打倒されなかったのは、「大量破壊兵器」の脅威をできるだけ長引かせるためだ。その間に、新たな脅威の準備を進めることができる。

『冷戦』に替わる巨大な対立を生むためには、安定志向の世界を、極度の不安定な状態に移行する必要がある。そこから生まれる漠然とした不安や憤懣を具体的な憎悪や対立に導くのだ。

『冷戦』時代には、西側世界は資本主義の優位性を演出するために、共産主義の東側よりも自由で豊かでなければならなかった。しかし、『冷戦』終結以降は、もはや自由や豊さを維持拡大する必要性はなくなった。

日本のバブル崩壊は、湾岸戦争やソ連邦の崩壊と歩調を合わせるように起こった。以来、20年におよぶ経済低迷が続いている。日本には豊富な金融資産と高い技術力がありながら不況から脱出できないのは、おかしくはないだろうか。アジア諸国は金融危機の大ダメージからたった2年ほどで回復した。成長経済の見本であった日本は、決して回復させてはならないのだ。20年も低迷させておけば、もはや誰も手本などにはしない。

アメリカ自身もヨーロッパも、住宅バブルやサブプライム、リーマン・ショックで、中産階級の豊かさを根こそぎ奪いつつある。どこか一国が財政破綻すればユーロ圏全体が崩壊する。ユーロ圏住民は金融的将棋倒しの不安の中で暮らしている。「1%の富裕層と99%の貧困層」は、いずれ誇張ではなくなる。かくして欧米社会には巨大な不安と憤懣が充満することとなった。

イスラム圏、欧米圏ともに、政治経済社会的に極めて不安定な状態の中で、互いに憎悪し、対立し合うような事件や出来事に次々と遭遇している。

憤懣を溜めた二つの陣営が全面的に衝突すれば、『冷戦』に替わる富の源泉が生まれるだろう。
アメリカは、「テロの脅威」を演出することで、それに対抗できる唯一のスーパーパワーとして復活する。

しかし、いまだ世界を二分するほどの対立構造にはいたっていない。

オーダーメイド

世界にとって幸いなことに、シリアはまだ『民主化』されていない。
この2年で『アラブの春』という嵐は勢いを弱めたように見える。

しかし、その一方でまたも憎悪と対立を助長するような事件が発生した。
アルジェリアのガスプラント施設が武装集団に襲撃され、大勢の民間人が殺害された。
この事件もまた不自然さに満ちている。

巨大なプラント施設の内部情報を事前に得ていた襲撃部隊は、居住区域の個々人の部屋割りを熟知し、やすやすと外国人を捕捉した。そして、有無を言わさずその場で射殺した。逆にアルジェリア人は殺さないと明言している。何かを要求したり、アピールするのが目的であれば、いきなり人質を殺害することはない。この襲撃は、外国人を殺害することそのものが目的だったと言える。こうした事例はほとんど聞いたことがない。

この事件で最も不可解なのは、襲撃部隊のメンバーが身分を示すものを所持して襲撃に臨んだことだ。事件後、死亡した襲撃部隊のメンバーの国籍が即座に発表されたのは、何らかの身分証明書を所持していたことを物語っている。この襲撃の立案者は、襲撃部隊が最終的に殺害されることを予定に入れ、その国籍をぜひ世界に知らせたかったように見える。

この事件の犠牲者は多国籍に渡っているが、同時に、襲撃者もなぜか多国籍だ。
犠牲者の国籍は、アメリカ、イギリス、フランス、ルーマニア、ノルウェー、フィリピン、日本。
襲撃者は、エジプト、モーリタニア、ニジェール、チュニジア、マリ、アルジェリア、そしてカナダ。

まるで、西欧対イスラムの対立の縮図になっている。

襲撃部隊のリーダーは、訛りのあるアラビア語を話すカナダ国籍の人物だった。おそらく土地勘もなく、戦闘経験もなかっただろう。こんな人物がリーダーとは、奇妙と言うしかない。しかし、この男の存在には重要な意味がこめられている。彼は欧米に居住する全イスラム教徒を象徴しているのだ。

この事件には明らかに具体的な目的が存在しない。これは、来るべきイスラム世界対西欧世界の全面対立を世界に向けて暗示するための象徴としての事件のように見える。

2年が過ぎてもアサド大統領が健在で、シリアを破壊できない西側世界の焦りを象徴する事件でもある。チュニジアとエジプトの政治的混乱で、『アラブの春』もすでに色あせ、熱狂はとっくに去り、世界の関心は希薄になっている。そこで世界の耳目を引く大事件を起こす必要があったのだ。

人々が日常生活に埋没しそうになると、こうした凶悪な事件が発生する。

歴史には偶然も必然も存在しない。
歴史とは、すなわちオーダーメイドなのだ。
『民主化』も『世界不況』も周到に仕組まれた歴史イベントにすぎない。

したがって歴史はわれわれの手でも変えることができる。
いますべきことは、シリアの破壊を食い止め、春の嵐を終わらせることだ。



国際社会という人道危機

2011年12月23日 19時37分03秒 | 『民主化』の正体


21世紀に入ってまだそれほど時間が経っていない。
この短い間に、気がつけば武装反乱が正義と呼ばれている。
テロリストが反乱に参加していてもかまわない。
反乱は誰が参加しても正義なのだ。

人道危機を阻止するための人道危機

国際社会は、リビアで蜂起した反乱勢力に対するカダフィ政権の鎮圧行為を「人道危機」と称した。武装勢力のリーダーにテロリストや過激派が公然と参加していたことは、いまや周知の事実だ。国際社会は、国連や国際刑事裁判所などの国際機関と世界の主要メディアを駆使して、存在しない人道危機を創出し、リビア爆撃の根拠とした。そして、NATO軍を動員してリビアの国土を爆撃した。

NATO軍の出撃は通算26500回を数え、そのうち約9700回の空爆が行われ、およそ6000の標的が破壊された。NATO軍の空爆には精密誘導爆弾が使用されたと言うが、こうした兵器には十分な誤差があり、「誤爆」もそれほどめずらしいことではない。また、通常爆弾が使用されなかったわけではない。地上では、豊富な武器弾薬を供給された反乱軍が、空爆の支援を受けながら、市街地に徹底的した砲撃を加えた。

空爆と砲撃により、諸都市の基幹インフラは壊滅し、多くの住居が破壊され、医療機関も機能しなくなった。死者は3万人とも見積もられている。15万人という記載もある。NATO軍と反乱軍が引き起こしたこれらの事態こそ、正真正銘の人道危機ではないのか。

数千人の反乱軍に対する「人道危機」を阻止するために、3万人の市民の命を奪ったことをどう正当化できるのだろうか。

しかし、たとえ何十万という命を奪ったとしても、国際社会は自分たちが引き起こした戦争犯罪には人道危機の概念は当てはめない。それどころか、これらの犠牲は、正義を遂行する過程で必然的に生じるコストとして容易に無視される。

こんな暴挙が堂々とまかり通るのが、21世紀という時代らしい。


「民主化」という破壊

国際社会が「フリーダム・ファイター」と絶賛した英雄たちはいま何をしているだろうか。彼らは、リビアの民主化のために日々奮闘努力しているのだろうか。

12月10日、新生リビア国軍の総司令官に就任した元反乱軍のKhalifa Hifter は、トリポリ空港に向かう途中に待ち伏せ攻撃を受けた。Hifter は生き延びたが、今後も同様の事件が続くかも知れない。この出来事はリビアの現状を雄弁に物語っている。

反乱軍を構成していた有力な武装グループは、新生リビア国軍に再編されたが、これは軍隊と呼べるような組織ではない。看板が、反乱軍から正規軍になったというだけで、寄せ集めの集団であることに変わりはない。武装グループは以前よりもまして個々勝手に行動している。

旧政権を排除した今、元反乱軍の最大の関心と課題は、民主主義でも平和でも安定でもない。いかにして権力と利権を得るか、それだけだ。待っていても権力は手にできない。トリポリが陥落すると、反乱軍はすぐさま同士討ちをはじめた。

産油国リビアには、莫大な資産蓄積と恒常的な石油収入がある。リビアは宝の山だ。より強者がより多くを手にできると考えるのは必然だ。

武装グループは部族・地域単位のものが多い。強力な中央政府が消滅したいま、各部族や各地域という信頼できる最小単位で防衛を固めている。こうしたグループは中央での覇権を求める一方で、出身地では軍閥化するだろう。欧米から供給された豊富な武器弾薬がそれを可能にする。

リビアは、タリバーン後の「民主化」されたアフガニスタンと同じ状況になるだろう。中央政府の権限を無視した、軍閥による地域支配だ。アフガンのカルザイ大統領は、カブール市長か県知事程度の権限しか持っていない。中央政府の大臣職は有力軍閥が分け合い、国会議員も各軍閥の構成員で占有されている。大統領職は、対外的な窓口という程度の意味しかない。軍閥に支配されたアフガニスタンには民主主義の欠けらも見当たらない。しかし、国際社会は、アフガニスタンに持ち込んだ数万個の投票箱を指して、民主主義の勝利と宣言している。

リビアの「民主化」も同じ過程をたどることになる。NATO軍の爆撃や寄せ集めの反乱軍が民主主義をもたらすはずがないのだ。国際社会が語る「民主化」とは破壊のための口実にすぎない。そして、一度「民主化」されてしまった国家には未来はないのだ。


三大勢力の攻防

フリーダム・ファイターはトリポリを陥落した直後から、早くも覇権争いの銃撃戦をはじめたが、現在大きく三つの勢力に分かれている。トリポリ軍事評議会司令官のAbdel Hakim Belhaj と元反乱軍司令官のSuleiman Mahmoud、そして、待ち伏せ襲撃された新生リビア国軍総司令官Khalifa Hifter の三者だ。

この三人の中で最大の勢力はAbdel Hakim Belhaj だ。カダフィ軍を破ってトリポリに一番乗りし、首都の中心地域を真っ先に支配し、自軍のテリトリーを作った。Belhaj は1980年代から反カダフィ闘争を行っていた筋金入りの反カダフィ派だ。しかし、90年代のCIAの作戦でリビアを追われ、アフガニスタンで欧米軍に対するジハドに参加した。2004年にはCIAに逮捕され、2010年までリビアの刑務所で過ごした。そして、今回、CIAに支援された反乱軍に参加し、トリポリ陥落という大武勲を立てた。彼が首都を攻略したので、論功行賞によりトリポリ軍事評議会の司令官という地位を得た。これは首都防衛部隊という意味合いだろう。組織的には総司令官Hifter の下に位置するが、戦闘力ではBelhaj の部隊が最大最強だ。現在でも自軍の戦力補強に努めている。彼の経歴を見れば、民主主義とはほど遠い存在であることがわかる。

Belhaj に次いでトリポリを支配しているのが、元反乱軍司令官Suleiman Mahmoud だ。彼はリビア軍のトブルク地区将軍だったが、反乱が勃発すると、自分の旅団の半数を引き連れて反乱軍に合流した。反乱軍の司令官にはAbdul Fattah Younes将軍(カダフィ政権下の内務相)が任命されたが、7月28日に暗殺され、このMahmoud が2代目司令官に就いた。反乱軍が新生リビア国軍に再編されると、必然的にMahmoudが総司令官に就任したが、すぐにその地位から滑り落ちた。11月17日、旧リビア軍の軍人グループは新しい総司令官としてKhalifa Hifter を選出した。

Khalifa Hifter は、リビア戦争が始まるまではアメリカで20年間亡命生活をしていた元リビア軍大佐だ。アメリカでの地位は、CIA本部から車で5マイルほどの距離に住む、CIAの準構成員だ。反乱が勃発すると反乱軍に参加するが、初代司令官Younes と指揮権争いを演じた。ライバルのYounes は暗殺されたものの、結局Hifter にはいかなる指揮権も与えられず、したがって、何の手柄もあげていない。そんなHifter が、新生リビア国軍の総司令官に選出されたのは、極めて不自然だ。CIAとの20年来の信頼関係がものを言ったのかも知れない。しかし、彼を総司令官に選出したのは元リビア軍の職業軍人であって、元反乱軍は参加も同意もしていない。就任早々、Hifter が待ち伏せ攻撃を受けたのは一種の回答とも言える。※ Hifter は、Haftar、Hefter または Hufturとも表記される。

今後当分の間、BelhajMahmoudHifter による主導権争いが続くことになるだろう。あるいは、そこに伏兵も現れるかも知れない。

トリポリ空港という重要な軍事拠点は、この三者以外の武装勢力が掌握している。空港の支配権をめぐる衝突も発生している。Belhaj は空港を使用しようとした際、一時拘束されるという危険な失態を演じている。Hifter も空港に向かう途上で待ち伏せ襲撃されている。彼らでさえ、テリトリーを離れると安全なところはないというのが現状なのだ。


市民生活を脅かすフリーダム・ファイター

武装勢力が覇権争いを展開している状況下で、トリポリ市民が安全に暮らせるはずがない。正規軍に編入された大きな元反乱軍グループはまだ統率が取れている方かも知れない。しかし、正規軍に入れないようなその他の小グループは、個々勝手に検問や検閲を行い、我が物顔で横暴を繰り返し、市民生活を脅かしている。

たまりかねたトリポリ市民は、戦争は終わったのだから「フリーダム・ファイター」は出身地へ帰るよう要求しはじめている。放っておけば市民に対する横暴がエスカレートし、いずれギャング化することになるだろう。小グループとはいっても、NATOが供給した重機関銃や対戦車砲で重武装しており、極めて危険な存在だ。暫定政府は、武装集団の非武装化に取り組むとしているが、もちろん、暫定政府にはそんな力はない。

アフガニスタンでは、国際機関が音頭をとって軍閥の武装解除プログラムを実施したが、実質的な成果などあがっていない。壊れた銃を差し出して、新しい銃を手にするだけだ。武装解除が終了したと公式に認定された軍閥の司令官宅で、弾薬が大爆発するという事故が発生したこともある。一度武器を手にした集団の武装解除は、極めて非現実的だ。

リビアではこれからが利権争奪の本番であり、首都からおとなしく出て行く武装グループがいるはずがない。首都トリポリは大から小まで利権の宝庫だ。本当の戦いはこれからはじまるのだ。

国際社会が「フリーダム・ファイター」と賞賛する集団の正体とはこんなものだ。もちろん、国際社会は最初からそんなことは知っている。これらはすべては国際社会が望んだ通りの結果なのだ。


そして国際社会は、同じ手法を繰り返している。
──シリアの残忍なアサド大統領に対して、民主主義のために銃を手にした市民──
いつまでこんな見え透いた茶番を繰り返すつもりなのだろうか。
もちろん、通用する限り、いつまでもだ。

21世紀は「民主化」の猛威が吹き荒れる大災厄の時代となるのかも知れない。
国際社会こそ、人類にとっての真の人道危機だ。

 

国際社会という人道危機 : 資料編
http://blog.goo.ne.jp/leonlobo2/e/2e1acb05ee90cb60665106d03aa2bf77

 

 


国際社会という人道危機 : 資料編

2011年12月23日 19時36分23秒 | 『民主化』の正体

フリーダム・ファイターの横暴
2011.11.01  Libya struggles to create army out of militias
http://www.washingtonpost.com/world/middle_east/libya-struggles-to-create-army-out-of-militias/2011/10/28/gIQAwWsjaM_story.html
2011.11.02  Libyan war over, but fighting continues among regional militias
http://edition.cnn.com/2011/11/02/world/africa/libya-infighting/index.html?hpt=hp_t1
2011.11.07  Rights to remain silent: US quiet on Libyan human rights
http://rt.com/news/us-libya-human-rights-679/
2011.11.17  New chief for Libya's revamped national army
http://www.defensenews.com/story.php?i=8286887
2011.11.18  Militias and Army Jostle for Influence in Libya
http://www.nytimes.com/2011/11/19/world/africa/militias-and-army-compete-for-influence-in-libya.html
2011.11.29  Bomb voyage: 600 Libyans ‘already fighting in Syria’
http://rt.com/news/libya-syria-fighters-smuggled-475/
2011.12.07  リビア解放の英雄たちがいまや厄介者に、首都で反民兵デモ
http://jp.reuters.com/video/2011/12/08/%E3%83%AA%E3%83%93%E3%82%A2%E8%A7%A3%E6%94%BE%E3%81%AE%E8%8B%B1%E9%9B%84%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%8C%E3%81%84%E3%81%BE%E3%82%84%E5%8E%84%E4%BB%8B%E8%80%85%E3%81%AB-%E9%A6%96%E9%83%BD%E3%81%A7%E5%8F%8D%E6%B0%91%E5%85%B5%E3%83%87%E3%83%A2%E5%AD%97%E5%B9%95%E3%83%BB7%E6%97%A5?videoId=226486863
2011.12.07  Libya to disarm Tripoli by year end
http://www.aljazeera.com/news/africa/2011/12/201112623505666411.html
2011.12.07  New Libya: Guns to go silent but future elusive
http://rt.com/news/new-libya-future-elusive-209/
2011.12.16  Libya - divided it stands
http://www.reuters.com/article/2011/12/16/us-libya-future-idUSTRE7BF0MG20111216
2011.12.22  Libya struggles to disarm fighters
http://www.aljazeera.com/video/africa/2011/12/20111222174012872299.html
2011.12.25  Libya 'to integrate' former rebel fighters
http://www.aljazeera.com/news/africa/2011/12/201112252263402989.html

Abdel Hakim Belhaj トリポリ軍事評議会司令官
2011.08.22  Two CIA-backed groups, an al-Qaeda-linked LIFG on top of power stakes
http://www.asiantribune.com/news/2011/08/22/gaddafi-under-siege-two-cia-backed-groups-al-qaeda-linked-lifg-top-power-stakes
2011.08.27  リビア新国軍創設へ 民兵解散、指揮権一元化
http://www.kyodonews.jp/feature/news02/2011/08/post-595.html
2011.08.29  Ex-jihadists in the new Libya
http://mideast.foreignpolicy.com/posts/2011/08/29/post_qaddafi_libya_islamists_arms_and_democracy_0
2011.08.30  How al-Qaeda got to rule in Tripoli
http://www.atimes.com/atimes/middle_east/mh30ak01.html
2011.09.01  In Libya, Former Enemy Is Recast in Role of Ally
http://www.nytimes.com/2011/09/02/world/africa/02islamist.html?_r=1&scp=1&sq=Abd%20al-Hakim%20Belhaj&st=cse
2011.09.02  Former jihadist at the heart of Libya's revolution
http://edition.cnn.com/2011/WORLD/africa/09/02/libya.belhaj.profile/index.html
2011.09.05  Profile: Libyan rebel commander Abdel Hakim Belhaj
http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-14786753
2011.09.08  Libyan Rebels Vie For Key Posts In Tripoli
http://www.npr.org/2011/09/08/140301596/libyan-rebels-vie-for-key-posts-in-tripoli?sc=tw&cc=share
2011.09.09  アブドゥル・ハキム・ベルハッジ現トリポリ軍事委員会委員長
http://www.energyjl.com/2011_folder/September/11new0909_8.html
2011.09.14  Libya disavows extreme Islam as world looks on
http://www.reuters.com/article/2011/09/14/us-libya-islam-idUSTRE78D2KB20110914
2011.10.03  The Enemy Of My Enemy: Libyan Islamists and Western Forces
http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,2094433,00.html
2011.10.15  Libya's rival military commanders fight war of words
http://edition.cnn.com/2011/10/13/world/africa/libya-rival-commanders/index.html?hpt=hp_c1
2011.11.11  Libyan Islamist commander swaps combat rig for suit
http://www.reuters.com/article/2011/11/11/us-libya-islamist-belhaj-idUSTRE7AA52320111111
2011.11.16  Abdel Hakim Belhadj is now the military governor of "liberated" Tripoli
http://libyasos.blogspot.com/2011/11/abdel-hakim-belhadj-is-now-military.html
2011.11.18  Militias and Army Jostle for Influence in Libya
http://www.nytimes.com/2011/11/19/world/africa/militias-and-army-compete-for-influence-in-libya.html
2011.11.25  Libya's Zintan militia briefly detain Abdel Hakim Belhadj
http://digitaljournal.com/article/315028
2011.12.19  Libya commander Abdel Hakim Belhaj to sue UK government
http://www.bbc.co.uk/news/uk-16244210

Suleiman Mahmoud 元反乱軍司令官
2011.02.23 Defections From the Libyan Regime
http://blogs.wsj.com/dispatch/2011/02/23/defections-from-the-libyan-regime/
2011.02.24 Tubruq’s free locals take first decisions
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/5ff2c5fa-404d-11e0-9140-00144feabdc0.html#axzz1hKbkrrsJ
2011.03.10 The colonel fights back
http://www.economist.com/node/18338840?story_id=18338840

Khalifa Hifter リビア国軍司令官 (Haftar, Hefter or Huftur)
2011.03.11  Are Libyan rebels being led by a CIA plant?
http://theweek.com/article/index/213706/are-libyan-rebels-being-led-by-a-cia-plant
2011.03.26  Libyan rebel leader spent much of past 20 years in suburban Virginia
http://www.mcclatchydc.com/2011/03/26/111109/new-rebel-leader-spent-much-of.html
2011.03.28  A CIA commander for the Libyan rebels
http://wsws.org/articles/2011/mar2011/pers-m28.shtml
2011.03.30  American media silent on CIA ties to Libya rebel commander
http://www.wsws.org/articles/2011/mar2011/hift-m30.shtml
2011.03.31  Libyan Rebel Commander Is From Fairfax, Virginia
http://abcnews.go.com/Blotter/libyan-rebel-general-fairfax-virginia/story?id=13256324
2011.04.03  Libyan rebel efforts frustrated by internal disputes over leadership
http://www.guardian.co.uk/world/2011/apr/03/libya-rebel-leadership-split
2011.04.04  Khalifa Haftar: The man who left Virginia to lead Libya's rebels
http://articles.cnn.com/2011-04-04/world/libya.rebel.leader_1_wadi-doum-libyan-exiles-libyan-pows?_s=PM:WORLD
2011.04.15  The task of forming a more effective anti-Gaddafi army
http://www.bbc.co.uk/blogs/newsnight/markurban/2011/04/the_task_of_forming_a_more_eff.html
2011.04.19  As British Help Libyan Rebels, Aid Goes to a Divided Force
http://www.nytimes.com/2011/04/20/world/africa/20benghazi.html?pagewanted=all
2011.04.22  Is General Khalifa Hifter The CIA’s Man In Libya?
http://www.businessinsider.com/the-cias-man-in-libya-2011-4
2011.05.19  The colonel feels the squeeze
http://www.economist.com/node/18713650?story_id=18713650&fsrc=rss
2011.11.17  New chief for Libya's revamped national army
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5i2GtUw73moWubwhdFPXQ-ZouMDzg?docId=CNG.a3f2fe1bf5ddf5725a77594ecefbea23.211
2011.12.10  Libya army chief survives bid on his life
http://www.aljazeera.com/news/africa/2011/12/20111210181815984513.html
2011.12.11  Gunfight erupts near Tripoli airport in Libya
http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-16128837
2011.12.11  Tripoli airport closed after rogue militia attacks garrison
http://www.guardian.co.uk/world/2011/dec/11/libya-tripoli-airport-militia

Abdul Fattah Younes 反乱軍初代司令官
2011.07.28  Death of Rebel Leader Stirs Fears of Tribal Conflict
http://www.nytimes.com/2011/07/29/world/africa/29libya.html?pagewanted=all
2011.07.28  General's death puts Libyan rebels in turmoil
http://english.aljazeera.net/indepth/features/2011/07/2011728215485843.html
2011.07.29  リビア反体制派の軍司令官が暗殺される、内部対立か
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-22438720110729
2011.07.29  General Abdel Fattah Younes
http://www.telegraph.co.uk/news/obituaries/politics-obituaries/8671455/General-Abdel-Fattah-Younes.html
2011.07.29  Libya rebel killing raises loyalty questions
http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-14345847
2011.07.29  Questions over Libyan rebel leader's death
http://www.abc.net.au/worldtoday/content/2011/s3280896.htm
2011.07.29  Officer accuses fellow rebels in Libya killing
http://news.yahoo.com/officer-accuses-fellow-rebels-libya-killing-154937968.html
2011.07.29  Libyan rebel commander Abdel Fattah Younes killed
http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-14336122
2011.07.29  Mystery over Libyan rebel commander's death
http://www.aljazeera.com/news/africa/2011/07/2011728202129941725.html
2011.07.30  Libya conflict: Younes death betrays rebel divisions
http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-14350915
2011.07.31  謎に包まれたアブドゥル・ファタハ・ユニス・リビア反政府軍最高司令官の暗殺事件
http://www.energyjl.com/2011_folder/August/11new0802_1.html
2011.08.13  NATO’s puppet regime in Libya falls apart
http://wsws.org/articles/2011/aug2011/pers-a13.shtml
2011.11.29  国民評議会の参謀長暗殺、前暫定副首相が容疑者に
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-24396520111129

対リビアNATO空爆
2011.10.31  Last Air Mission of Unified Protector concluded
http://www.nato.int/cps/en/natolive/news_80133.htm
2011.10.31  NATO's Success in Libya
http://www.nytimes.com/2011/10/31/opinion/31iht-eddaalder31.html
2011.10.31  NATO formally declares October 31 end of Libya mission 
http://www.africasia.com/services/news_africa/article.php?ID=CNG.4cdb1e22c9f3043dd3649d8950960620.851


「民主化」される中東のゆくえ 2

2011年03月06日 22時09分22秒 | 『民主化』の正体


 中東「民主化」の攻防は、すでにリビアに移った。
 こちらは一筋縄ではいかない様相を呈している。
 しかし、アルジェリアやエジプト情勢が決着したわけではない。

暫定政権の弾圧には目をつぶる「国際社会」

 アルジェリアでは、ベンアリ大統領が失脚したあとも、デモが続いている。独裁政権を支えてきた閣僚たちが、そのまま暫定政権を構成したのだから当然だ。そんな政権に、国民のための政治が期待できるはずがない。独裁者を追放した人々は、その勢いで旧支配層を政権中枢から排除しようとした。

 しかし、そんな項目は「民主化」の工程表にはない。ベンアリを追放した時点で、民衆に与えられた役割は終わっている。あとは家に帰ってファンタジーの余韻に耽っていればいいのだ。「民衆革命」とは、あくまで方便であり、民衆は駒にすぎない。駒には自由意志による勝手な動きは許されていない。

 アルジェリア国民と違って、「国際社会」は暫定政権の構成員には何の異議も唱えなかった。民主的国家の建設など最初から眼中にはないからだ。民衆が独裁体制を終わらせたという体裁が必要だっただけだ。北アフリカ・中東地域で、「民主化」が行なわれるというファンタジーを世界に信じさせればそれでいいのだ。

 しかし、自分たちの役割も、「国際社会」の意図も知らないアルジェリアの民衆は、そのまま新たな抗議活動をはじめた。彼らは、自分たちがベンアリを追放したと本気で信じている。ファンタジーに酔っている彼らは、自信に満ち、どんな要求も実現できると勘違いしている。したがって、引き下がることを知らない。

 軍・警察はこうした人々の勘違いに対して、実弾でもって応えた。まさか軍や警察が、ベンアリ追放の主役である自分たちに銃弾を浴びせるとは思っていなかったはずだ。デモ隊は5名の死者を出したが、それでもひるんでいない。

 アルジェリアの民衆は自信をつけすぎた。それも無理はない。自分たちの運動が波及し、北アフリカから中東までをも呑み込んでいると思い込んでいる。エジプトではムバラクを失脚させ、いまは、リビアのカダフィ大佐が追い詰められている。すべては自分たちから始まったのだという壮大なファンタジーを信じている。その錯覚がチュニジア国民に自信と勇気を供給している。チュニジアの民衆はいまだ主役の気分でいる。これはちょっとした誤算というべきだ。

 民衆の気分とは関係なく、すでに民衆はすべての過程から排除されている。暫定政権こそがすべてにおける主体なのだ。「国際社会」の沈黙が暗黙の了解を与えている。暫定政権の行為はすべて「民主化」の工程なのだ。その暫定政権に対する抗議は、自動的に「反民主化」活動となる。したがって、デモ隊に対する武力弾圧も正当な行為なのだ。だから、「国際社会」は流血の事態にも沈黙を保っている。民衆の主張が正しいかどうかはどうでもよい。すでに民衆は「民主化」の部外者なのだ。

 この勘違いしたデモ隊を諭すために、親切なデモ隊が登場した。そのプラカードには、こう書かれている。「デモをやめて職場に戻ろう」。この台詞はどこかで聞いたような気がする。

 2001年、ブッシュ大統領は911事件を受けて「対テロ戦争」の開始を高らかに宣言したが、しばらくすると、彼はこう演説した。「いつまでも悲しんでいては、テロリストの思うつぼだ。さあ、平時に戻ろう」、と。ようするに、いつものようにアメリカ人らしく旺盛に消費しろ、ということだ。愛国的米国民は愛国的消費に励んだ。5万ドルもする高級車ハマーが飛ぶように売れた。「対テロ戦争」と「愛国者法」を承認させてしまえば、もう国民に用はない。国民はいつもどおり消費のことだけを考えて暮らせばよいのだ。

  2005年7月7日には、ロンドンの地下鉄とバスで複数の爆弾が炸裂したが、ほどなくイギリス政府はロンドン市民に対して、「仕事に戻り、普通の生活にもどろう」と呼びかけた。それは爆弾の炸裂からたった4、5日後のことだ。

 チュニジアの国民も、ベンアリに対する暴動という役目を終えたら、とっとと「職場に戻る」ことが期待されているのだ。しかし、薬の利きすぎたチュニジア国民はそうはしなかった。自信をつけた民衆はいまのことろ引き下がる気配がない。しかし、これ以上の弾圧は得策ではない。仕方なく、旧政権の閣僚が次々と辞任して、事態の収束にあたった。

 数ヵ月後に「民主的」選挙を実施すれば、国民は大人しくなるだろう。しかし、選挙で選ばれた政党や議員が民衆の意思を反映することはない。議会制民主主義とはそういうものだ。

 エジプトでも、同様の事態が発生している。前政権の閣僚の排除などを求めて民衆はデモを続けた。この当然の要求に対して、軍部は暴力でもって応え、タハリール広場の群衆を強制的に排除した。発砲こそしなかったが、この間まで仲間だと思っていた軍隊に、民衆は徹底的に蹴散らされた。すでに民衆の役目は終わったのであり、これ以降の抗議行動は犯罪として、手荒い扱いを受けるぞ、という軍部からの意思表示なのだ。

 ここでも「国際社会」は、エジプト軍の暴力行為に対して沈黙を保ち、民衆の正当な要求には無視で応えた。民衆の示唆行為はすでに不当であり、軍部の鎮圧行為が正当なのだ。この「民主化」のメカニズムにエジプト民衆は気づいていない。

 「民衆革命」とは、民衆を主役に担ぎ上げた単なる儀式にすぎない。セレモニーが終わった後も、いつまでも主役の気分でいてもらっては困るのだ。民衆はとっとと家に帰るか職場に戻れ、これが「国際社会」の要望であり、本音なのだ。

 甘美なファンタジーから覚め、民衆が「民主化」の正体に気づくのは、かなり先のことだ。



「民主化」される中東のゆくえ 2 : 資料編
http://blog.goo.ne.jp/leonlobo2/e/5e10a12e2e8179c6490dea9212afad91 


「民主化」される中東のゆくえ 2 : 資料編

2011年03月06日 22時08分58秒 | 『民主化』の正体


その後のチュニジア情勢

2011.01.20  Tunisian army fires warning shots at protesters
http://www.guardian.co.uk/world/2011/jan/20/tunisian-army-warning-shots-protesters
2011.01.20  チュニジア新内閣に国民から不満の声、改造求めデモ相次ぐ
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19110620110120
2011.01.27  チュニジアが前大統領を国際手配、27日に内閣再改造へ
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19223520110127
2011.02.18  チュニジアのベンアリ前大統領、意識不明か 
http://www.afpbb.com/article/politics/2785951/6832081
2011.02.21  チュニジア首都で首相辞任求めデモ 4万人 
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011022001000519.html
2011.02.22  前大統領側近ら33人尋問、千人以上を逮捕 チュニジア 
http://www.cnn.co.jp/world/30001573.html
2011.02.27  デモで3人死亡=暫定政府への反発強まる-チュニジア
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011022700028
2011.02.27  デモ隊が警官隊と衝突、4人死亡 チュニジア 
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011022701000099.html
2011.02.28  チュニジアのガンヌーシ首相が辞任、暫定政府への不満受け 
http://www.afpbb.com/article/politics/2787962/6886097
2011.02.28  新首相にカイドセブシ元外相=デモの死者5人に-チュニジア 
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011022800068
2011.02.28  ガンヌーシ首相が辞任表明=暫定政府への反発収まらず-チュニジア 
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011022800006
2011.02.28  チュニジアの新首相に元外相 暫定大統領が指名 
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011022801000160.html
2011.03.02  チュニジア、閣僚辞任相次ぐ 国家再建前に混迷拡大  o
http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011030101000982.html
2011.03.02  チュニジア暫定政府、閣僚の辞任相次ぐ 2日間で5人 
http://www.afpbb.com/article/politics/2788414/6898113
2011.03.02  Arab revolt: Tunisia's 'stolen revolution'? 
http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-12629758
2011.03.03  Tunisia president Fouad Mebazaa calls election  
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-12642942
2011.03.04  チュニジア、7月に制憲議会選挙 暫定大統領が発表 
http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011030401000138.html
2011.03.04  Tunisia to elect 'constituent team'   
http://english.aljazeera.net/news/africa/2011/03/20113405133628865.html#
2011.03.04  Tunisia PM: New cabinet in two days   
http://english.aljazeera.net/news/africa/2011/03/20113410232549873.html#


その後のエジプト情勢

2011.02.14  エジプト軍が議会解散、大統領選まで半年めどに暫定統治 
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19514620110213
2011.02.15  Egypt faces bumpy ride towards democracy
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-12460885
2011.02.17  エジプトのデモの死者、365人 保健省が集計 
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011021701000147.html
2011.02.18  エジプト軍が「フェースブック」 若者と連携
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011021801000198.html
2011.02.18  エジプト前内相ら4人拘束 ムバラク政権汚職容疑
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011021801000107.html
2011.02.20  エジプト、政治犯2百人超釈放へ 暫定内閣のシャフィク首相 
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011022001000120.html
2011.02.20  エジプト、大統領の3選禁止へ 任期短縮、出馬条件緩和も
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011022001000109.html
2011.02.20  Egyptian army takes to Facebook  
http://english.aljazeera.net/video/middleeast/2011/02/201122084526193225.html#
2011.02.20  軍に労働者との対話促す エジプトのイスラム勢力
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011022001000017.html
2011.02.22  ムバラク前大統領の財産を巡って高まる圧力軍との取引で一族は追及を逃れる?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5503?page=3
2011.02.26 「フェイスブック」上で軍が謝罪 エジプト、デモ隊強制排除で
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011022601000715.html
2011.02.26  Egypt protesters dispersed by force   
http://english.aljazeera.net/news/middleeast/2011/02/2011226221957428.html#
2011.02.27  大統領、3選禁止に=エジプト改憲案 
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011022700021
2011.02.28  ムーサ氏が出馬表明 次期エジプト大統領選 
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011022701000659.html
2011.03.01  ムバラク前大統領の資産凍結と出国禁止を命令 エジプト
http://www.cnn.co.jp/world/30001971.html
2011.03.03  ムバラク氏、サウジでがん治療=エジプト紙
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_date1&k=2011030300014
2011.03.03  エジプト暫定首相が辞任 辞任要求デモ継続で 
http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011030301000944.html
2011.03.03  シャフィク首相が辞任、近く新政権誕生へ=エジプト軍 
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19810620110303
2011.03.03  Egyptian military jails activist   
http://english.aljazeera.net/news/middleeast/2011/03/20113301027809803.html#
2011.03.03  Egypt's Prime Minister Ahmed Shafiq resigns  C
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-12634117
2011.03.04  Egypt PM addresses Tahrir rally   
http://english.aljazeera.net/news/middleeast/2011/03/20113483827365222.html#
2011.03.04  Egypt: Protesters storm Alexandria state security HQ 
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-12654714
2011.03.04  Violent clashes in Alexandria   
http://english.aljazeera.net/news/middleeast/2011/03/201134228359128.html
2011.03.05  19日に新憲法案国民投票=エジプト 
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_date1&k=2011030500014