白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

秘密の花園

2007-05-14 | 日常、思うこと
妹の会社の労組の定期慰安大会は宝塚大劇場にて
開催されるようである。
妹からのメールに拠れば、妹は若年層レクリエーションの
出し物(宴会における一発芸のようなもの)において
ゴリエとやらの衣装を着、
ヒップホップダンスキャリア10年の経験を十分に生かし
宝塚大劇場の舞台にて踊り狂ったそうである。
流石我が妹、兄として誇らしい。





その後貸切公演にて宝塚観劇をし、感激したとのこと。
大学時代、バイト先のファミレスに宝塚女優が来店した折、
作り込まれて馴染んでしまったと思しき立居振舞の品位、
言葉づかいへの配慮、何よりも後光のような雰囲気を感じ
スター、という存在を納得した記憶が蘇った。





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今日、母方の曾祖母の母、いわばひいひいおばあさん、と
いうひとの50回忌であった。
近年は寺院の財政も困窮しているのか、子孫の誰も知らぬ
先祖の100回忌、150回忌のお参りは如何ですか、との
営業活動が展開されているという。
武家と秦氏と職人の末裔である僕とて、それほど昔の人は知らない。
知っているのは、僕の曽祖父(ひいじいさん)が安政生まれである、
という驚愕の事実くらいである。
生きていれば今年で152歳である。
大鏡の語り部にはまだ30歳足りない。




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僕の自宅の道を挟んだ真向かいは駐車場となっている。
不幸の多い家だったが、今から10年程前に取り壊されて
今は、近所のスナックの客向けの駐車場となっていて、
奥の一隅には蓮華の花が、もう一隅にはドクダミが生えている。
ピアノとパソコンを置いてある部屋、僕が今駄文を物している
この場所から、それらはよく見渡せる。





今日もパソコンをいじりながらふと外を見ると、一面の青空、
飛行機雲、そして近所の商店の齢70ほどの主人が駐車場の隅で
ドクダミを摘んで、帰っていくようすが眺め見えた。
ドクダミは健康食品として知られている。
この主人も、摘んだドクダミを家で煎じ、ドクダミ茶として
飲んでいるのかもしれない。
今ごろ、眠りの前に、おそらく一服、といったところか。




しかしその20分ほど前、僕は犬を連れた近所の住人が
件のドクダミのあたりをうろうろしているのを見ていた。
犬は、後ろの片足をやおら持ち上げて、なにやらドクダミに
振りまいているようであった。





昨日の夕方には、近所の建設現場から駆けてきた年配の無精髭、
浅黒く汗に汚れたタオルを首に巻き、縒れた作業着姿の職人が、
例のドクダミの一隅に斜に向かい、小股を開けて立ち、
何やら取り出すようにして、やがてしばらく放心したように脱力し、
ぶるぶると一振るえしてから何やらしまい込み、こちらへ翻るや否や
小走りにもと来たほうへ駆け出していくのも見た。





明日も老店主はドクダミを摘みに来るであろうが、
残念ながら疎遠ゆえ、僕の見たものを彼に告知する機会が無い。
告知して彼の健康を害するのもまた悪気がする。
かの老主人は頗る健康そうな血色をしているから、
近所の住人にドクダミ茶の効能を説いて回っているやも知れぬ。
明日には別の人間がドクダミを摘みに来るやもしれない。




ただひとつ気がかりなのは、
もしかすると、老主人は件の犬の飼い主に、ドクダミの効能を
説いていやしないか、ということで、
それを承知で飼い主は犬をドクダミの園へ誘っていやしないか、
という、いささかの疑念である。




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妄想は膨らむが、このくらいにしておこう。
世間とはまあうまく回っているものだ。
漱石が狂喜しそうな光景である。
漱石は3代目小さんを贔屓にしていたそうだ。
「猫」にしろ「坊」にしろ、あれは落語である。




当事者にとっては悲劇でも、観客には喜劇である。
当事者の一大事は、観客にとって痛快なのだから。
その残酷に、また観客は笑うしかないのである。

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2 コメント

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Unknown (うるるい)
2007-05-18 02:06:16
無駄に心配しすぎでおもしろい笑
でもそーゆうこと考えるのなんかわかりますー
想像力の賜物ですな笑
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Unknown (lanonymat)
2007-05-19 11:47:34
さっき例の老店主がドクダミ摘んで帰っていきました。
今ごろ煎じてるのかなあ・・・

なんせ妄想族ですから(笑)
妄想は極端に行き過ぎるので困るけどね。
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