どうして誰もそんなに大切なことを伝えてくれなかったの

うすうす気づいてはいたけれど、
僕にとってこの１０年間、それは生きる支えでした。
その存在のおかげで、ぼくは復職もし、勉強もし、
演奏して、もっといえば生きてこれたと思います。
伝わることはないことも知っていて、
妨げにならないようにと、音信をなるべく絶っていた
それだけのことでした。
僕の心をおもんばかってのことだったのか、それとも
どうせ知っているだろう、ということからだったのか、
いずれにせよ、僕はそれをすべてが終わったあとに、
電子画面の告知という、悪夢のような形で知りました。
それを、たったひとりも、誰も、伝えてくれなかった。
今は、生きる支えというか、動機を失った気持ちです。
生きる理由を失ったような気持ちです。
悲しく、つらく、やるせない、と並べてみても
言い尽くせません。言葉にならないのです。
昨日まで、悪化の一途をたどっていた心身の状態には、
耐えきれない、抱えきれない圧倒的な現実でした。
致命的な絶望感しか、虚無と、脱力感によって、
いまぼくは一切の感情を失っています。
体に力が入りません。歩くのもやっとです。
動作は緩慢になり、ピアノを弾くことはできません。
ジャズをはじめたのも、様々に悩んで荒れ散らしたのも
１０ｋｇ近く痩せてしまったのも、
死にかけて仕事を辞めるときもずっと、こころの支えに
その存在を思ってきました。
さまざまのことを思い浮かべます。
２０歳の誕生日の集いや、そのあとの京都での一幕、
１年以上の絶縁、さまざまな会話、演奏でのサポート、
大阪を離れる直前の神戸、ジョアンのライブ、北浜と
大阪市立美術館、そして地元での邂逅まで、
言い尽くせぬほどのことがらがあります。
１０年間、大切に思ってきたから、そしてそれを
誰も教えてくれなかった、告げられなかったことは
本当にショックでした。
頭痛、手足のしびれ、胸の痛み、不眠が続いています。
疲れてしまって、何もする気が起きません。
強い孤独感と、未来への無力感ばかりが起こります。
興味をおぼえていたことにも無感動になりました。
今は、死ということばかりを考えています。
誰も僕を救えない、僕しか僕を救えないのです。
けれど、もう、ちょっと、無理かもしれない。
でも、自殺したくてもできないのです。
年老いて弱った祖母と、年老いつつある両親がいて、
僕の収入が途絶えれば、存在が消えれば、どうなるか
わかるだけに、死ねません。
死にたいのだけれど死ねない、そして、誰も告げては
くれなかったことへの衝撃でもって、
壊れてしまったような気すらします。
悲しむために生まれてきたのか、傷つくために生れて
きたのか、しあわせになれないように生きているのか、
しばらく大阪方面には行きたくありません。
行けなくなってしまうような気もします。
自分が余計にみじめになるのです。
それに、羅針盤も失いました。
このままではきっとピアノも弾かなくなって、一切の
交遊も絶って行きかねないような不安があります。
もうこれ以上傷つきたくもないし、悲しみたくもない、
失語症やパニック障害や、失職やといったことがらや、
さまざまの裏切りや人間の現実や奥底の闇をこれほど
見てきたのに、もっと悲しんで傷つけということかと、
それを生きる動機にするのには僕は弱すぎます。
ずべてが自分の思いや行動から発生したことだから、
誰にも責任はないのです。
だから、もうどうしていいかわかりません。
涙やなんやらのカタルシスなど役にも立たない。
仕事場にも、家にもどこにも居場所がないのなら、
どこに作ろうかと思って、この１５年生きてきましたが
僕は１５歳から今までの、人間の一生で一番いい時期を、
一切ゴミにしてしまったようにさえ思われてきます。
悔しさとむなしさが全身を痛めつけています。
助けて、といっても、助けられるものではないから、
僕は壊れるままならそれでいいと思っています。
みんなしあわせになってください。
それが僕の願いです。
届かないことも分かっています。
無視をする人もいるでしょう。
でも、ぼくはみんなに幸せになってほしいのです。
こんな思いでいるのは、僕だけで十分です。
もうとりかえしがつかないから、きれいごとなど
言えません。
罵詈雑言なら永遠に言い続けられることでしょう。
でも、みんな、しあわせでいてください。
休もうにも、休めません。
ただぼくは、朽ちるように今寝ています。
でもどうして誰も、そんなに大切なことを、
誰も伝えてくれなかったのですか。
告げてくれなかったのですか。