白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

書けない

2008-04-06 | 日常、思うこと
文章が書けない。
知見について、書きたいことも、
想いについて、書きたいことも、
告白について、書きたいことも、
あるのだけれど、書けない。




書こうとして、キーボードを打っていて、
視覚的な効果や文章としてのフォルムや
叙述の的確性などを思い返して黙読して、
あるいは音読して、
文章として、手紙として発信するほどの
ものではない、と思ったが最後、
自己告白の恥ずかしさ、自意識の過剰に
自制をしようという動きも加わって、
平日の帰宅後や休日の午後の数時間を費やして
書き上げたものを抹消してしまう。





あるいは、口をついて出ようとする思いがけない
ことば、あるいは奇声のような衝動を、
口の中にもごもごと留めておき、
これを何とかして書きとめようとして
パソコンの前に向かった瞬間に、考える、という
行為のことごとくが停止して、くず折れる。





ピアノはなんとか弾ける。
伝えたい思いも、それを伝えたい相手もいる。
それが、出そうとした瞬間に、挫折する。
引き続いて、黙って椅子に座ったまま、日を送る。
何を考えることもなく、ただ、呆然として過ごす。





桜も咲いて、
ラジオから殺人のニュースが流れ、
仕事場には時折、脈絡趣旨ともに不明の、
壊れかけた言葉でもって電話がかかる。
苛立つ言葉が、街にあふれていて、
それを払いのけて帰ってくると、
親戚から、余命3か月という電話がかかる。
後輩たちは就職し、旧友は転勤し、
招かれはしないが、結婚の知らせも多くなり、
周囲からは見合いの話も多くなった。
仕事では、一層の多忙と責務がこの一年を
貫くことが明らかとなった。





音楽も、想い人も遠く、友も遠く、知も遠いが、
何をしていいかが分からずに、呆然としている。
ただ呆然としている。





夜が来た。


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