白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

no pain,no rain

2006-11-05 | こころについて、思うこと
11月2日から3日にかけ、牡蠣に当たってしまい
体調を崩し、微熱と嘔吐のせいで一睡も出来ぬまま
這々の体で3日の午後に特急に乗り込み、
当初予定していた京都での若冲見物も泣く泣く断念し
ぐにゃぐにゃの身体を無理やり引きずるようにして
大阪・堺筋本町のホテルに直行。
この日の夜、とあるひとと会食の予定であったのだが、
指定された場所に向かうも、そのひとは現れなかった。




人間とは、そういうもの。




***********************




4日、desperadoの名を使い、
lanonymatとしての公開演奏を大阪にて試験的に行う。
不特定の聴衆が入れ替わり、不特定のジャンルの音が
連続する場所で、30分の時間制約の存在は
予想していた以上に厄介なものだった。




イマジネーション、音の現れを「待つ」という行為が
一切出来なかった。
おもむろに指を落とし、指に導かれて音を探っていき
ある一つの方角を見出していくことができないとき、
結果は散々たるものになってしまう。




演奏中にも、背中や耳から全身へと、
会場の空気感、聴衆のざわめきが侵入してくる。
当初自分の中にぼんやりと浮かんでいた音の有機的な
運び方は失われ、こころのなにひとつ込められぬ
音が、勝手に指が動いて羅列されていく。
ちがう、こうじゃない、ちがう、そうじゃないんだ、
という思いが、イマジネーションの萌芽のことごとくを
摘み取ってしまう。




汗だくになりながら僕の音を探る、トランペッタ―の
こころの疲弊はどれだけのことだったろう。
1曲目、2曲目と、記憶の音を頼りにして
なんとか音楽を試みたのだけれど、
両方ともに、結果的には音楽を投げ出してしまった。




3曲目、トランペッタ―の音をガイドとして
始めたのだけれど、
こうやれば、聴衆は納得する、という方法を
生のままに出してしまった。
結局、審美的に、許せない演奏になってしまった。
納得のいかぬ出来になってしまったのは
僕の至らなさのせいだ。
共演者、聴衆、スタッフに申し訳なかった。




そこで、演奏を聴かれた方にお願いがあります。
忌憚のないご意見をぜひ、コメントに寄せてください。
お願いします。




*************************




4日夜、Mr.Biff、後輩と飲む。
そのまま、先輩宅に宿泊。
過去、自分が所属していたビッグバンドのライブを収めた
DVDを久しぶりに見る。
カウント・ベイシーのレパートリーを主に演奏していた
バンドであるのに、
当時21歳の僕は、ギターにワウとディストーションをかけて
エフェクト的なカッティングを刻ませ、
ドラム・ベースにヘビーファンクのビートを要求して、
Cmを基調としたモダンブルースを、リハーモナイズの海の中に
妖しく渦巻かせていた。
ずいぶん小生意気なことをやっていたものだと思う。
しかし、その音には、確信と自信が宿っていた。
そして、いまは?




**************************




5日、たったひとりのひとを前に演奏を行った。
書き下ろしたオリジナル曲を贈った。
そのひとのこころが、そのようであるように、と
祈って、そこにいてくれることに感謝して、
「no pain,no rain」などという名前を付けて。
恥ずかしながら。




もうひとり、話したいひとがいたのだけれど、
そのひととは、話せなかった。




届かぬもの、伝えようとして叶わぬもの、
その惨めさを再確認するまえに、帰ることにした。




ひとびとはあたたかいのに、そこに笑っているのに、
いてもいいよ、という承認もあるのに
なぜか、ここにいてはいけない、と思ってしまう。
居場所のなさに胸を締め付けられる。
そんな旅だった。




暖かくも、楽しくもあるのに、
切なくて仕方がなかった。
遠さゆえのものか、何ゆえか。




**********************




この旅で出会った全てのひとびとに感謝します。





そして、あとは僕のこころの問題なのです。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (lanonymat)
2006-11-07 06:49:52
搾り出す、というよりは、
こころとは裏腹の音、になったというか。
いつもだと、もっと巨大に展開して、
もっと自由にさまざまの技法を使うんだけどさ。
当人の意識としては結局、あの場所に媚びちゃって、
こうすればこうなる、というような惰性の音を
連ねちゃったような感じで、
自分の音に納得がいかず、申し訳なかったな、と。

けど、聴き手の感じ方、ってのは、それとはまた
全然違うわけで。
たぶん、僕の音はずいぶん変わったんじゃないかな。
以前に比べると。
返信する
Unknown (オカダ)
2006-11-06 22:48:27
優しい音の響きだなぁ、と
安心して聞いていたのですが。。
そっとそこにあるような。

実は、搾り出していたんですか。
返信する

コメントを投稿