白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

adagio

2007-03-22 | 日常、思うこと
死を引き裂くようにマーラーの第九交響曲を浴び
眼は悲しく笑い狂おしい響きに愛された
漆黒の闇へと陥入していく寂漠と
孤独をさかさまに飲み込む虹橋は
花のような傷を味わいながら
途方に暮れるように小さく崩れて風に折れる
夏の破片が微かな音をたてて流砂を偲ぶとき
海のなかで弾けた飛魚の鱗をかき集めて
空いっぱいに象眼して天球を拵えたのは
僕たちのせいいっぱいの償いだったのだろう
抱きしめるものもなく
忘れてもしまったけれど
蒼空に浮かぶ小舟のような月がじっと
その手に触れる星々の諦めを掬っては
渇いた僕の口へとまるで血のように運ぶ
死のようにそれを飲みながら
マーラーは消えて
針山のなかへ


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