白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

洋行譚 6日目

2010-07-15 | ドイツ・スイス 旅行記
写真はこちらからご覧ください。

6/19~6/22 am
http://blog.goo.ne.jp/photo/21501
6/22pm~6/24am
http://blog.goo.ne.jp/photo/21543
6/24pm~6/25am
http://blog.goo.ne.jp/photo/21599
6/25pm~6/27
http://blog.goo.ne.jp/photo/21622




6月24日(木)



9時、朝食もとらずに、チューリッヒ市街へ歩み出た。
街並みの風景を写真に収めるためである。
辿った道筋は、まず、旧市街広場からリマト川に下り、





橋を渡って、高級ブランド街、













高級ホテル街、金融街を通り抜けて、















チューリッヒ湖畔に出てしばらく歩み、





















オペラハウスで引き返して、再び旧市街に入り、















グロスミュンスターの丘の上から、フラウミュンスターと、
聖ペーター教会の大時計を見下ろしたあと、











再び川を渡って、チューリッヒ発祥の地と言われる丘、
リンデンホフに登り、引き返してホテルに戻る、という
ものである。













およそ、2時間ほど、歩いたろうか。
快晴のチューリッヒの朝は、街の美しさを際立たせる。
湖のはるか彼方には、幻影か、蜃気楼のように、
アルプスの山容がぼんやりと浮かんで見えた。



湖水をゆっくりと遊覧船が滑り、漕ぎ出でたカヌーや
ヨットの白い帆、白鳥の姿があちこちに見える。



湖畔のベンチには、ひとびとが寝転んでいたり、
本を読んでいたりと、それぞれが思うがままの時間を
過ごしている。



夏には仕事の合間に、この湖水に飛び込み、泳いだり
涼んだりする、ひとびとの姿も見られるという。





街のあちらこちらで、中国人の団体観光客を見た。
彼らの立ち居振る舞いは、お世辞にも良いとは言えない。
そして、彼らの姿に顔をしかめる、腕に彫り物をした
現地の若い男女を少なからず見かけた。
こちらは、何かあるといけないと思い、ジャケットに
ネクタイをして、気をつけていたこともあって、
彼らの罵声を直接浴びることはなかったが、
市電の駅のところで、飲み残しの炭酸飲料のボトルを
彼らが中国人の群れの後ろ姿に投げつける様子を見た。
おそらくは、農協観光やJTBあたりに引率された
30~40年前の日本人も、似たようなものだったろうと
推測される出来事だった。





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12時、レストランに入った。
角切りのステーキを、デミグラスソースに絡めて、
タイ米に盛り合わせ、生クリームを添えたものを
ビーフストロガノフとして出しているのを見て
そいつを無性に食べたくなり、注文した。
27フラン、日本円で2300円である。
これにドリンクをつけるので、会計は3000円近い。





14時、チューリッヒ市当局を訪れて、
河川再生事業にかかるヒアリングを行った。
日本の地方都市の都市計画図を持ち込み、地理特性と
河川の毎秒平均流水量、潮汐差等の基本情報を伝え、
これをモデルケースとして、実現可能性を探るという
方式を取ったところ、
エアランゲン=ニュルンベルク大学の博士号を持つ
当局者は、こちらに意気を感じてくれたのだろうか、
無愛想ではあるけれど、懇切丁寧な対応をしてくれた。
結局、チューリッヒ工科大学を経由し、郊外視察まで
2時間の予定が、5時間もの長丁場になってしまった。








チューリッヒ市の建設局の地下には、15m×10mの
チューリッヒ付近の地形の鳥瞰ジオラマがある。



これを見終えて謝意を伝えたとき、時計は19時15分。
通訳の方に聞くと、こんなことは、まず無いのだそうだ。





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ホテルに戻り、着替えたのちに、
リマト川沿いの電停に向かい、切符を購ってから、
旧友との再会のため、トラムに乗った。
切符を持っていないのが見つかったときには、
80フランの罰金だという。
数駅先、クロイツプラッツというところで降りて、
レストランらしき賑わいを見つけ、向かおうとした先に、
こちらに手を振る、見慣れていた人影が見えた。
横断歩道を渡ったところで、握手して再会を祝した。





時刻は20時30分、テラスの席の正面モニターには、
サッカー・ワールドカップ、日本対デンマークの試合が
まさに今、始まろうとしているのが映っていた。
この席には、僕、旧友夫妻、同僚に加えて、
旧友が知り合ったという、短期留学中の医師を合わせた
5人の日本人が集まった。
隣のスイス人は、しきりにこちらに「カンパーイ」、
「ニッポン、チャチャチャ」と、陽気に声を掛けて来る。
こちらも、ビールで乾杯をして、少しく緊張した心持で
笑いあいつつ、ピザやポテトをつまんでいた。





そこに、日本の遠距離のフリーキックを告げる笛、
本田の指示、無回転球の弧の軌道、揺れるゴールネット、
その映像から感じ取られる美しさに感嘆して、
その美しさについて、同感であるかを旧友に確認したり、
周りのスイス人たちと歓声を上げたりしているうちに、
今度は、遠藤のフリーキックが、再びゴールネットに
吸い込まれるのを見て、
喜び、騒ぎたてながらも、今、この眼で見ているものが
本当に日本代表チームなのか、半信半疑、否、むしろ、
信じられない、という思い、
何か、化かされているのではないかというような心持で
若干、浮つきながら、その後の経過を見つめていた。





試合終了寸前の、岡崎への本田の切り返しの鋭さに
嘆息しているうちに、試合終了のホイッスルが聞こえた。
このレストランで大きな歓声を上げているのは、やはり、
僕達5人だけしかいない、日本人だけだった。
本音では、スイス人はデンマークの勝利を祈っていたと
思われる様子が、その表情や素振りに感じられた。
しかし、彼らは、Glückwünscheという言葉とともに、
「カンパーイ」と、僕らと祝杯を共にしてくれた。
信じられないような勝利、という感想しか持てないままに、
戦評を5人で交わしていると、
レストランの給使が、「これは勝利の酒です、どうぞ」と、
ハーブリキュールをふるまってくれた。
この旅で、間違いなく、最高のひとときだった。





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23時、翌日9時にチューリッヒ中央駅での待ち合わせを
確認して、旧友と別れ、帰途についた。
気分良く、しこたま酔って、その夜、眼を覚ますことなく、
翌朝の時計を見て驚愕するのは、また、別の話である。






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