舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

スキも大切です

2009-07-22 01:34:12 | ダンス話&スタジオM
連日、今年のミスアロハフラになったチェリッサさんを褒め讃えておりますが、彼女の踊りは自然で力が抜けているように見えながら、実は意識の行き届いた繊細な踊りである事は留意すべき事柄です。

踊りには粗や隙がない方が良い。これは紛う事なき事実です。
しかしながら、その「隙のなさ」が見る者にモロバレなようでは、まだ完璧な状態とは言えません。
フラであれば、チェリッサさんのようにあくまでも自然に踊る(少なくとも、そのように見せる)事が大切ですし、ましてこれが色っぽさを重視するベリーダンスであれば尚更のことです。

ベリーダンスは色気があってナンボ。
日本でもだいぶベリーダンスがブームになり、いろんな種類が踊られるようになった今も、私は声を大にしてこう主張させていただきたい。
私がいう「色気」とは、ただ脚や腹や胸を露出しているだけで一部の人が感じる色気のことではありません。それだけで満足する人のことなどどうでもいいのです。
私の理想とする女性、ディータ・ヴォン・ティース様は、パリコレでエレガントなドレスを着ていても、自身のショウでほとんど一糸まとわぬ姿になっていても、まったく同じにセクシーです。
つまり色気は着ているものの種類や露出度によって決まるのではない。ひとえにその人自身の力によるものです。

そして、色気を醸し出すためにはある程度の隙がなくてはなりません。
一般的に、カッと見開いた目よりトロンとした目が、引き結ばれた口より半開き程度の口(エルヴィス様の顔は最良の例です)の方が色っぽいと感じられることからも、それは明白ですね。
踊りだってそうです。どこかに隙がある(ように見せる)ところに、人は色っぽさを感じるのです。

約10年前、私の好きだったアメリカのベリーダンサーがいらっしゃいました。
彼女のレッスンを受けたことがありますが、時間のほとんどをストレッチに費やし、残りはすべて基本動作の練習に終始するという、極めて求道的なものでした。
彼女の踊りもそれを反映し、とにかく基本に忠実で、音への反応の仕方もまるで教科書のお手本のように「こう来たらこう来るな」という想像を見事なほど裏切らないダンスを踊ります。
そして、決めポーズもすべてソツがなく、指先まで神経が行き届いているのが傍目でもよく分ります。

10年前の私は彼女のダンスに惚れ込み、ほとんど形態模写するくらい研究していた時期がありました。
なぜならば、当時の自分のダンスは非常にガサツで、隙の無さこそ自分に最も必要な要素だと思っていたのです。
彼女が私に与えた影響は非常に大きく、彼女のおかげで私のベリーダンスがだいぶ細やかになり、同時にフラも昔より繊細に踊れるようになりました。

面白いのは、フラとベリーダンスはまったく異なる踊りであるにも関わらず、お互いの特徴を直接取り入れることをせずして、上達段階において相乗効果がある事です。
一方の違いを知ることによって、むしろ他方の特徴を客観的に捉えられると申しましょうか。

しかし、さんざん「隙のない踊り」を研究した果てに、私は「隙がないだけじゃダメなんだ」という現実にぶち当たりました。
本当に隙をなくしてしまったら、色気もなくなってしまいます。これはベリーダンサーとして非常に由々しき事態です。

だからといって、マジで隙だらけの踊りを踊ったら単なるヘタな人になってしまうというのが、難しいところです。
素敵なベリーダンサーの中には、どこにも気合いを入れず自然体で踊っている(ように見せる)ことに成功している人も多く、それを誤解した人が、ただくにゃくにゃへろへろしている残念な姿をいろいろ観てきました(笑)。

実はさっきからカッコ書きしている「(ように見せる)」ってとここそ、踊りにおいてとても重要なのです。
これは、ベリーダンスだけでなくフラでも必要なことです。
例えば去年のミス、スガヌマさんは、単独で観ると基礎に忠実な良い踊りを踊っているという印象でしたが、今回のミスのチェリッサさんのあまりにも自然な演技と続けて観たところ、スガヌマさんの踊りに見え隠れする「力み」や「故意な感じ」の存在に気づいてしまいました。

とはいえ、虚仮威しでなく本当に優れたダンサーになるためには、どうしてもスガヌマさんの段階も経なければなりません。
誰でもまずは隙のない基礎の踊りを身につけるところから始めなければならず、ショートカットは出来ないのです。

自分の理想の踊りに到達するためには、違う道に迷い込んではいけないのと同様に、近道も出来ないのですね。
しかし、私ってやたら踊りを道にたとえたがるな。私こそ求道者だったりして。
傍からはそう見てもらえないようですが。ま、私の踊りを良いと思っていただけるなら、ニートと思われてたって構わないさ。

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