京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

たゆまぬ精進

2023年07月31日 | こんなところ訪ねて

参拝者は少ない。いつだって解放されていて、「ようお参り」と迎えてくれる東本願寺さん。
ほんのひととき静かに座っているだけで気持ちは整えられるし、安らぎも覚える。今日恵まれたこの機会に、ご縁に感謝して合掌。

隣の阿弥陀堂に移ると、高齢の女性が椅子に座っていた。
「この金箔、本物かなあ」って私に(みたいだった)。
エーッ!?

 

加齢とともに一日のエネルギー量は減るのに、タンパク質の推奨量は変わらないという。
「毎朝、豆腐ばかり食うようになった」とは安岡章太郎(短編集『酒屋へ三里、豆腐屋へ二里』の表題作に)。
「冷奴で食うのが一番いい」。そんな暑さが続く。

なんだ、まだ豆腐屋の話をするのか?と思われるだろうか。
が、やはり松下豆腐店(『豆腐屋の四季 ある青春の記録』)に登場いただけば、梅雨が明けてカラリとした晴天が続くと豆腐もよく売れるようになるという。お客さんには新しい豆腐を売るために、夜明け前、午前、午後、夕べと、小分けして豆腐作りに励む。
かといって炎暑続きでも売れ行きは下降するらしく、「ある日は大不足で、ある日はたくさん廃棄となる」。
機械化を嫌い、手作りにこだわる店主の気持ちはざわつく。
「いったい、人が豆腐を食べようという気になる条件は何なのか?」
「昨日はあんなに豆腐を欲しがったくせに、今日はサッパリ食べようとしねえ!」

一年間の、豆腐屋の四季。
寝る前に読み継いで三週間。「五本のマッチ」の火よりもっとぬくく、温かく心を灯してくれた一冊だった。


いい豆腐は、ゆでても崩れない。「どんなことがあっても崩れた狂言はするな」という教えも込めて「お豆腐狂言」の家訓を掲げる狂言の茂山家。
竜一兄ちゃんの奮闘も負けてはいない、豆腐作りに、歌に、随筆に。


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2 コメント

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精進料理 (Rei)
2023-08-02 06:32:39
遠来の客の要望でお豆腐の南禅寺(?)へ行ったことあります。
申し訳ないことながら料金が高くてびっくりしたことだけ覚えています。
タンパク質の推奨量は変わらない>そのようですのに
私はすべてのお肉は余り食べません
少しですがトラウマがありまして。
大豆製品は積極的に摂っています。
京都の精進料理発達は寺院の数からも頷けます。
スーパーでお豆腐の棚にある「京都ブランド」は
少し価格も高めですが、惹かれて買います。
松下豆腐店のお豆腐、食べてみたいです。
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松下豆腐店 Reiさん (kei)
2023-08-02 16:58:46
若い頃は「わざわざお豆腐を食べに…」とは消極的でした。
よい水が得られるところで、おいしいお豆腐が作られるとかですね。

悲しい出来事があって寝付けない夜も、風で頭が上がらない夜も、弱い身体で神経痛を病んでも
10数件の小売店に卸すために来る日も来る日も午前2時、3時には起きて、
一人段取りをしなくてはならないのですから、大変なことだと思いました。

そうした生活に根差したところから朝日歌壇に投稿した入選歌が、選者評とともにほぼ全部載っていました。
毎日新聞大分県版の「毎日サロン」に月2回1000字内の文章を書く欄を得て、
そこからもまた日常の思いが沁みてきました。
まことに尊いお豆腐?です。
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