京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

最初は小さな芽ばえ

2023年08月20日 | こんな本も読んでみた
本日は完全休養日。
ちょっとおおげさな? ただ何も予定がなく、家で気ままに過ごせそうだった。
午前中から気温が上がって暑い。昼を半時ほど回ったころ、暗くなった空からドシャブリの雨となったが、再び晴れあがった。


上野英信という作家の存在を知ったのは『花をたてまつる』(石牟礼道子)が最初だった。
原稿用紙の使い方も十分に知らずにいた頃、すでに交友のあった氏によって『苦海浄土』は校正され、出版へと至ったことなども記されている。
平素その名を思いだすことはない、小さな出会いだった。

それが、今夏の古本まつりで購入した『豆腐屋の四季』文庫版にあったプロフィールで、大分県に生まれた著者の松下竜一は上野英信を知ったことから記録文学に目を見開いたという経緯を知ることとなった。
上野英信の名を改めて刻んだわけだが、まだ何かがもぞもぞ…。少し前、葉室麟氏の著書で『追われゆく抗夫たち』を著した上野英信とのことを読んでいたのだ。

22才の誕生日前日に、広島で被爆したという。1964年、親子3人で筑豊炭田の一隅、福岡県鞍手に移り住んだ。子息の朱(あかし)氏は小学校2年生だった。
〈京大中退という学歴を隠して炭鉱労働者として働いた〉英信。

 

小さな好奇心は作品名をメモさせ、古書店を訪ねる楽しみに拡大した。出会ったのが『蕨の家 上野英信と晴子』だった。子息・朱氏の目から見た両親の後姿で、評伝ではないとある。
生涯ただ一つのエッセイ集『キジバトの記』の原稿を遺して亡くなったという晴子さんは、どんな方だったのだろう。
少しだけ読み進めた。

なにかに導かれるようにめぐり合わせていく運の良さ。
なんでも最初の芽生えは小さなものなのだ。でも、そこから始まる。


〈 桔梗や信こそ人の絆なれ 〉 野見山朱鳥
好きな花の筆頭格。仏に供え奉ろう。

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