京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

小さな財産 ひな型

2022年03月08日 | 展覧会
東大寺南大門の仁王像(阿形と吽形像)を造るために、まず雛型(縮小の模型)を制作する。そのうえでそれを分解して、実際の像の各部材の大きさに引き延ばし、墨付けする ―
といった工程の描写が『荒仏師 運慶』にあった。

「分解」「各部材」。これは技法が一木造りから寄木造りに変わったためで、最後は部材を一つにまとめあげるわけだが、仁王像の巨大さを思い浮かべながら、ミニチュアからどう拡大したのだろうかと興味がわいていた。


龍谷ミュージアムでは、江戸時代から平成まで15代続いた京都仏師・畑治良衛門が伝えてきた雛型の特集展示「仏像ひな型の世界Ⅲ」が開催中だった。先月末、この拡大法にも触れる講演会があったが参加できなかったので、知りたいことは知り得ないまま。
もういいか。見なくても困らない。とは一応気になる証拠。今日は素晴らしい陽気だ。もう見ることはないだろうからと思い直した。
一つ。親鸞と墨字で記された10センチもない彫像に“墨付け”を見た。といってもマス目ではなく1、2筋の“線”が目についた。拡大からの工程のビデオ作りなどしてくれてあればいいのに。


行けば行ったでこってり見てしまう気の入れよう。大方見なくてもよかったなと思ったが…、そんなこと言わんとこ。

【雛型とは建築でいえば設計図面に当たる存在です。大きな仏像をどのようにして効率的に制作するかを考えるための縮小模型として、または施主や発願者に見せる完成予想図としての役割などを果たしたのでしょう。完成品は手元を離れてしまうため、仏師や工房にとっては木組みを記録する手控えとしても役に立ち、まさに財産に値します】
って。
雛型は工房の外に持ち出されることはなく、その存在は一般に知られていなかったという。
コメント (4)
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