
今夜は明日の立春を前にした「節分」、つなぎ目の夜となる。新しい年の神が入れ替わる、そのすきを狙ってつけ込もうとする邪悪な鬼どもを追い払わなくてはならない。旧暦では、その朝廷の儀式が追儺と呼ばれ、「おにやらい」とも言われた。柊の枝に鰯の頭を挿すことはしないが、豆だけはまこう。鬼は外!
どの人の心にも鬼は棲むという。仏面に言葉巧みに騙されて、酷い仕打ちに泣くこともあれば、鬼面ながら心根の優しさに打たれる場合もあるだろう。仏面鬼心、鬼面仏心。
乳がんの手術、転移、摘出、また転移、散弾銃を打ち込んだように広がって手術不可能となって、「何一つ自力なし 我がつくる善にはあらず 悪にはあらず」と綴って還浄された47歳の坊守さんは、清沢満之師の「天命に安んじて人事を尽くす」という言葉を味わい、「どうにもならないことはどうにもならないまま」に、すべき事をなし、賜った命を精一杯に生きていこうと努められた。
一意専心と言ってよいのだろう。容易じゃない「おまかせ」だけれど、彼女の言葉に憧れもある。生じる迷いや葛藤を経つつ、私も生きているのだと思う。鬼は外!
(小林良正さんのほほえみ地蔵)