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京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

『そして、バトンは渡された』

2019年05月15日 | こんな本も読んでみた

不幸じゃない。けど、どうしたって寂しい。
〈私には父親が三人、母親が二人いる。家族の形態は、十七年間で七回も変わった〉

ポチを連れて散歩に出て、空の下、川を見ながら涙を流していた小学校5年生の優子ちゃん。不安、淋しさ、悲しさ、やるせなさ。
「わたしの家族ってなんなのだろう」

高校3年生の優子ちゃん。父親の「森宮さん」と暮らして3年になる。
合唱祭でピアノ伴奏を勤める優子は、ピアノをめぐって父・森宮さんとの間にぎくしゃく感が生まれる。このあたりからグッと興に入りだす。
合唱祭の前夜。課題曲「ひとつの朝」を優子の伴奏に合わせて森宮さんが歌うと言い出す。優子は森宮さん20年前の高校3年時の合唱祭での曲を調べ、その「糸」(中島みゆき)の譜面を用意していた。

「自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日がやって来るんだ」
「親になるって、未来が二倍以上になることだよ」
「優子ちゃんと暮らし始めて、明日はちゃんと二つになったよ。自分のと、自分のよりずっと大事な明日が、毎日やって来くる。すごいよな」
「自分以外の未来に手が触れられる毎日を手放すなんて、僕は考えられない」

「いつも流れに従うわけにはいかない。この暮らしを、この家を守りたい」。
森宮さんの「覚悟」を底流に、優子は進学し就職を決め、やがて結婚式を迎える。

いろいろな事情で周囲に翻弄される子供たちは多く、血のつながりや家族の形態に思いがいくこともあった。一人の少女の成長に重ねて、すべての子供たちの幸せを思うことにつながる…。本屋大賞受賞作品。
コメント (2)
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