『活版印刷三日月堂』シリーズ完結。
一昨年9月に最初の2冊を手に取った。
娘に回したところ、その後さらに2冊を購入したようで読まないかと勧められ借り受けていた。最後は風邪薬による眠気に抗いながらになったが読了した。
小さな活版印刷所「三日月堂」を舞台に、周囲の理解や協力を得て店主・弓子はこれからも「人が複雑に織り上げた言葉を活字で届けたい」と仕事を続ける思いを固めていく。共に印刷所を経営していく良きパートナーを得たようだ。そして、二人はいっしょに生きていきたいと確かめ合う。「三日月堂の夢」、最後に見えた希望に、弓子の、人の、生きる意味が見えてくる。
関係を紡ぎ合う人たちの間にはやさしい調和が生まれる。親しい感じというのが幸福感を誘ってくれた。文章も温かなぬくもりに満ちている。弓子のひたむきさに、時に切なさにも似た思いがこみ上げて来たり…。読後感のいい作品はいい。
「よい小説には必ず幸福感がある」と辻原登氏の言葉にあった。川越はいい町だなあ…。