グリム童話は不思議だ。洋の東西を問わず誰もが幼少の頃に必ず触れるストーリーの数々。代表的な『赤ずきん』すなわち"Red Hood"しかり。そもそも"頭巾"なんて呼称は現代においてこの題目以外でお目にかかることはまずない。なにゆえに"赤い""頭巾"であるのか、なにゆえにその赤頭巾ちゃんはお婆さんの家に届けものをすることになったのか。母と祖母、狼と狩人は一体何を象徴しているのか。ぶどう酒とパン、狼の腹の石という小道具の役割は何なのか。
『赤ずきん』という少女が誕生このかた200年余。民俗伝承物語研究・精神医学研究と多角的な検証から様々な著述が記されている。
文学を独特の見地から掘り下げる趣旨で2006年ごろまで活発に発信していたweb雑誌FOLIOの中に、素晴らしい特集を見つけた。
http://folio.daa.jp/03/feature/aka/aka_01.html
ことほど左様に、古来より少女が大人になる過程において直面し打開しなけれならない問題、男女の性差とそれぞれの特質の問題が根底にあって、童話という形で潜在的に警笛を鳴らし続けているといえるのではなかろうか。
さて。私が『楽園シリーズ』の中にご登場頂いたのは3つのグリム童話"赤ずきん(Red Hood)""ヘンゼルとグレーテル(Hansel & Gretel)""眠りの森の美女(Sleeping Beauty)"。いずれの主人公も生と性をありのままに謳歌し、あっけらかんと自由に大地を闊歩しているととらえてもらえると嬉しい。
大きな体は攻撃のためではない。諸々に横たわる問題と次々に降ってくる問題を、おおらかに笑顔で軽々と超越してほしいと願うから。
人生は楽しい。創り上げる醍醐味があり、歩む意味のあるものだと、小さな子供に伝えていくのが童話の大きな役目のひとつなのだろうと思う。