言の葉ひらひら - Wordy Leaves Dancing

「はじめに言葉があった」
"In the beginning was the Word."

英語いろいろ、人いろいろ

2007-01-30 | 言の葉
最近すごいですよ、ドカ雪が。めったに休みにならないこの学校も休校です。おかげで言の葉がつけられます!(小声:宿題もします。)さて新しい学期が始まり、3週間が過ぎました。今学期は、音声学と音韻論、言語と文化、そして社会言語学の三つのクラスを受講しています。なかなか面白そうですよね!それから、教育学部の教授補佐と、ESL部の英語講師の仕事も続けています。講義で学んでいる内容と自分のクラスで教えている内容が結構かぶったりしているし、それにinputとoutputの両方の場が与えられていることに感謝しています。

「言語と文化」のクラスでは、毎回ムズカシイ論文を読まないといけないのですが、今回はエッセー。しかも、私の好きな映画 “Joy Luck Club” 『ジョイ・ラック・クラブ』の原作の著者、Amy Tan (譚恩美)さんによる、 “Mother Tongue”-「母語」。そこには文字通り、母の使う言語についてのエピソードが語られていました。Amy Tanさんは中国系アメリカ人で、もちろん英語はペラペラなのですが、移民である彼女の母親の言語はいわゆるブロークン英語なのでした。そのため、彼女の母親はネイティヴ・アメリカンにあからさまに馬鹿にされたり、見くびられたりするので、幼いAmyが代りに通訳を務めるハメになる...Amy Tanさん自身も、母親の英語を恥ずかしく思っていた事を告白。「私は、母の英語が母の考えを現わすものだと思っていました。その英語が不完全なように、あたかもその考えまでが不完全であるかのように感じていたのです。それには理由がありました。店や銀行やレストランで、周りの人が彼女の言う事を真面目に聞かなかったり、判らないフリをしたり、あるいは聞こえないフリをしたからです。」これを読んでいて思い出しましたが、「言語能力=知的能力」な態度で接する人も少なくないんですよね。(→友人の)私もこちらに来たばかりの頃は敏感に感じたものです。。。(遠い目)まぁ、そうじゃない人もいますけどね。そしてESLの学生を教える今は、自分がそうならないように気をつけなくちゃならないのです、ハイ。

また、Amy Tanさんは「標準英語」中心のアメリカ教育制度の中で、英語の成績は悪くなかったものの、能力テストでは文系ではなく理系だと判断されたりしたそうです。(←私もそうでしたが。)それから小説家になったものの、「標準英語」オンリーで小説を書こうとしてもしっくりこず、「私が育ってきた中で触れてきた全ての英語 “Englishes”(←複数形に注目)を使って、書こう!」と決心し、小説『ジョイ・ラック・クラブ』が生まれたのです。批評家からも高い評価を受けたこの小説を読み終わった後、彼女の母親は一言いいます、“So easy to read.”「とても読みやすかった。」と。また、Amy Tanさんは大人になってから「母語」で母親と会話する時に感じる心地良さについて、こう語っています。「これが私達の家族の言語、『標準英語』とは違うけれども親密さを表わすもの、私を育ててくれた『母語』なのです。」


さて教育学部の仕事では、「『移民の子供達と英語教育』についてクラスで話してちょうだい。」と教授に言われ、参考資料として、“Do You Speak American?”「アメリカ語を話しますか?」の本とDVD、それから中国系移民の女の子のお話 “I Hate English!” 「英語なんて大嫌い!」という絵本を渡されました。この「アメリカ語を話しますか?」は、アメリカ全土の様々な“American Englishes”をレポートしたもので、もちろん方言もありますが、様々の移民達の口から生まれる新しい英語にも焦点をあてています。また、黒人英語を『母語』とする子供達に、ゲームを使って『標準英語』を教える授業もありました。こんな感じで-

(カルフォル二アのある5年生の教室)

先生: “My grandpa cook dinner every night.” これはどの言語だい?  
生徒1: AAEです。(African American English=黒人英語)
先生:  当り!じゃあ、文法的にどうしてそうだとわかるの?
生徒2: 三人称単数の用法でわかります。
先生:  そうだね、ならAAEからMAE(Mainstream American English=標準英語)に訳してみて。
生徒3: “My grandpa cooks dinner every night.”
先生:  よくできた!Aチームに500点!

このような授業の根底には「彼らの『母語』を独立した正しい言語であることを認めつつも、学校教育で標準とされ必要とされている『標準英語』を教える」という原則があるのですね。このDVDに登場した黒人のラジオ・ディスクジョッキーもこう言っていました。「この国でサバイヴするにはバイリンガルにならなくちゃな。黒人英語も大事にし、かつ仕事の面接も受けれるような。」つまり、標準英語と歴史的地理的民族的エトセトラ要因から派生した様々な“Englishes”は別もの、ってことですね。英語の中で「バイリンガル」がいたり、「通訳」したり...面白いです。きっと、それらの言語間の差が大きいからではなく、どちらも同等の言語だ、という意識からこのような表現が出てくるのだと思います。言語学的には黒人英語や移民達の「ブロークン英語」や「ちゃんぽん語」にも規則的な文法のルールがあり、デタラメや間違いではないのです。まぁ、過去には「それは間違ってる英語!これが正しい英語!」的教育がされていたのですが。日本にもかつて「方言札」(←方言を使った生徒の首にかけたらしい。コワ~!)があったように。

しかし世の中、『標準英語』じゃない英語に対する偏見は根強いよ、ってなリサーチもこのDVDで紹介されていました。「ランゲージ・プロファイリング」というのですが、スパニッシュ訛英語、黒人英語、南部英語、そして標準英語で、不動産屋などの対人ビジネス会社に電話して、どういう対応に出るか試してみる、というもの。(←このリサーチャーは七色ヴォイスで色んな英語の使い手なのだ。)するとすると...あっちゃいけないことだが、対応はかなり違うらしい。これはAmy Tanのお母さんの時代だけの話じゃなかったのですね。あっ、でも損ばかりではないみたいですよ。実は英語ペラペラな在米滞在暦長い人がスピード違反で捕まった時、片言英語で「エイゴ、ワカリマセン。ゴメンナサイ。」みたいな感じで言うと、見逃してくれるらしいし。(えっ、コレ私じゃないですよ!)もしかして、あなたも実はランゲージ・プロファイリングされてるのかもしれない・・・公平な対応を心がけてくださいね☆

ひとくちに英語といっても英語いろいろ、なぜって話す人がいろいろだからなんですね。この“Englishes”の多様化は英語圏の国だけにとどまらず、50年後ぐらいには英語を母国語としない英語使用者の数がネイティヴの数を上回るらしいですよ、みなさん。なので次回は、英語圏の外の英語いろいろ、に迫りたいと思います。。。(っていつになることやら。こんどの雪休みかな?)

           *  *  *  *  *  *  *  *

(コメントいろいろ、人いろいろ☆の欄)

大人っぽくなっためぐんちゃんへ、
昔はあんま気にしなかったけど、自分の英語がどう思われてるかって結構気になるよ~。特にESL教えるようになってから、「あ、今言ったの間違えてた!」って後から意識的に言い直したりするようになったわ、普段でも。それから、慣れてる人と会話する方が楽なのも同じ。私は初めて会った人の英語が聞き取りにくいことがよくあるし。。。

ランゲージ・プロファイリングでも思ったけど、言葉だけじゃなく、まず目に入る、耳につく、そういう氷山の一角みたいな限られた情報で人を判断してしまうこと(いわゆる第一印象)って、私達の視野を狭くし、相手に対する理解・態度を固まらせてしまうのかも。無意識にFill in the blankしてくれる友達は、水面下の自分もちゃんと知っているから、それができるんだろうね、きっと。どんな“Englishes”を話す人にも、または一見『非標準』な一角を持つ人にも、偏見を持たずに奥にある人間性を見ることができたら、と思う今日この頃なのでした。


いつもカワイイTamiちゃんへ、
そうそう、白人英語と黒人英語はかなり違うよね。それを体験するために、黒人英語で書かれたテストを受けてみたら、30点くらいしか取れませんでした...AskをAksって発音するのも、ワザとじゃなくて無意識だと思われる。。。私も知らないうちにうつってるらしいから。(私のボスがAks派なので。)

中学生にBe動詞と普通動詞の違いを教える秘密かぁ~。よっしゃ!

           ♪♪♪ kuriksの3分英語ティーチング ♪♪♪

Be動詞はイコールに置き換えられるか、って考えましょう☆

あなた=女の子 “You ARE a girl.”(名詞)
あなた=カワイイ “You ARE cute.”(形容詞)
あなた=カワイイ女の子 “You ARE a cute girl.”(名詞 + 形容詞)
ってなカンジで、AREの後には名詞 or/and 形容詞、
「あなたはこう。」という文。これが基本形。

これを質問形にする時は、さっき使ったBe動詞(ARE)を最初に持ってきて、
“ARE you a girl?”(見たらわかるって?)
“ARE you cute? (←普通、こんなコト訊かないけど...)
“ARE you a cute girl?”(これも訊かんな。)
つまり、「あなたってこう?」っていう質問になるのですね。

で、普通動詞は大抵、何か行動をおこしている!ワケだから、
あなた:食う(毎日) “You EAT every day.”(動詞の原型)
あなた:寝る(毎晩) “You SLEEP every night.”(動詞の原型)
あなた:遊ぶ(毎週末) “You PLAY every weekend.”(動詞の原型)
名詞の後に、動詞の原型がくるのは現在形で、「普段はこうしてるよ」っていう文。
「あなたはこんなことする。」これが基本形。

これを質問形にする時は、最初に助動詞(DO)を持ってきて、
“DO you eat every day?”
“DO you sleep every night?”
“DO you play every weekend?”
「あなたってこんなことする?」っていう質問になるのですね。

           ♪♪♪ ちゃんちゃん ♪♪♪

こんなんでよろしいでしょうか~?

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2 コメント

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Unknown (めぐんちゃん)
2007-02-01 03:14:00
いつも自分の英語が相手にどんな風に聞こえているのか気になるー。

友達に聞いたら、「よく分かるよ」って言ってくれるけど、初めての人だと「何?ごめん、分からなかった。もう一度」とかって同じ事を3回ぐらい聞きなおされることもしばしばだし。

でもこの「よく分かる」っていうのもどんなもんかね。友達は、私の英語と会話内容に慣れてるから、私の話す一言一言を理解しているというより、単語が間違ってても、発音がおかしくても、分からないところを"Ah, you know?"で埋めても、想像力を働かせて分かってくれてるんだと思う。

そして、多分そういうFill in the blank的な作業は無意識のうちになされていて、やってる自分でも気づかないから、「めぐみの英語?ああ、よく分かるよ」ということになるんではないかと。

別にそれでええねんけどな。初めての人にはそれが通用しないんで、最初の一言で相手に「この人の英語はアクセントがあるし、普通じゃない」という印象を持たれてしまうと、そこから先に進みにくくなることはあるよね。

ランゲージ・プロファイリングか。今回のエントリーも興味深く読ませていただきました。
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Unknown (Tamiko)
2007-02-01 11:59:34
うわああ、おもしろいですねえええ。ものすごく深いです。。その黒人の人達の英語のお話もものすごく興味深いです。。。キャンプに行ったときに、黒人の人達は、普通の英語(笑)しってるのだろうか。。。白人地区の学校にいったら、テストで点とか落とされるのかしら。。(笑)とか、思いました。AskもAksとかっていいますよね。。。わざとなのでしょうけど、由来が気になります。

ところで、Kuriksさんなら詳しいかなー、と思うのですが、いま日本人の中学生成り立てのこに、英語を時々おしえるのですが、Do youの違いと、Are youの違いが説明できなくて難しいです。Be動詞と普通動詞の違いなのですが、上手く説明するのに、秘密はありますか?
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