言の葉ひらひら - Wordy Leaves Dancing

「はじめに言葉があった」
"In the beginning was the Word."

「ナポレオン・ダイナマイト」に垣間見るアメリカ現地高校の世界

2010-05-03 | 今の葉
先週末は面白い映画を見ましたよ。題して「ナポレオン・ダイナマイト」(残念な邦題は「バス男」←「電車男」に便乗感ありすぎ)。アメリカ人友達数人とコメディー見ようってことになり、「これ、好き嫌いハッキリ分かれるからな…でも、僕的にはかなりお勧め!」と、男友達が選んだのが、コレだったんです。前から、レンタル屋で微妙なDVDカバーが気になりつつも選ばなかったけど、独りじゃなくて友達とバカウケしながら観るのが正解でした!結構、おバカ映画好きなんですよね。怪しい踊りで私のハートを鷲掴みにしてしまうところなんか、「少林サッカー」や「私の名前はキム・サムスン」(←映画じゃないけど)と共通しているんじゃないでしょうか。



アメリカ南部の片田舎にある高校の教職を離れてから、西海岸日本人&日系人コミュニティーにどっぷりつかって約一年、だいぶ私にも日本人感覚が戻ってきた、今日この頃。ところが、この映画を観ている2時間弱の間に、思いっきりアメリカ現地高校の世界に引き戻されました!留学時代も教員時代も含めて、「あった、あった!」と思い出すことだらけ。山だけでな~んにもないド田舎にボソッと高校がある景色。イケてる生徒グループとイケてない生徒グループの構図。バカにされてしまう哀しい移民(又は留学生)。生徒会役員立候補者のノリの軽すぎるスピーチ。目立たなかった子が突然輝きだす時に変わる空気。三つ穴ノート紙に鉛筆で落書きされた奇妙な生き物。なにげに、でも実は必死にパートナーをゲットしようと皆が頑張るパーティ。そしてその裏で三角に四角に五角に渦巻くドラマの数々・・・それから、映画の主人公のナポレオン君にどこか似ている元生徒や同級生を思い出したりして(ナポレオン君の方が強烈だけど)、妙に懐かしかった。他にも、どこにでもいそうで、でも唯一無二なキャラで溢れてました。この映画は“クールでもポピュラーでもない人達”にフォーカスしているのですが、ちょっとトホホな感じで、けれど強烈におかしく、それでもイジけずに堂々とソノ路線を突っ走る人達を、温泉卵のようにゆる~くヌル~ク応援しております。また、お金もかけず、CGも使わず、人気俳優も使わずに、かなりのアメリカ人の心を掴んだという、伝説の(?)不思議映画なのですよ。

映画を観た後の余韻が消えないうちに、「ナポレオン・ダイナマイト」のレビューや裏話などをインターネットで、ちょいリサーチ。最近は映画鑑賞前じゃなく、後でこういうモノを読んでいます。なるべく先入観なしで、観た方が楽しいんですよね。で、気に入った後から反芻した方が感想も深まるし。この「ナポレオン・ダイナマイト」、単なるおバカ映画だと、侮るなかれ。なかなか深いレビューもありました(内田氏のレビューもお勧め)。で、あるレビューに「Wikipediaのジョックは一読の価値あり」と、あったので読んでみました。これは映画の解説ではなく、典型的なアメリカ学校社会の解説で、学校社会のヒエラルキー(階層構造)のピラミッド図解なんかがあって、分かり易い。(ちなみに、英語のWikipediaのJockの解説よりも詳しい。 )この生徒階層ピラミッドの頂点に位置するのが「体育会系の男子生徒らとそれを補佐するチアリーダーの女子生徒らの属す階層」で、このような人気者集団をジョックス(Jocks)というそうな。それに対極をなすのが「ナード」、まぁオタクっぽい変わった趣味人、でしょうか。でも、そんな学生生活を終えて社会に出た元ナードに、リベラル文化人が多いそうです。へえ~。Nerdはよく聞いたけど、ジョックって言葉聞いたことなかったわ。その他いろいろな学生グループに冠された名称:プレッピー、ギーク、ゴス、EMO、なんかは普通に使われていましたね。なるほど、それまで漠然と捉えていたものが、スッキリわかった感じ。このピラミッド層についての予備知識を仕入れてから、留学すれば良かったなぁ。現地校教師時代にも必要だったかも?まぁ、知らずにいたから「この人はこれ」的ステレオタイプをせずに済んだのかもしれませんが。それに、そんなカタゴライズに関係なく、どの層にもイイ奴とイヤな奴はいるものですし。しかしWikipediaを更に読み進めていくと、衝撃の事実が!このジョック層の横暴に抗おうと「コロンバイン高校銃乱射事件」は起きたらしい。ヒエラルキーが腐ると、こんなことが起こり得るのですね、恐ろしい・・・

でも、「ナポレオン・ダイナマイト」の方は、銃も血もない、カスワードもない、Hなシーンもない、クリーンでウブなお気楽映画でしたから。(羽交い絞めとか呪いピニャータはあるけど)それもそのはず、ジャレッド・ヘス監督、主演のジョン・へダー、その他の主要俳優は敬虔なモルモン教徒、そんな彼等の意向だそうで。しかもジョン・へダーさんは、日本で2年間宣教師だったらしい。彼が日本語を披露する「俺たちフィギュアスケーター」も観たくなってきた・・・この人素顔は案外かっこいいのに、よくあのナポレオン君に化けたもんです。キャラが立ち過ぎていて、その独特な喋りと動きのマネパロディがYouTubeに溢れてます。こんなのばっかり見てたら、知らず知らずの内に私にもナポレオン節が伝染っていて、気がつくと腹圧高い"Gosh!"を連発。侵食されますので、要注意!(笑)それほどに濃~い主役のなりきり怪演で成り立ったともいえる映画なのに、当時無名だった彼はたった1,000ドルで出演したそうです。それから、だんだん可愛く見えてくるヒロインのデビー、どっかで見たと思ったら、「コリーナ、コリーナ!」ですごい可愛くて上手かった子役の人でした。ペドロ役の人もそれまで省エネ顔だったのに、最後に表情ひとつで美味しい所をかっさらって行ったな~。あと、「私、カワイイでしょ」的チアガール女子役で、ヒラリー・ダフの実姉も出ていました。それから、「エンドロール後を見逃すな!」という忠告をやたら目にしたので、もう一回DVDを入れてみると・・・ナポレオン君が再登場する場面の音楽で、ひとり大爆笑!この原曲入ったサントラCD持ってますから。こりゃ、尻尾までアンコのはいった鯛焼きのように、美味し過ぎた映画だわ。あくまで個人的に、ですけど。ですから、あくまで個人的にお勧めします・・・ナポレオン・ダイナマイト、変な奴ですけど、ちょっと友達になってみませんか?