FUJI FinePixF30(2011/8)沖縄
納得いかない法律いろいろ その2。
(※令和1年現在)
1【取得時効】所有権の取得時効
2【他人物売買】他人の物の売買契約をすること自体は有効
3【抵当建物の賃借人】賃貸マンションの抵当権が実行(競売)されて退去
4【借 地】土地を貸したらどうなるか
5【不法行為】被害者(原告)に立証責任がある(※民事)
③抵当建物の賃借人
これは、納得いかない云々・・というより、
知っておいたほうが安全だよなと思った法律でした。
賃貸マンション・アパートなどを借りていて、
その建物が「抵当に入っているかどうか」まで考える人は、
どれぐらいいるんだろう・・。
多くの場合、大家さんは物件を抵当に入れて(物件を担保にして)、
銀行などから融資を受けて、購入・建築します。
なので、抵当権が設定されていない物件のほうが、はるかに少ないはずです。
(実際、不動産賃貸管理の仕事をしていた時に目にしたのは、
抵当権設定済みの物件ばかりでした。)
賃貸借契約において、
借り主(賃借人)がマンションなどを借りる権利(建物賃借権)は、
建物引き渡し(契約締結)or 賃借権の登記などの対抗要件があれば、
第三者に主張(対抗)することができます。
(賃借権の対抗要件を備える事で、引渡し後に貸し主(賃貸人)が代わっても、
新しいオーナーに対して借りる権利を主張できる。)
でも、
抵当権設定済み物件の大家さんが借金を返せなくなると、
抵当権が実行(建物が競売にかけられる)されて、
物件の所有権は、買受人に移る。
その際、買受人(新所有者)に退去を要求されると、
賃借人(借りてる人)は出て行かなくちゃならない。
(=賃借権を対抗(主張)できない。)
退去までの猶予期間は6ヶ月なので、
抵当に入った物件を借りていて、競落人に退去を要求された場合は、
遅くとも6ヶ月後には住む場所を失うわけですね。
(もちろん買受人が退去を要求しなければ、問題なし。)
これは、
単にオーナーが代わって云々・・ということではなく、
賃借権と抵当権、どちらが優先されるのか?というお話です。
賃借権 VS 抵当権。
追い出されるかどうかは、「物件の引き渡し」か、「抵当権の登記」か、
どちらのほうが早かったか?によって事情が変わってくる。
(=「引渡し or 賃借権登記」と、「抵当権設定登記」との、先後関係)
もし、
引き渡し前に、既に抵当権設定登記が行われていた場合、
自分の賃借権を主張できない。
(抵当権が優先されるため、退去しなければならない)
逆に、抵当権設定登記のほうが後だった場合は、
賃借権を主張できる。
(賃借権が優先されるため、これまでと同じ条件で住み続けられる)
・・とは言え、
そもそも、抵当権が設定されていない物件を探すほうが難しいので、
抵当に入ってたからと言って、
闇雲に恐れる必要はないのだけれど、
賃貸物件を借りる際は、こういう事もあり得るんだって、
チラっと頭の片隅に入れておこうと思いました。
なお、抵当権などの登記上の権利は、
契約時の重要事項説明で聞かされる&重説書にも記載があります。
つづいて、
④土地を貸したらどうなるか
結論から言うと、
「貸したらほぼ戻って来ない(笑)」になっちゃうんですが・・
土地活用でもしようと思って、
『建物をたてる目的の相手に、土地を貸す』。
・・これ、後々のことを考えるととてもハードな選択。
法律を理解した上で、それを実践できるならいいけど、
そうじゃないならもういっそ売っちゃったほうがラクよって、
率直に思いました。
まず、
建物所有目的で土地を借りる権利を、
『借地権』と言う。
他人の土地を借りる権利のうち、
土地の上に建物を建築する目的がある場合の権利です。
「建物所有を目的とする地上権(物権)」
+
「建物所有を目的とする土地賃借権(債権)」
||
借地権
(※ 物権=物を支配する権利/債権=他人へ請求する権利)
他人の土地を借りて、
その上に自分の建物を建てるために借地権を設定する場合、
借地借家法が適用されますが、
同法では、賃借人保護等の観点から借り主が手厚く保護されています。
(※民法の規定に優先して適用される)
建物所有目的の相手と、普通借地契約を結ぶとどうなるかというと、
(原則)
①契約期間 → 最低30年以上(上限なし)になる。
②期間の満了後 → 自動的に法定更新される。
・初回:20年以上(上限なし)、2回目から:10年(上限なし)で更新。
・借り主の「更新請求」や「満了後の使用継続」などに対し、
貸主は「遅滞なく、正当事由ある異議」を述べない限り更新拒絶できない。
(ただし、正当事由の判断は厳しく、なかなか認められない。)
③解約時 → 借主は貸主に対し、建物買取請求権を行使して建物を買い取らせることができる。
(買取り請求された時点で売買完了。貸主は拒否できない。)
②の更新については、そのとき土地の上に建物があるかないかで変わるけど、
建物さえあれば上記期間で法定更新されます。
なお、建物所有が目的ではない場合(青空駐車場とか資材置き場とか)や、
一時使用目的、使用貸借の場合は借地借家法の適用がないため、
賃貸借の存続期間の上限は50年まで(改正民法604条)となります。
土地を貸したら戻らないと思えって言われた事あるけど、
こういう事なんだねー。
まず最初に必ず30年以上貸さなきゃいけなくて、
以後、よほどの事がない限り貸主は更新拒絶できず、
20年、10年・・と半永久的に更新されていく。
やっと解約できたと思っても、
請求されたら建物を買い取らなきゃならない・・。
いやー、
相当ハードな道程じゃないですか。
借地借家法は大変ありがたい特別法だし、
借主保護もよくわかる。
でも貸主、ちょっと可哀想すぎません?
こんなん、先々のことを考えたら、
やっぱサクっと売ったほうがラクかもしんないって思うし、
これじゃ誰も土地を貸したがらないじゃんね。
まあ、だからこその定借(定期借地契約)誕生なわけですが、
つくづく「当事者双方にとって平等で平和的なルール」
を定める難しさを感じました。
あいだ取って両者引き分けー♪
みたいな、
誰もが納得できる審判なんて存在しないのか。
賃貸借関係は、納得いかないというよりも
まだ発展途上にも思えて、コレジャナイ感がどうも拭えない。
そういった意味でモヤモヤする法律かな。
というわけで、
『建物所有目的の相手に一度土地を貸したら、半永久的に戻ってこないよ』
というお話でした。