夢の入口(2)

2022-03-03 22:04:08 | 童話
向うから友達がノートとエンピツを持ってやって来た。
僕も自分の手を見ると、両手にノートとエンピツを持っていた。

『やぁ、また夢の中で会ったね。』
『僕は、机の下の夢の入口から入って来たけれど、君はどこから入って来たの?』
『僕は食堂のテーブルの下からだよ。』
『よし、二人ともノートに書いておこうよ。』
『うん、そうだね。』
『あれっ、僕のエンピツは芯が折れていて書けないや。』
『僕のエンピツも芯が折れていて書けないや。』
『しかたがないので、夢の入口の場所を、しっかりと覚えておこうね。』
『ああ、いいよ。君も忘れないでね。』
『君こそ忘れたらダメだよ。』
『二人とも夢の入口を覚えたから、夢から出るよ。』

そして、目がさめたが、二人とも夢の入口は覚えていなかった。
『今度は、エンピツが1本折れても大丈夫なように2本持って行こうよ。』
『そうしようよ。今度は大丈夫だよね。』
そして、二人はノートと2本のエンピツを枕元に置いて寝た。

夢の入口(1)

2022-03-02 09:32:30 | 童話
ある日、僕は夢の事を書いてある本を見つけた。
その本には、
『みんなで楽しく遊んでいる時に目がさめて、夢が終ってしまうことがあるよね。それは、夢の出口から出て来たからなんだ。夢には入口もあるんだけれど、夢の出口から出てくると、みんな夢の入口の場所は忘れてしまうから、夢の入口はだれにも分からないだよ。』と書いてあった。

それで、僕は友達と二人で夢の入口を探すことにして、友達が僕の家に泊まった。
そして、夢を見ることが一番多い場所を、家の中で探すことにした。
僕達は夢の中に入ったらお互いに教えることにして、家の中の別々の場所で寝た。
最初の日は二人とも夢を見なかった。

次の日、向うから友達がやって来る夢を見たので、僕は友達に夢を見ている事を教えてあげた。すると、友達も夢をみている事を教えてくれた。

朝になって、目がさめた時に二人とも夢の中でお話しをした事は覚えていたが、夢の入口がどこだったのかは覚えていなかった。
『夢の中で君に会ったのに夢の入口のことを覚えていないのは残念だね。』
『そうだね、もう一度夢の入口を探しに行こうよ。』
『うん、二人でまた行こうか。今度はノートとエンピツを持っていて、夢の入口が分かった時に、ノートに書いておこうよ。』
『そうだね、良い考えだね。』
そして、二人はノートとエンピツを枕元に置いて寝ることにした。

僕の魔法のズボン(3)

2022-03-01 10:56:12 | 童話
ついにズボンの脚の折り返しが無くなった。そのまま履いて丁度良くなり、お兄ちゃんのように大きくなったのだ。

だけど、お兄ちゃんのようにカッコいいかなぁ?僕は女の子をいじめたりしないし、年寄りの人が信号待ちをしている時は、青信号になったら手を挙げて一緒に渡ってあげている。
お兄ちゃんと同じように、僕もカッコ良くなっていると思う。

僕はお母さんに聞いてみた。
『ねぇ、お母さん、僕もお兄ちゃんと同じようにカッコいいかなぁ。』
『そうねぇ、そのズボンを履いている時は良い子でカッコいいけれど、そのズボンじゃない時はもう少し良い子になったらカッコいいわよ。』
『う~ん、まだカッコ良くないのか。どうすればカッコ良くなれるのかな? そうだ、魔法のズボンに聞いてみよう。』

『ねぇ、魔法のズボン君、どうすれば君を履いていない時もカッコ良くなれるのかな?』
『それはね、君がいつも僕を履いている時と同じように頑張っていればいいんだよ。僕はいつも君を見ているからね。』
『そうか、いつも同じように頑張らないといけないんだね。』

そして、僕は大きくなって魔法のズボンが履けなくなってしまったが、ズボンの魔法がなくても頑張れるようになった。
そして、今も魔法のズボンは大切にしているし、時々話もする。
僕はいつまでもこの魔法のズボンを大切にしていこうと思う。

    おしまい