北の森から眺めてみれば

北海道に移り住んで十数年。ここから眺めた身近な世界、遠い世界の出来事をつづる日々雑感。

津波

2005-01-26 | Weblog
 2004年12月26日にインド洋沿岸を襲った巨大地震、それに続く大津波は、史上最大級の惨事を引き起こした。死者15万人、負傷者50万人、避難者500万人という悲劇は、人類はそう度々は経験していない。しかも、惨禍は国際的な規模に及ぶ。アジアの八つの国、アフリカの五つの国が、同じ日に天変地異に襲われた。アジアとアフリカの13カ国の他に45カ国前後のおよそ1万人が、死亡あるいは行方不明とされる(スウェーデン人2000人、ドイツ人1000人、イタリア人700人、オーストリア人500人、フランス人200人、ニュージーランド人200人、さらに日本人、メキシコ人、コロンビア人、ブラジル人、フィリピン人、等々)。
 今回の場合、現地に先進国の観光客や現地企業人として欧米人が多数おり、犠牲者に含まれていたことが世界的な反応を呼び起こしたと言える。もしもこの悲劇が、アジアだけの出来事であったならば、これほど世界中で「我が事」として衝撃を持って受け止められ、重要視されることはあり得なかったであろう。

 津波にやられた国々に約束された政府や民間の援助は、現時点でおよそ40億ドルに達している。誰もが金額の大きさを礼賛する。しかし、他の出費に比べてどうなのか。アメリカの軍事予算ひとつとっても、年間4000億ドルにのぼる。2004年秋にフロリダがハリケーンによって深刻な、とはいえ今回のインド洋の惨禍には比べるべくもない被害を受けた時、アメリカ政府は即座に30億ドルの支援金を出した(今回は1億5000万ドル)。そして国連のアナン事務総長によると、この種の援助金は多くの場合約束通りそのまま支払われた例しが無いという。

 一方、世界銀行の最新統計によれば、被災国のうち5カ国の対外債務を合計すると3000億ドルにのぼる。その返済は並たいていのことではない。年に320億ドル以上、つまり、この数日間に発表された「気前のよい」贈り物の約束の10倍に相当する。世界的に見ると、貧しい国々は債務の返済という名目で、豊かな北半球に毎年2300億ドル以上を支払っている。これでは世界が逆さまだ。津波を契機として、打ちのめされた国々の債務返済を猶予することも示唆されている。だが、必要なのは猶予ではない。債務の純然たる帳消しである。アメリカが、軍事的に占領するイラクの債務について、最近パリ・クラブの同輩諸国に強要したのと同様の措置である。イラクという石油と天然ガスに恵まれた国のためにできることが、それよりはるかに貧しいうえに、ノアの大洪水を思わせるほどの惨事に見舞われた国々のためになぜできないのだろうか。 このあたりにテロリズムとの戦いの鍵があると思われるのだが。