北の森から眺めてみれば

北海道に移り住んで十数年。ここから眺めた身近な世界、遠い世界の出来事をつづる日々雑感。

前航空自衛隊幕僚長の論文

2008-11-14 | 政治・経済
 田母神前空幕長の論文が政局がらみで大問題になっている。日本政府の総理大臣から任命された航空自衛隊のトップにある人物が、政府の公式見解と真逆のことを論文で発表し、国会での参考人招致で堂々と「専守防衛では戦えない、他国へ行けるようにすべきだ」とか「戦争放棄の憲法を改正して戦争のできる国にすべきだ」などと言うのだから、開いた口がふさがらない。

 現在の日本の歴史教育を「自虐史観」と規定し、歴史認識を改めるべきだという。自ら振り返る歴史というものは、被害者と加害者では見方も認識も違うのは当然である。しかし、様々な立場に立って検証することで真実は見えてくる。日本は敗戦後この戦争についての検証を積み重ねてきてより客観性のある共通認識に立ち、事の善悪を把握するに至っている。

 前航空幕僚長の論文の場合、仕掛けた側からの一面的正当性を主張しているだけで、広い視野を持つ研究者からは相手にされない代物なのだが、ひとりの人間としてそう言う考えでも持つことは自由と言えるだろう。しかし、現職の空自トップが政府を無視してその考えを披瀝し部下にその見解を押しつけるなどもってのほかの行動である。仮に論文に正当性があったとしても、絶対に許されることではない。

 もしも北朝鮮の金正日を崇拝する人間が自衛隊のトップにいたとしたら、それを容認できるだろうか、「北朝鮮の拉致問題は解決済みという立場を支持します」と言ったら政府の方針に正反対と言うことになる。政府の方針に反旗を翻しても、退職金を貰っての定年退職???ワハハハである。外国のちゃんとした軍隊なら、反逆罪。こう言うところはやっぱり日本は平和ボケだろう。自衛隊のことをちゃんとした国防の軍隊とは認めるわけにいかない。

 私は陸自はともかく、スマートなエリート集団と思っていた航空自衛隊のトップがこう言うことを発言するあまりのレベルの低さに何とも情けない思いである。

 もうひとつ徹底的に容認しがたいのは政府の対応である。あくまでも自分の正当性を主張する田母神を「定年退職」にしてしまったのである。さらに自民党は佐藤正久議員を筆頭に彼をかばっているのである。軍の使命は国に従う事である。軍人の誇りは国に従う事である。軍が国を無視して国を動かそうとすれば、クーデターである。国家の最高司令官に反旗を翻した航空トップを、政府与党が庇っている。もうバカバカしくて涙が出てくる。

 国となんの関係もないうさんくさい成り上がり企業アパ・ホテルへの、協力懸賞論文とは恐れ入る。本人は自分のやっていることの意味を分かってないのだろう、退職金を貰って花束も貰って意気揚々と退職した。軍事法廷のない日本は、幸せな国である。国家に反逆して、裁判にもかけられない。裁判所の判決に「あんなの関係ない」と言ってもスルスルと出世する。自民党内閣の頭の中も田母神と同じなのだろう。