北の森から眺めてみれば

北海道に移り住んで十数年。ここから眺めた身近な世界、遠い世界の出来事をつづる日々雑感。

ふたたび北海道新幹線

2007-12-31 | 政治・経済
先日、政治に関する事で「北海道新幹線」について投稿したら、さるお方から反論コメントをいただきました.

以下引用、変換ミスがありますが原文まま
『北海道新幹線は黙ってても本州の人間が一杯使うのでご安心を。首都圏&東北⇔北海道って行き来する手段が飛行機しかないのって冗長性が無さ杉です。予備の回線やHDDを持たないコンピュータシステムと同じですね。何かのトラブルったら洒落にならんのに。交通手段も同じ。冗長性が必要です。
新幹線の問題をゼネコン、政治のせいにすり替えて反対する輩には憤りを感じます。』

このひとが「冗長性」をどう解釈しているのか疑問もありますが、一応ここでは「選択肢」と置き換えておきます.
私は、世の中に一刻を争う仕事をしている人たちがいる事は承知しています.その人たちにとっては吹雪などで飛行機が欠航した時(私も何度か遭った)新幹線に切り替えることができればいいなと思うのは分かります.
しかし、欠航しない場合新幹線の座席は空席となります.つまり無駄になります.そういう無駄は避けた方が良いと思うのです.選択肢が多いという事は、チョイスする側には都合が良くても、提供する側には不都合なのです.

現実問題として、新幹線の工事には莫大な予算が使われます.出来た新幹線がいつも本州と北海道を行き来する人たちで満杯ならあっても良いでしょう.しかし本当にそうなるでしょうか.見積もりしたのが国土交通省かJRか知らないけれど、見込みが甘くないでしょうか.客数がその通りに行かなかった場合「赤字路線」となり、営業すればするほど国の借金に拍車をかける、という可能性が大きいのです.いままでそう言う例ってあまりにも多かったですよね.

北海道の高速道路も同じで、本州からドライブに来た人ならご存知でしょうが、北海道では一般道路が市街地以外はほとんど「準高速道路」です.函館-小樽間の国道5号線もほとんど対面交通の1×1上下2車線ですが、カメラの監視区域とパトカー従走の場合を除き、平均80~100km/時です.工事費の高い高速道路なんか作るより、国道・道々を片道2車線に広げ、分離帯を設けるだけで充分です.もちろん速度制限は高速並みとします.その方が利用者にとっても納税者にとっても有益です.

そして余った予算を地元建設業者、流通業者を使って農産物の自給率を高める事に使ったり、自然の景観を活かした観光施設の充実に使ったりした方が、北海道全体の経済波及効果は大きいはずです.地域医療の充実、介護施設と乳幼児教育施設のコラボレーション、産品直売流通システムなど、生活に密着した施設と社会システムの構築が求められていると思うのです.

ただ本州からの資本の流入だけを期待した交通網の整備だけしても、労働力や資源を吸い取られるだけという気がしますね.
東京から移り住み、現在北海道に暮らしていて思うのは、気持ちの豊かさです.
時間をお金に換算して「無駄を省かなければ」と思っていた頃の私には気が付かなかったのですが、実際はこの無駄な時間が心地よいのです.

空気読み過ぎ

2007-12-31 | 政治・経済
マスコミに「空気が読めていない」と批判された安倍元首相.
薬害訴訟で全員救済を拒否し続け、内閣支持率低下から土壇場で「全員救済」を打ち出した福田首相.
しかし、いずれも米軍に対する「思いやり予算」については、「空気読み過ぎ」のような気がする.

「過ぎたるは及ばざるがごとし」と諺にもある通り、空気の読み過ぎはかえって物事を悪い方へ導く.
小泉元首相が言った「鈍感力」が本当に必要なのは、今の日米関係においてではないだろうか.
グローバリズムから一定の距離をとった方が良さそうである.


日本のミサイル防衛

2007-12-28 | 政治・経済
自衛隊のイージス艦「こんごう」がハワイ沖で米軍と共同の迎撃ミサイル実験を行ない、米国以外で初めて成功させたというニュースがあった.NHKの第一報を聞いた時、いささか兵器に興味のある私は内心「よくやった」と金正日の顔を思い浮かべながら嬉しい気がした.しかし、色々と調べてみるとこれはとんでもない「ぬかよろこび」であった事に気が付いた.

まず、この迎撃ミサイル、相手方の発射を感知してすぐさま迎撃ボタンを押しても、到達するまでに7分かかったと言う.仮に北朝鮮からミサイルが発射されると、いったん大気圏外に出て再び落下し、日本のどこかに着弾するまでの時間は7~8分と言われる.すると相手の発射を察知してそれに命中させる為には発射後4~5分の大気圏外にあるところで捕捉しなければ意味がないのである.日本の上空まで来てから着弾したのでは核弾頭を搭載していた場合、そこら中に高濃度放射能をばらまく事に変わりない.これでは命中しても意味がないのである.

しかも、北朝鮮のミサイルは地下格納庫から発射の為に地表に出してから、1時間ほどで発射可能になると言われる.この時点で最新鋭のイージス艦はそのミサイルの標的となる地点、つまりどこを狙っているか把握出来るそうである.そこまでは良い.ところが日本列島はたてに長いので、その予想される弾道に迎撃態勢を敷くには数時間かかるのである.舞鶴にいるイージス艦が北海道や沖縄を狙った弾道で迎撃出来る地点まで移動するには、数時間かかるのである.日本列島を守るには「こんごう」のような数千億円のイージス艦があと3隻くらい必要になる.ミサイル迎撃なんて今の技術では非現実的なのである.

ところが、NHKのニュースでは気の早い事に「アメリカに向けたミサイルも迎撃するとしたら、集団的自衛権の行使に当たるので、今後国会で論議になりそうです」というようなことを言っている.地球儀を目の前に置いてみれば誰にでも分かる事だが、もしも北朝鮮から米国本土を狙うとすると、その弾道は北海道・稚内の北のサハリン上空のあたりである.完全に日本のイージス艦の防衛圏外なのである.集団的自衛権云々なんて飛躍も甚だしいバカバカしいくらいの話なのである.

こんな意味のない「非現実的な」ミサイル防衛に1兆円もの我々の税金が使われようとしている.1発100億円の実験が成功したと言って喜んでいる.結局は山田洋行の様な会社と米国軍需産業が儲けているだけなのである.アメリカ国内の軍事の専門家ですら疑問視している「ミサイル防衛網構想」に真剣に取り組んでいる日本は世界の物笑いなのである.ロシアは早々と「迎撃不可能なミサイルを開発し、実験を成功させた」と発表し、冷ややかに牽制している.今や無能な防衛事務屋に成り下がった石破長官なんかに任せていてはダメなのである.頭の良いもののする事ではない.

がんばる杉村議員

2007-12-28 | 政治・経済
「誰が何と言おうが、絶対に北海道1区から出ます」と大見栄をきった小泉チルドレンの杉本太蔵議員が、地元道連のひんしゅくを買って公認から洩れてしまった.「口は災いの元」と言うが、それも若さの証である.私は杉本クンには是非とも頑張って「無所属」で1区から立候補して欲しいと思う.そして「会おうと思えば大臣とも会える」なんて言ってないで「なろうと思えば大臣にもなれる」くらいの意気込みで主張を曲げずに頑張って頑張って頑張り抜いて欲しいと思う.

大体自民党から推薦を受ける事になる長谷川岳という若者がいまいち理解出来ない.よさこいソーランを成功させ、札幌の町おこしに大いに役に立ったのは評価するが、その成果に「地方切り捨て」の自民党を便乗させる形になるのが「自民党公認」である.本人は「政権党に入って議員活動をしなければ政策は実現出来ない」くらいの現実的生き方を選んだつもりかも知れないが、それは間違いである.本当に町おこしを支える政治を実現する為には、中央官僚や大手金融資本と結びついて利権をむさぼる自民党政権を倒すしかないと思う.

端的な例を挙げると「北海道新幹線」である.札幌までの工事の利益の8割は大手ゼネコンに行く.仕事そのものを下請けに「丸投げ」する大手ゼネコンが美味い汁を吸って、その残った2割の「おこぼれ」が地方の自民党議員の息のかかった中堅建設会社に割り振られているのである.私の札幌の友人達は「札幌まで新幹線が延びたって、飛行機と変わらない値段じゃほとんど乗る人は少なくなると思うよ」「函館までで止めておいた方がいいよ」と言っている.確かにその通りである.期待しているのは工事の「おこぼれ」をもらえる自民党の集票マシンとなっている建設関連業だけなのである.

高速道路網にしても、新幹線にしても国の多額の助成金が出るからと何か得する様な印象を持つ人は多いのだが、その予算は結局ほとんど丸々大手ゼネコンの懐に入り、そこから自民党の所属議員に還流するだけなのである.自民党の議員になるとそう言う関係筋から接待を受けてちやほやされ、それでいつの間にか政治を動かしている様な錯覚を持ってしまうのである.