米朝協議がスムーズに進み、両国の緊張緩和ムードが高まっているのに比べて日朝協議の方は氷河期に入ろうとしているようだ。
日本としては日朝間の最大の課題である『拉致問題の解決つまり拉致被害者の即時返還と消息の徹底糾明、これらの事件の責任の所在と処断がなされない限り、国交回復、経済援助はあり得ない』という立場を一貫して主張し、米国に対してもそのことを「理解」してもらって、共同歩調をとるように働きかけてきたはずである。
しかし、ここまで見ると事態は日本の思惑とは全くかけ離れた推移を示している。アメリカにとっては北朝鮮の問題は「核開発の凍結→放棄」が最大の課題で、拉致問題はその周辺の人道問題のひとつに過ぎない。尊重はするけど最大課題ではないのである。
北朝鮮の狙いはまさにそこで、日米間の利害の違いを徹底的に利用し、核開発を道具とした実利のある外交を展開している。このまま行けばもともと北朝鮮と利害の深いロシア、中国を含めた極東地域において日本だけが孤立した立場に追い込まれていくのは必至である。
日本の味方になりうるのは韓国、台湾であるが、韓国の北朝鮮に対する外交方針は基本的には「太陽政策」で、それは変わっていない。あくまでも人やモノの交流を進める中で北を懐柔(言葉は悪いが)していこうと言うものである。
私は韓国と北朝鮮の国交、中国と台湾の国交には必ず何らかの水面下の深い交流があると見ている。互いに親戚関係も深く、民間の経済交流はかなり深い結びつきがあって、それは政治レベルでの対立や敬遠を全く無視して太いパイプになっているに違いないと思う。
日本が考える経済制裁によって、苦しい北朝鮮に打撃を与えようと言うもくろみも、実は表向きの一政策に過ぎず、ウラでは総連からの送金ルートは台湾や香港・マカオなどのほか荒っぽいやり方を含めて合法・非合法あらゆる手だてで確保されていると見るべきである。
今はストップしている万景望号と海産品の買い付けの細々とした民間チャンネルの他には、表向きの外交チャンネルしか持っていない日本は一面外交しか手がなく、壊れたテープレコーダーのように何時までも同じ事を繰り返すしかないのである。これでは何も解決できないし、何らかの進展を得ることは出来ないだろう。日本の孤立化はやむを得ず、北朝鮮は日本だけを敵にして国民を扇動すればよい。
一歩離れてみると、米国にとってもその方が実利のある「枠組み作り」という気がする。どういうことかというと、この地域に厳然たる「緊張状態」があることの方が、米軍と兵器産業にとって利益があるという意味である。実際に口火を切ることのない緊張は、米軍基地にとっても存在価値がある。
現実に米軍自らが参加しなければならない紛争に比べて、日本が代わりに北朝鮮と厳しい対立をしてくれた方が米国にとっては利用価値があるのである。日本で性急に進められようとしている「憲法改正」もこの脈絡で捉える必要があると思う。
私は北朝鮮に対する日本の外交は根本的に間違っていると思う。これは小泉総理が訪朝し、その時にそれまで「闇の中」だった拉致問題が一気に表面化したために、被害者家族のことが感情的に取り上げられ、集団ヒステリー状態の国民世論におされる形で外務省方針が二転三転したところに原因があると思う。
拉致被害者家族の心痛は察するに余りあるが、だからこそ性急な解決を要求するよりも、より大局的な解決策を考えておくべきだったと思う。
具体的に言うと、まず「国交正常化」を図るべきであったと思う。この国交正常化はただ北朝鮮に燃料や食料を恵んでやるのではない。プライドの高い北朝鮮もそんなモノを欲しがっているのではないと思う。とすれば、
国交が樹立して出来ることは、北朝鮮の産業が自立していけるような知的・人的支援である。例えば例外に強い米作りのノウハウとか、日本市場で受け入れられる朝鮮特産品の栽培技術の共同研究とか、工業生産においても日本が提供できる知的支援は大きいはずである。
こうした交流は、現場の人間同士の理解から始まる。技術移転を媒介として、民主主義思想も自然に北朝鮮に流れる。日本に技術留学生を受け入れれば、彼らの多くは民主主義のシステムをも学び、自国の体制に対する批判の目を養うことが出来る。
アメリカがフルブライト留学生などで多くの日本人を受け入れ、アメリカナイズして日本に戻すことによって協調的な経済システムの担い手を育てた(同時に今日の「ハゲタカ」ファンドの芽も育ててしまったが)ように、日本も北朝鮮が自らの手で体制を変革し、協調していけるような人材を北朝鮮の中に育てることが出来るのである。
そんな絵に描いた様にうまくいくモノではないにしても、国家間の外交というのは、表の決まり事以上にこうしたウラの戦略が大事なのではないだろうか。韓国の太陽政策もそうした考えが根底にあるのだと思う。
だが、あの小泉訪朝は蓮池さん、地村さん、曽我さんご家族の奪還という成果は勝ち取ったが、そのことを日朝間の国交回復の大前提としてしまったためにその後の進展を妨げてしまったと言えると思う。
では、どうすれば良かったのか。やはり二国間の国交正常化は進めながら、もう一方の「人道問題」として拉致問題は扱われるべきであったと思う。今更言うのもタラレバ話ではあるが、今後への教訓としてしっかり精算しておかなければならないだろう。
日本としては日朝間の最大の課題である『拉致問題の解決つまり拉致被害者の即時返還と消息の徹底糾明、これらの事件の責任の所在と処断がなされない限り、国交回復、経済援助はあり得ない』という立場を一貫して主張し、米国に対してもそのことを「理解」してもらって、共同歩調をとるように働きかけてきたはずである。
しかし、ここまで見ると事態は日本の思惑とは全くかけ離れた推移を示している。アメリカにとっては北朝鮮の問題は「核開発の凍結→放棄」が最大の課題で、拉致問題はその周辺の人道問題のひとつに過ぎない。尊重はするけど最大課題ではないのである。
北朝鮮の狙いはまさにそこで、日米間の利害の違いを徹底的に利用し、核開発を道具とした実利のある外交を展開している。このまま行けばもともと北朝鮮と利害の深いロシア、中国を含めた極東地域において日本だけが孤立した立場に追い込まれていくのは必至である。
日本の味方になりうるのは韓国、台湾であるが、韓国の北朝鮮に対する外交方針は基本的には「太陽政策」で、それは変わっていない。あくまでも人やモノの交流を進める中で北を懐柔(言葉は悪いが)していこうと言うものである。
私は韓国と北朝鮮の国交、中国と台湾の国交には必ず何らかの水面下の深い交流があると見ている。互いに親戚関係も深く、民間の経済交流はかなり深い結びつきがあって、それは政治レベルでの対立や敬遠を全く無視して太いパイプになっているに違いないと思う。
日本が考える経済制裁によって、苦しい北朝鮮に打撃を与えようと言うもくろみも、実は表向きの一政策に過ぎず、ウラでは総連からの送金ルートは台湾や香港・マカオなどのほか荒っぽいやり方を含めて合法・非合法あらゆる手だてで確保されていると見るべきである。
今はストップしている万景望号と海産品の買い付けの細々とした民間チャンネルの他には、表向きの外交チャンネルしか持っていない日本は一面外交しか手がなく、壊れたテープレコーダーのように何時までも同じ事を繰り返すしかないのである。これでは何も解決できないし、何らかの進展を得ることは出来ないだろう。日本の孤立化はやむを得ず、北朝鮮は日本だけを敵にして国民を扇動すればよい。
一歩離れてみると、米国にとってもその方が実利のある「枠組み作り」という気がする。どういうことかというと、この地域に厳然たる「緊張状態」があることの方が、米軍と兵器産業にとって利益があるという意味である。実際に口火を切ることのない緊張は、米軍基地にとっても存在価値がある。
現実に米軍自らが参加しなければならない紛争に比べて、日本が代わりに北朝鮮と厳しい対立をしてくれた方が米国にとっては利用価値があるのである。日本で性急に進められようとしている「憲法改正」もこの脈絡で捉える必要があると思う。
私は北朝鮮に対する日本の外交は根本的に間違っていると思う。これは小泉総理が訪朝し、その時にそれまで「闇の中」だった拉致問題が一気に表面化したために、被害者家族のことが感情的に取り上げられ、集団ヒステリー状態の国民世論におされる形で外務省方針が二転三転したところに原因があると思う。
拉致被害者家族の心痛は察するに余りあるが、だからこそ性急な解決を要求するよりも、より大局的な解決策を考えておくべきだったと思う。
具体的に言うと、まず「国交正常化」を図るべきであったと思う。この国交正常化はただ北朝鮮に燃料や食料を恵んでやるのではない。プライドの高い北朝鮮もそんなモノを欲しがっているのではないと思う。とすれば、
国交が樹立して出来ることは、北朝鮮の産業が自立していけるような知的・人的支援である。例えば例外に強い米作りのノウハウとか、日本市場で受け入れられる朝鮮特産品の栽培技術の共同研究とか、工業生産においても日本が提供できる知的支援は大きいはずである。
こうした交流は、現場の人間同士の理解から始まる。技術移転を媒介として、民主主義思想も自然に北朝鮮に流れる。日本に技術留学生を受け入れれば、彼らの多くは民主主義のシステムをも学び、自国の体制に対する批判の目を養うことが出来る。
アメリカがフルブライト留学生などで多くの日本人を受け入れ、アメリカナイズして日本に戻すことによって協調的な経済システムの担い手を育てた(同時に今日の「ハゲタカ」ファンドの芽も育ててしまったが)ように、日本も北朝鮮が自らの手で体制を変革し、協調していけるような人材を北朝鮮の中に育てることが出来るのである。
そんな絵に描いた様にうまくいくモノではないにしても、国家間の外交というのは、表の決まり事以上にこうしたウラの戦略が大事なのではないだろうか。韓国の太陽政策もそうした考えが根底にあるのだと思う。
だが、あの小泉訪朝は蓮池さん、地村さん、曽我さんご家族の奪還という成果は勝ち取ったが、そのことを日朝間の国交回復の大前提としてしまったためにその後の進展を妨げてしまったと言えると思う。
では、どうすれば良かったのか。やはり二国間の国交正常化は進めながら、もう一方の「人道問題」として拉致問題は扱われるべきであったと思う。今更言うのもタラレバ話ではあるが、今後への教訓としてしっかり精算しておかなければならないだろう。