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ミーハーのクラシック音楽鑑賞

ライブ感を交えながら独断と偏見で綴るブログ

読響の『トリスタンとイゾルデ』

2015-09-07 21:26:11 | 読響
昨日(6日)サントリーホールで開かれた読売日本交響楽団の第551回定期演奏会を聴いてきた。指揮はシルヴァン・カンブルラン。

【演目】
ワーグナー/楽劇『トリスタンとイゾルデ』
(全3幕・演奏会形式・日本語字幕付)

  トリスタン:エリン・ケイヴス
  イゾルデ:レイチェル・ニコルズ
  ブランゲーネ:クラウディア・マーンケ
  クルヴェナル:石野繁生
  マルケ:アッティラ・ユン
  メロート:アンドレ・モルシュ
  若い水夫、舵手、牧童:与儀巧
  男声合唱:新国立劇場合唱団
《15時00分開演、20時10分終演》休憩2回

『トリスタンとイゾルデ』は2〜3回オペラを観ているが演奏会形式は初めて。

最近の演奏会形式の構成は以前に比べて、演出がしっかりとしているというか、ちょっと凝っている。今回も歌手たちはほとんどが暗譜であり、それなりの演技をしていた。加えて、オケもバンダの配置に特徴をもたせ効果を出していた。

第1幕。有名な前奏曲は何気にアッサリの演奏。もっと溜めを作ってしっとりと聴かせてくれるのかと思っていただけに正直拍子抜け。しかしながら、ブランゲーネ役のクラウディア・マーンケとイゾルデ役のレイチェル・ニコルズの独唱および二重唱は見事で期待を持たせる。特に急遽代役となったニコルズの突き抜けるような明晰な歌声は美しく心に響く。

第2幕。トリスタン役のケイヴス、声質はいいものの声量がもの足りない。それに対して、マルケ王を演じたアッティラ・ユンの強靭なバスの歌声は圧巻。これまでに何人もの優れた韓国出身の男性オペラ歌手を聴いてきたが、そのなかでは一・二を争うかのような凄み。新国立劇場にもぜひとも出演してもらいと思うばかりであった。

第3幕。クルヴェナル役の石野繁生はカンブルランが音楽監督を務めるシュトゥットガルト歌劇場専属。日本人歌手としては声量豊かで声質もいうことがないが、妙に表現力が画一的で肩に力が入りすぎ。ある意味凱旋公演だから仕方がなかったのか・・・。ニコルズはこの3幕では表現力をうまく活かしきったものの、やはり胸打つ表現力の欠如を感じざるを得なかった。

演奏はテンポも早く爽快感があり開放的ではあるが、本来この曲がもつ官能的かつ退廃的な部分がほとんど消されているような思いだった。その意味において不満が募った。それゆえに、スタンディングオベーションまでして賞賛を送る観客を、残念ながら冷ややかに見ざるをえなかった。語弊を招くかかもしれないが、読響公演でのブルックナーおよびワーグナー公演での観客の対応には疑問を思わざるをえない。


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