ミーハーのクラシック音楽鑑賞

ライブ感を交えながら独断と偏見で綴るブログ

2015年クラシック音楽演奏会ベスト10 & オペラ・バレエベスト3

2015-12-30 12:31:24 | Weblog
今年(2015年)もクラシック音楽演奏会ベスト10と、オペラ&バレエのベスト3を選んでみました。

■クラシック音楽演奏会ベスト10

1位 エッシェンバッハとウィーン・フィルの相性は抜群(10月)
2位 12人の金管スーパースターたち(7月)
3位 ユジャ・ワン&コンセルトヘボウ管弦楽団(11月)
4位 サロネン&フィルハーモニア管のシベ5(3月)
5位 ソヒエフ&ベルリン・ドイツ交響楽団(11月)
6位 デュトワ&N響のマラ3(12月)
7位 フェドセーエフ&N響の大ロシア音楽祭(11月)
8位 スウェーデン放送合唱団公演という都響定期(10月)
9位 ラザレフと日本フィルのショスタコーヴィチ(3月)
10位 広上淳一のN響、恐るべし(9月)

上位はすべて海外オケ。それもゲルマン及びアングロサクソン諸国のオケばかりになってしまった。そして、今年も国内オケは海外オケには敵わなかったと言う印象である。そうしたなかでも、N響は指揮者および金管陣が充実したこともあり、かなり健闘したと思う。一方で一時はN響に実力が接近、凌ぐかと思われた都響と読響がチグハグな演奏が目立ち残念でならない。

■オペラのベスト3
1位 『ファルスタッフ』@新国立劇場(12月)
2位 『マノン・レスコー』@新国立劇場(3月)
3位 『椿姫』@新国立劇場(5月)

昨年同様オペラ観劇数は少なかった。やはり料金が高い。海外オペラは出演者が替わったりするのでリスクも高い。そんななかで、新国立劇場は頑張っている。『ファルスタッフ』と『マノン・レスコー』はかなり面白かった。

■バレエのベスト3
1位 マリインスキー・バレエの『愛の伝説』(11月)
2位 新国立劇場バレエ団の『ホフマン物語』(11月)
3位 シルヴィ・ギエムさよなら公演『ライフ・イン・プログレス』(12月)

バレエは10月から12月にそれなりに観劇したが、正直なところ「これは凄い」と思わされる作品に出会うことができなかった。でも、一番の収穫は新国立劇場バレエ団の『ホフマン物語』だ。あれほど見事な舞台美術、照明、衣装の新制作を観たのは初めてかもしれない。ただ、出演者がそれに応えられていなかったのが残念である。

2015年も多くのライブ鑑賞をしたが、全体としてはちょっと刺激度が薄い年のようであった。来年はこのようなことがなく、もっと素晴らしいライブ芸術に出会いたい。

シルヴィ・ギエムさよなら公演『ライフ・イン・プログレス』

2015-12-22 01:34:21 | バレエ
先日(18日)東京文化会館で公演されたシルヴィ・ギエムさよなら公演『ライフ・イン・プログレス』を観てきた。演目および出演者は下記の通り。チケットは完売。

会場は物語性やクラシック音楽のあるクラシック・バレエと違い、ダンサー主体のモダン・バレエということもあり、観客の9割以上が女性。その多くがバレエ経験者という感じなので、皆さんスタイルと姿勢がいい。私も不思議と背筋が伸びてしまう。

「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」
振付:ウィリアム・フォーサイス  音楽:トム・ウィレムス(レスリー・スタックとの共同制作)演出・照明・衣裳:ウィリアム・フォーサイス  振付指導:キャサリン・ベネッツ

出演:上野水香 奈良春夏 柄本弾
河合眞里 川淵瞳 入戸野伊織 二瓶加奈子 原田祥博 三雲友里加

「ドリーム・タイム」
振付・演出 :イリ・キリアン  振付助手:エルケ・シェパース  音楽:武満徹 オーケストラのための「夢の時」(1981)  装置デザイン:ジョン・F. マクファーレン  衣裳デザイン:ジョン・F. マクファーレン 照明デザイン:イリ・キリアン(コンセプト)、ヨープ・カボルト(製作)  技術監督、装置・照明改訂:ケース・チェッベス

出演:吉川留衣 川島麻実子 政本絵美
松野乃知 岸本秀雄

  〜 休憩 〜

「テクネ」
振付:アクラム・カーン  
音楽:アリーズ・スルイター(マッシュルーム・ミュージック・パブリッシング/BMGクリサリス、プラサップ・ラーマチャンドラ、グレイス・サヴェージとの共同制作)  照明デザイン:アダム・カレー、ルーシー・カーター  衣裳デザイン: 中野希美江  リハーサル・ディレクター:ホセ・アグード

出演:シルヴィ・ギエム
パーカッション:プラサップ・ラーマチャンドラ
ビートボックス:グレイス・サヴェージ
ヴァイオリン、ヴォイス、ラップトップ:アリーズ・スルイター

「デュオ2015」
振付:ウィリアム・フォーサイス 音楽:トム・ウィレムス
照明:タニヤ・リュール ステージング:ブリーゲル・ジョカ、ライリー・ワッツ

出演:ブリーゲル・ジョカ、ライリー・ワッツ

「ヒア・アンド・アフター」
振付・演出:ラッセル・マリファント  
照明デザイン:マイケル・ハルズ  音楽:アンディ・カウトン  衣裳デザイン:スティーヴィー・スチュワート

出演:シルヴィ・ギエム、エマヌエラ・モンタナーリ

  〜 休憩 〜

「バイ」
振付:マッツ・エック
音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン ピアノソナタ第32番 Op.111 第2楽章(演奏:イーヴォ・ポゴレリチ)  装置・衣裳デザイン:カトリン・ブランストローム 照明デザイン:エリック・バーグランド 映像:エリアス・ベンクソン  共同プロデュース:ストックホルム・ダンセン・フス

出演:シルヴィ・ギエム


第1部は東京バレエ団、第2部はギエムと仲間たち、第3部はギエム、といった感じのプログラム。ということで、興行的にはどうかは別にして、プログラム上では引退公演というより、ギエムをこれまで支えてくれた人たちへの感謝公演といった感じになっている。

第1部で目を引いたのは、手足の長く大胆な踊りを披露してくれた上野水香よりも、繊細な踊りをすみずみまで見せてくれた奈良春夏。このところの彼女の成長は著しいと思う。プリンシパルになる日もそう遠くはないかも。

第2部の二人の男が踊る「デュオ2015」はパントマイムのようなダンスで軽妙だった。とにかく二人の柔軟性のある動きが興味深かったのだが、残念なことに何を表現しているのかがよく解らない。

そして、最後の演目となった「バイ(BYE)」はベートヴェンのピアノソナタ32番が流れるなか、ステージに映されるモノクロ映像とシンクロするかのように踊る。それは彼女のバレエ人生を表すようであり、物悲しく、熱く、美しい。

終演後、家路につく時はギエムの引退という寂しさと共に何か物足りさを感じざるをえなかった。やはりもう一度彼女の「ボレロ」を観たかった・・・。

デュトワ&N響@サントリーホール

2015-12-20 23:16:01 | N響
先日(16日)サントリーホールで開かれたNHK交響楽団第1825回定期公演を聴いてきた。指揮はシャルル・デュトワ。

【演目】
コダーイ/ガランタ舞曲
バルトーク/組曲「中国の不思議な役人」
  〜 休 憩 〜
サン・サーンス/交響曲第3番ハ短調
   オルガン:勝山雅世
《19時00分開演 20時40分終演》

今のN響は凄い。いい方はヘンかも知れないが敵なし状態だ。来日する海外オケと遜色がないどころか(一部を除いて)その上をいっている。ブロムシュテット、P.ヤルヴィ、そして、デュトワと3人もの強い絆のある指揮者がいる上に、フェドセーエフ、マリナーなどのベテラン、またソヒエフなどの新鋭とも良い関係を維持していて、その演奏レベルはこの10年の中でも最高の領域にあると思う。

1曲目。どことなく幽玄的な感じのするジプシー音楽だが、デュトワはそれを軽快なテンポで指揮していく。木管陣のソロも美しく、弦の旅情的な音色も鮮やか。

2曲目。バルトークの傑作である。ただし、組曲ということもあり、この曲が本来持つ怪奇的な部分がよくわからず残念。ただ、演奏はトロンボーンをはじめとした金管陣が素晴らしい音色を奏でていた。

3曲目。弦の統率力の凄さに目をひかれたというか耳が研ぎ澄まされた。以前から書いているがN響の弦は世界最高峰レベルである。それに加えて、最近は金管陣が充実しているので、安心して聴いていられる。それを如実に示してくれた演奏であった。あと、この曲はやはりNHKホールで聴くよりサントリーホールで聴くほうがいい。パイプオルガンとオケの密着度が違う。

3曲で上演時間1時間40分と比較的短い演奏会だったが、これだけ濃密な演奏を聴かせてくれると、終演後のお酒が明らかに美味く感じられる。(笑)

都響の珍しいプログラムだったが

2015-12-19 23:09:41 | 都響
先日(15日)サントリーホールで開かれた東京都交響楽団の第799回定期演奏会Bシリーズを聴きに行ってきた。指揮はマルク・ミンコフスキ 。

【演目】
ルーセル/バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」
     第1組曲  第2組曲
  〜休 憩〜
ブルックナー/交響曲第0番ニ短調(ノヴァーク版)
《19時00分開演、21時00分終演》

面白いプログラムである。前半の曲も後半の曲も滅多に演奏される機会がなく、私もどちらとも初めて聴く。しかし、世間的には親しみのないプログラムということもなりP席の約4分の1が空席。これはいくらなんでも問題だろう。以前N響のB定期会員に対して「B定期には来るように」という趣旨の手紙が来たが、都響も同じような注意をした方がいいのではないだろうか。

1曲目。ルーセルはフランスの作曲家だが、同世代作曲家のショスタコーヴィチやストラヴィンスキーの影響を受けたというか対抗意識のある旋律が見え隠れする。しかしながら、最初から最後まで弦と木管金管がハーモニーするという、いたって単調な音楽。これだから、あまり演奏されることがないのかもしれない。その上、弦16型の配置だったが、弦の纏まりが不安定で、弦んと木管金管のバランスが良くない。終演後観客の拍手もどことなく醒めていた。

2曲目。滅多に演奏されないこと、そして1曲目に比べて引き締まった演奏だったことからか、終演後はいわゆるブルオタの皆さんはブラボーを連発して、最後は指揮者を引き出す“一般参賀”まで行う。しかし、私は滅茶苦茶に醒めてしまった。そもそもブルックナー自身が封印した曲なので完成度は非常に低い。言葉は悪いが、出来の悪い学生がブルックナーを模倣して作ったような曲で、ブルックナーが持つ本来の荘厳さがかなり欠落している。だから、彼も演奏されて欲しくなかったのだろう。まあ、そういう意味では覗き趣味的な演奏会に私も足を運んでしまったと反省するとともに、ブルックナー好きな私としてはこの曲は二度聴くことはないだろう。

デュトワ&N響のマラ3

2015-12-13 23:30:32 | N響
一昨日(11日)NHKホールで開かれたNHK交響楽団第1824回定期公演を聴いてきた。指揮はシャルル・デュトワ。

【演目】
マーラー/交響曲第3番ニ短調
   アルト:ビルギット・レンメルト
   女声合唱:東京音楽大学
   児童合唱:NHK東京児童合唱団
《19時00分開演 20時50分終演》

『夏の朝の夢』
第1部
    序奏  牧神(パーン)は目覚める
    第1楽章 夏が行進してくる(バッカスの行進)
第2部
    第2楽章 野の花たちが私に語ること
    第3楽章 森の動物たちが私に語ること
    第4楽章 人間が私に語ること
    第5楽章 天使たちが私に語ること
    第6楽章 愛が私に語ること

プログラムにこのように書かれていた。「以上のようなプログラムが初演の際には聴衆に配られたという。こうした言葉による説明は後にすべて削除されたのではあるが、少し前の版では、第1部の序奏に「岩山が私に語ること」という言葉もあり、第6楽章は「神が私に語ること」としても良いと手紙で述べてもいる。生命のない物質(岩山)からはじまって植物、動物、人間、天使、神へと楽章を追うごとに、より位階の高い存在物が登場してくる新プラトン主義的な「存在物の階梯(かいてい)」がイメージされていたと言えよう。」

詳しい哲学のことはよく分からないが、私の勝手な解釈としては新プラトン主義と言うより楽曲の中にニーチェの詩が使われているので、マーラーは実存主義に少し傾倒して音楽を作っていたんだなあと思いながら聴いた。

さて、その演奏であるが、これはかなり素晴らしかった。演奏時間100分を時間が長いと感じさせることなく聴くことができた。マーラー音痴の私が言うのもなんではあるが、やはりN響のレベルの高さを感じさせられた。第1楽章のトロンボーン(新田幹男)の独奏、第2楽章の弦によるピチカートと木管陣のハーモニー、そして第3楽章の舞台裏からのポストホルン(菊本和昭)の独奏と、聴いていて実に飽きない。歌が入る第4楽章、第5楽章も。最終楽章のアダージョにしても研ぎ澄まされた音色が伝わってきて、デュトワとN響の絆がまだまだ深く、そして今後も続くだろう、と感じさせられた。

そして、最後に聴き終えた時、ああこれはマーラーの『夏の朝の夢』ではなく『真夏の夜の夢』なんだなあと思わざるをえなかった。と同時に真夏というより“クリスマス”の夜の夢なのか、とも感じさせられた。12月に聴くにはいい音楽である。

オペラ『ファルスタッフ』@新国立劇場

2015-12-04 22:44:54 | オペラ
昨日(3日)新国立劇場・オペラ劇場で公演された『ファルスタッフ』(初日)を観てきた。音楽はジュゼッペ・ヴェルディ。演出はジョナサン・ミラー。指揮はイヴ・アベル。管弦楽は東京フィルハーモニー管弦楽団。主な出演者は下記の通り。

ファルスタッフ:ゲオルグ・ガグニーゼ
フォード:マッシモ・カヴァレッティ
フェントン:吉田浩之
医師カイウス:松浦 健
バルドルフォ:糸賀修平
ピストーラ:妻屋秀和
フォード夫人アリーチェ:アガ・ミコライ
ナンネッタ:安井陽子
クイックリー夫人:エレーナ・ザレンバ
ページ夫人メグ:増田弥生
《19時00分開演、21時40分終演》休憩1回

あらすじは、老騎士ファルスタッフが二人の女性に同文の恋文を送ったのがバレて、その仕打ちを2度にわたって受ける。ただし、最後はみんなで「この世はすべて冗談」という、まるで「毎度馬鹿馬鹿しいお話でした」というようなストーリー。下地はシェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』。

タイトルロールのファルスタッフを演じたゲオルグ・ガグニーゼは、見事なまでに役に成りきっている上に、声量豊かな歌唱力で他を圧倒。昨今の新国立劇場で観た主役のなかでは抜きん出た存在といえよう。そして、相手役のアリーチェを演じたアガ・ミコライも喜劇の面白さを十二分に熟知しているようで、いたずらっ子(いたずらっ夫人)ぶりを軽妙に演じていた。他の助演陣もそつがなく十二分に楽しませてもらった。

舞台美術および衣装はフェルメールの絵画をモチーフにしたと思われる。装置が機能的で好感が持てる。演出や照明もシンプルながらも、観ていて飽きることなく展開される。そして、今回の舞台の最大の功績者はなんといっても指揮のイヴ・アベルだ。彼の軽快かつ緩急を取り混ぜた指揮は、オペピの東フィルを明晰にして高揚感のある音に仕立てあげ、テンポのよい舞台を展開させていった。

これまでに新国立劇場のオペラを何回観たか解らないが、イヴ・アベルほど納得のいく指揮者はあまりいない。彼が初登場だった2011年の『蝶々夫人』は鮮明に覚えている。そして、今年5月の『椿姫』にしても洗練された輝きが印象に残っている。今後も新国立劇場には彼を指揮者として招聘してもらいたいが、先々のことを考えると彼はファビオ・ルイージのように売れっ子指揮者になりかねないので、客演指揮者として最低でも年に1回か2回は振るという契約を結ぶべきではないだろうか。さもないと、忙しくなって来なくなってしまうような気がしてならない。新国立劇場の英断に期待したい。