ミーハーのクラシック音楽鑑賞

ライブ感を交えながら独断と偏見で綴るブログ

「う〜ん」のハイティング&ロンドン響

2015-09-29 12:28:06 | 海外オーケストラ
昨日(28日)サントリーホールで開かれたロンドン交響楽団の公園を聴いてきた。指揮はベルナルト・ハイティンク。ピアノはマレイ・ペライア

【演目】
モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番ハ短調
   〜休 憩〜
マーラー/交響曲第4番ト長調
   独唱:アンナ・ルチア・リヒター
《19時00分開演、21時15分終演》

まず最初に元演劇制作者としての苦言から。開演前2階ロビーにはプログラムを求める長蛇の列。そりゃそうだ。たった1人だけで販売しているのだから無理に決まっている。1人で会計をしてプログラムを渡すのである。万札など出す客がいたらお釣りを出さなければならない。その間にも列が伸びていく。ほぼ満席になることが分かっているのだから、プログラム売場に1人しか配置をしない制作責任者は認識がかなり甘い。カジモトさん、次はしっかりとした配置をしてください。

1曲目。演奏は可もなく不可もなくという演奏。ただ68歳という年齢によるものなのか、なんか覇気がない。そんななかでも、私は演奏を聴きながら、第1楽章は後のブラームスに影響を与えたんだろうなあ、第2楽章はショパンかなあ、そして第3楽章はベートーヴェンかなあ、などと漠然と聴いていた。モーツァルトの交響曲は私にとって子守唄でしかないが、ピアノ協奏曲をいろいろと勉強になる。

2曲目。ハイティングはもっとキレのある小気味好い指揮をする印象があるのだが、今回はまったくそれが感じられない。なんかタルいのだ。テンポがかなりゆっくりだったからだろうか。こちらも1曲目同様に覇気が感じられない。ただ、こちらも演奏を聴きながら、この交響曲第4番は第5番や第6番の布石になった曲なんだなあと、勝手に勉強してしまった。

あと、演奏で気になったのがホルンだった。首席奏者は終演後は観客から拍手喝采をうけていたが、第1・第2楽章はまったくの不調。私は彼をかなり注視していたが、時に「あ〜、今日はダメだなあ」という表情を見せたり、ホルンを見つめて苛立ったりしていた。これまでも何度も書いてきているが、ホルンという楽器は難しい。ロンドン響という世界一流オケの首席奏者でもこういうことがあるんだなと、思わざるをえなかったが、明後日のNHK音楽祭ではしっかりと演奏してもらいたい。

88歳の巨匠?達人?名人?とN響

2015-09-20 23:17:11 | N響
先日(16日)サントリーホールで開かれたNHK交響楽団第1815回定期公演を聴いてきた。指揮はヘルベルト・ブロムシュテット。

【演目】
ベートーヴェン/交響曲第1番ハ長調
  〜休 憩〜
ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調「英雄」
《19時00分開演、20時40分終演》

クラシック音楽の世界ではしばしば「巨匠」という言葉がよく使われるが、ブロムシュテットは「巨匠」というより「達人」もしくは将棋の冠位ではないが「名人」という称号を冠した方がいいように思う。

1曲目。対向配置の12型という小編成。第2ヴァイオリンの第1プルト(首席と次席)が共に女性(大林修子、田中晶子)というのは初めて見る。ひょっとしてN響史上初めて? ブロムシュテットはとにかくオケを丁寧に丁寧に束ねるように音楽を作りあげていく。それでいて、若々しく飄々として爽快感のある音色を引き出していく。ベートーヴェンの若々しいころの姿を思い浮かべさせてくれるような演奏だった。

2曲目。対向配置の14型。私は正直この第3番があまり好きでない。しかし、この日の演奏はどこと端正かつ明晰、そしてモノトーン的な陰影があり、木管や金管も控えめでしっかり耳を立てながら聴くことができた。なるほど、こういうシンプルなロマン派的な演奏もあり、なんだなと思わざるをえなかった。

終演後、コンマス(篠崎の計らいでなんども観客の拍手に応えたブロムシュテットは相好を崩しっぱなしで、ちょっと拳を上げてガッツポーズまで見せる。88歳にして指揮者たる威厳や偉ぶった姿勢をまったく見せない。練習は相当厳しいという話だが、観客にはそうした素振りは微塵も見せない。やはり彼は巨匠ではなく達人か名人というべきではないだろうか。

広上淳一のN響、恐るべし

2015-09-12 21:49:29 | N響
昨日(11日)NHKホールで開かれたNHK交響楽団第1814回定期公演を聴いてきた。指揮は広上淳一。ピアノはニコライ・ルガンスキー。

【演目】(※はアンコール曲)
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番ニ短調
※ラフマニノフ/音の絵
  〜休 憩〜
ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調
《19時00分開演、20時55分終演》

1曲目。ラフマニノフというと、どうしても刹那的というか退廃的なイメージがある。ところが、ニコライ・ルガンスキーが奏でるラフマニノフは中世の騎士が鎧を着て引くような質実剛健な音色。それでいて繊細なところはしっかりと表現している。これまでに聴いたことがないラフマニノフで新鮮だった。

2曲目。広上淳一はいつ聴いても楽しい。特に今回のドボ8のような曲は彼が水を得た魚のように生き生きしている。オケのメンバーに「楽しい音楽をやろうぜ」「演奏後にはみんなで祝杯をあげようぜ」と言うが如くオケのメンバーを焚き付ける。そのせいかどうかわからないが、ヴィオラをはじめとした中低弦の響きが心地よい。そして、トランペットとトロンボーンが極上の音色を思いっきり響かせてくれる。あの音響の悪いNHKホールを逆手にとったような高揚感あふれる演奏。いや〜、広上淳一、恐るべし。

読響の『トリスタンとイゾルデ』

2015-09-07 21:26:11 | 読響
昨日(6日)サントリーホールで開かれた読売日本交響楽団の第551回定期演奏会を聴いてきた。指揮はシルヴァン・カンブルラン。

【演目】
ワーグナー/楽劇『トリスタンとイゾルデ』
(全3幕・演奏会形式・日本語字幕付)

  トリスタン:エリン・ケイヴス
  イゾルデ:レイチェル・ニコルズ
  ブランゲーネ:クラウディア・マーンケ
  クルヴェナル:石野繁生
  マルケ:アッティラ・ユン
  メロート:アンドレ・モルシュ
  若い水夫、舵手、牧童:与儀巧
  男声合唱:新国立劇場合唱団
《15時00分開演、20時10分終演》休憩2回

『トリスタンとイゾルデ』は2〜3回オペラを観ているが演奏会形式は初めて。

最近の演奏会形式の構成は以前に比べて、演出がしっかりとしているというか、ちょっと凝っている。今回も歌手たちはほとんどが暗譜であり、それなりの演技をしていた。加えて、オケもバンダの配置に特徴をもたせ効果を出していた。

第1幕。有名な前奏曲は何気にアッサリの演奏。もっと溜めを作ってしっとりと聴かせてくれるのかと思っていただけに正直拍子抜け。しかしながら、ブランゲーネ役のクラウディア・マーンケとイゾルデ役のレイチェル・ニコルズの独唱および二重唱は見事で期待を持たせる。特に急遽代役となったニコルズの突き抜けるような明晰な歌声は美しく心に響く。

第2幕。トリスタン役のケイヴス、声質はいいものの声量がもの足りない。それに対して、マルケ王を演じたアッティラ・ユンの強靭なバスの歌声は圧巻。これまでに何人もの優れた韓国出身の男性オペラ歌手を聴いてきたが、そのなかでは一・二を争うかのような凄み。新国立劇場にもぜひとも出演してもらいと思うばかりであった。

第3幕。クルヴェナル役の石野繁生はカンブルランが音楽監督を務めるシュトゥットガルト歌劇場専属。日本人歌手としては声量豊かで声質もいうことがないが、妙に表現力が画一的で肩に力が入りすぎ。ある意味凱旋公演だから仕方がなかったのか・・・。ニコルズはこの3幕では表現力をうまく活かしきったものの、やはり胸打つ表現力の欠如を感じざるを得なかった。

演奏はテンポも早く爽快感があり開放的ではあるが、本来この曲がもつ官能的かつ退廃的な部分がほとんど消されているような思いだった。その意味において不満が募った。それゆえに、スタンディングオベーションまでして賞賛を送る観客を、残念ながら冷ややかに見ざるをえなかった。語弊を招くかかもしれないが、読響公演でのブルックナーおよびワーグナー公演での観客の対応には疑問を思わざるをえない。