ミーハーのクラシック音楽鑑賞

ライブ感を交えながら独断と偏見で綴るブログ

NHK交響楽団@都民芸術フェスティバル2010

2010-02-26 17:16:23 | N響
昨日(25日)、東京芸術劇場で開かれている都民芸術フェスティバル2010のNHK交響楽団の公演を聴きに行ってきた。指揮はロッセン・ミラノフ。ピアノは岡田博美。

岡田博美は桐朋学園大学在学中に1979年第48回日本音楽コンクールで優勝。1982年第28回マリア・カナルス国際コンクールで第1位、1983年第2回日本国際音楽コンクールピアノ部門第1位、1984年第2回プレトリア国際コンクールにて第1位と、数多くのコンクールで輝かしい受賞をしている。そして、1984年からロンドンを拠点に活動を開始して、翌1985年にはロンドンでリサイタルデビュー。その後は1987年にフィルハーモニア管弦楽団とオーケストラ共演を果たした後、ヨーロッパ主要オケおよび日本のオケと共演している。

【演目】※はアンコール曲
ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲
ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲
  ~休 憩~
チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調
※チャイコフスキー/歌劇「エフゲニ=オネーギン」より“ポロネーズ”
《19時00分開演、21時00分終演》

私の座席の右隣には20代の可愛い女性、左隣はどうみても80歳は越えているだろうというお爺さん。N響定期ではまずありえない両隣。都民芸術フェスティバルならではの対照的な観客に挟まれて聴く。(笑)

1曲目。N響はスロースターターなオケである。ところが、最近は1曲目から結構いい演奏をする。この曲もトロンボーンとチューバの震えるような厚みのある音色が素晴らしかったが、逆にホルンはボロボロ。まるで両隣の客席と同じような対照的な音色に含み笑いもしてしまったが、全体にはワーグナー特有の大らかさと仰々しさが見え隠れしていて味のある演奏だった。

2曲目。岡田博美は細身でとても華奢な感じの男性。そして、彼が繰り出すピアノの音色は小さな都会の片隅にいるような哀愁感を漂わせると共に、ラフマニノフならではの寂寥感を味あわせてくれる。なんかとてもロマンチックなのだ。それに合わせるかのように、オケも優雅にしてちょっと耽美な音色を紡ぎ出していく。なかでも、藤森亮一率いるチェロ陣がピアノと共に主題を演奏するときは、音色に色気が加わりゾクゾクしてしまい、思わず右隣りの可愛い女性を見てしまった。w

岡田はこれまでロンドンを中心に活躍していたので、日本で演奏する機会が少なかったが、昨年は日本のオケとも共演しているので、今後も聴ける機会はありそうである。

3曲目。ロッセン・ミラノフを2年前に聴いたときに、この人は只者でないと感じたが、それを再確認することができた。彼は大振りするわけでもない。細かい指示をあれこれ出すわけでもない。しかしながら、オケをうまくのせるテクニックをもっているようであり、彼の指揮には心を揺るがす何かをもっているように思える。というのも、木管や金管は第2楽章の半ば頃からスゥイングしていき、弦も第3楽章後半からドライブしているように聴こえてきたのである。そして、第4楽章ではそれが見事に融合していき、チャイコフスキーならではのドラマチックかつエネルギッシュで表情豊かな音楽を創り上げていったのである。ミラノフには近いうちに定期公演に登場してもらいたい。

東京フィルハーモニー交響楽団@都民芸術フェスティバル2010

2010-02-22 13:11:17 | 東京フィル
昨日(21日)、東京芸術劇場で開かれている都民芸術フェスティバル2010の東京フィルハーモニー交響楽団の公演を聴きに行ってきた。指揮は小林研一郎。トランペットはマティアス・ヘフス。

【演目】※はアンコール曲
チャイコフスキー/歌劇「エフゲニ=オネーギン」より“ポロネーズ”
ハイドン/トランペット協奏曲変ホ長調
※ヴォルフ・クルツェック/ダブルベルトランペットのためのアドヴェンチュアーズ
  ~休 憩~
チャイコフスキー/交響曲第4番ヘ短調
※ドヴォルザーク/ユモレスク
《14時00分開演、15時50分終演》

客席に着いてまず驚いたのが、舞台後方にあるパイプオルガンが白い反響板で隠れている。東京芸術劇場には何度も来ているが、このような舞台設定は初めて。なんで今まで他のオケはあの反響板を使わないでいたのだろうか。見栄えがよくないからだろうか。それとも音響に支障を起こすからであろうか・・・。

1曲目。チャイコフスキーのもつきらびやかさと華やかさを見事に表現している。さすがにオペラやバレエなどのオーケストラボックスをいっぱい経験している東京フィル。面目躍如という出来。1曲目でこんな素晴らしい「ポロネーズ」を聴いたのは初めてかも。

2曲目。マティアス・ヘフスが奏でるトランペットは一点の雲も霞もない澄みきった音色。もうほぼパーフェクト。このような音色は残念ながら日本のオケでは聴くことができない。そして、ここで反響板の効果が見事に現れた。特にアンコールでダブルトランペット(1台のトランペットに2個のラッパが付いていて、両手を使って演奏する)を演奏したとき、ミュートの入った音の残響音が絶妙だった。

3曲目。コバケンお得意のチャイコフスキーの交響曲。第2楽章が出色で出来で素晴らしかったが、第3楽章のピチカートでかなりミスが目立ちちょっと残念。それでも、第4楽章はコバケン節炸裂で、思い入れたっぷり、情感たっぷりの演奏を繰り広げ、最後は思いっきり盛り上げて、ジ・エンド。

コバケンは日本フィルで振ろうが、N響や読響で振ろうが、そして東京フィルで振ろうが、コバケンはコバケンで、その個性を十二分に発揮していた。これだけ個性的な指揮者はそうそういない。

クールなラフマニノフとポップなチャイコフスキー

2010-02-19 12:28:29 | N響
一昨日(17日)、サントリーホールでのNHK交響楽団第1669回定期公演を聴きに行ってきた。指揮はセミヨン・ビシュコフ。ピアノはアレクセイ・ヴォロディン。

【演目】
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番ハ短調
  ~休 憩~
チャイコフスキー/交響曲第4番嬰ヘ短調
《19時00分開演、20時50分終演》

アレクセイ・ヴォロディンは1977年ロシア・サンクトペテルブルク生まれ。2003年チューリヒのゲザ・アンダ・コンクールで優勝。その後、マリインスキー管をはじめヨーロッパの有名オケと共演。特にゲルギエフとは定期的に共演している。バッハからガーシュウィンまで幅広いレパートリーをもつ。N響初登場。

1曲目。冬季オリンピックが開催されているからではないだろうが、極寒のラフマニノフという感じだ。アレクセイ・ヴォロディンが奏でる音色は氷柱から滴り落ちるような冷たさをもつ音色。加えて、冒頭の弦の音色も凍てついた大地にブリザードが走るような響き。サントリーホールの2階席にいるにもかかわらず、身震いするような第1楽章だった。

第2楽章はピアノ主体のアダージョなのだが、曲にあまり抑揚がない。ヴォロディンの音色は第1楽章同様に冷たいままで、表情豊かになっていかない。逆にオケが見事な抑揚をつけて、ピアノを引き立てていった。どことなく主客転倒の感じで消化不良だった。

第3楽章。ラフマニノフならで情熱的旋律が奏でられるが、ここでもヴォロディンは軽々しくクールな演奏を続ける。ちょっと物足りなさを感じるがこれが彼の芸術性なのだろう。フィギュアスケートの採点ではないが、技術点は十二分にあるが、芸術点(今は構成点)はもう少しあげてほしいという演奏だった。

2曲目。45分ぐらいかかる曲で、ビシュコフは楽章間も時間はしっかりと取った。しかし、演奏自体はあまりタメを作ることなく高速回転で演奏されていき、さほどロシアぽくない。どちらかというと、アメリカのポップス・オーケストラのような爽快感で流れていく。それでも、最終楽章ではチャイコフスキーならではのジェットコースター感も味わえ、最後は超高速回転の盛り上がっていき、N響にしては珍しく豪快に締めくくる。

このような演奏だと一言も二言もあるオジサンたちには受けつけないかなと思ったら、案の定、2階席のオジサンたちはサッサと帰宅の途についてしまったが、逆にオバサマたちはみんな楽しそうに拍手を送っていて、先日のNHKホールほどではないにしろ拍手が長く続いた。

ビシュコフ&N響のマーラー

2010-02-14 14:27:54 | N響
一昨日(12日)、NHKホールでのNHK交響楽団第1668回定期公演を聴きに行ってきた。指揮はN響初登場のセミヨン・ビシュコフ。

ビシュコフは数多くいる1950年代生まれの指揮者のなかでも、ファビオ・ルイージ、リッカルド・シャイーと並んで私にとってお気に入りの指揮者である。

【演目】
ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「前奏曲と愛の死」
  ~休 憩~
マーラー/交響曲第5番嬰ハ短調
《19時00分開演、20時55分終演》

1曲目。弦の繊細な響きがとても鮮やか。特に「愛の死」でのビオラとチェロの中低音部が生と死の狭間を漂うような寂寥な音色がたまらなかった。

2曲目。不得意なマーラー。そのために、2日間にわたってショルティ指揮シカゴ交響楽団のCDを聴きつづけて予習。そのかいはあった。(笑)

1曲目では指揮棒を使わなかったビシュコフだったが、2曲目は指揮棒をもって登場。

第1楽章。この曲の良し悪しは冒頭のトランペットで決まるのではないだろうか。この日のトランペット首席は客演の長谷川智之(東京フィル)。その音色は少し物悲しくも高らか。それでいて水々しく若々しい。曲全体では途中1~2ヶ所、音色が裏返ったりしてしまったが、この曲を見事にリードしていった。また、3rdのミュートをつけたりした佛坂咲千生のサポートも素晴らしかった。

第2楽章。「嵐のように激しく、よりいっそう激しく」という楽章。それでいて、チェロの穏やかな音色が見事にマッチしていく。1曲目のワーグナーのときもチェロの響きにも感心したが、この第2楽章でも藤森亮一率いるチェロの音色には目を見晴らされた。加えて、木管も金管も表題の「嵐のように激しく、よりいっそう激しく」を鮮やかに具現化していた。

第3楽章。スケルツォ。冒頭に松崎裕率いる7人のホルンが快活的な旋律を交互に轟かせていく。そして、ソロの松崎の音色は円やかなで艶がある。こんな音色を出せる奏者は日本にはほとんどいない。やはりまだ彼の右に出るホルン奏者はいないのかもしれない。久しぶりにふくよかなホルンの音色に浸る。

第4楽章。弦楽とハープだけの楽章。N響の美しい弦楽の音色のなかに、ハープの早川りさが水をえた魚のように、時に優しく時に活き活きとした彩りを加えていく。

第5楽章。マーラーの情念がふんだんに折り込まれている楽章。ビシュコフはここではオケの出し入れを明晰にしていき、その指示も少し直情的になっていく。視線もめまぐるしく動かしているようで、それに伴いタクトを持つ右手ばかりでなく左手の動きも大きくなっていく。こうした指揮に応えるかのように、オケも色彩感が増していく。木管と金管のパートパートの連携がスムーズで、それを補う弦も結束力のある音色を奏でていく。そして、最後の最後は情熱的かつ狂騒的幕切れで締めくくられる。マーラー不勉強の私が言うのもなんだが「いいじゃん」と唸ってしまった。

終演後、すぐにブラボーが多数飛んだが、それよりも拍手がなかなか成り止まなかったことに驚いた。いつもならすぐに席を立つ高齢者が多いN響だが、この日は拍手はいつもより長く、6~7分は続いた。NHKホールでこれだけ長い拍手が続いたのいつ以来だろうか・・・。

N響事務局は初共演にもかかわらず、ビシュコフにいろいろな作曲家の曲をAプロBプロCプロと3つの公演でまかせるという英断を下した。正解だったと思う。今度の水曜は私の好きなラフマニノフとチャイコフスキーである。期待しないわけにはいかない。

なぜか読響3連チャン

2010-02-08 15:46:20 | 読響
昨日(7日)、みなとみらいホールでの読売日本交響楽団みなとみらいホリデー名曲コンサート・シリーズを聴きに行ってきた。プログラムはオール・シベリウス。指揮はレイフ・セゲルスタム。ヴァイオリンはニューヨーク在住の松山冴花。

【演目】
シベリウス/交響詩「フィンランディア」
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲
  ~休 憩~
シベリウス/交響曲第1番
《14時00分開演、15時55分終演》

なぜか読響3連チャンである。マリン・オルソップ@サントリーホール、現田茂夫@めぐろパーシモンホール、そして、レイフ・セゲルスタ厶@みなとみらいホールと、指揮者も会場も、もちろん演目も違う。だけど、もう読響の3連チャンはないだろう。

レイフ・セゲルスタムは1944年生まれ。シベリウス・アカデミーで学び、現在はストックホルム王立歌劇場とヘルシンキ・フィルの首席指揮者を兼任。作曲家としても活躍していて、すでに200以上の交響曲を作曲しているという。そして、この人の特徴はなんといってもその体格。ウエストは150センチ以上、体重も間違いなく150キロ以上という巨漢なのである。

1曲目。スローでメローな「フィンランディア」。これまでに何度もこの曲を聴いているが、セゲルスタ厶の狙いは熟成された音を求めているようなのだが、どことなく妙に悦に入っていてしまっていて、観客を引き寄せる力が欠けている。フィンランドの人にとって歴史的に大事な曲であることは解るが、最後はもう少し朗らかにしてほしかった・・・。

2曲目。プログラムには「非の打ちどころのないテクニックと驚くべき芸術性を持ち、元気溢れる、しかし繊細で爽快な音楽を創り上げている」と松山冴花のことを紹介している。確かに彼女のテクニックは素晴らしい。しかしながら「繊細で爽快な音楽」という言葉に疑問が残った。というのも、彼女のヴァイオリン(使用楽器は不明)から奏でられる音は、ピュアな音色というより、少しスモーキーな音色なのである。それが北欧の朝靄を表わすような音色なら曲にマッチするが、どうもニューヨークの冬の蒸気のような感じなのである。

3曲目。読響の弦はどうしてもあんなに剛直なのだろう。しなやかさというか艶を感じることがあまりない。かといって、シベリウスを表現するような冷たさといった温度も感じらない。セゲルスタ厶は1曲目と同じように、スローでメローなシベリウスを構築していく。しかしながら、残念なことにその音の背景に北欧の緑や湖といった光景が浮かんでこない。音の出し入れ、メリハリなどの音楽性に関しては問題ないと思うのだが、それから一歩踏み込んだところにある芸術性が伝わってこない。これを感じられないようではライブにいった意味がない。

何処のオケもそうだが、好不調の波はある。指揮者との波長が合うかどうかもある。読響3連チャンのなかでは、現田茂夫が指揮した「新世界」がライブ感の醍醐味をもっとも感じられ、気持ちよく聴くことができた。現田と読響は3月の都民芸術フェスティバルで「悲愴」を演奏することになっている。これに期待したい。

めぐろパーシモンホールの音響は素晴らしい

2010-02-02 13:20:39 | 読響
一昨日(31日)、めぐろパーシモンホールで開かれたフレッシュ名曲コンサートを聴きに行ってきた。指揮は現田茂夫。ピアノは石井楓子(桐朋女子高等学校音楽科3年)。管弦楽は読売日本交響楽団。

【演目】(※はアンコール曲)
スメタナ/「売られた花嫁」序曲
ショパン/ピアノ協奏曲第1番
  ~休 憩~
ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」
※J.シュトラウス2世/ピチカート・ポルカ
《15時00分開演、17時00分終演》

これまでめぐろパーシモンホールへはアマオケやバレエ公演などに行ったことがあるが、プロオケのコンサートは今回が初めて。そして、初めてここの音響が実に素晴らしいことが解った。(苦笑)

プロオケが演奏すると、音響が全然違うのである。弦は引き締まった柔らかな音色、木管のまろやかな音色はダイレクトに伝わり、金管は妙なキンキンとした残響音が全く感じられない。もちろん、現田茂夫の指揮と読響の演奏が良かったからかもしれないが、ここの音響の良さには目からウロコであった。

舞台上には日本で最初という吊り下げ式音響反射板があり、座席上部には残響可変装置があり、客席の天井は音響に良いという三浦折りなっていたりと、音の響きを十二分に考慮した構造になっている。いや~、驚きである。こんな音の響きを大切にした素晴らしいホールが身近にあったとは・・・。

ただ、パーシモンホールは客席が1,200席と少ない。最寄り駅(都立大学駅)からも徒歩7分と少し歩く。そのために、現在はプロオケの公演が年1~2回しかないが、もう少し増やしてもいいのではないだろうか。あの音響はとても棄て難い、というかもったいない。今のままでは宝の持ち腐れになってしまう。