ミーハーのクラシック音楽鑑賞

ライブ感を交えながら独断と偏見で綴るブログ

オペラ指揮者の本領発揮サンティとN響

2014-11-28 00:10:50 | N響
一昨日(26日)サントリーホールで開かれたNHK交響楽団第1795回定期公演を聴きに行ってきた。指揮はネルロ・サンティ。

【演目】
ロッシーニ/歌劇「アルジェのイタリア女」序曲
メンデルスゾーン/交響曲第4番イ長調「イタリア」
  〜休 憩〜
ベートーヴェン/交響曲第2番ニ長調
ワーグナー/歌劇「リエンチ」序曲
《19時00分開演、21時05分終演》

弦を平場の舞台に、木管金管を雛壇に配置。弦は対抗配置。コントラバスは下手(左手)に並べる。ところが、この日のN響は3曲目までほとんど男性奏者だけの布陣。木管金管には女性は一人もおらず、加えて弦もコントラバス、チェロ、ヴィオラは男性のみ。つまり、女性はヴァイオリンの数人と打楽器の黒田英実のみ。久しぶりにむさ苦しいN響の陣容を見た思いである。(笑)

1曲目。前回のNHKホールではかなり硬かったゲストコンマスの岡崎慶輔が堂々としてオケをうまく統率。ロッシーニの優美な旋律を心地良く聴かせてくれる。岡崎はこのままN響コンマスの座への道を歩むのであろうか。

2曲目。イタリアを思い浮かべるより、何故かカリフォルニアを思い浮かべてしまった。第1楽章はサンフランシスコの雑踏、第2楽章はナパかソノマのワインカウンティの田園風景、第3楽章は起伏のあるヨセミテ公園、第4楽章は小麦や牧草が生い茂るセントラル・ヴァレー、といった感じだ。カリフォルニアはやはりイタリア移民の影響が強い州ということを再認識。と同時にメンデルスゾーンの懐の広さをも感じさせた。

3曲目。前後3曲はイタリアに関する音楽のなか、なんでこの曲が入っているのか解らないが、サンティは若き日のベートーヴェンの才能はいかなるものかを確かめるように、ゆっくりそして思い入れたっぷりに聴かせてくれる。ワンダフル!

4曲目。生では初めて聴く。サンティはほとんどの時間を上手(右手)側に陣取ったトランペット陣とトロンボーン陣と対峙して、彼らを鼓舞して重厚感溢れる音楽を纏めあげていく。それに応えたトランペット首席の菊本和昭は前回公演に続きグッドジョブだ。ブラボー!

サンティは今年すでに83歳になり、あの体型からすると来年以降の来日は難しいかもしれないが、できれば彼による演奏会形式の『トリスタンとイゾルデ』か『トロイアの人々』を聴いてみたい。

イタリア三昧のN響定期

2014-11-23 00:59:28 | N響
一昨日(21日)NHKホールで開かれたNHK交響楽団第1794回定期公演を聴きに行ってきた。指揮はネルロ・サンティ。

【演目】
ロッシーニ/歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
ベルリオーズ/序曲「ローマの謝肉祭」
  〜休 憩〜
チャイコフスキー/イタリア奇想曲
レスピーギ/交響詩「ローマの松」
《19時00分開演、20時35分終演》

4人の作曲家によるイタリアを表現したイタリア三昧プログラム。

1曲目。コンマスはゲストの岡崎慶輔(チューリッヒ歌劇場コンサートマスター)。ちょっと不慣れということもあるせいか、弦は全体に控え目な感じ。もう少し歌ってもいいのではないかと思ってしまう。

2曲目。指揮のサンティが高齢ということもあるかもしれないが、テンポがちょっと遅く、ここでも弦が乗り切れていない。単調な明るいだけの謝肉祭に終始してしまい、いつものようなしなやかな弦の音色が聴こえない。というわけで、消化不良気味の前半だった。

3曲目。前半の2曲同様にテンポが遅いが、それを補ってやまないのが金管陣の素晴らしい音色。そして、ここでは弦もしっかりと音色を主張して、歌う歌う。コンマスの岡崎の表情にもどことなくゆとりが感じられる。

4曲目。「ボルゲーゼ荘の松」は出だしから煌びやかにして色彩感に満ち溢れていた。「カンコンブ付近の松」は舞台袖からトランペット(井川明彦)の音色が白眉。「ジャニコロの松」はクラリネット(松本健司)をはじめ木管・弦の首席陣のソロが見事。「アッピア街道の松」は華やかかつ艶やかな金管が聴こえてきて爽快だった。

この2〜3年のN響メンバーの入れ替りでもっとも充実したのが金管陣。トランペットの菊本和昭(元・京響)、福川伸陽(元・日フィル)の加入は非常に大きい。そして、今回はホルン3番に客演で大野雄太(東響)が加わり、新田幹男率いるトロンボーン陣と共に金管陣の咆哮が鮮やかであった。以前のN響とはかなり違うツヤとハリのある金管陣。今後も期待したい。

パッパーノ&サンタ・チェチーリア国立管

2014-11-14 22:49:39 | 海外オーケストラ
先日(11日)サントリーホールで開かれたローマ・サンタ・チェチーリア国立管弦楽団の東京公演を聴いてきた。指揮はアントニオ・パッパーノ。ヴァイオリンは諏訪内晶子。

【演目】(※はアンコール曲)
ロッシー二/オペラ『セビーリャの理髪師』序曲
ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調
※バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番から「ルーレ」
  〜休 憩〜
R.シュトラウス/アルプス交響曲
※ロッシーニ/オペラ『ウィリアム・テル』から「パ・ド・シス」
※ロッシーニ/オペラ『ウィリアム・テル』序曲から「ギャロップ」
《19時00分開演、21時15分終演》

1曲目。聡明にして爽快感あふれる演奏。サンタ・チェチーリア国立管というと木管金管に名奏者を揃えていて、管楽器主体のオケというイメージだったが、今回のオケは弦の響きも開放感に満ちあふれ、とても気持ちがいい。これは余談になるのかもしれないが、弦の女性奏者のほとんどがノースリーブで、完全に肩を露わにしているドレスの女性も何人かいた。爽快感はこうした外見からも強く感じ取れる。(*_*;

2曲目。諏訪内晶子の音色はいつ聴いても美しい。聴いていて惚れ惚れする。演奏自体にはなんの問題もないし、称賛の声しかない。しかしである。なんでカジモトが招聘する海外オケの演奏会のヴァイオリン・ソロは判で押したように諏訪内晶子なんだと思ってしまう。もちろん彼女が所属アーチストだからであることは百も承知である。しかしである。たまには他の事務所に所属している日本人ヴァイオリニストにもチャンスを与えるぐらいの度量の広さを示すことはできないのだろうか。カジモトは来年もワールドシリーズ・オーケストラ・シリーズとして、ハンブルグ北ドイツ放送交響楽団、ロンドン交響楽団、ベルリンドイツ交響楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と優れたオケを招聘する。ここではぜひとも若手にチャンスを与えてもらいたい。

3曲目。オケは16型の対抗配置。コントラバスは第1ヴァイオリンの後方に。そして、ウィンドマシーン(風音器)、サンダーマシーン(雷音器)、カウベル(牧羊擬音)などの打楽器は上手(右手)後方に。これまでに何度も「アルプス交響曲」のライブを聴いてきているが、こうした打楽器が右側にある配置は初めてみる。イタリアでは嵐は上手=東からやってくるのだろうか。w オケの配置というのは千差万別だ。

以前聴いたケント・ナガノとモントリオール交響楽団の『アルプス交響曲』はまるで人生の歩みを描いているような演奏だったが、今回の演奏は正真正銘アルプスの山々が目に浮かぶ情景的な演奏だった。ただし、そのアルプスがどことなくロッキー山脈にも似ているなあと思っていたら、パッパーノはイギリス生まれのアメリカ育ちということだった。加えて、演奏自体もヨーロッパのオケというより明快なアメリカ・オケのようなタイプで、奏者たちもノリノリ感に満ちていた。なかでも、ティンパニー(エンリコ・カリーニ)のリズミカルかつパワフルな叩きは痛快な感じすらした。

左利きのクラシック音楽奏者

2014-11-03 00:31:46 | Weblog
先日ある弦楽器奏者の方と食事をしながら話をする機会があり、彼が箸を左手にもっているので「左利きなのであすか」と聞いてみると、「私は楽器をもつ時以外はすべて左利きです」と言われた。クラシック音楽で左利きというか、弓を左手にもっている弦楽奏者はまずお目にかかれない。これはオーケストラの場合、左利きの用の楽器があると揃って演奏することができないからだろう。ただ、以前どこかのオケで左手に弓を持ったチェリストがいたような覚えがあるのだが・・・。

では、左利きの人は普通に弦楽器をすんなり受けいることができるのだろうか。そのことを前述の人に聞いてみたところ「小さいときからやっているので、左とか右とか意識したことはありませんね。ただ、左利きだと弦を押さえるのが楽ですが、弓の強弱のコントロールに手こずる人はいるみたいです」と。

クラシック音楽の世界で有名な左利きな弦楽器奏者というと、千住真理子、古澤巌らしいが他にも何人もいるに違いない。というのも、日本では1割強の人が左利きなのだから、仮に16型のオケが編成されているとしたら、16+14+12+10+8=60人の弦楽器奏者がいるから、最低でも6〜7人の左利きの人がいるはずである。

他にもフルートやトロンボーンなど左利きにちょっと不利な楽器があるが、左利きの人はそんなことはさほど気にせずに演奏しているのだろうか。いつかどこかの雑誌で左利きの奏者たちの座談会でもやってもらえないかなあ。