ミーハーのクラシック音楽鑑賞

ライブ感を交えながら独断と偏見で綴るブログ

眠気と味気なさが残った読響名曲シリーズ

2010-01-28 13:59:09 | 読響
昨日(27日)、サントリーホールでの読売日本交響楽団第522回名曲シリーズを聴きに行ってきた。指揮はマリン・オルソップ。ヴァイオリンはライナー・ホーネック(ウィーン・フィルコンサートマスター)。ヴィオラは鈴木康浩(読響ソロ・ヴィオラ奏者)。

マリン・オルソップは1956年アメリカ・ニューヨーク市生まれ。両親は共にニューヨーク・シティ・バレエ管弦楽団の楽団員。ジュリアード音楽院で修士・博士号を取得後、主にジャズとクラシックを融合した音楽活動を行う。そして、1993年にコロラド交響楽団の音楽監督に就任してから注目を集めるようになる。2007年からはユーリ・テミルカーノフの後を継いでボルティモア交響楽団の音楽監督に就任。アメリカのメジャー・オーケストラで初の女性指揮者による音楽監督になった。そして、昨年にはその契約が2015年まで延長された。

【演目】
モーツァルト/ヴァイオリンと管弦楽のためのロンドK.269
モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K.364
  ~休 憩~
ブラームス/交響曲第2番
《19時00分開演、20時55分終演》

1曲目と2曲目。この日が誕生日のモーツァルト。絶対に眠らないようにと、ロビーで珈琲を飲んでのぞんだが、1曲目からライナー・ホネックの1714年製ストラディヴァリウスの奏でる美しい音色に陥没。そのまま心地よい気分で2曲目へ突入してしまったので、こちらもほぼ陥没状態で過してしまった。

休憩時間、眠気をさますために外気で頭を冷やす。しかし、どうもすっきりしない。

3曲目。第1楽章冒頭のホルン、1番と2番、3番と4番の音色にズレというか差がありすぎる。加えて、弦の音色が重厚というよりもハリガネのように剛直。しかしながら、フルートやオーボエなど木管の音色はそれに相反するようにまろやか。これがオルソップの狙いなのだろうか。しかしながら、それらが溶け合っているように聴こえない。

第2楽章、首席ホルン(山岸博)の音色に余裕が感じられず、少し気張りすぎている。ここでも、弦の音色がまだまだ硬い。オルソップは決して大振りではないし、指示も的確のように見えるのだが・・・。

第3楽章でやっとオケが一体化したように思えたが、第4楽章になるとオルソップがテンポをあげていき、今度は指揮者とオケの距離が離れていくように思え、最後はブラームスのわりには虚ろな響きだった。そのせいかどうか解らないが、いつもの読響に比べてブラボーの数はほとんどなく、早く席を立つ人が多いように見えた。

堀米ゆず子健在なり、広上淳一いい仕事してます

2010-01-21 17:40:40 | N響
昨日(20日)、サントリーホールでのNHK交響楽団第1666回定期公演を聴きに行ってきた。指揮は広上淳一。ヴァイオリンはヴィヴィアン・ハーグナーに代わって堀米ゆず子。彼女の使用楽器はヨゼフ・グアルネリ・ジェス(1741年製)。

【演目】
武満 徹/3つの映画音楽(1995)
ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調
  ~休 憩~
プロコフィエフ/交響曲第7番嬰ハ短調
《19時00分開演、21時05分終演》

1曲目。N響の弦楽は世界でも指折りのレベルだと思う。昨年のNHK音楽祭でゲルギエフが指揮した芥川也寸志「トリプティーク」のときも、その美しい音色を堪能したが、今回の武満徹の難曲も世界のトップレベルを証明するかのような見事な演奏であった。

タイトル通り、曲は3つの映画音楽で構成されていて、「訓練と休息の音楽」はコントラバスのピチカートが身体の訓練を物語るようであり、続く「葬送の音楽」は武満ワールドと言う感じで限りなく重たい、そして最後の「ワルツ」も軽快そうでいながら、ジメジメした梅雨のようなワルツ。こうした難曲を広上淳一は慇懃にそしてきめ細やかに指揮していき、その音を素晴らしい音色として集約させていった。

2曲目。今回の出演者変更はハーグナーには申し訳ないが、私はちょっとほくそ笑んでいた。というのも、ハーグナーのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は昨年ミューザ川崎(ケルンWDR交響楽団)で聴いているので、久しぶりの堀米ゆず子を聴いてみたいと思っていたからである。

堀米ゆず子は1980年エリザベート王妃国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門優勝。諏訪内晶子、竹澤恭子らが登場する前は、彼女が日本を代表する女性ヴァイオリニストだった。小柄ながらも江戸っ子気質の気っぷのいい弾き方が魅力的だった。

そして、昨日の演奏は以前のような恐いものなしといった勢いこそなかったが、円熟の極地を通りこして“熟女の極地”ともいうべき演奏だった。40分余の曲を彼女は最初から最後まで一音一音を懇切丁寧に大事に弾いていた。その技量と忍耐力は頭が下がる思い。特に第1楽章終盤のカンデツァを聴いていたときには、その繊細にして美しい調べに左目の涙腺が緩みはじめしまった。楽章後、何人かのお客さんが拍手してしまったが、私も胸の内では大きな拍手をすでにしていた。

第2楽章は超スローテンポ。広上の指示なのだろうか、それとも堀米の希望なのか解らないが、ここではN響の伴奏が白眉。なかでもファゴット(水谷上総と森田格)のサポートが素晴らしい。第3楽章はソリスト・指揮者・オケが三位一体となり、久しぶりに心の奥底からヴァイオリン協奏曲を聴いているんだぁ、という喜びを感じた。演奏終了後、空席が目立った客席にもかかわらず怒濤の拍手が鳴り響き、ヴラヴァーの声も多数あがった。堀米ゆず子健在なり。

3曲目。堀米ゆず子との名演奏のあとでも、広上淳一とN響の集中力はまったく途切れることはなかった。「青春」という標題もあるように、広上とN響は若々しくそして前向きな音色をどんどん奏でていく。“小さな巨人”広上は、普段より高くなっている指揮台の上で、変幻自在の動きをする。それでも、たまにしか音を出さない打楽器やトロンボーンには的確な指示とOKサインを出すなど余裕もある。色彩感と躍動感に満ちた演奏は軽快にして勇壮。30分余りもある交響曲なのだが、変な書き方だが、前半のプログラムのアンコール曲のように思え、心地よい気分で飲み屋に送りだしてくれた。(笑)

東京都交響楽団@都民芸術フェスティバル2010

2010-01-18 11:56:38 | 都響
一昨日(16日)、東京芸術劇場で開かれている都民芸術フェスティバル2010の東京都交響楽団の公演を聴きに行ってきた。指揮は船橋洋介。ソプラノは半田美和子。テノールは望月哲也。

【演目】
J.シュトラウス2世/喜歌劇「こうもり」序曲
J.シュトラウス2世/喜歌劇「こうもり」より“公爵様、あなたのようなお方は”
レハール/喜歌劇「微笑みの国」より“君は我が心のすべて”
レハール/喜歌劇「ジュディッタ」より“友よ、人生は生きる価値がある”
J.シュトラウス2世/春の声 作品410
J.シュトラウス2世/アンネン ポルカ 作品117
ヴェルディ/歌劇「椿姫」より“乾杯の歌”
  ~休 憩~
ムソルグスキー=ラヴェル/組曲「展覧会の絵」
《18時00分開演、19時40分終演》

いわゆるニューイヤー・コンサートなのだが、こういう形式はもう不得意なのかもしれない。というのも、何度も何度も拍手をしなくてはならない。そのためか、集中することができなかった。

前半のプログラムでは、半田美和子と望月哲也の声質はとてもクリアなのだが、いかんせん声量が弱い。加えて、指揮者がオケを鳴らしすぎているのか、それとも芸術劇場の音響がこうした声楽に合わないのか、2階席では「春の声」以外はほとんど2人の歌声を堪能することができなかった。

後半の「展覧会の絵」は金管が見事な響きを聴かせてくれた。トランペットもトロンボーンもホルンもみんな見事な音色を奏でていた。しかし、ここでも芸術劇場の音響のせいだろうか、低音部になると音がまるで後のパイプオルガンに吸い取られていくようで、「展覧会の絵」ならではのオドロオドロしさのある音色が客席に届いてこない。前半の歌声でも思ったが、、どうして天井に反響板を吊るしておかないのか不思議でならない。

それにしても、この日の公演は空席が目立った。2階席後方や3階席サイドなどは空席だらけ。都民芸術フェスティバルということで、安価で聴くことができるのだが、プログラムが魅力的でなかったのか、それとも他のオケと公演が重なりあったせいなのか、その閑古鳥の多さには驚きであった。まあ、私も来年もこのようなプログラムでは行かないだろうが。

N響のオールチャイコのはずだったが・・・

2010-01-16 14:05:01 | N響
昨日(15日)、NHKホールでのNHK交響楽団第1665回定期公演へ行ってきた。指揮は当初予定だったローレンス・フォスターに代わって、N響初登場のジョン・アクセルロッド。ピアノは清水和音。

ジョン・アクセルロッドはヒューストン生まれ。88年にハーバード大学を卒業しているので年齢は40台前半か。レナード・バーンスタイン、クリストフ・エッシェンバッハらに学び、これまで世界各地のオーケストラの指揮を行う。日本では京都市交響楽団に客演している。またオペラ指揮者として2004年から2009年夏までルツェルン歌劇場の音楽監督を務める。現在はシンフォニエッタ・クラコヴィア首席客演指揮者。ヒューストンのオーケストラXの創立者兼桂冠指揮者。2010年9月からはフランス国立ロワール管弦楽団の音楽監督に就任予定。

【演目】
チャイコフスキー/スラヴ行進曲
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ短調
  ~休 憩~
チャイコフスキー/バレエ音楽「くるみ割り人形」第2幕
《19時00分開演、21時05分終演》

プログラムの前に先日(1月8日)亡くなった名誉指揮者・オットマール・スィットナー氏への追悼としてバッハの「アリア」を演奏した。ただ、この演奏が故人には申し訳ないが、結果的に前半のプログラムをかなりチグハグなものにしてしまった。

この日はチャイコフスキー・プログラムで、そのなかでも派手な作品ばかり。それゆえに、「アリア」のすぐあとにロシア及びスラヴ民族の国威発揚のための「スラヴ行進曲」では、指揮者も奏者もいくらプロといっても、気持ちの入れ替えは簡単にはできないだろう。そのために、弦は「アリア」を引きずったような重たい音色で、木管・金管との調和はしていない。N響初登場のジョン・アクセルロッドにはこれはかなり荷が重かったのではないだろうか。

2曲目。この日の清水和音には残念ながら冴えがなかった。第1楽章は妙にネチネチというかモチモチした粘りっ気たっぷりの演奏。第2楽章はまるで風船が飛んでいるかのような軽やかというか軽すぎるタッチ。そして、第3楽章はテンポが早くなったり遅くなったりで、オケと融合していない。個人的にはこの曲はもっと華やかなに楽しく聴きたいものだが、それをほとんど感じられなかった。ここでも「アリア」の影響があったと思わざるをえない。

休憩を挟んで3曲目。これは素晴らしかった。「くるみ割り人形」はバレエで何度も見ている。特に第2幕は有名な曲がいくつも連なっていくのだが、カスタネット、トラインアングルなどでさりげなく味付けする打楽器陣(石川達也と竹島悟史)の2人が見事だった。もちろん、それぞれの楽曲のソロも透明感に満ちていた。なかでも「あし笛の踊り」でのフルートの三重奏(宮崎由美香、甲斐雅之、菅原潤)は白眉もの。また「花のワルツ」でのハープ(早川りさこ)、「こんぺいとうの踊り」でのチェレスタ(客演)など随所に名演奏が折り込まれていて、自然と身体が微かにシェイクしてしまった。こうなると、第1幕からすべて聴いてみたかったと思わざるをえなかった。そして、この曲はNHKホールの音響にもマッチするようにも思えた。

指揮のアクセルロッドは「アリア」という急な課題を突きつけられたものの、代役をなんとか上手く務めたのではないだろうか。彼の指揮は一見オーソドックスに思えるが、抽象的な言い方で申し訳ないが幾何学的な指揮で、時に鋭角であったり、時に流線的であったりとバラエティに富んでいて解りやすい。N響は2年前にロッセン・ミラノフ(今度の都民フェスティバルに再登場する)という若い指揮者を代役に抜擢したが、アクセルロッドも将来性のある指揮者と感じた。こうした若い才能を代役で起用するN響ディレクターの目と耳に敬意を表したい。

【追記】今し方、N響のホームページを見たら、来週のBプロに出演予定だったヴィヴィアン・ハーグナーが健康上の理由により来日不可能となり、代わって堀米ゆず子が出演とのこと。ひと月に指揮者とソリストと2人も代役になるとはあまり例がないのではないだろうか。

2009年のクラシック演奏会ベスト10

2010-01-08 11:37:59 | Weblog
昨年(2009年)は年間70回近くクラシック音楽の演奏会場に足を運んだ。一昨年は「呆れかえると同時に自分を褒めてもやりたい気持ち」と書いたが、今年はもう褒めません。ただ呆れるばかりである。ということに関係なく、印象に残ったコンサートを選んでみました。

1. パーヴォ・ヤルヴィ&シンシナティ響の世界(11月)
2. スクロヴァチェフスキ&読響の名演奏(9月)
3. 大々編成のハイティンク&シカゴ交響楽団(2月)
4. 謙虚なるオリ・ムストネンのワンマンショー(5月)
5. ファビオ・ルイージ&ドレスデン国立歌劇場管弦楽団(4月)
6. プレヴィン&N響のショスタコーヴィッチ(10月)
7. ウィーン・フィル@ミューザ川崎(9月)
8. 上原彩子とドミートリ・キタエンコは素晴らしい(1月)
9. 素晴らしきインバルのタクト(3月)
10. ミラノ・スカラ座@NHK音楽祭2009(9月)

第1位は何気に当日券で入場したシンシナティ響のコンサート。ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」は当然ながら「ラフマニノフ交響曲第2番」は鳥肌ものだった。指揮のパーヴォ・ヤルヴィは今度はパリ管の音楽監督にもなる。来年にはぜひとも一緒に来日してほしい。

第2位はスクロヴァチェフスキと読響のショスターコーヴィッチ交響曲第11番「1905年」。昨年は何回も読響の演奏会に行ったが、これは驚愕の名演奏だった。86歳の巨匠に導かれた読響の演奏は本当に凄かった。

第3位はシカゴ響。私が不得手のマーラー交響曲第6番「悲劇的」。重厚感はあまりなくアメリカオケらしく爽快な音色がとても印象的だった。そして、何よりも迫力ある金管陣には度肝を抜かれた。金管だけならおそらく世界一の力量ではないだろうか。次期音楽監督はムーティ。こちらとの来日も期待したい。

第4位はN響のなかでもっとも印象に残ったコンサートです。N響には20回ぐらいコンサートに行きましたが、このコンサートほど清々しいものはありませんでした。指揮者として、作曲家として、そしてピアニストとしてムストネンは注目な人だ。

第5位はファビオ・ルイージ&ドレスデン国立歌劇場管弦楽団。「シュトラウス・オーケストラ」ならではのホルンの音色を堪能させてもらった。ルイージは5月にウィーン交響楽団と来日するがこちらも楽しみ。

第6位以降では、指揮ではインバルの統率力に目を見晴らされ、上原彩子のピアノに圧倒されました。

今年の幕開けコンサート

2010-01-04 15:22:57 | 都響
昨日(3日)、小山実稚恵ファンの母親と一緒に東京文化会館主催の「響の森」ニューイヤーコンサートへ行ってきた。指揮は大友直人。演奏は東京都管弦楽団。ピアノは小山実稚恵。それにしても、母親を連れての東京文化会館は遠い。(笑)

【演目】
J.シュトラウス2世/春の声
ショパン/ピアノ協奏曲第1番
  ~休 憩~
チャイコフスキー/交響曲第5番
※ブラームス/ハンガリー舞曲第1番
《15時00分開演、17時20分終演》

1曲目。シュトラウス2世が即興的に作った歌曲。そのせいか母親は「なんか歌がないと面白くないわなぇ。弦と管がなんかバラバラで、下手ねぇ」というご感想だった。私も弦と管がまったく一体化されておらず、いくら短い曲とはいえ、なんか先が思いやられる気がした。

1曲目と2曲目の舞台転換の間に、大友直人が東京文化会館の説明や宣伝などをするが、その間、都響のメンバーは早く次の曲を演奏したがっている様子。大友をそれを察してか早々にアナウンスを止めて、小山実稚恵を会場に呼び寄せた。

2曲目。小山のピアノは完全に円熟期の演奏だ。以前も書いたかもしれないが、今の小山実稚恵の演奏を聴かないというのはクラシック・ファンとして損だと思う。私の位置からは小山の手が、ピアノの鍵盤蓋にも鏡のように映し出され、10本の指が鍵盤の上を滑らかにすべるというよりも、20本の指がまるでアイスリンクの上を舞っているようであった。

よくショパンの曲を雨だれのような音色と表現するが、小山の音色は単なる雨だれではなく、クリスタルかダイヤモンドのような輝きをもった雨だれである。こうした輝きに応えるかのように都響の演奏も力強く支えていき、またそれを楽しんでいるかのようだった。母親の感想も「彼女はやっぱり凄いわねぇ。一音一音にキレがあるわねぇ」であった。

3曲目。都響の演奏は素晴らしい。しかし、大友直人の指揮がいただけない。彼はルックスもスタイルもいい。指揮も端正で大振りすることはない。しかし、カリスマ性というかオケのメンバーを惹きつける力がない。加えて、1曲目と同じように弦と管の一体感を作りだせない。また、木管金管パートへの指示が明確に見えてこない。あれでは奏者が戸惑ってしまうのではないだろうか。

演奏は第2楽章の有馬純晴のホルンが素晴らしく、第3楽章ではコンマス(山本友重)のリードで弦がよく響き、第4楽章は金管が高らかに鳴っていて、素晴らしいものだった。それなのに私のなかには妙な虚無感が残ってしまった。で、母親の感想は「チャイ5は最後のトランペットがちょっとウルサイわね。ショパンのあとだからもう少し静かなシューマンとかドヴォルザークとかにしてほしかったね」ということだった。(苦笑)