ミーハーのクラシック音楽鑑賞

ライブ感を交えながら独断と偏見で綴るブログ

とても充実している都響

2013-11-30 00:31:51 | 都響
一昨日(28日)サントリーホールで開かれた東京都交響楽団の第761回定期演奏会Bシリーズを聴いてきた。指揮はヘスス・ロペス=コボス。独唱(バス)はニコライ・ディデンコ、男声合唱は二期会合唱団(60人)。

【演目】
トゥリーナ/闘牛士の祈り(弦楽合奏版)
ラヴェル/スペイン狂詩曲
  ~休 憩~
ショスタコーヴィチ/交響曲第13番「バービイ・ヤール」
《19時00分開演、21時00分終演》

指揮者陣の豊富さや楽団員たちのキャリアではN響には敵わないが、今の都響は多彩なプログラムや真摯な演奏を聴いていると、在京オケのなかで一番充実度が高い。ちょっと前まではマーラーやドイツ音楽ばかりで足が遠のいてしまったが、今は変幻自在のプログラムと演奏で観客を楽しませてくれている。そして、2014年度のプログラムも意欲的であり、今の都響を聴かないのはクラシックファンにとっては損かもしれない。

1曲目。弦10型(コントラバスは3本)の弦楽奏。作曲者のホアキン・トゥリーナ(1851-1949)、そして指揮のヘスス・ロペス=コボスはスペイン人。曲は闘牛士が闘いの場に行く前に礼拝をしている姿を描いている。初めて聴いた曲だがしっとりして叙情的。ただ、残念なのが印象に残るような旋律がない。

2曲目。「前奏曲」のコンマスのソロが幾分かすれ気味だったのが残念だが、「マラゲーニャ」のイングリッシュホルンの響きや、最後の「祭り」のいかにもスペイン的な華やかな民族的な演奏は素晴らしかった。

3曲目。ライブでは初めて聴く。CDでは感じることはなかったが、全編に渡り反体制詩人のエフトゥシェンコが書いた「バービイ・ヤール」のバスの独唱と合唱が入り、ライブだと交響曲というより演奏会形式オペラもしくは交響的合唱曲といった感じに思えてくる。

ショスタコーヴィチの交響曲となると、どうしても政治色が濃くなるが、この作品はおそらくその最たるものかもしれない。とにかく音楽にもメッセージ色が濃く表れ、プラウダ批判およびジダーノフ批判に対する反訴をしているように聴こえる。そして、演奏もそうしたショスタコーヴィチの反骨精神を表すかのように、ゴツゴツとした荒々しい音を一糸乱れることのなく奏で上げていき、都響のレベルの高さを見せつけてくれる。この演奏を聴いていると、現在の日本にもショスタコーヴィチのように、強権政治をしようとしている政権を批判するような気概のある作曲家や芸術家が多く現れないのかと思ってしまう。