【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

吉良佳子(吉良よし子)さん「三六協定でも過労死基準の80時間を(懲役刑がある)労働基準法に盛り込め」

2014年03月11日 18時58分37秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

【2014年3月11日(火)参・第1種常任委員会】

 参議院の各府省庁ごとに設けられた第1種常任委員会が昼休みに開かれ、大臣らの所信表明や予算説明がありました。

 次回は大臣所信への一般質疑または各府省予算の予算委からの委嘱審査がある見通しです。会期末までの3か月間、参議院もいよいよスタートです。きょうの第1種常任委員会やその理事会はほとんどが参議院分館で開かれたので、すべて廊下からのぞいてきました。やはり「あの委員会とあの委員会」は会期末にかけて、熱くなりそうです。

【2014年3月11日(火)参・予算委 一般質疑】

 吉良佳子(吉良よし子)さんが登場。公約通り、ブラック企業について質疑しました。
 
 このところ、世論で「ブラック企業」の定義があやふやになっています。ブラック企業は新卒を意図的に必要数以上に大量に採用して、3年後に3割にしてしまって、その3割を使い続ける企業。つまり、厚労省が名付けた「若者の使いすてが疑われる企業」というのは、役所用語ですが、なかなか的を射ています。

 さて、吉良さんは労働基準法第36条に基づく裁量労働制「三六協定(さぶろくきょうてい、さんろくきょうてい)」について追及してくれました。

 「フレックスタイムの自由な働き方をめざして使用者と労働組合が合意した三六協定」とは名ばかり。三六協定とは、24時間365日間、スマホが手放せない現代の奴隷制です。

 吉良さんは「三六協定は恒常的な長時間労働につながっており、法律違反どころか、公序良俗に反した働き方だ」とし、「厚労省の過労死基準は(月の所定外労働)80時間なのだから、現行の労働基準法に上限を書き込むべきだ」としました。

 労働法というのは、実は民法です。「雇用」とは民法の言葉です。これを労使が対等な立場で、労働市場において労働力を提供し報酬を得ることを契約することを、労働契約と言います。これは「労働契約法」(平成19年法律128号)で法制化した言葉です。民法は明治29年にできています。だからいまだに「雇用」という言葉が「労働契約」よりも使われますが、この2つはまったく同じ効力を持つ言葉です。

 そして、刑法(刑事関係法)としては、労働基準法に罰則があり、懲役1年や罰金などが定められています。ところが、労基法によって、懲役刑になる人はほとんどいません。これはなぜかというと、例えば、社長が「12月はボーナスで給料2か月分だ」と言ったとします。ところが給料日に、組合員は「月例賃金とボーナスで3か月分もらえると思っていた」ということになったら、裁判になります。これは懲役刑をかけた裁判になるので慎重な運びとなりいずれにしろ、労働者が報酬を受けるのが遅れます。このため、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働契約法などには懲役刑の規定がありません。そのため、労働基準監督官や労働委員会が動いていれなければ、労働組合が裁判を起こしてくれるか、あるいは個人で裁判を起こさなければいけないことになります。事実上、労働者は泣き寝入りせざるを得ないのが今の日本です。

 仮に吉良さん提案したように「労働基準法に所定外労働は月80時間まで」と書き込めば、労基法第117条以降の罰則により、所定外労働を強要した使用者をブタ箱にぶち込むことが可能になります。そして、過労死すれば、労働者災害補償法(労災)の認定に関しては、最終的に民事裁判になっても、使用者は、労基署でも、警察でも、東京地検特捜部でも、逮捕して、勾留して取り調べたうえで、起訴し、裁判にかけることができます。過労死の最高刑は死刑に引き上げるべきでしょう。

 吉良さんは「現場の労働基準監督官に権限を与えることが大事で、残業時間を法定する法改正が必要だ」として「たとえば80時間」とのアイディアを出しました。初体験の通常国会で、昨夏の選挙の公約に沿った質問をしている吉良さんを思想信条を越えて応援したいと思います。  



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