【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

出先機関がない会計検査院が平成22年度検査報告 原発立地周辺地域整備資金は10年前からチェック

2011年11月19日 10時22分39秒 | 第179臨時国会(2011年10月)議員立法

[写真]決算委員であることに誇りを持ち、エネルギー特会(電源特会)の原発立地の「周辺地域整備資金」を取り上げてきた又市征治・参院議員。

 日本国憲法第90条に定める「会計検査院」は2011年11月8日、平成22年度の決算検査報告書を、野田佳彦・内閣総理大臣に提出しました。

 この中で、新聞報道によると、「数年前から調べていた」というエネルギー対策特別会計の電源開発促進勘定の原発立地自治体に対する「周辺地域整備資金」について、657億円がムダ(縮減可能)だ、と指摘しました。そもそも、このお金は経産省が「原発の新規着工の時期が仮に重なると、地元自治体への交付金が不足することを防ぐために積み立てたお金」ということで、要するに経産官僚が天下りするための預金のようなものだったようです。

 決算検査報告書をひもとくと、検査院は平成13年度(2001年度)に検査し、平成16年度(2004年度)にもそのフォローアップをしていたようです。検査院は霞が関で疎んじられる傾向があり、マスコミも朝日新聞を除くと、あまり検査院を重視していない傾向があります。2001年度というと、1997年末の小沢一郎氏による新進党解党の次の総選挙があった時期なので、小沢氏が新進党を解党していなければ、政権交代して、福島原発が爆発することもなかったかもしれないなあと感じました。

 なお、このムダとされた657億円ですが、その次年度(すなわち今年度)の第1次補正予算で、菅直人内閣(野田佳彦財務相)が500億円の減額補正をしています。これは一般会計から繰り出し、エネ特会に繰り入れる予定のお金を500億円減額したモノです。ですから、平成23年度一般会計は500億円分、自由なお金を得たという格好になりますが、あまりにも遅すぎました。

 国会法105条は「各議院または各議院の委員会は、審査または調査のため必要があるときは、会計検査院に対し、特定の事項について会計検査を行い、その結果を報告するよう求めることができる」としています。一方の会計検査院も、「会計検査院は要請に係る検査を着実に実施しその結果を国会に報告しているところである」としています。会計検査院法は「会計検査の機能の強化と活用を図り、もって国会における決算審査の充実に資するために、国会および内閣への随時の報告」が可能だと定めています。

 参議院の決算委員会では、冒頭の写真にあげた又市征治さんが「私は初当選以来、ずっと決算委員会に所属している」と胸を張ることがよくあります。その姿には、あたかも「衆議院なにするものぞ」「参議院でも予算委員は利権屋や目立ち屋だ」と言いたげな、決算委員としての矜持を感じます。

 実際、「周辺地域整備資金」にして、国会議事録データベースで又市さんが参院議員になった第152臨時国会から今国会までで調べると、 第165秋の臨時国会の初日(平成18年11月15日)、第166通常国会の9号(平成19年5月21日)、第177通常国会の9号(平成23年5月30日)と継続して質問しています。この間、「周辺地域整備資金」でヒットする議事録は28本で、そのうち3本が又市さんになりますから、勘所の良い決算審査をしていたことが分かります。 ただ、参・決算委は地味で、「3・11」前に、反映できなかったことは残念です。

 又市質問よりも前に、第162回通常国会の衆・経済産業委員会(平成17年4月8日)には、野党・民主党の細野豪志さんが質問していますが、「周辺地域整備資金ということでございますが、これはどうなんですか、財務省としてこれでいいというふうに判断されているのかどうか、お答えをいただきたいと思います」と、まだばくぜんとした質問になっています。このころは、民主党を代表する議員(名古屋市長に転出)の政策秘書が特別会計に詳しく出版もしており、民主党内で特別会計発掘作業が盛んでした。今となればほろ苦い夏休みのスイート・メモリーに見えますが、大人(政権党)になってから生きています。 

 このほか、私が平成21年度(2009年度)第1次補正予算(麻生パクリ・ピンハネ補正)で「お前は蒋介石か! 自民党が46基金(4・3兆円)を疎開させる」と批判していた一連のリーマン・ショック後の都道府県の基金ですが、約2500の基金に総額約2兆円のお金が使われず余っているようです。

 マスコミも、例えば京都支局や舞鶴支局の記者なら、http://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary22/pdf/fy22_futo_03.pdfのページをざっと見ただけでも、京都府宮津市が「地域情報通信技術利活用推進交付金」を受け取りながら、計画がずさんで、モバイル端末が全く配布されず、構築したシステムが事業期間内に稼働していなかったのにそのシステムの保守費を交付対象事業費として国に新政していたなどという検査結果が載っています。警察担当から行政担当になって、なかなか記事が出せない人は、検査院の検査報告書は「ネタの宝庫」ですし、記事にするうえでは、イチイチ会計検査院の名を出す必要もないのですから、ドンドン活用すれば、いっぱい記事が書けます。

【出先機関がない会計検査院、震災後は実地検査を中心→総務省管区行政評価局を廃止し、検査院の出先機関に衣替えすべきだ】

 平成23年度一般会計予算書(当初)の「会計検査院所管平成23 年度政府職員予算定員及び俸給額表」によると、会計検査院の職員は1276人。報道では、2010年度は約2900カ所の実地検査をし、約3800の自治体・団体を検査しました。3月11日の大震災以降は止めたそうです。会計検査院には出先機関(地方支分局)がありません。ですから、出張につぐ出張の連続。そのなかで「東大の柏市の運動場は利用率が低く有効活用が必要で154億円のムダがある」と指摘する。「全国のおいしい物が食べられてイイネ」と声をかけている余裕はありません。

 それに引き換え、総務省の管区行政評価局には1037人の職員がおり、本省にも約250人います。ほぼ会計検査院と同じ人数がいるわけですが、総務省の管区行政評価局が何か国益・国民益に資したことがあるでしょうか。出先機関改革のためにも、総務省管区行政評価局はそれ自体がムダなので、会計検査院の出先機関に衣替えしたり、内閣府行政刷新会議事務局、総務省統計局に移籍させるべき。そのぐらいのことができないと、民主党政権は何もできません。

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