【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【条約】【国会承認案件】「TPP11」こと「CPTPP環太平洋包括的進行形的パートナーシップ条約」大筋合意、国会提出へ

2017年11月11日 20時44分08秒 | 第196回通常国会(2018年1月召集)働き方 カジノ

[写真]参議院第一委員会室、2017年5月に宮崎信行が撮影し、画像加工=本文とはほとんど関係ありません=。

 TPP11が、CPTPPに改称して、大筋合意しました。

 きょう、平成29年2017年11月11日(土)=日本時刻・現地時刻とも=、ベトナム・ダナンで11カ国の大臣が合意しました。

 来年、平成30年2018年の第196回通常国会に、「条約の承認を求めるの件」が提出されると思います。

 英語ができる方は、ニュージーランド外務省のとりまとめページに、大臣会合のステートメントと、条約の目次が載っています。

 CPTPPですが、私としては、「環太平洋包括的進行形的パートナーシップ条約」と、きょうの時点では翻訳したいと存じます。プログレッシブは、11カ国から増やしたい意向でしょうが「急進的」と翻訳すると、欧州で票を伸ばす急進左派みたい。「進行形的」という日本語はないと思いますが、英文法などで「進行形」という言葉は耳慣れている。それと、私は国際約束は、「条約」にするようにしています。

 政府は、ことし5月27日、TPP11は国会での承認が必要だと、答弁しています。民進党・無所属の会の篠原孝さんの問いに答えました=当ブログ内エントリーを末尾に全文掲載=。

 今回は、11カ国中6カ国の手続き完了で発効。ハードルは低くなりました。

 おさらいも兼ねて、参加国ですが、アルファベット順に、オーストラリア、ブルネイダルサラーム、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの11カ国。

 入っていないのは、米国、中国、韓国、台湾、タイ、フィリピン、インドネシアなど。現在はAPECの最中ですが、上述11か国以外のAPEC加盟国は入っていません。ご存じの通り、ちょうど1年前にトランプさんが米大統領になるやいなや、TPP12から離脱しました。これで逆に、日本にはおいしい話だったことが浮き彫りになりました。それから1年、トランプさんは日米の自由貿易条約FTAを呼びかけながら、APECへ。そこで、TPP11が大筋合意したことで、11カ国そろって、アメリカの鼻を明かしたといえるでしょう。日本や、カナダにとっては歴史的に快感を覚える出来事です。

 TPP11で期待されるのは、ベトナムから安い繊維とコーヒーが日本に入ってくるでしょう。日本からベトナムへ車の輸出が拡大します。また、チリからワインが2、3割安く入ってくるでしょう。私なんかはワインは高価か、タダか(要するに飲まない)の二者択一ですが、ワインが安くてうれしい人も多いでしょう。日本企業からメキシコ企業への自動車部品輸出は気になるところ。

 入っていないところですが、韓国というのはやたらと「隣国、隣国だ」と騒ぎ立てる人は多いのですが、実は我が国の輸入は金額ベースで7%程度しかありません。日本から韓国への輸出は15%なので良いお客様ですが、あまり大事ではありません。インドネシアが入っていませんが、仮に加わって、アメリカが復帰すると、地図を見てもらえば分かりますが、南シナ海・東シナ海・太平洋で、中国を封じ込めてしまうかたちとなります。その中には、台湾と、フィリピンの2カ国が閉じ込められたかっこうになりますが、米日豪ASEANが、中国・台湾・韓国・北朝鮮を封じ込めてしまったブロック経済になります。これは、安全保障面ではいかがなものか。ベトナム愛国嫌中青年などは喜ぶでしょうが、ゆっくり、ゆっくり、中朝を封じ込めていくことが大事でしょう。

 国内産業。まず、豚ですが、これは厳しい。砂糖も厳しいですが、砂糖は国内対策はすでにできています。養豚に関しては、廃業も辞さず、あるいは、高級とんかつ店にこだわった畜産経営をしてもらうかもしれません。申し訳ないが、転業というよりも、転職支援というところでしょう。あとは、正直、なんとかなります。

 自民党政府はTPP政策大綱という政策パッケージを2年前につくり、補正予算化しました。

 持続可能な日本経済のために、TPP11、CPTPPバンザイです。今後は、米国、インドネシア、フィリピン、タイ、台湾の合計5カ国のみの参加に期待したいですね。


 当ブログ内の関連エントリー、ニュージーランド政府ホームページの横文字を、貼り付けて、この記事は終わります。

[当ブログ内エントリーから引用はじめ]

「TPP11」は国会の承認が必要、内閣府副大臣が答弁、民進党の篠原孝さんの質問に答えて

2017年05月24日 16時38分53秒 | 2018年の、第196回通常国会とそれ以降

 昨年11月のトランプ大統領誕生にあわせて構想が浮上した、「米国抜きTPP」「TPP11(イレブン)」が、2017年5月20日のAPECハノイ貿易担当大臣会合で議論したことに関して、現地を視察した民進党の篠原孝さんが24日(水)の衆議院経済産業委員会の一般質疑が質問しました。

 先の第192回秋の臨時国会で、TPP特別委員会の野党側筆頭理事で奮闘した篠原さんは、「想定したくない」としながらも、TPP11が合意した場合は、発効要件が変わるので、もう一度、国会に承認案を提出すべきだとしました。

 与党・自民党の越智隆雄内閣府TPP副大臣は「こういう大きく変わる、別個の国際約束を取り交わしたときは、国会に承認を求めることになる」と断定的に答弁しました。

 TPPの発効要件は「12か国のうち、GDPの85%以上」となっており、アメリカが欠けたら自動的に発効しないことになっています。TPP11の発効要件は不明ですが、アメリカが交渉段階から抜けているのですから、当然前提が大きく変わることになります。ただ、TPP11は11か国の中にも慎重論があるため、交渉には大きなハードルがあると予測されます。


[当ブログ内エントリーから引用おわり]


ニュージーランド政府ホームページ内のPDFファイルから引用はじめ]

Trans-Pacific Partnership Ministerial Statement
1. When we last met in Ha Noi, Viet Nam on 21 May 2017, the Ministers of
Australia, Brunei Darussalam, Canada, Chile, Japan, Malaysia, Mexico, New
Zealand, Peru, Singapore and Viet Nam, reaffirmed the balanced outcome and the
strategic and economic significance of the TPP Agreement signed in Auckland on 4
February 2016 (hereinafter referred to as "the TPP") highlighting its principles and
high standards as a way to promote regional economic integration and contribute to
the economic growth prospects of its member countries, and create new
opportunities for workers, families, farmers, businesses and consumers.
2. In May, Ministers tasked officials to engage in a process of assessing options to
bring the comprehensive, high quality Agreement into force expeditiously. Over the
past several months, officials have worked to reach a balanced outcome that
maintains the significant benefits of the TPP.
3. Ministers are pleased to announce that they have agreed on the core elements of
the Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership
(CPTPP). Ministers agreed to Annex I and II (attached) which incorporates
provisions of the TPP, with the exception of a limited set of provisions which will
be suspended. This text also incorporates a list of four specific items for which
substantial progress was made but consensus must be achieved prior to signing.
4. Ministers agree that the CPTPP maintains the high standards, overall balance, and
integrity of the TPP while ensuring the commercial and other interests of all
participants and preserving our inherent right to regulate, including the flexibility of
the Parties to set legislative and regulatory priorities. Ministers also affirm the right
of each Party to preserve, develop, and implement its cultural policies. Ministers
consider that the CPTPP reflect the desire of the Parties to implement the TPP
outcomes among themselves.
5. Ministers confirm that the legal instrument proposed for the CPTPP allows the
participants to act decisively in a timely manner to advance their shared objectives.
Ministers reaffirm that the CPTPP demonstrates their firm commitment to open
markets, to combat protectionism, and to advance regional economic integration.
6. Noting Article 6 of the CPTPP, Ministers shared the view that the scope of a
review may extend to proposals to amend the CPTPP, to reflect the circumstances
concerning the status of the TPP.
7. Furthermore, Ministers decided that all the TPP side letters signed among the 11
countries will be maintained in principle, unless the relevant Parties decide
otherwise.
8.Ministers tasked officials to continue their technical work, including continuing
their efforts toward finalising those items for which consensus has not yet been
achieved, and legal verification of the English text and translation, to prepare
finalised text for signature.
9. Ministers recognize that each country will need to pursue its own domestic
processes, including for public consultation, in advance of signature.


[ニュージーランド政府ホームページ内のPDFファイルから引用おわり]


ニュージーランド政府ホームページのPDFから引用はじめ]

Annex I - Outline of the TPP 11 Agreement
COMPREHENSIVE AND PROGRESSIVE AGREEMENT FOR TRANS-PACIFIC
PARTNERSHIP
Preamble
Article 1: Incorporation of the Trans-Pacific Partnership Agreement
Article 2: Suspension of the Application of Certain Provisions
Article 3: Entry into Force
Article 4: Withdrawal
Article 5: Accession
Article 6: Review of the Comprehensive and Progressive Agreement for TransPacific
Partnership
Article 7: Authentic Texts



[ニュージーランド政府ホームページのPDFから引用おわり]

このエントリーの本文記事は以上です。

(C)2017年、宮崎信行。

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