【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

ビキニ環礁核実験で第5福竜丸以外の低線量被爆、60年間隠ぺいか 参・常任委で一般質疑

2014年10月16日 17時38分15秒 | 第187臨時国会2014年地方創生国会

[画像]社民党の福島瑞穂さん、参議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 60年前、1954年3月のアメリカによる、ビキニ環礁(マーシャル諸島共和国)での核実験により、被爆した第五福竜丸の船員らの放射能検査の公文書について、当時の国会では存在しないとされたものが、60年経ってから、厚生労働省、外務省が情報公開法にもとづき公開したことが分かりました。2014年10月16日(木)の参議院厚生労働委員会で、社民党の福島瑞穂(福島みずほ)さんが指摘したもので、すでに9月に一部報道で、高知県の市民団体による情報開示請求で公文書が公開されていました。

 福島さんの質疑によると、米国との補償をめぐる公文書を外務省はアメリカには渡していたものの、日本国内では公開していなかったとし、外務省官房審議官が事実を認めました。

 厚労省は、第五福竜丸の船員の放射線検査の結果を公表していなかったと認めたうえで、「厚生省は漁船員の船体や捕獲物の放射能を2週間にわたり検査した」とし、当時は「必要がある人には、適切な医療をするよう講じられていたのではないか」との考えを示しました。

 厚労省政務官は、「当時の国会では、質問通告の時間が遅く、資料が見つけられなかった可能性がある。今回は、茨城県にある文書倉庫までいってひっしに探した」と答弁し、「第五福竜丸の船員には、放射線医学総合研究所で、毎年の検査を受けてもらっていた」と語りました。

 これに対して、福島さんは「第五福竜丸以外の船員は低線量被爆をしながら、それを知らずになくなっていった可能性がある。船員は、海水でお風呂を浴びるなど事情が違う。情報公開をしていれば、年齢が50歳代、60歳代、70歳代となるなかで、フォローアップできたのではないか」と第五福竜丸以外の船員への情報公開が必要だったと指摘。これには、塩崎恭久厚生労働大臣も「こういった資料が出なかったことはきわめて問題だ。持ち帰って検討したい」と語り、前向きに検証するかまえを示しました。

 かねがね疑問だったのは、首相は国会でよく「唯一の被爆国である我が国」という言い方をしますが、マーシャル諸島共和国は核実験により60年たった今でも首都に避難中の人がいます。これに対して、首相の広島平和記念式典でのあいさつは「唯一の戦闘被爆国だる我が国」と言っていて、この表現の方が正しいと考えてきましたが、今夏インターネット上で「コピペだ」という批判が渦巻きました。ビキニ環礁水爆実験については、新聞では大々的に報じられましたが、公文書の公開マインドがないと、やはり厚労省も含めて、みんなが損をすることになります。この問題はぜひ、今後も見ていきたいです。

【参議院厚生労働委員会 2014年10月16日(木)】

 大臣所信に対する一般質疑があり、上記の福島質問もあった後、質疑終了。

 続いて、先の通常国会で衆議院では多数で可決しながら、参議院では時間切れで継続審査となっていた、

 「専門的知識等を有する有期労働者の雇用期間を5年から10年に延長する特別措置法案」(186閣法48号)が

 塩崎大臣から趣旨説明され、審議入り。来週参考人質疑をすることになりました。なお、今国会で参議院で可決しても、再度衆議院での審議、可決がないと成立しません。このほか、厚労省関連で政府は2本の法律案を参議院先議で国会に提出しました。厚労委は野党の理事もほとんど続投しているようで、労働者派遣法改悪法案の成立阻止に向けて、あいかわらず目が離せません。

【参議院外交防衛委員会 同日】

 大臣所信に対する一般質疑があり、江渡聡徳防衛相の資質に対して、検察官出身の小川敏夫さん、警察官出身の小野次郎さんらが厳しく追及しました。

 この後、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の中間報告について、岸田外相が「経緯」、江渡防衛相が「性質」をそれぞれ説明して、質疑はなく、散会しました。

【参議院第1種常任委員会 同日】

 上記も含めて、参議院のすべての第1種常任委員会は、大臣所信に対する一般質疑を終えて、散会しました。

 衆議院では、あす一般質疑があるため、大臣の資質に関する質疑が、続きます。かなり大臣の資質追及について、野党を応援する世論が強まっているように感じます。

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◎公明党代表、日米ガイドライン再改定の越年、先送りに言及

2014年10月16日 08時11分56秒 | 第187臨時国会2014年地方創生国会

 公明党の山口那津男代表は、きのう2014年10月15日(水)、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインの再改定について、

 「17~18本の法律が関わっていると言われ、それとガイドラインは密接な関係があり、整合的に矛盾のないようにつくっていく必要がある」

 「法体系を整えるのに少し時間がかかるので、年内という時期に必ずしもこだわらないで、その整合性を取る作業をしっかりやることが必要だ」

 と語りました。ラジオ日本番組での発言をきょう16日付公明新聞が詳報しました。

 先週10月8日(水)に発表されたガイドラインの中間報告は、7月1日の閣議決定の「新自衛権発動の3要件(武力行使の3要件)」の歯止めがまったくかかっていない状況があきらかになっており、今週10月12日のNHK日曜討論で、維新の党の片山虎之助さんが「まとまらないだろう」「止めるべきだ」、日本共産党の小池晃さんが「中止すべきだ」と交渉を止めるよう求めていました。これに対して、公明党議員は、ガイドライン合意前に安保法制の再整備の全体像を示すべきだとのスケジュール感を示していましたが、山口さんはガイドラインそのものの先送り、あるいは、中止も視野に入れて、踏み込んだ発言をしたと考えられます。

 山口さんは、自民党の村上誠一郎さん、民主党の岡田克也さん、維新の党の小野次郎さんらとともに、集団的自衛権の閣議決定による憲法解釈の変更(憲法解釈の再整理)に反対を唱える与野党4人組(東大法学部同級生)で、細川内閣の防衛政務次官をつとめる防衛族議員だけに、集団的自衛権に関する発言が注目されています。

 山口さんは「創価学会婦人部は集団的自衛権の行使容認に厳しい」との感想を、半年前に、民主党幹部に伝えています。


◎マクロ経済スライド初発動へ国民年金法改正案提出か 100年安心プラン実現に問われる総理の胆力

2014年10月16日 08時01分36秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

[写真]2004年年金改正法を強行採決する参・厚生労働委員会、2004年6月3日、民主党アーカイブから。

 厚生労働省が、2004年年金改正法(平成16年法律104号)で定めた、マクロ経済スライドを初めて発動するための法律案作成にとりかかることを、きのう2014年10月15日の社会保障審議会年金部会に示し、特段の異論がなかったことが分かりました。きょう16日付の複数の新聞1面が報道していますが、まったく報道していない新聞もあります。

 小泉純一郎首相・坂口力初代厚労相(現・公明党特別顧問)のもと、2004年年金改正法は「100年安心プラン」と呼ばれ、元祖年金王子こと山本孝史・民主党参議院議員らの審議を振り切る形で、2004年6月3日、自民党が強行採決。森裕子議員、大仁田厚議員らの取っ組み合いや、ミスター100万票の西川きよし議員の卒業質問がそれに先立ち質疑打ち切りとなるなどのさまざまな表情をみせました。岡田克也代表率いる民主党は、小泉総裁・安倍晋三幹事長率いる自民党の「曽我ひとみさん・ジェンキンスさん再会」というサプライズを振り切り、第1党に躍進。2007年は「消えた年金」国会となり、再び第1党になり、2009年の衆議院での政権交代を実現しました。

 2004年年金改正法の第4条には、

 「この法律による年金の額は、国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応じるため、速やかに改定の措置が講ぜられなければならない」

 「国民年金事業の財政は、長期的にその均衡が保たれたものでなければならず、著しくその均衡を失すると見込まれる場合には、速やかに所要の措置が講ぜられなければならない」

 「政府は、少なくとも5年ごとに、(略)財政の現況及び見通しを作成しなければならない


 「前項の財政均衡期間は、財政の現況および見通しが作成される年以降、おおむね100年間とする」

 などと書かれています。

 自民党と公明党は大変な犠牲を払って、2004年年金改正法100年安心プランを成立させたのですから、同じ枠組みの政権である以上、施行しなければなりません。

  この間、物価上昇率、賃金上昇率は当初の想定を大きく下回っており、アベノミクス3本の矢の2年間でも賃金の想定は下回っていると考えられます。少子化については、民主党第1次与党期に、団塊の世代ジュニア(1971年4月~1974年3月生まれ)が30歳代後半となったことから、合計特殊出生率は改善しましたが、その後、再び下降しているとみられます。

 ですから、私の感覚で言えば、おおむね、1人年額10000円程度減額され、国庫では、おそらく特別会計の歳出が1年間で数千億円の削減になるのではないかと予測されます。

  一方激しく抵抗した民主党内にも政権を担当したことで、マクロ経済スライドを評価する議員が増えています。自民党議員からは野党時に、年金改正法の法案を書くのはとても大変な作業だ、ということを与党・民主党閣僚にアドバイスする場面もありました。

 ただ、インフレ基調のなか、物価スライドが発動されないにしても、デフレ特例水準解消法が施行されている現状で、マクロ経済スライドを発令した場合は、受給額を見て、年金不安が広がる可能性があり、政府・与党のていねいな説明は必須です。法律案の審議となると、世代間闘争が起きるかもしれません。

 2015年通常国会に国民年金法改正案が提出されると、次期国政選挙の争点になることは確実なことから、安倍首相の胆力が問われることになります。