【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

民主党と公明党が蜜月新時代か? 野田首相と富田理事が散会後に長話 衆・予算委

2011年09月26日 23時32分03秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

[画像]衆院予算委散会後に、親しく会話する民主党代表の野田佳彦首相=赤丸の左側と、公明党・予算理事の富田茂之さん=衆議院インターネット審議中継から

【衆院予算委員会 2011年9月26日(月)】

 延長国会最終週(?)になりますが、午前8時55分から衆・予算委が開会しました。中井洽委員長は理事が4人欠員になっているとして、補欠の選任を行い、岡田克也さんらを新しい理事に指名しました。

 初日と最終日には筆頭理事が質疑に立つケースが多いのですが、きょうは岡田さんが、震災復興をめぐって「野党のみなさんにはよくご協力いただいた」とこの半年間の「熟議」「協議」をお礼した上で、しかし「やはりそろそろしくみということを考えていかなければならない」としました。そして「3・11」前の通常国会前に、新しい国対委員長だった安住淳さんと各会派をあいさつ回りした際に配った「今後の国家運営のあり方に関する提案」について説明しました。

 これは当ブログでも同じ軌を一にして主張していますが、(もちろん私の持論)、国会法92条により、両院協議会が院議(例えば衆院で「賛成」なら賛成の10人、参院で「反対」なら反対の10人)の10人ずつ合計20人が集まりながら、協議案(すりあわせ案)は3分の2以上でないと成案にならない(可決しない)ということ。これを「過半数」にするとともに、メンバーも院議でなく、各院の議席構成、そしてできればある程度、党派の立場を離れて考えられるメンバーを選ぶべきだとしました。

 野田代表は「尊重したい」としながらも、「ぜひ岡田筆頭理事には予算委員会の現場でも実践して欲しい」として、衆予算委での各派の話し合いをするよう注文をつけました。野田内閣は、財務相、外相、文科相、経産相(辞任)の4人について、岡田色の強い組閣がされているとの見方がありますが、総理・代表は、岡田議員に現場を守るよう釘を刺したように感じました。

 岡田さんは質問のなかで、衆院定数に関する「最高裁判決は2つのことを言っている」とする岡田さんは「各県に1議席ずつ配分する(1人別枠方式)」と「1票の格差を2倍以内にすること」の両方を解決しなければいけないとしました。そうなると「21増21減になるが、激変緩和的な考え方が必要だ」として、政治改革本部長として「党としては猶予を置くべきだという考えを示した」として、平岡秀夫議員が提出した「5増9減」案なども参考にしたいとしました。これに対して、野田さんは「各党は真摯な議論を踏まえて成案をつくっていくよう(民主)党でもご議論をいただきたい」としました。また、野田首相が所信表明で「選挙制度改革」という言葉を使ったのは、定数是正の意味だけではないことを確認しましたが、首相の答弁は必ずしも明確な意味合いで「選挙制度」と言ったわけではないというものでした。岡田さんは「党によっては選挙制度を大きく変えるべきだとする党もある」とし、「私は小選挙区・比例代表並立制を20年前につくった張本人だが、新しい選挙制度は、次の(第46回)総選挙は難しいのではないかと思うが、各党と胸襟を開いて議論をすべきではないか」としました。これは具体的には、山口那津男・公明党代表が出している3案のうち、「小選挙区比例代表連用制」と「小選挙区比例代表併用制」を念頭に置いているんだろうと私は思いました。また、自民党の石原伸晃幹事長も「郵政選挙なら自民党が300議席、政権交代選挙なら民主党が300議席とる(極端な)選挙制度はいかがなものか」という考えをテレビで話しています。そうなると、「連用制」ならば、二大政党が小選挙区で議席を大量に確保しても、公明党、みんなの党が比例ブロックの政党名投票で得票を得ていれば、ブロックの議席は優先的に小政党に与える格好になりますので、泰山鳴動しやすいわが国ですが、300議席越えの極端な選挙結果により、巨大与党がかえって足元がふらついて政権運営に失敗することはなくなります。

 さて、野田首相から「筆頭理事として衆院予算委をしっかりまとめて」と釘を刺されたこともあったのか、次のようなシーンが散会後の衆議院インターネット審議中継にうつっていました。

 

 赤丸の左は公明党の富田茂之理事、右は民主党の岡田筆頭です。おつかれさんとねぎらったり、あるいはあすも予算委があるのでその話もしているのかもしれませんが、富田理事は、野田総理の方を見ています。



この後、富田さんが野田総理に歩み寄ると、総理は腕組みしてリラックスした表情で富田さんと話し合います。岡田筆頭は武正公一理事と話し合いながら、その姿を見ています。

しかし、野田総理と富田さんの話が長くなったので、岡田さんは「なんだ俺にはもう話はないのか」という風情でカバンを持って引きあげました。野田さんと富田さんは「千葉つながり」もあります。「公明新聞読んでますよ!」の野田総理もテレビカメラに写っていることは承知でリラックスして富田さんと話していたのでしょう。

 これは別段不思議な光景ではなく、野田さんと富田さんは元新進党千葉県連の同僚で、第41回衆院選では同じ新進党公認候補として、野田さんは千葉4区で落選、富田さんはブロックで当選したという仲です。岡田さんは三重3区で当選し、富田さんとは現職議員として小沢一郎(氏)による新進党解党に抵抗しました。また、野田さんと同様に、第41回衆院選の東京17区で落選した山口那津男さんは、同日、小沢一郎(氏)の証人喚問を要求しました。いうまでもなく、野田さん、富田さん、山口さん、岡田さんともジェントルマンですが、衆参ねじれと震災という国難のなかで、3党合意にもとづく政治を進めようとしています。頼もしい限り。

 ただ、富田さんがこうやって総理と長く話して、岡田さんがてもちぶさたっぽくしていたので、岡田さんもいつまでものんびりしていないで、「よし俺も」という気になってほしいのですが、それは政権交代ある政治を完成させてそれからの話です。私は両院協議会などの国会法改革の3党協議や、衆院選挙制度(定数是正のみ含む)と参院の新選挙制度案を盛り込んだ公職選挙法改正案、これは当然にして議員立法でなければいけないわけですが、これの特別委員長だとか、そういった「議会の子」「政治改革の鬼」としてしっかりとルールづくりをやってほしいと期待しています。ぜひ輿石東・幹事長は国会法改正、選挙制度改革の役職に岡田さんを起用して欲しいです。

 さる9月23日付の公明新聞3面の投書欄に、今まで見かけなかった論旨の投稿がありました。これは世田谷区の76歳の女性。タイトルは「民主党よ、公明党の声をきけ」。「民主党さん、本当に日本の国を背負って立てますか?本当に心配です」「今月、私は喜寿を迎えますが、約50年間、公明党を応援してきました。公明党の主張で実現した『児童手当』のお世話にもなりました。参院公明(当時は公明会)の提案でできた『義務教育教科書の無償配布』の恩恵にも預かりました」「民主党の議員さん、一人一人の国民の幸せのために働く心を抱いてください!一人の人の苦しみを受け止めて一緒に悩み、応援してくれる公明党議員の声を聞いて、大切なことに本気で取り組んで具体的に結果を出してください」。

 これまで民主党に対して「しっかりしろ」という叱咤激励ととれる投稿は、公明新聞で見かけたことは、私は記憶にありません。

 そういえば、1月18日のあいさつ回りでいきなりペーパーを渡す岡田さんのことを「KY(ケーワイ)だ」と称した国会議員がいたかのように聞きました。しかし、それは1997年12月に新進党議員総会で、「解党反対」のビラを配る岡田克也さん(あるいは中田宏・衆院議員)を「もう解党は決まっているんだよ(笑)」と岡田さんを嘲った先輩議員を彷彿とさせました。あの人たち、一人もいなくなりましたよ。あのころの、新進党神崎グループ(創価学会系)のみなさんには、ひょっとして「天の声」があったかもしれません。これはもちろん、「大衆とともに」立党者である池田大作・創価学会第3代会長のことです。しかし、現在の公明党(New Komeito)のみなさんは、3000人に地方議員と、それを上回る支持者(10年間の国政与党で非学会員の中小企業者、農業者もだいぶ増えたようですが)に突き上げられる「民の声」にときに迷い、6月1日のように、内閣不信任案を出さざるを得ないという状況に党本部執行部が追い込まれることもあるようです。

 山口さん、富田さん、野田さんや岡田さんは十分に信頼して大丈夫です。場合によっては「3党合意」が「2党合意」になっても、衆参とも過半数があります。あの、ムリヤリ離縁を迫った乱暴亭主である悪の代表=小沢一郎(氏)のことは徐々に徐々に忘れて、新しい仲間(竹谷とし子さん、石川博崇さんのほか、枝野幸男さん、馬淵澄夫さんら民主党オリジナルメンバー)で、連立(同居)とはいかなくても、民公連携(お互いの家を行き交う)で、日本のためにやってみませんか。

 あの乱暴亭主の口癖は自分一人で決めて「決まったことを守るのが民主主義だ!」。しかし、決まったことを守るのは法治主義であり、決まるまでのプロセスをしっかり見せて正統性を持つのが民主主義です。だから小沢さんは司法試験に落ちたんです。その点、山口さんと富田さんは弁護士です。岡田さんも司法試験を1回受けて落ちていますから、3党協議のなかでも、いろいろと教えてもらうことも増えそうです。

 「国民の生活が第一。」から「庶民の生活が第一。」へ。

 まずは国会法改正案と公職選挙法改正案。しくみづくり。これを来年の通常国会でプロセスをしっかり明確化して、ていねいにみっちりやりましょう。

 野田総理のおかげで、少しずつ国会の底力がニョキニョキと空に向けて芽が伸びてきているような感じがします。

  ◇

今後の国会運営のあり方に関する提案
~ 政策を実現し国民の期待に応える「熟議の国会」のために ~

平成23 年1月18 日 民 主 党

4年前の参議院選挙以降、国会は衆参のねじれがほぼ常態化し、この間、残念ながら、立法府として国民の期待に十分に応えられているとはいいがたい。しかし、このまま現在の状況が続けば、国会は国民から完全に見放され、国の将来を誤ることにもなりかねない。我々は、そういった強い危機感を抱いている。
我々も与党を経験し、野党時代の国会対応において、政策実現のための国会運営あるいは国政の円滑な推進といった観点から、適切とはいえない場面が少なからずあったと認識している。そのことは率直に認め、真摯に反省しなければならない。

その上で、我々は、政策を実現し国民の期待に応える「熟議の国会」のため、過去の与野党合意や申合せ、提言・答申等も踏まえ、以下3点を提案したい。どの政党が与党であれ、衆参のねじれは現在も、そして今後も起こり得る。そういう前提で、各党各会派で速やかに議論を行うことを切に求めたい。

1. 充実した国会審議と国益の両立

国益および外交上の観点から、総理や閣僚の国会出席義務を緩和し、海外出張を理由とする国会欠席について、弾力的に運用する。同時に、閣僚が国会に出席できない場合に、副大臣・政務官のもとで審議を行うことについて、柔軟に対応する。
また、政治家同士による充実した国会審議を実現するとともに、国家公務員の過剰な残業を是正するため、質問通告ルールの原則(前々日の正午)を徹底する。

2. 両院協議会のあり方の見直し

ねじれ国会のもとにあっても、国会の機能が十全に発揮されるためには、新たな意思決定の仕組みが必要である。このため、両院協議会のあり方を見直す。
例えば、「協議案が出席協議委員の3分の2以上の多数で議決されたときに成案となる」と規定されている国会法92 条を改正し、「過半数による議決」に緩和することや、衆参両院から10 名ずつ選出される協議委員の構成について、各院議決の多数派で占められている現在の構成を見直し、各院の議席配分に応じた構成とすることを検討する。

3. 参議院の問責決議の位置付け

参議院の問責決議には法的効力はなく、また、内閣と国会の関係を定めた憲法の趣旨からいっても、総理が解散権を行使できない参議院によって、実質的に内閣の総辞職や閣僚の辞任が決せられることは妥当とはいえない。
しかしながら、参議院の意思として、問責決議が持つ政治的意味は極めて重く、問責を受けた内閣あるいは閣僚が、これを真摯かつ謙虚に受け止めなければならないことは当然である。
したがって、憲法の趣旨を踏まえつつ、参議院の意思たる問責決議を最大限尊重する方途について、過去の先例も参考に、各党各会派で検討を行う。

以 上