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高橋洋一氏『日米合同委員会出席者は端牌』論に付いて ―家産官僚制が日本を亡ぼす―

2024-01-26 | 小日向白朗学会 情報
 現代日本政治の根本的な問題は、自由民主党が国家主権をアメリカに売渡し、自分たちの保身と利権獲得のために政治を行ってきたことである。
 そして政党である自由民主党が70年の長きに渡り傍若無人に振舞えたのは、利権を利用して選挙民を纏めることができたからである。加えて自民党を支える官僚組織があったからである。しかし、その挙動はあまり知られていない。その実態を考えるうえで大いに参考になるYouTube動画がある。それが2022年07月29日 、髙橋洋一チャンネルで配信した『537回 日米合同委員会で全てが決まってる?は都市伝説!』[i]である。
 タイトルにもあるように同動画は「日米同盟」を運用するため設けられた「日米合同委員会」の実態につて述べている。高橋洋一氏は、経済学者であり、且つ財務省官僚の経歴を持っていて、現在では財務省が日本の財政は「国債発行により財政破綻」と公言していることに、日本政府の財務諸表を用いて財務省の主張は虚言であり「日本の破産確率は1%以下」であると財務省の虚言を厳しく批判している学者である。
 その「日米合同委員会」であるが、その組織は、日本側が法務省、農林水産省、防衛省、外務省、財務省、アメリカ側が在日米大使館公便、在日米軍司令部第五部長、在日米陸軍司令部参謀長、在日米空軍司令部副司令官、在日米海軍司令部参謀長、在日米空軍司令部副司令官、在日米海兵隊基地司令部参謀長、在日米海兵隊基地司令部参謀長により構成されている。高橋洋一氏は財務官僚当時、この合同委員会に財務官僚として参加したことがあるというのである。その時の高橋氏の感想として「日米合同委員会」に出席する参加省庁の顔ぶれは「価値が低く、切り捨てても(やめても)特に影響がなく、都合が悪くなったら、真っ先に切り捨てるべきと判断される」いわゆる麻雀用語で「端牌」と揶揄される人物が出席しているとしている。そのため高橋氏は、同委員会で国策に関わる重要な議題を審議し決めることはないと断言している。そして重大な問題はもっと上部で決定すると述べているのだ。
 この証言は重大である。
 現代日本を統治する「日米合同委員会」の出席者が、単なる端牌であるならば、アメリカ側の出席者も現地司令官レベルとなることから、重要な問題を討議するための会議ではないことは明らかである。したがって「日米合同委員会」という組織は「日米同盟」の象徴的なものだということになる。
高橋氏の「日米合同委員会」論でふと頭をよぎった問題がある。それは、日本政府が行おうとしている政策に圧力を掛け、挙句のはてには、政権交代迄追い込んだ事件が鳩山由紀夫内閣で起きている。それは「六五海里」問題である。それは、平成二八年二月二九日、初鹿明博が衆議院に提出した『普天間移設問題に関して鳩山元総理への説明のため作成された文書に関する質問主意書』にその概要を知ることができる。
『……
普天間移設問題に関して鳩山元総理への説明のため作成された文書に関する質問主意書

 
 鳩山由紀夫元総理は、本年二月四日に行われた「鳩山元総理が明かす『辺野古新基地』の真相」と題した講演会で、普天間飛行場の県外移設に関して、平成二十二年四月十九日に、当時の外務省の担当者から「普天間移設問題に関する米側からの説明」との題名で、「極秘」というスタンプのついた文書で説明を受けていたことを明らかにしています。
 この文書は平成二十二年四月十九日付けで、冒頭、「在京米大で行われた標記米側説明の概要は以下のとおり」と記載され、米側がウィルツィー在日米軍J5部長、ヤング在京米大安保課長、日本側が須川内閣官房専門調査員、船越外務省日米安保条約課長、芹澤防衛省日米防衛協力課長が出席者として明記されています。
 本文には、普天間飛行場を徳之島へ移設することが難しい理由が記されていますが、その中に、徳之島までの距離が遠く、「恒常的に訓練を行うための拠点との間の距離に関する基準」として米軍のマニュアルに明記されている「六十五海里(約百二十キロメートル)」を大きく超えているとの記載があります。
  上記の点を踏まえて、以下、政府に質問します。
一 この文書(平成二十二年四月十九日付け、「普天間移設問題に関する米側からの説明」)は存在するのか。また、政府文書として確認したのか。
二 平成二十二年四月十九日に、米側からウィルツィー在日米軍J5部長、ヤング在京米大安保課長、日本側から須川内閣官房専門調査員、船越外務省日米安保条約課長、芹澤防衛省日米防衛協力課長が出席し、協議を行ったのは事実か。
 三 「恒常的に訓練を行うための拠点との間の距離に関する基準」として「六十五海里」という基準が、米国のマニュアルに明記されているのは事実か。
 右質問する。
……』
 同質問趣意書の中で名指しされた外務省と防衛省官僚は、鳩山内閣が進めるアメリカ軍を沖縄県外に移転するのは「恒常的に訓練を行うための拠点との間の距離に関する基準」として「六五海里」とするマニュアルが存在するため不可能であるとアメリカ軍から言い渡されたというのだ。その後、アメリカ軍にそのようなマニュアルは存在しないことが明らかになっている。つまり、当時、鳩総理大臣に説明した官僚は、虚偽の資料で政策を転換させられたということになる。その後、「六五海里」問題に関係した官僚は「日米安全保障条約課日米地位協定室長」、「北米局日米安全保障条約課長」、「内閣官房内閣参事官〔国家安全保障局〕」、「内閣総理大臣秘書官(安倍晋三内閣総理大臣)」に就任して大出世している。中には「故安倍晋三国葬葬儀実行幹事会幹事」まで務めた人物もいる。
 当時の安全保障関係政府高官はアメリカ軍と打ち合わせた場所が「在京米大」としていることからテンプル大学JAPAN(Temple University Japan)であろうか。しかし、外務省にとって最高機密であるアメリカ軍との交渉をわざわざ在京の大学構内で行う必要があるのだろうかと考えると甚だ胡散臭いと言わざるをえない。ところでテンプル大学日本校のHPを見ていて実に興味深いニュースが掲載されている[ii]
『……
米国商務副長官、内閣広報官、TUJにて講演、学生にとって貴重な学びの機会にテンプル大学ジャパンキャンパス(東京都世田谷区/学長:マシュー・ウィルソン、以下TUJ)は、2023年9月26日・27日の両日、内閣広報官および米国商務副長官を招き、TUJの在学生・卒業生、教職員ら大学関係者を対象とした講演を開催しました。両日とも、参加者にとって、地域の安全保障や世界貿易、サイバーセキュリティ、日米外交関係など、重要な事項についての見識を深める貴重な機会となりました。
……
■四方敬之(しかた・のりゆき)内閣広報官による講演(9月26日)
四方内閣広報官は、満席の参加者を前に講演を行い、対米関係やインド太平洋地域への関与についての岸田政権の政策、日本の安全保障やグローバルヘルス(国際保健)問題、経済成長、イノベーション、テクノロジーへのアプローチなどについて見解を述べました。また、日米同盟の重要性および東アジア・インド太平洋地域の安定の重要性を説明し、今年5月に行われたG7広島サミットにおける進展についても触れました。
……
■ドン・グレイブス米国商務省副長官による講演(9月27日)
翌27日には、訪日中の米商務省副長官が来校しました。商務省ナンバー2の高官であるグレイブス氏は、日本・韓国におけるサイバーセキュリティ・ビジネス開発ミッションのため米国企業15社を率いてアジア歴訪中でした。副長官は政策についてスピーチし、サイバーセキュリティの重要性と、それが世界の繁栄と安全保障に与える影響について述べました。さらに、日米貿易関係や商務省の優先事項について、また8月にキャンプ・デービッドで行われた日米韓首脳会談後の新たな三国間協力態勢についても貴重な知見を共有しました。
……
近年の主な講演者としては、ラーム・エマニュエル駐日米国大使(2023年2月)、サンジャイ・クマール・ヴァルマ駐日インド大使(2022年11月)、アルギマンタス・ミセヴィシウス駐日リトアニア公使参事官(2022年3月)、セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ特命全権大使(2022年2月)が挙げられます。また、2022年5月の卒業式では、基調講演者として河野太郎衆議院議員(現デジタル大臣)をお迎えしました。
……』
 つまり「六五海里」問題は、テンプル大学が行う幾多のイベントを口実に、米側がウィルツィー在日米軍J5部長、ヤング在京米大安保課長、日本側が須川内閣官房専門調査員、船越外務省日米安保条約課長、芹澤防衛省日米防衛協力課長が出席者した会合でアメリカから日本に伝達されていたと考えられる。それを暗示するかのように、2023年9月27日に行われたドン・グレイブス米国商務省副長官の講演内容は、二〇二三年にキャンプ・デービットで行われた日米韓首脳会談で合意した内容を、具体的に国内政治に反映すべき内容となっている。
 やはり、高橋洋一氏がいう「日米合同委員会」に出席する端牌は、国策に関わる問題に結論を出すようなことはあり得ないと断言していたことは正しい。したがって「日米合同委員会」には上部構造が存在して、それがテンプル大で行われる講演などを利用して、日本政府にアメリカ政府の意思を伝えていたとみて間違いはないであろう。そもそも鳩山内閣を葬った「六五海里」問題は、普天間から辺野古に海兵隊用に航空母艦に着艦訓練ができる滑走路を整備したいがために持ち出されたものなのである。そのアメリカ海兵隊は近い将来には解散することも俎上に上がっているうえに、運用中の航空母艦を保持していないし、今後も、運用するも予定はない。つまり、辺野古に航空母艦着艦訓練用の滑走路を必要としているのは日本政府なのである。
 鳩山内閣を葬った「六五海里」問題とは、外務省にとって都合の悪い内閣に対して、存在しないマニュアルを根拠に作話をして、内閣総理大臣に間違った情報をつたえていたのである。つまり、外務省は、安全保障という独自の省庁利権があって、その利権を鳩山内閣が破壊しようとしていたことから、アメリカ軍の威光を利用して議会制民主主義で選ばれた総理大臣を葬り去ったである。
 これは「虎の威を借る狐」の諺通りの話なのである。
 それと同様に、財務省が森友学園へ国有地売却 をめぐって決裁文書改竄をおこなった事件や、「財務省」「防衛省」「外務省」が連携して「防衛三文書」を企画し、自前の有識者会議を開催して体裁を取り繕い、閣議決定だけで莫大な防衛予算をせしめたことなど、「財務省」「防衛省」「外務省」等々、これに類する話は枚挙にいとまない。

 嘗て、日本の碩学、小室直樹博士は、『これでも国家と呼べるのか―万死に値する大蔵・外務官僚の罪』や「日本経済長期低迷の主因は「家産官僚制」「前期的資本」にあり」(月刊ダイヤモンド2001年2月3日) で日本の官僚は家産官僚制(patrimonial bureaucracy)であって依法官僚制(legal bureaucracy)ではないと厳しく批判していた。具体的にはウイキペディアにつぎの様に書かれている。
『……
家産制における官僚は、臣民に対して何ら義務を負うものではなく、その職務は官僚側からの恩恵としてみなされていた。このため、臣民は官僚に対して職務行為に対する謝礼(役得・礼銭)を行うのが当然であって、これらが賄賂とみなされることはなかった。
……』
 これが、日本を70年長きに渡り支配してきた自由民主党が長期政権を可能としたのが家産官僚制による「国民には奉仕しない」官僚たちだったのである。
その代表が日本国権を売り飛ばした吉田茂であり、岸信介だということになる。そして日本は、官僚が経済を計画し指導する体質を引きずったままの日本経済を持続させ、このままでは壊滅すると語っていた。その原因が家産官僚制なのである。まさに小室博士による日本社会に対する警告は、まさに正鵠を射たものなのである。

 自由民主党は、内外に様々な問題を抱えていることから遅かれ早かれ解体されることであろう。ただし、そのときに、特に外務省、財務省そして経済産業省の家産官僚を排除しなければ、自由民主党が戦後70年に渡りおこなった悪政と同様の国内政治が続くことになる。
そのためには、家産官僚を解体する方法を研究しておく必要がある。強大な権力を握る家産官僚群を解体することは「蟷螂之斧」にも似た無謀なことの様にも思えるが、実は日本の近代史を研究するならば難しいことではない。
例えば、終戦直後、岸信介が椎名悦三郎に命じて軍需省の利権を僅か一日で商工省に移行した経験がある。
 そうである。自由民主党は、軍需省の省庁利権を占領軍に接収されないよう商工省に持ち逃げした当人らが結党したものである。アメリカは、その省庁利権と知見を最大限利用するために、持ち逃げした張本人を利用してできたのが自由民主党なのである。その時の官僚制度が依法官僚制であるとアメリカと日本国民が対立してしまうため、どうしても家産官僚制でなればならなかった。その代表格が財務省であり、外務省であり、防衛省であり、経済産業省なのである。
 したがって日本の将来を占うものとして、アメリカから国権を回収し、自由民主党を解体し、家産官僚制を廃止することができなければ、現状の鬱積した状況は変わらず、今後も衰退するだけなのである。
以上(寄稿:近藤雄三)

[i] https://www.youtube.com/watch?v=1_cyoxsHfCs


出所:IWJ「岩上安身によるインタビュー 第616回 ゲスト 鳩山由紀夫・元総理 2016.2.16

https://iwj.co.jp/wj/open/archives/287473#idx-1


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