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Wikipediaでは「日英円滑化協定」を新「日英同盟」と定義! ―知らないのは日本国民だけ―

2025-04-12 | 小日向白朗学会 情報
 2025年4月2日、トランプ政権は、すべての国から輸入される全品目に一律10%の追加関税を課す「基本関税」と、米国の対外貿易赤字が大きい国に対して、さらに高率の追加関税を課す「相互関税(reciprocal tariffs)」を発表した。この突然の関税政策は、世界経済に深刻な混乱をもたらした。
その後、同年4月9日には「相互関税の90日間停止」が発表され、通商と安全保障を包括する期限付の交渉が開始されることとなった。
 このような情勢のもと、アメリカと相互貿易問題で交渉する上での中心的議題は、「消費税還付問題」と「日米安保条約」である。しかし、日米安保条約は朝鮮戦争と密接に関係している。加えて条約締結当時の日本政府は、国民に知らせることなく、多くの国権をアメリカに提供していた。その見返りとして、自由民主党が「アメリカと安全保障政策を協議できる政党」であるかのような幻想を国民に植え付ける構図が長年にわたり形成されてきた。
 日米安全保障条約は、1950年に勃発した朝鮮戦争を契機として締結され、アメリカは日本を戦争遂行のための兵站・補給拠点として利用した。その結果、1951年に日米安全保障条約が締結され、「行政協定(現・日米地位協定)」及び「国連軍地位協定」が併せて整備された。
 このうち「国連軍地位協定」は、アメリカ軍を中心とする連合国軍、すなわちいわゆる「国連軍」が日本国内に駐留するための法的根拠を提供している。現在もその一部は「国連軍」名義で駐留を継続しており、横田飛行場には国連軍後方司令部が設置されている。
 また「日米地位協定」では、アメリカ軍に対し日本国内での特別な法的地位を付与しており、その中には以下のような内容が含まれる。
  • 有事の際には、自衛隊はもとより、海上保安庁を含む日本の準軍事組織全体が、在日アメリカ軍の指揮下に組み込まれる構造が構築されていた。海上保安庁法(第25条)では、同庁は戦力ではないと定められているにもかかわらずである。
  • 特定電波帯域の優先使用(米軍による通信周波数の占有)
  • 航空交通管制権の優先(嘉手納ラプコン、横田ラプコンの米軍運用)
  • 基地設営・使用に関する法的優遇措置(日本法の適用外)
 これらの特権的措置は、アメリカから一方的に押しつけられたものではなく、むしろ日本政府が自発的に提示し制度化したものである。その代表例が、1952年の行政協定に付随する秘密覚書における、自衛隊及び海上保安庁の米軍指揮下編入条項である。
 にもかかわらず、日本政府はこうした実態を国民に知らせる努力を意図的に避けてきたため、主権や法制度の問題は長らく議論されることなく放置されてきた。
 こうした法制度と対米関係は、日本の政党政治にも大きな影響を与えてきた。自由民主党が長期にわたり政権を維持してきた背景には、アメリカCIAの積極的な支援によって構築された政権維持構造があったとされる。具体的には:
  • 保守合同(1955年)による社会党の政権奪取阻止
  • 民社党(1960年)の設立による社会党の分断
  • 統一教会などを利用した草の根政治支援
 しかし、2018年から2019年にかけてトランプ大統領と金正恩との間で行われた米朝首脳会談において、「朝鮮戦争の終結」が事実上合意され、国際的に容認される方向性が示されたことで、状況は大きく変化した。終戦によって日米安保体制の根拠が動揺し始めたのである。
 とりわけ、在日米軍の駐留根拠が朝鮮戦争の休戦状態に基づいていたことから、その正当性が崩れた。日米安保条約と国連軍地位協定の「不可視の連動構造」が問われ始め、それにより自由民主党が担ってきた「日米安保体制の管理者」という政治的役割も、その存立基盤(レーゾンデートル)を急速に失っていくことになった。その理由は、国連軍地位協定には、朝鮮戦争が終戦となると90日以内に完全撤収することが規定されており、駐留する根拠が失われるためである。
 この事態に、自由民主党政権とアメリカとの二国間関係を基軸としてきた日本外務省は危機感を抱き、慌ててアメリカに新たな「宗主国」を求めてNATOへの接近を図ることとなった。
 その過程で、日本のNATO接近を強力に後押ししたのが、イギリス王立防衛安全保障研究所(RUSI: Royal United Services Institute)であった。RUSIは単なるシンクタンクの枠を超え、日本政府、特に首相官邸において「安全保障アドバイザー」としての地位を確保している。そのため、RUSI長官の名前が首相動静に登場していることからも、その影響力の大きさは明らかである。
 こうして2023年1月12日、日本と英国は「日英円滑化協定(Japan–UK Reciprocal Access Agreement)」を締結し、事実上の新「日英同盟」が成立することとなった。
 この協定について、Wikipedia「日英同盟」の項(2024年版)では以下の要点が挙げられている:
  • 自衛隊とイギリス軍の法的地位を定める協定
  • 出入国・武器弾薬・運転免許の手続簡素化
  • 英国軍の日本駐在によるインド太平洋展開の基盤整備
  • 英国政府は「1902年以来最も重要な防衛協定」と位置づけ
  • RUSIの秋元千明氏は、米・英・日による三国協力構想を提言
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/日英協定
 さらに、2022年12月16日に閣議決定された「防衛三文書」も、RUSIやNATOの影響下で策定されたことから仮想敵国に中国・北朝鮮・ロシアを明記し、日本を明確にアングロサクソン同盟の戦略圏に組み込むものであった。これにより、日本はウクライナ戦争に巻き込まれ、不自然な「スタンディング・オベーション」を演出する政治的状況に置かれることとなった。
注目すべきは、「日英円滑化協定」第四条である。
『…第四条
 この協定は、1954年2月19日に東京で署名された「日本国における国連軍の地位に関する協定」に基づいて、国連軍として行動する間の英国軍の活動には適用しない。
…』
 この条文が示すとおり、国連軍地位協定が有効な限り、日英円滑化協定は発効しない。国連軍地位協定の第二十四条・第二十五条では、朝鮮戦争が終戦となった場合、すべての国連軍は90日以内に日本から撤退し、協定は自動的に失効する旨が明記されている。
 つまり、日英円滑化協定が実際に機能するのは、朝鮮戦争が正式に終戦を迎えた場合に限られる。
 自由民主党は、こうした展開を見越して、アメリカの撤退に伴いイギリスが代替的「宗主国」として日本統治の枠組みを維持する体制を構想したと見られる。そのための枠組みが「日英円滑化協定」であり、旧・日米合同委員会の機能を英国に引き継ぐ布石とされている。
 つまりこの協定は、日本の主権回復を意味するものではなく、アメリカに代わってイギリスに対しても、自衛隊の指揮権・航空管制権・電波権といった主権の核心部分を提供する構造にほかならない。
ただし、「日英円滑化協定」第二十九条には以下の条文が存在する:
『…
第二十九条
 (3a)各締約国は、六か月前に書面で通告することにより、いつでも本協定を終了させることができる。
…」
つまり、新たな政権が発足すれば、この条項を用いて協定を終了させることが可能である。
日米地位協定の不条理を改定する作業と、「日英円滑化協定」の継続は明らかに矛盾するそのため、トランプ政権との交渉で合意が成立するタイミングと同時に、日英円滑化協定は破棄しておく必要がある。以上(寄稿:近藤雄三)
【参考】
「国連軍地位協定」及び「日英円滑化協定」につては下記スレッドにその詳細を纏めた。
円滑化協定等
トランプ氏とNATO問題
トランプ氏と朝鮮戦争終戦問題
バイデン政権となったのちの動き
朝鮮戦争が終戦となることを見込んだ処置



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