もっとましな嘘をついてくれ ータイ歌謡の日々ー

タイ歌謡について書いたり、うそをついたり、関係ないことを言ったりします。

やや内角を狙い えぐりこむように打つべし

2024年03月30日 10時31分23秒 | タイ歌謡

 まえにも書いたことがあった。猫を育てていて、その名をチグリスとユーフラティスといったんだが、誰でも知ってるとおり猫は何の役にもたたない。役にたたないだけならまだいいが、してほしくないことは狙い定めて仕掛けてくる。だから掃除の手間が増えたり、壊した物を再び購入したりしなくてはならず、そんなとき、「いや、おれカンケーないから」みたいに向こうを向いてシラを切ってたりする。あれは、そういう生き物だ。
 ときどき思うのだが猫を育てる人というのは、多かれ少なかれ間違いなく猫による何らかの被害を引き受けているはずで、それでも猫を窓から放り出したりせずに「あー。そんなことしちゃうのか。……もう……」くらいで済ませてしまう。これは、猫のいたずらを許しているのではなく、ヒトの小さな破壊衝動や蕩尽衝動を猫に満たしてもらっている共依存みたいな関係が構築されたのではないかと睨んでいる。猫は植木鉢をひっくり返すものだと知ってはいた。が、カラスに食われそうだったところを保護して連れてきたとき、植木鉢を外に避難させると枯れてしまいそうだったので、「いいか、これで遊んではいけないよ」と言い聞かせると観念したような目をして、そうなると猫は植木にいたずらすることはなかった。(お? 意外と話がつうじるぞ)と思った。
 あのいきものは言い聞かせると、けっこう約束を守る。ただ、言い聞かせるときに猫が目を逸らして聞こえないふりをするときはダメだ。納得するまで言い聞かせる。
 だから、教えたとおりに爪とぎの棒と段ボールだけで爪をとぎ、壁や柱の被害はまったくなかったのだが、洗面所のホースについては何も言わなかったので、ある日噛み千切られていて驚いた。(あー。これは禁止してなかったもんなぁ)で、それから教え込むのも「え? このまえは良かったのに?」と混乱してもいけないので金属製の蛇腹のホースに取り替えた。「好きなだけ噛みなさい」と言ったが、目を逸らしたままだった。
 それでも、あれはどういうつもりだったのか、おれが俯せに寝てタブレットなどを眺めていたりすると、チグリスは音もなく背中に飛び乗り背骨の辺りを肉球でふみふみと押して、まるでマッサージみたいな動きをする。ユーフラティスは猫らしい猫だったから、そんなことはしない。30cmくらいの距離を常にキープして眺めていた。
 チグリスの踏む場所がまた絶妙で、あ、そこそこ。そこツボなんだよ、という所をきっちり押さえて踏んでくる。
 とはいえ猫の力だから、気持ちがいいなんてことはなく、ぜんぜんマッサージになってない。猫は軽いからね。それでもおれは礼儀正しいので、チグリスに礼を言う。「ありがとう」
 そういうときのチグリスの返事は決まって「ねーん」という声で、どういうわけかチグリスはおれにだけ「ねーん」と言った。他の人には普通に「にゃぁ」なのに。ユーフラティスは生きている間は滅多になかない猫だった。
 冷凍庫には小分けにした鶏レバーの包みがあって、一食ぶんを電子レンジで解凍して駄賃に与えた。茹でただけで味付けのない鶏レバーを料理鋏で細かく刻んだ物だ。これがチグリスの大好物で、レバーが食べたくて、おれの背中を踏みに来るんじゃないかと思わせるフシさえある。だいたいは静かに物を喰らう奴なのに、レバーの時だけは自制心を失って、がふ、がふ、と喰らった。食い終えても食器の底に付いた滓を舐めている。しつこく、いつまでも。駄賃のレバーを舐めていた。これを我々の業界では駄賃嘗胆といいます、とケーシー高峯先生は言ってない。たぶん言ってない。

 ケーシー高峯というひとは、出てくるだけでいかがわしく、なんか笑っちゃう人だった。
 むかしの芸人って、こういう人がたまにいて、由利徹さんなんかも、そうだった。いかがわしさが比類ない。普通に歩いてるだけでおかしい。
 東京コミックショウのショパン猪狩さんもいた。出てくるだけで皆わらう。で、「社長、社長」と言いながら手招きをして、おもむろに腹を凹ますと、すとん、とズボンが腰まで落ちる。もう毎回これなのに、毎回笑っちゃう。
 由利徹さんは、いち度紹介されて会ったことがあって、ぜんぜんエラソーなところがなくて感心した。ふつうにふざけている人で、尊敬する人間がいないおれだが、どうしても一人だけ挙げろと脅されたら由利さんでいいと思う。もし生きていたら、お願いされるとイヤな顔もせずに、「ウク、ライナ」って言いながら股の所で両手を広げてくれたような気がする。「おしゃ、まんべ」の口調で。テレビでやったら不謹慎だって文句言う人が多いんだろうな。開いた足を戻して「閉じてプーチン」とか。ぜったい怒られるやつだ。
 由利さんは紹介されるまえにも二度見かけたことがあって、どちらも、たこ八郎こと斉藤清作さんと一緒だった。斉藤清作の名では日本フライ級の拳闘チャンピオンにも輝いたが、左目が見えなかったこともあり引退。その翌日に由利徹さんに弟子入りしていた。「あしたのジョー」の主人公ジョーのモデルの一人と言われるのが斉藤清作さんで、この人とは行動範囲が被っていたのか、新宿で赤塚不二夫と一緒にいたときも二度遭遇し、渋谷に東京乾電池(まだ無名だった頃)の芝居を観に行って振り向いたら後ろに赤塚・斉藤コンビがいてたまげたことがある。いずれの時も斉藤清作さんは、たこちゃん、たこちゃん、と皆に大事にされて「おしっこ、だいじょうぶ?」って優しく訊かれたりしていて微笑ましかった。ときどき小便を漏らすことがあったからだ。現役時代にパンチを受けすぎて、そうなる人はいる。テレビでしか見なかった人は(かわいそうに。少しアレなんだな)と思ったようだが、本人と会うと(天使みたいな人だ)という印象しかない。赤塚不二夫も「現代の妖精」といい、その名は一部で定着した。その証拠に、たこちゃんを嫌いな人なんていなかったし、みんな優しかった。
 漫画の「あしたのジョー」も、真っ白に燃え尽きた後にコメディアンになって酔って海で溺死って続編の最終回だと良かったのにね。おれは良いと思うが、高森朝雄こと梶原一騎こと本名・高森朝樹は、そんなの許さなかっただろうな。
 たこちゃんといえば、あの髪型だ。基本は一分刈りなんだけど、前の生え際中央部だけ数センチ伸ばしていた。出落ちみたいな髪型で、コメディアンとしては芸があるわけでもピンで客を笑わせる話術もなかったから、いるだけで何かおかしい、というマスコット扱いか、触媒みたいな感じで、そこにいる、という存在だった。馬鹿にしたり虐めたりする笑いには起用されることはなかった。洒落にならず誰も笑わないからだ。
 パンチドランクでシャツのボタンがうまくとめられないような人だったから、あの髪型は自分で手入れしていたとは思えない。かといって根拠などないが、行きつけの床屋があったとも思えない。仲の良いひとたちが持ち回りでバリカンを入れていたのか。たこちゃんの頭を刈るってのも、なんか嬉しかっただろうなと思う。おれだったら絶対に嬉しいもん。
 あのひとが昔ボクサーで、しかも強かったというのが想像できないでいたのだが、あるとき年配のひとが「あれは先制攻撃ができないタイプでね、ボコボコに打たれて堪忍袋の緒が切れて、それから豹変して手が出るタイプのファイターだったんだよ。だから人気もあったんだけど、そんなスタイルだから、あんなふうになっちゃったのかな」とさみしそうに言うのを聞いて、試合を見たこともないのに泣きそうになった。海水浴で遊びに行って、酔って溺死したというニュースを知って不謹慎だが、そんな死に方が似合うひとは、このひとだけだな、と思った。

ไม่รักกูต่อย - ปลิวลม【OFFICIAL MV】
 ปลิวลม(風に吹かれて)というグループのไม่รักกูต่อย(愛してないなら殴る)という歌だ。ツンデレを通り越して、殴って服従させたいのかと思うような歌詞。このグループの詳細は不明で、ググっても同名の書籍やTVドラマのタイトルがヒットするばかり。他にも数曲発表しているようだがヒットしたのは、この曲だけ。作詞作曲が別の人で、だからヒットしたのか。ヒットと言っても小ヒットで、この後5年は消息がわからないから、どうなっているのか。ていうか、よくこんなのが小ヒットしたな。
 曲じたいはよくできたR&Bだね。アレンジもいい。歌詞が別の意味でR&B。隷属(R)アンド暴力(B)だ。いやだな、そんなの。MVの演出も随分で、女の子がベロベロ舐(ねぶ)ったソーセージを食わされたりタックローの球をぶつけられたり蹴られたり、まあこれを喜ぶ男もいるんだろうが、おれは健全なんで、そんなのはゴメンだ。
 そういえば世間を騒がせている紅麹だが、メルカリで定価の数倍という価格で転売されていて、しかもそれが売れているというね。なんでそんなに危険な物を買うのかと思ったら、どうやら危険だから売れているらしくて、密かに旦那に飲ませてダメージを与えたい奥様に売れているのではないか、あるいは賠償金狙いか、ということで、日本もなかなかにアジアだなと感心した。小林製薬は上手く責任を子会社に押しつけて切り離さないと、いいように玩具にされちゃうかもしれない。JAL123便の事故のあと、親戚だと名乗っていろんな人が出てきて、気がついたらあっという間に筆頭株主が糸山栄太郎と後藤組になっちゃった時期があったでしょ。どうもこの紅麹の件は、早い段階で事を嗅ぎつけて仕掛けた奴がいるような気がしてしょうがない。でも、バレるようなヘマをするわけもないんで、真相はわからないんだろうな。裏社会の目端の利く奴ってのは凄いね、どうも。感心してる場合ではないか。あと、個人でタカリに行くような下劣な奴は、ちゃんと洗い出して撥ねないと。でもせいぜい書類送検かな。賠償狙いじゃなくて近親者なんかに盛りたい奴は論外なのに、こいつらを購入という事実だけで罰することはできないのがもどかしい。ていうかメルカリは販売禁止しろ。ほんとに無法地帯だよね。ひょっとしてトリカブトなんかも売ってたりして、と面白半分で検索したら、実際にトリカブトの苗が売られてて(あー……、苗の売買は違法じゃないのか……)と暗澹たる気分になった。なんだこりゃ。

 まさかまさかだけど、偽造パスポートなんて売ってないよなとググってみたら、中共の「撮影用パスポート」が売られてた。氏名や証明写真欄はブランクだから自分の情報を差し込むこともできる。それで¥2,800-って安いのか? 複数購入も可だというから必要なら急いで買うといい。さすがに高飛び用には使えないだろうが、一旦日本のパスポートで出国してから発展の途上が著しい国から別人になりすまして出国するのには使えたりして。無理か。でも、こんなの偽造するより本物の横流しの方が簡単そうだよね(個人の感想です)。

 しっかし品揃えが凄いなメルカリは。まえに、愛と希望以外はアマゾンで売ってる、と書いたような気がするが、メルカリでは「希望の命水」ってのが2リットルのペットボトルで2本、つまり4リットルが¥15,000-で売られてた。1リットル当たりの単価が¥3,750-かぁ。おれも愛とか幸福を水に溶かして格安で売ってみたい。

 たしかに、もうひとつの流行の不凍液は検死でバレそうだ。とはいえメルカリでそんなものを買うのが間抜けな個人だったら、不凍液ってウインドウォッシャーの青い水よね、とか思ってそうだ。まああれもアルコールと界面活性剤が入ってるから健康には良くないが、肝心のエチレングリコールは入ってない。
 エチレングリコールは甘いから、飲まされる方も毒物だとはわからないというし。昔(たしか70年代)オーストラリア産(それともNZだったかな)のワインに混入していたとかで大騒ぎになったことがあったけど、そのときに毒物だとは報道してなかった。なんと味を調えるために混入していたというね。単価が安いから混ぜていたっていうんだけど、もちろん悪意なんてなかったようだ。ただ単に知識がなかっただけ。ていうか普通はラジエター液が毒物だなんて思わない。昔の自動車整備工は「あれ舐めると甘いんだよね」とか無邪気に言っていたという。
 今はもう肝機能の不全でエチレングリコールも疑うようになっているだろうけど、昔は医師でもそんなことは知らなかった、ていうか十数年まえ、このことを言っても知人の医師は知らなかった。「へぇー……」と感心していたが、あの連中はもっとバレない殺人の方法を幾つも知っているから油断ならない。さすがにその知識を役立てることはないだろうが、医師は敵に回さない方がいいよ。
 話が逸れた。歌詞の和訳を書いておこう。

私たちは長い間友達だった 幼稚園から今まで
あなたがこんな頭蓋骨を好きじゃないってことは知っている 
いったい誰があなたを好きになるのか

あなたを好きな人がいるという噂を聞いた
1年生の時から でもあなたは気付いてない
それと もう時間が来たので言うけど
涙を流すまえに そしてあなたを失うまえに

他の誰よりも あなたを愛していると伝えたい
あなたは私だけを愛してくれたらいいのに あなたには私しかいなけりゃいいのに
あなたが 私のボーイフレンドだったらいいのに

私を愛してないなら殴っちゃう 心を痛めながら
打ち明けるのは難しい 秘密を明らかにするなんて
長い間 長い間 長い間 長い間 ずっと守ってきたの 知ってる?
今日からは我慢できない もう我慢できない

愛してないなら 愛されるまで殴るわ
あなたが私をあなたのガールフレンドとして受け入れてくれるまで
友達でいることに疲れて イライラしちゃう
いいかしら? ……どうかしら?

今 愛してるって言わなかったら 
数分以内に 私はあなたを失うかも
おそらく彼女は あなたに愛していると伝えに来たのね
それで あなたは私の彼氏になりたいの?
友達という言葉は 私があなたに与えたよね このまま一生……

愛してないなら 愛されるまで殴るわ
あなたが私をあなたのガールフレンドとして受け入れてくれるまで
友達でいることに疲れて イライラしちゃう
いいかしら? ……どうかしら?

 ところで、3月29日にビヨンセのニューアルバムが世界一斉発売になって、その日に合わせてビヨンセが来日して、コンサートをするわけでもなく渋谷のタワーレコードで先着150名のCD購入者にサイン会というニュースで、「ビヨンセサイン会対象商品購入専用レジ」ってのが、まず凄いが(それ、そっくりさんのビヨヨンセとかじゃないの)と思ってたら本物だった。本物が来て握手とかハグだののサービスつきのサイン会をして帰ったらしい。すげえな。早速メルカリをチェックしたら、もう¥476,000-で売られてて、並んでサインをもらえた人は¥2,500-が原価なんだけど、これが本物かどうかなんて証明が難しいところだ。

 そして明けて3月30日は今日なんだが、3月30日というと、日本の年寄りなら「あ。フランシーヌの日じゃん」と思う。漠然と(フランス革命の犠牲者かな)と思っていたが、あの記念日は7月14日だ。今日改めてググったら、フランシーヌという人はヴェトナム戦争とナイジェリア内戦のビアフラ飢餓に抗議して有機溶剤を被って3月30日にパリの路上で焼身自殺したというのね。当時30歳。なるほど。主張はわかるが、パリで自身に火をつけて自殺して、どれだけ届くんだろうね、という歌詞なんだろうか。てっきりフランスのシャンソンだと思ってたら、これも違って日本人の作品だった。(わかるけど、何だってまた)という気分だったのか。これが流行ったってのも、当時の日本だよね。今だったら流行らないだろうし、こんな歌も作られなかったような気もする。

 そういえばタイで焼身自殺って、あんまり聞かないな。暑いのは足りてるからか。僧侶が政治に抗議して自らの僧衣に着火したってのが、ずいぶんまえにあったくらいか。すぐに消火されて、たしか死亡には至らなかったような。バンコクは水が豊富だから、ちょっとした小火なんかだと消し止められることが多い。そのときに活躍するのがสายฉีด(サイチッ)という小さなシャワーで、コンパクトでシャワーの径が小さいからかパスカルの法則か何かの理由で放水レバーをいっぱいに押すと高い水圧が解放されて、びゅっ! と水が遠くまで飛ぶ。
 よほど古いタイプのトイレでない限り、このシャワーというよりノズルが設置されていて、広く普及している。何のためかって、そりゃ簡易シャワートイレだ。昔と違って手桶の水で用便後の始末を水で洗うのに手を必要としなくなった。トイレ掃除にも便利。タイだけの物ではなく、周辺諸国でも見られるものだ。
 美容院なんかでも洗髪でこのノズルを使う店は多く、これで洗髪するときは概ね耳の穴に、ちゅう、と注水して洗ってくれるサービスもセットだから、これに慣れてない日本人は「ひゃあ!」と叫んで笑われるのが国際条約の取り決めになっている。
 このノズルは汎用性が高いので、トイレや洗面台だけでなく洗車に使う者もいたりして案外町中に設置されている。ゴミ捨て場の悪臭を流したり。
 使い慣れてないと、トイレで水勢に驚いて「うわぁ!」と叫んだりするから、タイのトイレでこれを見たときは、いきなりのフルスロットルは避けたほうがいいよ。

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