もっとましな嘘をついてくれ ータイ歌謡の日々ー

タイ歌謡について書いたり、うそをついたり、関係ないことを言ったりします。

見ず知らずの初老の女を叱る

2024年08月02日 17時18分27秒 | タイ歌謡
 突然、思い出した。風呂場で洗髪していたとき、ふいに浮かんだ名が「マンスール メリア ホテル」だった。
 ん? どんなホテルだっけ。ていうかどこの都市だったかな。いつ頃行ったんだっけ。同時多発的に疑問が湧いたが、思い出す手懸かりが微塵もなかった。
 身体を拭いて、下着を穿くのももどかしくパソコンを起動してググった。そうしないと、また忘れてしまう。
 ええと。まんすーる……。
 イラク……のバグダート、のホテルぅ? イラクは行ったことないな。ていうかマンスールメリアは、かつてバグダートにあったホテルで、今はもうない、というか建物はそのままで(リノベーションはしてると思うが)名前が変わっているようだ。
 なるほど。ググるうちに思い出した。1990年の湾岸戦争のときにフセインがクウェートとイラクに在留していた外国人を人質としてホテルに収容したんだった。そのうち日本人400人超を詰め込んだのがマンスールメリアホテルだったんだね。人間の盾として。当時のニュースで、よく言っていたのが記憶に残っただけのようだ。まえに書いたドルジ効果だ。音だけ蘇った。

 ふうん。差し詰め、おれとは全く関係ないな。
 というわけで、これ以上話が続かないんで、話題を変えよう。サマルカンドのヒルトンはプールが素晴らしい、という話はどうだろうか。とはいえ、そこも行ったことがない。ヒルトンというホテルではなく、サマルカンドのあるウズベキスタンに行ったことがなかった。だからプールサイドについても「クールファイブ」に語感が似てるよね、くらいしか言えない。が、そこへ行っても前川清のそっくりさんが歌ってるってことはないと思う。
 さて。話題は変わっているかどうかわからないが結構まえのこと。友人と地下鉄に乗っていたらマタニティーマークをつけた御婦人が乗り込んできて、空席がなかったので、席を譲ったことがあった。
 ひと目で妊婦さんとわかる腹ではなかったが、妊婦さんには親切にするようにしている。あとで恩返しに来るのを期待してではない。「あのときの子です。お礼に……」と子供を置いていかれても困っちゃうでしょ。が、そんな母親はいない。席を譲るくらいなら簡単なことで、それはおれの奥さんが妊娠したときに親切にした名残みたいなものか。思い返しても随分と親切にした。だってヨメだからな。
 同様の理由で幼児を抱えた母親にも席を譲る。理由は言うまでもない。抱っこしたまま立っていたんじゃ危ないからだ。腕一本で抱っこして吊り革に掴まってるのなんて危なかしくて見てられない。5年くらいまえだったか、いち度そういうお母さんが地下鉄の車両に乗り込んで来て、誰も席を譲らないので、そのお母さんを見て「どうぞ」と席を立ったら、近くにいた別の初老の女がグイグイ寄って来て座ろうとしたことがあった。咄嗟に「あんたじゃねぇよ」と尖った声で制して母子連れを座らせたんだが、初老の女もプライオリティー的には低くても譲られてしかるべき者ではあるわけで、乱暴な言い方を少し反省した。回りの人々は席を譲らなかった負い目みたいなもののせいか、黙殺を決め込んでいて、すっごくヘンな雰囲気になっていた。親子連れも座ってはみたものの居心地が悪そうだったし、どうしていいのかわからないので、とりあえず次の停車駅で下車したんだが、去って行く車両を見て「なにやってんだ、おれは……」と思った。偽善の罰みたいなことだったのか。
 とにかく話は戻るが、こないだ地下鉄で席を譲ったときも知らない妊婦さんだったから、「これで何か美味しいものでも」と小遣いを握らせたりはしない。席を譲るくらいでちょうど良いわけで、「無責任な親切なのですね。自分の満足を満たすだけではありませんか」と言われれば返す言葉もない。まあ今会ったばかりで、もう会うこともなさそうな人だし。使い捨ての親切ってことか。英語だと「Disposable kindness」とでも言うのか。責任のある親切なんてのは無理よ無理。「これも何かの縁でしょうから、これからの生活の面倒はお任せください。とりあえずクルマでも買って差し上げましょうか?」とは、ならない。
 でも「あ。どうぞ」と譲って、「……え。いいんですか」と嬉しそうにしているから、まあ良いじゃないの。御婦人が嬉しそうにするのは見ていていいものだ。言っておくが、これに関しちゃ美人じゃなくても譲る。美人だったら万難を排して絶対に譲るけど。羽生ゆづるは妊婦じゃないから譲らない。
 隣にいたおれが立ち上がって、突然御婦人に横に座られた友人は、一緒に下車した途端に「なんだったの? なんで女の人と席を替わった?」と訊いた。
 ああ。そりゃアレだ。あの人マタニティーマークつけてたもん。
「なにそれ」
 妊婦の証明だよ。そういうのが、あんの。
「あー……。そんで席譲った、と。……へぇー。ときどき紳士みたいなことするよな!」
 うん。だって、おれの子かもしれないじゃん。
「ばかだなー」
 そういえば鮭の子って父親が誰かわかんないから、鮭の雄は稚魚に優しいんだよね。
「へぇー……。あ! いや! そりゃウソだろ! あいつら(鮭)は繁殖してすぐに雄も雌も力尽きて死んじゃうだろ」
 あ。そうか。じゃ、あれは鮭の幽霊だったんだね。焼いて食っても味がしないわけだ。
「……どこまでもウソつくんだな」

 ついでに思い出したんだが、息子が生まれてしばらく経って首も据わったし、ちょっと外食してみようかと誘ったことがあった。ずーっと料理はおれの担当で、朝のうちに昼の離乳食も作っておいて、という日々に飽きて外食がしたかったのだ。
 料理が運ばれてきて、「子供をこっちに。あなたが先に食べなさい」と言ったら、うちの奥さんは驚いた顔で数秒おれを見つめ、ゆっくりと微笑んだ。「いいの?」
 いいに決まってる。だって母親って大変(ลำบาก)じゃないか。
「ありがとう。……タイの男だったら、ふつうは奥さんに食べさせたりしないで、自分のぶんをさっさと食べると思うな」
 それは、ただไม่สังเกต(気が付かない)だけじゃないの? ใจร้าย(意地悪)ではないよね。
「んー……。そうかもしれないけど、ดีใจถ้าใจดี(優しくしてもらったほうが嬉しい)。タイの男って、結婚すると何にもしなくなる人ばっかりなのよ」
 ふうん。そんなものか。
「คนญี่ปุ่นก็ดีนะ(日本人って良いよね)」
 いや。そんなことない。日本の男も大概だぞ。妻に優しいというなら、おれの知る限り華人の男はだいたいそうだ。本土の中国人は、そういう思い遣りの印象は薄いが、華僑の男に限って言えば、妻や女性を尊重している者が多いような気がする。
 日本の場合、マタニティーマークをつけて歩くのも善し悪しで、妊婦とわかると足を引っかけたり、ぶつかって来る馬鹿者もいるという。そこまで酷くなくても電車内で「席を替われってこと?」とか「本当に妊婦?」などと言われることもあって、不快な思いをした妊婦が約1割というんだが、これは多いのか少ないのか。

 話を繰り返すが、冒頭のマンスール メリア ホテルはアル マンスール ホテルと名前を変えて営業しているようだ。さすがに古いから、もう高級ホテルではなさそうだが、チグリス川の近くなので眺めは良いんじゃないか。
 湾岸戦争の始まりはイラン・イラク戦争の戦費が嵩んでビンボーになったイラクに隣国のクウェートが融資してやったのが、折しも原油価格の下落で産油国の皆がカネに困った。で、クウェートがイラクに「貸したカネ返してね」とお願いした。これはわかる。でもイラクは返せるカネがないんで「なに言ってんだばかやろう。原油価格の下落はおまえとUAEのせいだろ」と逆ギレ。まあビンボーなのわかっててアヤつけてきやがって、という気分だったんだろうが。返せねぇわ、と開き直るんじゃなくて、クウェートを武力制圧してイラクの一つの県に組み込んじゃえば解決じゃん! というアクロバティックな生活の知恵が発動した。
 この強引な解決策を世界は「そりゃ遠慮というものがないわ」と多国籍軍を結成。「砂漠の嵐作戦」とかカッコいい名前でイラクに攻撃、という流れを年寄りなら憶えている。
 で、これに慌てたイラクは「イスラエルのパレスチナ侵略が良くって、何でおれらのクウェート併合を非難すんだよ。矛盾してるぞ」と主張。これがいわゆる「リンケージ論」で、わかりやすく説明してくれ、と言われて「えー。つまりトンカツ(クウェート)とライス(イラク)があったところに、カレー(武力制圧)をかけるとカツカレー(併合)ってことだよ」と主張したようなもんで、「いや。クウェートはすでにカツ丼(国)として成立してたんだからカレー(併合)はだめだよ」と言っても、「ばーか。新潟の定食屋チェーンにあるカレーカツ煮ライスを知らないのか」って話に喩えたら、ますますわかりにくくなってしまった。
 そういうのが、あるのだ。
 ←新潟名物カツ煮カレーライス
 イラクの主張したリンケージ論だが、各国「そりゃイチャモンだ。言いがかりだわ」と言ったものの(うーん。でも、そんなに間違ってもいないよな)と密かに思った。けれどもイスラエルのパレスチナ侵略を止めさせるなんて無理だから、「よそはよそ。おまえはおまえ」とミサイルで返答していた、という話で、イラクも悪いが、多国籍軍も正義かと問われれば「いいじゃないですか、そんなこと」と日影忠夫さんみたいになっちゃう。
 不幸をまき散らした戦争だったね。戦争ってそういうものだけど。
ท้องฟ้า - PAPER [Official Musicvideo ] 🌧🌻
 タイトルはท้องฟ้า(トーンファー)といって、「空」という意味なんだが、ฟ้า(ファー)だけで空という意味。じゃ、ท้อง(トーン)って何? というと、ふつうは「腹」。ปวดท้อง(プワット・トーン – 腹痛)みたいにトーンといえば腹だが、คนนั้นเป็นท้อง(コンナンペン・トーン)と言えば、直訳だと「あの人は腹です」になってしまうが、「あの人は妊娠しています」という意味にしかならない。話し言葉でคนท้อง(コン・トーン)は直訳が「腹の人」だが、「妊婦」という意味しかない。つまり話し言葉に限って言えば「腹」は「妊娠」とも同義なのだった。今では不思議にも思わなくなってしまったが、これを知った当初は「タイ語ってアタマ悪いのかな」と思った。
 で、タイトルに話は戻って「空の腹」で「空」ってことなの? と訊かれたら「そうだよ」と答えるしかない。だってほら、大きく広がる空って、まるで腹じゃん。ということなんだが、一般的な日本人にとって「言う程、腹かぁ?」って感想だろう。腹なの。タイ語では。
 さて、バンド名のPAPERってのは「白紙みたいな可能性」みたいな意味かどうかは知らない。何の説明もない。そうかな、と思って書いてみただけ。
 ヴォーカルのมินธดา ขจรจารุกุล(ミンタダー・カジョルンジャンクン)が、リードギターのไทป์(タイ)と高校生の時に同じバンドにいたことから始まったバンド。リズムギターのเจ(ジェー)も同じ音楽練習室で顔を合わせていたので誘った。当初ヴォーカルのミンがドラムスを叩きながら歌っていたが、技術的にアレなんで、新たにドラムスを入れてデビュー。4人のバンドでベースが決まっていなかった。ベースがレギュラーメンバーとして加わったのはこの5枚目のシングルを発表する少しまえのこと。
 この曲はヴォーカルのミンのガールフレンドが鬱病になってしまったとき、元気づけるために作った曲だそうで、へえ、良い奴じゃんと思うが、この曲で鬱病を克服できたとは言ってないので難しかったのか。だって、歌詞は空みたいにスッカスカなんだもん。いや違う。そのスッカスカは愛のスペースなのです、なんて言ってない。鬱病はツラいから治ってるといいね。
 歌詞だ。短いのは、繰り返し歌ってるから。ここまで褒めてないが、当時大ヒットした。

空に 見守ってもらおう
私の心の中には 彼女のことなど何の関係もない
私は 風だから

彼女は いつ笑うのか
可愛くて 何よりも良い
いつ落胆するか
隣にいて 歩き続けたい

あなた自身しか あなたの側に立つ人は誰もいない
悪いことがあっても 涙するだけ
どんな問題でも
しかし 彼女は今でも こんなに美しい

空に見守ってもらおう
私の心の中には 彼女のことなど何の関係もない
私は風
我慢できないなら 空を見て
疲れた心に 花を咲かせよう
恐れることなどない あなたはまだ美しい
 ←トルコの無課金おじさんが、もうクソコラになってた
 ところで前回のエントリーでも言ったパリオリンピックの開会式だが、長い。長すぎた。
 ていうか期待してたのに、ガッカリした。まさか東京オリンピックみたいな酷い開会式なんてあり得ないと思ってたら、東京とは方向性は違うけど酷さでは同じくらいだった。
 最初は1.5倍速で録画を見てたけど、途中から10倍速だよ。何が酷いかなんて散々言われてるので蒸し返さないが、なんかフランスの悪いところを煮詰めたような気がした。見ていて悲しくなったのは、グランドピアノが雨に打たれていたことで、「もうやめちまえ」と思ったよね。こんなのばっかりなら、もうオリンピックはなくていい。
 ぜんぶやめて、次回は北朝鮮でやればいいよ。そして参加選手全員に金(キム)メダルを支給すりゃいい。平和の祭典ぽくていい。
 それにしても非難を浴びたDJ BARBARA BUTCHはドラァグクイーンかと思ったらレズビアンの女DJなんだね。
 尖ってるよなー。丸いけど。
 かつてフランスには、べつのBARBARAさんがいて、(フランスすげぇよな)って憧れちゃったもんだが。そうだよな。考えたら今年は昭和で言えば昭和99年。来年は昭和100年か。昭和も遠くなったもんだ。
Barbara - Göttingen (1967)  ところでトム・クルーズが今回のオリンピック閉会式でスカイダイビングするかもしれない、って話で、少しワクワクしてしまった。
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 あと株価暴落で、ゆうこりんの言ったとおりになってて、くすくす笑っちゃった。

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