けろろの「浜あるき・野良あるき」

漁あるところ、農あるところへ、風土のにおいに誘われて、いそいそ出かけています

絶滅寸前?ニッポンの養蚕

2011-11-02 23:50:57 | 野良あるき
養蚕や蚕糸業に功労のあったひとが表彰される会に列席しました。
といっても、わたしは前橋の農協の知り合いに誘われ、表彰される農家の記念撮影係。
ごほうびは、常陸宮殿下がご臨席される「お茶会」の豪華なごちそうです。

       

皇居でなされている農業は、稲作と養蚕のふたつ。
養蚕はおもに美智子皇后のお仕事。蚕はお好きで、ものすごく熱心だそうです。
皇居内、紅葉山「御養蚕所」の繭で作った絹織物は、外交のお土産にされるとか。

かように日本の「国農」(という言葉はないと思うけど)である養蚕ですが、
中国など海外の安い輸入品におされ、産業としての継続は風前のともしび。
近いうちに「文化財」として特別に保護されるだけになりそうです。

群馬県は、明治以来、ずーっと「繭と生糸は日本一」(上毛かるた)。
「県都 前橋 糸の町」(同じく)で育ったわたし。桑畑は当たり前の風景でした。
明治の殖産興業を支えた輸出生糸。
一大集積市場だった前橋の名は、海外では生糸の代名詞でさえあったようで、
ロンドンの大英博物館で、当時の生糸の束につけられた紙タグ(これも当時の)に、
「maibash」の手書き文字を見つけたときは、ぞくっとしました。

群馬の昨年の繭生産全国シェアは42%。2位福島は16%。ダントツの1位です。
とはいえ、生産量は20年前のわずか1%! …10%の間違いじゃないですよ。
生糸需要のうち国内産は、これまたわずか1%。
養蚕農家の半数が70歳以上で、戸数も310戸ほどに減っています(全国で約750戸)。
なんとも悲しい現実…。
農業といっても食糧生産ではないので、あまり注目されていないのですが。

虫を飼う農業って、本当に面白く、奥深いのですよ。
10年ぐらい前に、前橋の養蚕農家や、山の集落のおばあちゃんの手内職「座繰り(製糸)」などを、
数年かけて取材していたことがあります。
病気や暑さ寒さに弱い虫をいかに育てるか、その技術と手間に先人のものすごい知恵の蓄積があります。
養蚕をめぐる習俗、迷信、言い伝えなども山ほど。そして、蚕に注ぐ農家の愛情の深さは、感動的でした。

2匹の蚕が1つの繭を作る、規格外の「玉繭」。
売れないから捨てるというのでもらってきて、重曹で煮て「真綿」に加工し、
赤城の野山の草木で染めて、ユザワヤで売っている羊毛用のつむぎ車で糸にして……と、
当時、そんな遊びをしてました。
その後、仕事が忙しくなってしまい、次の段階の「織り」に進めていないのですが。
きれいでしょう? 左の綿のようなのが、真綿です。