けろろの「浜あるき・野良あるき」

漁あるところ、農あるところへ、風土のにおいに誘われて、いそいそ出かけています

石巻~牡鹿半島へ

2011-11-11 23:48:02 | 浜あるき
震災以降、宮城は6回目になりますが、初めて石巻を訪ねました。
7月に営業再開した、㈱石巻魚市場。
11月1日からは、テントの仮設とはいえ、しっかりとした施設3棟(1棟は工事中)がお目見え。
沈下した地盤は、このようにかさ上げ工事が施されています。

     

大きな魚市場には、それぞれ「得意分野」があって、住み分けをしています。
石巻港は、大型底引き漁(トロール)、遠洋カツオ漁、大型巻き網などが得意分野。

      

底引き漁のいろんな種類の魚のほか、ちょうどサケの時期。
建て網漁(仕掛けた網に魚を追いこんで巻く漁法)のサケも、たくさんあがっています。

石巻に水揚げする定置網は、8か統(「統」は定置網の数え方の単位)あったのですが、
現在復活しているのは2か統。
この日の水揚げは、金華山沿岸の1か統。ワラサ(ブリの若魚)が25トンも!あがりました。
震災前200社あった、加工・冷凍などの水産会社は被災。
1社だけ復活した冷凍会社が、この日のワラサの大口引き取り先。
キロ82円。まあまあの価格だそうです。
この会社が買ってくれないと、運送費をかけて岩手や青森の市場に送らねばならず、コスト高。
市場の担当者の方は、「毎日ひやひやしている」と話していました。
得意分野だった大型底引きも、以前のお得意さんの半分が、今は塩釜港に水揚げしているそうです。

魚市場の社長さんにお話をうかがうと、現在の営業規模は以前の2割ほど。
冷凍や加工の後背産業の復興が遅れているのが、とにもかくにも課題とのこと。
しかし、12月には加工業への国の予算措置が見込まれ、復興が一気に進むのではという予測です。
仮設市場の裏には、打ち上げられた漁船がまだそのままですが、復興に向けて精一杯の奮闘が続いています。

      

さて、石巻の町から東へ。海とつながった湖のような内海、万石浦があります。
カキとノリの養殖、アサリ漁のほか、カキの種苗生産基地としても有名。
閉ざされた地形が幸いしてか、カキの養殖施設の被害は3分の1ほどですんだそうです。
港で会った、38歳の若い漁師さんから、いろいろとお話を聞きました。

     

例年より1か月遅れで、10月30日から、今シーズンのカキの出荷が始まったそうです。
ただ今年は、油臭いという風評被害があるとかで、仲卸組合が決めた価格は例年よりも2割以上安く、
むき身12.5キロが16000円。「2万円以上でないといくらも利益が出ない」と、漁師さんはため息でした。

万石浦を後にして、牡鹿半島の小さい漁村を巡りました。

      

さすがに、ボランティア受け入れが最も充実しているといわれる石巻。
牡鹿半島の漁村でも、日本財団の物的人的支援、各種ボランティアなど、多くの支援を見聞きしました。
荻浜は、昭和31年に延縄式カキ養殖が発祥した地だそうです。津波で折れてしまった記念碑を、
ボランティアが立て直してくれたそうです。かたわらの木彫りの恵比寿さまが印象的…。漂着物かしら。

ボランティアのおかげで、浜の片づけも養殖再開の作業も「予想もしない早さ」で進んだと、漁師さん。
生き残っていたカキの種苗を海に入れることができ、ワカメの種糸の準備も先週完了。
このように養殖再開は順調なものの、来年9月に収穫期を迎えるカキの処理場(カキむき)復活の、
資金手当てが目下最大の悩みなのだそうです。
見積もりは1億円。「養殖を続ける」と決めた漁家は10軒。負担が大きくのしかかります。

右の写真は、表浜。奥の白い建物は漁協支所ですが、1階は完全に水没。
周辺の浜もまだ「がれき」が散乱していますが、どっこい、2階の奥まった1室で漁協事務所は機能。
先週の土曜日には、今シーズン初のアワビの口開け(解禁)が。ここは海士・海女の素潜り漁です。
昨年を上回る600キロという大漁に、浜は大いに沸いたそうです。
「やれることから、少しずつ、ですよ」と、漁協職員の女性が、きっぱりにっこり、話してくれました。