今日もいい天気。紅葉がきれいです。今日は学校勤務でした。図書館で借りて、小川洋子の「琥珀のまたたき」を読みました。異常な世界を描いているのですが、なんだかとても美しく、夢物語の世界に引き込まれました。
母と3人の子供が暮らす家が舞台です。父親は別に家庭を持っていたため一緒に暮らすことなく別れてしまい、父親が残した古い別荘に4人で暮らし始めます。子どもは4人いたのですが、一番下の妹は亡くなってしまいます。母親は妹の死を受け入れることができず、3人の子どもを家から一歩も外に出ないよう閉じ込めてしまいます。姉と弟2人。学校にも行かず、父が残したたくさんの図鑑が教科書です。病気になっても医者にかからず、洋服が小さくなってもそのまま、自分が幾つかも分からない。そんないびつな環境の中で何年も過ごす子どもたち。それでも、母に悲しい思いをさせたくないと、閉ざされた家の中、3人だけで独自に編み出した遊びやルールに守られた暮らしを続けます。
こうした状況だけ読むと暗く陰湿な感じがしますが、文章を読むと、不思議なことに、とても美しく崇高な世界に思えてくるのです。琥珀という名で呼ばれる兄の目に起こる異変。そこから生み出される作品。環境を受け入れる純粋さ。ささやくような声で話す子どもたちの不思議な透明感と、異常な母との距離感。物語は、ところどころに、年老いた琥珀の様子や心境を交えながら進むので、読者は琥珀が家から出たことを知っていますが、家から救出されたことが本当に幸せだったのでしょうか。なんとも不思議で、でもなんだか美しく、そのことが恐ろしいと思える物語でした。私は好きだし面白かったです。